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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

【鎌倉殿の13人】ついに三谷幸喜、歴史物奥義「…したという史料は無いが、してないとの史料もない」を使いこなすようになった(笑)

「鎌倉殿の13人」はやはり、源頼朝の生前と死後では大きく舞台装置が異なっている。



“13人の合議制”といっても、実際に13人全員がそろって合議を行った史実は残っていないらしく、ただのユーモアに見えるこれらのせりふも、その点を踏まえて生み出されたものに違いない。

 そして、二つ目の「13人の合議制の目的」については、現在、「経験の浅い頼家を補佐するため」という説と、「独断に走る頼家の権力を制約するため」という説の二つが有力視されている。これに関して本作では、どちらか一方を採用するのではなく、相反する二つの説を両立させる離れ業をやってのけた。


tvfan.kyodo.co.jp

で、ちょうどその「13人編」の始まる直前、三谷幸喜は新聞でこう書いた。

三谷幸喜「13人が揃ったという記録もないが、揃ってないという記録もない」


この「〇〇した記録はない。だが、〇〇してないと書いた記録もない」を言うようになれば『歴史使い』も一人前という感じで…(笑)そもそも誰が言ったんだけかな。新田次郎か…たぶん海音寺潮五郎だと思う。


平将門藤原純友が、会って東西で反乱を起こそうと申し合わせたという記録はない。だが会っていないという記録もない」で、これに田中芳樹が感銘を受けて、どこかで引用していたはず。


三谷幸喜のことだから、たぶんこういう先行の話は知ってると思うのだけど、引用なのか、自分で独自にそこに到達したかはともかく、ひとつの名言として覚えておいてください。

話の流れで、これらが関連記事になると気づいた

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【予想】間もなくあるらしい統一教会の会見では「脅迫や嫌がらせを『受けている』」とのPRを行うのではないか(追記:当たった)

安倍元総理大臣が奈良市で演説中に銃で撃たれて死亡した事件で、逮捕された容疑者の母親が「会見をして皆さんに謝りたい」などと話していることが親族への取材で分かりました。
(略)
親族によりますと、容疑者の母親は3日前に、「事件から1か月もすぎるので、会見をして、皆さんに謝りたい」などと話したということです。
www3.nhk.or.jp

安倍元首相の銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者の母親が「謝罪会見を開きたい」と話していることが分かりました。

先月8日に逮捕された山上徹也容疑者は宗教団体「世界平和統一家庭連合=旧統一教会」に恨みを持ち、「安倍元総理とつながりがあると思い込み犯行に及んだ」と供述しています。

山上容疑者の伯父によると、母親は事件以降、伯父の家に身を寄せていましたが、8月7日「謝罪の会見を開きたい」と話し、伯父の家から荷物をまとめて出て行ったということです。
news.yahoo.co.jp


ここからは予想。
母親がどんな風に語るかはわからないけど(そもそも、本人がそういう意思を示したら「容疑者の肉親」を会見で語らせるべきか?それを取材して公にすべきか? という問題もあるが、それは置いておく)


で、予想だけど、統一教会の会見では「わが教会や母親のところに、こんな嫌がらせや暴言、脅迫があった、こんな被害を受けた」というのを並べるんじゃないかと思うのだ。


そして残念ながら、その被害自体は、実際に存在するんじゃないかと思うのだ。



なにしろこれだけ注目の的になり、批判を受けているのだ。それが公の行動、犯罪行為などに関する批判ならいいが、さてそこには誹謗中傷とか、物理的・肉体的な被害を与えてやるぞと直接的・間接的に示唆するもの、或いは統一教会の生まれた地域や教祖の民族性を交えた罵声もあるのではないか。要は「暴走」した”正義漢”

それとも、いやそんなことはなく、統一教会への批判は犯罪事実や容疑と、そういうものを分離した理性的なものばかりだ…だったらいいのだけどね。



そして、そういう被害を受けたこと それ自体がなんらかの証拠・資料と基に提示され、ファクトらしいとなれば、「そういう攻撃はよろしくないね」というのは一応言わざるを得ない。「を得ない」って言い方もあれだけど。


もちろん「そういう統一教会もこれまで組織的な嫌がらせや脅迫、罵倒中傷をしてませんでしたか」とか「そもそも別の問題ですよね」と言いたくなるのもやまやまだが、そういうことになったら。


いわゆる「弱者ポジション争い」というのの、一光景になるかもしれない。


この話、前に論じた「犬笛」にも繋がる。 もし統一教会やその関係者に罵倒、脅迫、差別発言などあったら、霊感商法や高額献金文鮮明の奇妙奇天烈や言動や行状を批判していた人たちが「犬笛」を吹いたから、となるのか?(否)
関連記事
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追記 当たった。

「全国の教会に『殺すぞ』と叫ぶ脅し、脅迫電話、街宣車での大音量による罵声」と“被害”を訴える
 田中富広会長は「安倍元首相が凶弾に倒れられた直後から容疑者の犯行動機が当法人の信者である母親の献金であるという、いまだ確定しない状況から当法人へのメディア報道により、当法人の信徒から様々な被害が報告されています」と旧統一教会への被害を訴えました。

 具体例として田中会長は「全国の教会に殺すぞと叫ぶ脅しや、脅迫電話、街宣車での大音量による罵声、そして集会妨害、一般信徒の自宅にまで夜朝に押しかけてメディアによる過剰な取材、信徒の子どもたちが学校やサークルで受けるいじめによる登校拒否、あるいは信仰を理由に会社を辞めるよう追い詰められた家庭もあります」と被害を訴えました。


申し上げる。

統一教会【の問題とは別に】“『殺すぞ』と叫ぶ脅し、脅迫電話、街宣車”は許されない行為。(それが事実であるなら)明確に、それへの反対と非難を表明しておく…これ(はてブでは)少数意見らしいので、猶更言っておくべきだろう。

その上で、まず被害を警察に届け出て、日本警察の威信にかけて被害(の有無の)調査と、実行犯がいるならその実行犯の検挙に徹底的に挑んでほしい。
その際に統一教会の、捜査への徹底的なご協力をお願いしたい。



と同時に、そういう犯罪的な脅迫や脅し、罵声などは、全体としての合法かつ常識的な「批判」「意見」とくらべて、全体の数のうちの何割程度なのか、そちらも知りたい。





余談ながら、こういう話は、大方「朝鮮総連」へのスタンスと大体重なる、と言えそうだ。(世界日報と朝鮮新報なども、似た扱いが可能ではなかろうか。)

「熱々、ねっとり」な食べ物を早食いすると、食道内に「たこ焼き潰瘍」ができるらしい【漫画小ネタ集】

月刊モーニング・ツー 2022年8月号に掲載された
「高度に発達した医学は魔法と区別がつかない」より。

ん?何このタイトル?というかどこかで聞いたな?と思いますかね。

おーっといま、無料開放中やがな。(※2022年8月9日現在)
comic-days.com


てか、これから引用する回も無料かよ…
comic-days.com


まあ、軽く紹介すると、「異世界もの」ですな。
・医者が異世界転生(異世界遷移、だっけ?)した。
・医者は高度な医療技術を持っているが、当然現在の医療機器や治療法、最新薬品がそのまま使えるわけでは無い
・そこを魔術や当時…例によって中世レベルの技術をうまく組み合わせて、医は仁術を貫いていく、

的な話。ちょっと骨格に「JIN-仁」が入ってますかね。



この原作は現役医師で「なろう」出身の作家さんである、という話を聞いています。たしか連載開始時「なろう」出身、みたいなことが宣伝文句に在り、いまではそれが売りなんだな、と実感しました。

natalie.mu
津田彷徨(ツダホウコウ)
1983年生まれ、兵庫県出身。医師、作家。内科医として勤務する傍ら、執筆活動を開始。小説家になろうにて発表した「クラリス戦記」は、改題・改稿を経て「やる気なし英雄譚」として2014年に商業デビュー。主な著作に「やる気なし英雄譚」「ゴミ箱診療科のミステリー・カルテ」「ネット小説家になろうクロニクル」、「ロンドン黒死病事件」(「FGOミステリー小説アンソロジー カルデアの事件簿 file.02」収録)などがある。

ついでにいうと、講談社小学館集英社秋田書店……メジャーな漫画出版社、とくに週刊誌系が、文学運動?たる異世界ものにどういう距離感を持っているか、ってちょっと気になるところです。やっぱり連載数や、それがどこに掲載されているか、一番のヒットは何か、王道かパロディか……などなど。

ただ、それは手に余るので本題…というか、「小ネタ」に戻って。

いま、進行中の章は、「ドラゴン」の治療。それも等身大の人間体から、巨大な龍に変身できる一族のひとりが、胃に病気があるらしいー--とわかったので、主人公の医師が「じゃあ龍に巨大化してもらい、その消化器内に人間サイズの自分が入って、内視鏡手術のように治療しよう!」と提案するという話。

その中で、食道を歩いている時に「潰瘍の後が多いな。たこ焼き潰瘍みたいに何か変なもの食べたのかな」とつぶやくのだけど、そこに注釈があった。

熱々で粘り気の多い食べ物早食いすると「たこ焼き潰瘍」が食道に


なにこれ
怖いよ!!!

自分も熱いものを結構好んで食べるし、相当に早食いをする。

なんとなく、そのアツアツの熱を、食道を通る時に感じることもあったー--!!

でも、それで食道に潰瘍ができるとしたらこわっ!早く言ってくれよー-!!

患者:28歳,男性。
 主訴:胸骨後部痛,発熱。
 既往歴:特記すべき事項なし,精神疾患なし。
 生活歴:独身,一人暮らし。
 現病歴:夜にたこ焼きの1個目を摂取したところ熱かったため丸飲みをした。その後より胸骨後部~心窩部痛が出現した。翌日より37.6℃の発熱を認め,疼痛が増強し食事摂取不可能となったため近医を受診。上部消化管内視鏡検査にて食道熱傷を認め,当科紹介受診となった

https://www.jstage.jst.go.jp/article/pde/81/2/81_76/_pdf

友人達と食事をしていた時、白子の天ぷらを食べました。

友人の一人が、一口で食べてしまって口の中をやけどしてしまいました。

でもそれで良いのです。

そんな時は焦って飲み込まず、手元にある冷たい飲み物で口の中を冷してしまいましょう。

飲み込んでしまうと、食道が広範囲にやけどしてしまいます。

内視鏡で見ると食道熱傷と診断され、ひどいと食道潰瘍になってしまい難治性です。

治療は胃酸を抑える薬と液体の粘膜保護剤の組み合わせが有効です。

原因となる食べ物は、たこ焼きや湯豆腐が多いです。

www.matsuonaika.jp


という感じで、マンガを読んで知った医学知識をシェアする次第です。




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余談 モーニングツーは「WEBで再創刊」らしい

モーニングツー再創刊オンラインで

いや、あっしゃこれ「モーニングツーはもう紙では刷りません。ぜんぶオンラインに移行します」って意味かと思ったが……ぶっちゃけ、説明がわかんねーよ!

モーニング・ツーがWEBで再創刊、毎週木曜更新に。「モーニング・ツーWEB」本日オープン、人気作・新作の無料開放続々!

22/08/04
月刊「モーニング・ツー」は、週刊モーニング増刊「モーニング2」として2006年8月10日に創刊されました。
あれから16年を経た本日2022年8月4日(木)、「月刊」ではない「モーニング・ツー」と名前を変え、「モーニング」本誌と同様の毎週木曜日、昼12時に更新されるWEB漫画サイトをオープンいたしました。
キャッチコピーは、「あなたと旅に出る木曜日」!

morning.kodansha.co.jp

まあとりあえず、同誌の人気作品がオンラインで読める様になるっぽいことは間違いなさそうだが……????

8月9日…「ソ連中立条約違反の日」を、プーチンのウクライナ侵攻後初めて迎える夏。

8月9日は、長崎原爆の記念日です。
この式典において行政の「弔意の強制」という問題が存在することは、この前の記事で書いたので繰り返さない。


そして8月9日といえばもう一つの記念日である。

いわゆる半袖、いや「反ソデー」、その後「反ロデー」になったんだっけかな。

ja.wikipedia.org

1945年のこの日、ソビエト連邦は日ソ中立条約を破棄して対日参戦を敢行。また、大日本帝国の傀儡である満州国へ侵攻した(長崎市への原子爆弾投下と同日)。
満9年の1954年、日本の右翼・民族派は、これらソ連の一連の行動を弾劾すべく、大日本愛国党主催の「滅共反ソ国民大会」が新橋駅前で開かれた。福田素顕は資金調達、赤尾敏は演説会、荒原朴水[注 1]はデモと、それぞれ役割を分担した[1]。大会終了後、約40人がソビエト連邦代表部に移動して抗議活動を行い、更には鉄門を破って侵入、警察官を負傷させる事件が発生した。この事件で荒原・福田進・及川秀雄の3人が起訴され、有罪判決(荒原に懲役4月・執行猶予2年、福田に罰金2万円)を受けた[2][1][注 2]。右翼はこの事件を「義挙」とし、以降毎年この8月9日を「反ソ連デー」として位置づけ、ロシア大使館近辺で街宣活動を行うようになった。


果たして今続いてるのかどうか。
昭和の御世においては、東京中に(だと思う)「8月9日は反ソデー」のビラが、日本愛国党によって貼られ…今思うとあの行動力と言うか動員力はいったいなんだったんだろう。

それによって変な知名度はありました。

いま、かつての名物党首、「銀座のドン・キホーテ」こと赤尾敏の姪が参政党から出馬してちょっとだけ話題になったが、愛国党自体は協力関係を持ちつつ分派しているそうな。


ja.wikipedia.org



いや、それはどうでもいいんだが…

ことし、2022年の反ソデー、反ロデーは、「プーチンウクライナ侵攻後、初の反ロデー」、となるのですな。


いや、今の反ロデーも、愛国党的な界隈が中心になってやってるんだったら、それはそれでさすがに一般的な支持は得られないだろう。ある意味それは安全弁である。


ただ、日ソ中立条約を破って満州になだれ込み、軍人だけでなく民間人にも多大な略奪暴行を行った…という点への批判自体は正当なもので(関東軍の狼狽や、不十分な抵抗、あるいはそもそも満州に日本移民がたくさんいること自体の不当性を問うこととはまた別だ)ある。

ウクライナジョージアで、日本と SNS で交流してる大使館などの層は、無駄に日本人の琴線に触れるキーワードを散りばめる才能がある(笑)。

「ロシアのウクライナ侵攻」を目撃したあとの日本社会は、そしてそれに関わる国際社会は「8月9日」に際し、昨年までと同じスタンスで迎えられるだろうか。

8月8日は「猪木vs藤波・横浜決戦」のあった日。特番EDがサザンの「旅姿六人衆」であったことも伝説。

number.bunshun.jp
 新日本において、毎年同じ日付と会場で行われる大会といえば、1.4東京ドーム「レッスルキングダム」や、3.6大田区体育館の「旗揚げ記念日」、5.3福岡国際センターの「レスリングどんたく」などがあるが、そういった特別なイベント名も付いていない、G1公式戦の1大会でしかない「8.8横浜文体」が恒例となっているのには意味がある。

 その原点は、'88年8月8日横浜文化体育館藤波辰巳vs.アントニオ猪木IWGPヘビー級選手権。この伝説的な一戦が行われた「8.8横浜文体」という呼称には、昭和のプロレスファンにとって特別な響きがある。いわば「ストロングスタイル記念日」なのだ。

 この藤波vs.猪木戦が行われた1988年は、新日本にとってどん底の時期……


プロレスを「ミスター高橋本以後」の文脈で見ると、「結局アントニオ猪木は、「劇団の座長」の役を、藤波に渡すことを最後まで拒んだ」とも解釈できるが、それはおいておく。
自分はそもそも、藤波の試合をどーにも面白いと思わなかったので、これもワンオブゼムだった、当時は。

ただ、そのあと、語り継がれたこのことのほうをよく知っている。


これへのレスポンス


そう、当時はこういうOP映像、ED映像にも作者があり、選曲一つとってもそのイマジネーションやアイデアが映像に反映されている、なんてこと、ちょと考えればわかる筈だが意識したことなんてなかった。

それを意識したのはPRIDEで「佐藤大輔」が名前を知られてからだ。


実際、ここでサザンの「旅姿六人衆」を選んだ人物、もちろん関係者の証言を辿ればわかるのだろうけど、今のところは不明ということにしておく。

毎日違う顔に出逢う
街から街へと
かみ締めてる間もないほどに
Oh、no、oh、no

喜びや夢ばかりじゃない
つらい思いさえ
一人きりじゃ出来ぬ事さ
ここにいるもの

【メモ】このことがKAMINOGE70号で語られているのだという。



プロレスラー本人は予想以上に、この「旅から旅、興行をしながら各地を渡り歩く」ことにアイデンティティを感じている。


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この2011年の記事を、そのまま再掲載しよう。


もうひとつ、同じリンクの
http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-1172.html
から、大半になるが、名言の資料的保存として御用者いただきたい

Q しかしブロックは、若くしてプロレスを去ることを決めた人ですが。


トリプルH まあ、揉めたわけではないしね。ブロックは田舎者なんだよ。悪い意味じゃないぞ。農場にいるのが好きで、有名になんかなりたくなかったんだ。煩わされるのが嫌いなんだ。WWEを辞める前には、プロペラ機を買って、パイロットを雇ったら、二度と空港に行かなくてもすむかなあ、なんて話していた。文字通り街から街へと飛べば、誰にも会わずに済むし、ただ会場に行ってプロレスをすればよくなる。それこそが、僕らが生活のためにやっている唯一のことだからね。
 
毎晩20分間リングに立つ。それが1日のハイライトなんだ。年に200日も遠征していても、おいしいのは毎晩20分間だけ。それ以外の時間は、そのためにケツを痛める時間なんだ。飛行機やら、空港やら、ホテルやら、レンタカーやら、20分のアドレナリンを味わったら、次の街に行くためにまたそれを繰り返す。ブロックが辛抱ならなかったのは、23時間40分の方なのさ。リング上での20分は愛していたはずだよ。

エンターテインメントに生きる人の、珍しくは無い…ありふれていてその分、典型的な挿話である。
野球選手も、歌手も、落語家も、小説家も。
「俺は自分の仕事の中だけで、いい仕事をやってきたい。スター扱いでキャーキャー言われるなんて苦痛でしかない」という人も必ずいるだろうし「街で誰にも声を掛けられない、サインをねだられないなんて苦痛で、屈辱的すぎる。もっと俺をちやほやしてくれよ!」という人も必ずいる。また同一人物でも日々、この両極をあっちにいったりこっちに行ったりしているのだろう。
ルー・テーズみたいな”ザ・プロレス”の人はもうこの旅から旅が完全に性に合っていて「スーツケースひとつで今日は東、明日は西。これがあるからプロレスは最高なんだ!俺のリングネームはジプシー・ルーにしたかった」と言っていた。
ルー・テーズニック・ボックウィンクルビル・ロビンソンの三人が「寅さん」映画を見たいと流智美氏にリクエスト、言葉も分からないのに寅さんの旅姿に共感した…という味わい深い一編が、別冊宝島に収録されている。
映画「レスラー」に絡んで、ここでも紹介されている 
http://d.hatena.ne.jp/RRD/20090616/1245172217

この曲を、昭和プロレスの集大成のひとつだったアントニオ猪木vs藤波辰巳の特番でエンディングにした人のセンスの良さよ。(もっとも自分は、この試合は特別名勝負だとは思わないけど)


そしてもうひとつの記事も抜粋。

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この3人が「寅さん」を見に行ったのは、前述のUWFインターでのロビンソンvsニックのエキシビションがあったとき…1992年5月8日の、翌日のことであった。
流智美氏は回想する。

試合後、テーズ、ニック、ロビンソンの3人と夕食をともにしたとき、ロビンソンが唐突に言った。
「ルーもニックも、帰国はあさってだろ?だったら、明日は私と映画にいかないか。どうしても見たい映画があるんだ…(略)もう初めてニッポンに着てから24年になるのに、いちども『フーテンノトラサン』を見たことがないんだ。いまじゃあ、アメリカでもたくさんのファンがいるくらいのポピュラーな映画なのに、何十回もニッポンに来た私が見ていないのは少しはずかしい…(略)」


(略)…日本語オンリーのスクリーンを眺めつつ、
3人とも意外なほど興味深そうだったのだ、という。
笑うべき場面では笑っていた、ともいう。

映画が終わった後…焼き肉屋でビールの大ジョッキを傾けながら、3人は口をそろえて「実に面白かった」と相好を崩した。

ここから、感想が結構長いので、3人の感想を箇条書きにする。

ルー・テーズ】(要約)
・トラサンは、実家に帰っても落ち着かず、1日でホカイドウ(北海道)に行っちゃうだろ?あれはまさにプロレスラーの習性なんだよ。自分の師匠のエド”ストラングラー”ルイスは故郷で試合があっても、自宅で奥さんのコーヒーを飲み終えるとすぐにニセの用事をでっち上げて出て行く。「落ち着かないんだよ。女房なんてクリスマスの時に一緒にいればいいんだ」。というか私も、地元で試合があっても自宅によらなかったもんな。
・だから俺たちもトラサンと同じ”ジプシー”なんだ(※ジプシーという呼び方は、発言者本人の意思を尊重しています)。私も本名で闘ったが、リングネームをつけるなら「ジプシー・ルー」だ。ジプシー・ジョーっていたけど、ありゃ最高の名前だな!!

  

ビル・ロビンソン】(要約) 
・トラサンが居候したアニマルドクター(三船敏郎)で、最初は無愛想だったドクターが後からトラサンを引き止めて、娘のことや自分の再婚を相談してたろ!!あれはまさに私だよ!!私は行く場所行く場所…イギリスのマーチン、日本のヨシハラ(国際プロレスの吉原代表)、インドのダラ・シン、AWAバーン・ガニア…どこでも引き止められた、そこで大活躍してトップを助けてあげたんだ。そして恩を着せることもなく次の旅へ…… うん、私はトラサンだな。

 
そして、ニックだけはちょっと違っている。
字幕がないから、逆に表情や場面で、会話を想像したというのだ。とくに面白かったのは、ホカイドウでのフェスティバル(縁日)での、寅さんと観客のやり取り場面で、やはり自分の人生になぞらえてこんな想像をしたという…

ニック・ボックウィンクル】(これは原文引用)
私はもちろん日本語が分かるわけじゃないんで、トラサンとお客がどういうやりとりをしていたかは知る由もないんだが、たぶん、こういうやりとりをしていたんじゃないか?
「お客さん、お客さん!ここにある品物は世界中のどこを探したって簡単に見つかるもんじゃないよ!買わないと一生損するよ!」
「ところであんた、威勢のいいタンカ切ってるけど、そんなに言葉が切れるなら、なにもそんなヤクザな商売してなくても、いくらでも他にまっとうな職業があるんじゃないの?なんでそんな服着て、炎天下でシンドイ思いをしているの?」
「お客さん、ご心配ありがとう!でもね、俺はあんた方みたいに毎日毎日背広着てネクタイ締めて、一日中椅子に座って電話のお相手しているような仕事は考えられねぇんだよ。俺たちの商売がどう見えるか知らねぇが、やってる者しかわからないような面白さがいっぱいあるのさ!」
どうだい?ざっとこんな感じの会話だったんじゃないのか?


ジョシュ・バーネットも念願の「プロレスラー」として新日本プロレスに参加したとき、「この仕事をしなかったら絶対に来ないような小さな町(格闘技試合はたいてい大都会の会場だ)を巡って、そこでファンと交流できる。こんな素敵なことってないよ!」(大意)とどこか…たぶんkamiproで語ってたのだ。
まったくジョシュのプロレス分析は的を綺麗に射抜いている。なお実践は(略)


そんなことで、サザン・オールスターズの「旅姿6人衆」はプロレスファンにとって、ちょっと特別な歌である,という話。

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施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」電子版が50%還元(残り3日)~関連過去記事リンク集

えーと、ちょっとAmazonポイントとかの関連がよくわからん
本当に半額還元のところに飛んでいるのか、終了してないかは慎重に確認してね。
はてなの、Amazonとの連携がちょっと不十分なのよ!)


自分は紙版を持っている。だが、この機に買い直した。
これは、この時に表明した藩政改革を実行した、ということである。
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しかし、これは電子書籍を買った分だけ、その旧紙版を棄てるか売るかすべき、ということになるのだが、それをできない場合はどうすればいいのか。答えは出ていない。


ニコニコ静画」でも、だいぶ遅れて一話ずつ配信されている…と、埋め込みできないんだよななぜか
URLで
https://seiga.nicovideo.jp/watch/mg662548



==過去の関連紹介記事==

「読書好き…のふりをしたい子」vsSFファンの名勝負…そして「SFファンがいかに危険か」を描く名作「バーナード嬢曰く」(施川ユウキ

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「ニンジャ」や「パンをくわえて登校する女の子」と同じく「偏狭なSFファン」もどこかにいてほしいもの(そうか?)

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読書好き…のフリをしたがる、彼女が帰ってきた!「バーナード嬢曰く」2巻、毒や風刺も含んで堂々発売

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「ファン漫画」の歴史を年表化してたどってみる【創作系譜論】

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「図書館」「図書館員」「図書委員」「愛書家、蔵書家」イメージについて【創作系譜論】

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「ネタバレは法的にも賠償責任がある」って本当かねえ?だって「言論・表現の自由」があるでしょ?

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【完全版】「2016年マンガ10傑」を選定します。「特別功労賞」もあの作品に

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「関係性ショートコミック」に関して、あらためて一から考えるのでお付き合いのほどを。
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「バーナード嬢曰く」4巻発売。「1976年のアントニオ猪木」がネタになる中で「プロレスvsSF」の危険な接近遭遇!!

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「孤独や孤立を抱えたキャラ」が「ある種の”図々しい(無遠慮)”キャラ」に絡まれて、いい方向に変化する…という話が、最近多いような気がする

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「周りの人を『買収』するなら、こんなふうに」…イスラエル元大物諜報員のノウハウがヤバい(ハヤカワ文庫)

この前の「ルポ トランプ王国2」から、有能な新聞記者が、バーで取材相手を見つけるまでのノウハウを抜き出して紹介した記事は、当ブログの中でも有数のアクセスとブックマークをいただくことになりました。ほとんど、原著の力によるものなんだけどね(笑)。
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しかしそれでも、こういう話題に興味を持つ人が意外なほど多いんだな、と感心した…ので、せっかくだから(その部分だけの)類書を紹介したい。

元記事でも

「本質的に共通してるから当たり前なんだけど、ジャーナリストでなく凄腕のスパイ、諜報員もおそらく同じようなスキルを身につけてる。ついでに言うと遺憾ながら、凄腕のカルト勧誘員もこういうスキルを身につけてそうである(笑)」

と書いた…まあ、当たり前というか平凡な連想ですけどね



実は、こういう連想をしたのは具体的な例がある。

早川書房から昭和57年に文庫版が発売された、実在の諜報員が書いた「スパイのためのハンドブック」という本がある。


見る限り紙版しかないらしいが、ただ「新品」があるからいまも発行されているな!!それだけで超人気作品の証明だ。ただ、電子書籍も出すべきだよな……


著者はウォルフガング・ロッツ。
またの名を…『カイロに置かれた、テルアビブの眼』。

ja.wikipedia.org


名前に聞き覚えがあるなあという人は、
ひょっとしたらこちらもかのレジェンド作家の、単行本に載ったインタビュー記事を読んだのかもしれない(笑)



それじゃ逆に胡散臭いじゃないか、というもっともな疑念を抱かれるかもだが(笑)、そうではなく彼の実績は確かなものだ。
というのは最後の最後には彼は正体を暴かれて、敵国エジプトで(見世物的な意味もある)大々的な裁判を起こされ、終身刑に処されたからだ。
その後、第三次中東戦争イスラエルが得たエジプト人捕虜5000人と交換する形で釈放された。
ということで、多大な諜報活動に貢献した実績が保証され、しかし既に面や経歴は割れているからこれ以上諜報の現場に戻ることは不可能。そういう点で、或る種、使い勝手の良い「競馬を PRするための、引退後の競走馬」 的な扱いをされていたため、落合信彦および週刊プレイボーイの「取材」に、上手く対応できるちょうどいい素材だった…と思しい。


別に落合信彦と本当に親友でイスラエルから深夜に電話で、「 AAA」 の機密情報を教えてくれるという人ではないのだ(笑)


まあ、そんな実績のあるスパイだが、引退後の身過ぎ世過ぎのために、スパイ時代の回想録、 そしてこの「スパイのためのハンドブック」を書いた。


何も諜報員時代のリアルな体験談に加え、その諜報員時代に、機密情報を持つ多くの上流階級、高級軍人などをひきつけた軽妙なユーモアがいかんなく発揮された面白い読み物となっている。


ただ、「スパイのためのハンドブック」というだけあって、「じゃあ実際に〇〇ができるかやってみよう!」的な記述があり


・相手に気づかれず上手く尾行し、個人情報を収集するコツ

・連絡係とさりげなく接触し、情報を交換するコツ

・「偽の経歴」を造りそれを気づかれないようにするコツ

・相手に追及された時に嘘と真実を少しずつちりばめ、最低限のダメージでクリアするコツ



などが列挙されている。

ただ基本的に、法に触れるようなことはないわけだけれど、
このハンドブックでかなり具体的に書かれているように、誰か特定の人を疑念を掻き立てることなく尾行し、名前や経歴や趣味を調べる……というのは、かなりヤバいと言えばヤバイ話でありましょう。

しかし一方で、それを推理ゲームのように楽しむ、そんな層もいたりする…
news.tv-asahi.co.jp



そういう危うさもある本だが、
ここで本題。
この本には「どういう風にすれば、人は買収しやすいか」を論じる1章があり、そこでは、例として「ちょっといいホテルに5、6泊する間に、ホテルの従業員を買収する方法」について語っている。


もともと、彼の情報収集活動は、「結構な大金持ち、上流階級の社交好き」という偽経歴のもとに、カネや贅沢品をばらまいてエジプトの上流階級とコネを作り、そこから情報を引き出すというスタイルだから買収についてはお手のもの。

「賄賂の効かない官僚とか公務員にまだお目にかかったことはない」
「どんな男もその人なりの値段がある」
「私は面白半分に賄賂を使ったのではない」
「こういう話は任せてもらいたい。私は場数を踏んでいる」

…といった言葉が列挙され、ほとんど「わいろ職人の朝は早い」的な職人的自信を見せている。

そこで、「カイロに置かれたテルアビブの眼」ことウォルフガング。ロッツが「ホテルの従業員来週はこういう風にやる。君達もやってみよう」と語りかける手段は以下の通り。
これは「仮想演習」だという。



以下の仮想演習に

1 ホテルに五、六日の予定で宿泊する。ボーイはあなたの荷物を部屋に運び、あなたは彼にチップをたっぷりはずむ。やりすぎてはいけないが、彼が上客から期待する額の倍くらいをあたえ、親しくなりたい様子は見せるがなれなれしくはさせない。彼が退出してから、部屋係のメイドに電話し、ベッドを整えさせたり、その他のこまごました用事をさせる。ここで、また多めのチップを渡す。



2 しばらくして、バーに行き、一、二杯飲む。バーテンは喜んであなたと会話をするものだ。話は雑談程度にとどめおき、自身についてはあまり語らず、かなり金めぐりのいい実業家といった印象をあたえる。長居せず、深酒もしない。帰り際にバーテンにたっぷりチップをはずむ。



3 ホテル中に、あなたはチップを出し惜しみしない人であるという評判を確立した。
あなたは一級のサービスを受け、従業員は互いに競い合って、あなたにちょっとした 便宜をはかってくれる。あなたの部屋は他のどこよりも早く念入りに整頓され、受け付けの伝言は一番早く伝達され、バーでの飲み物はなみなみと注がれ、誰よりも優しくされる。これらはより多く、大きい報酬を期待して、いずれも自発的になされるものである。今までのところ、あなたは特別なことは何ひとつ頼まず、チップの返礼は求めなかった。
しかし、たっぷりチップははずみ続けるものの、ときおり従業員にそのホテルのこと、彼らの家庭、政治およびその類いの話をさせる。あなたは今や彼らの人気客であり、従業員の全員あるいはほぼ全員について自分の考えをまとめた。 一段階終了。



4 かなり他愛もない性質の特別な頼みごとをしはじめる。
・他の宿泊人についての情報。
・就業時間外にしてもらう特別な使い走り。
・他の宿泊人に来た電話および(あるいは)伝言の内容詳細。
・会いたい人への紹介 (バーテンを通じてしてもらうのが最上)。

頼みごとに応じてくれたら、かならず適当な高額チップで報いてやる。従業員は今 や自分たちが賄賂をもらって、職務織囲をこえたことをしていることを知っており 、 魚が水に慣れ親しんでいるように、それに慣れてしまう。ホテル従業員はそれに 適合している。第二段階終了。



5  あなたは今や、どの従業員が賄路にいちばん敏感で、誰が渡すのに最適の立場にいるかを知っている。第二段階で、すでに目標は達成され、求める情報は得られたかもしれない。それは結構であるが、ここにまた来る機会が少しでもあるなら、そのままで放棄しない、あなたに対する特別サービスを半永久的に続けてくれるよりどころになりえるのである。鼻薬をたっぷりかがされたバーテンや受け付け係は、やがて小切手が郵送されてくることを知っていれば、あなたが関心を抱くような情報を長距離電話で伝えてくることさえするものである。同じく、ボーイあるいは給仕も、あなたのいる いないにかかわらずいつでも、”微妙”な使い走りをしてくれよう。(誰かのお茶に砒素をもるというよな用事はだめだが、他のホテル客の部屋に盗聴器をつけるとい ったようなちょっとした頼みごとならよい)

この「比較的単純な演習」のあと、より具体的な、もっとリアルな「周囲の人を買収する方法」を述べていくのだが、基本的な形・テクニックは変わりがない、と著者は自信満々である。

ただここから先は具体的に移すことを、引用者もはばかる…


ほんの一部だけ抜き出すと、まず最初は「テニスのラケットを借りる」と言った、そもそも何の問題もない公然とした、やけどちょっとした個人的依頼をするのだという。


もちろんそれは傷ひとつつけずすぐに返却し、感謝感激しているところを盛大に示してお礼も渡す。

そういうことを繰り返して「次の段階」に入るのを待つ。

「…時いたらば、彼を直撃する。ただし、そーっと。きつすぎてはいけない。まだ初回なのである。……この段階では明らかに違法なものはまずい。ほんの少し”本道から外れた”くらいのところがよろしい…かくして彼は針にかかった……慌てずに間をとる。…今度は前より少し…」

人を買収するにはこういうふうにやる イスラエルの伝説スパイウォルフガング・ロッツ談(スパイのためのハンドブック)


このくだりは、基本的にユーモアを失わず楽しんで読めるこの本が一転して空恐ろしい「怖い本」に変わる場面でもある。

こんな風に一流の「賄賂職人」が、細心の注意を払ってあなたに接触した時、私に笑顔で話しかけてきた時、自分達は最初に、或いは途中で、そうでなければ最後に、彼らの欲望を見抜き、それを拒否することができるだろうか?


それを考える時、冷や汗が出る思いをしない方は、あるいは少ないのではないか。



……とそんなことを、凄腕新聞記者がバーで初対面の人間と親しくなり、インタビューに応じてもらうノウハウの記述を読んだ時に、双子の兄弟を思い浮かべるようにこの本のこの記述を思い出したのであります。


実はこの本は、このブログを始めた時から「面白い本なのでいつか紹介しよう」と思っていながら、ずっと本棚にたな晒しにしていた作品でした。

皆さんの「トランプ王国2」への反響をきっかけに、やっと「夏休み」?に宿題の一つを片付けることができました。
(了)