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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

8月8日は「猪木vs藤波・横浜決戦」のあった日。特番EDがサザンの「旅姿六人衆」であったことも伝説。

number.bunshun.jp
 新日本において、毎年同じ日付と会場で行われる大会といえば、1.4東京ドーム「レッスルキングダム」や、3.6大田区体育館の「旗揚げ記念日」、5.3福岡国際センターの「レスリングどんたく」などがあるが、そういった特別なイベント名も付いていない、G1公式戦の1大会でしかない「8.8横浜文体」が恒例となっているのには意味がある。

 その原点は、'88年8月8日横浜文化体育館藤波辰巳vs.アントニオ猪木IWGPヘビー級選手権。この伝説的な一戦が行われた「8.8横浜文体」という呼称には、昭和のプロレスファンにとって特別な響きがある。いわば「ストロングスタイル記念日」なのだ。

 この藤波vs.猪木戦が行われた1988年は、新日本にとってどん底の時期……


プロレスを「ミスター高橋本以後」の文脈で見ると、「結局アントニオ猪木は、「劇団の座長」の役を、藤波に渡すことを最後まで拒んだ」とも解釈できるが、それはおいておく。
自分はそもそも、藤波の試合をどーにも面白いと思わなかったので、これもワンオブゼムだった、当時は。

ただ、そのあと、語り継がれたこのことのほうをよく知っている。


これへのレスポンス


そう、当時はこういうOP映像、ED映像にも作者があり、選曲一つとってもそのイマジネーションやアイデアが映像に反映されている、なんてこと、ちょと考えればわかる筈だが意識したことなんてなかった。

それを意識したのはPRIDEで「佐藤大輔」が名前を知られてからだ。


実際、ここでサザンの「旅姿六人衆」を選んだ人物、もちろん関係者の証言を辿ればわかるのだろうけど、今のところは不明ということにしておく。


プロレスラー本人は予想以上に、この「旅から旅、興行をしながら各地を渡り歩く」ことにアイデンティティを感じている。


m-dojo.hatenadiary.com
この2011年の記事を、そのまま再掲載しよう。


もうひとつ、同じリンクの
http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-1172.html
から、大半になるが、名言の資料的保存として御用者いただきたい

Q しかしブロックは、若くしてプロレスを去ることを決めた人ですが。


トリプルH まあ、揉めたわけではないしね。ブロックは田舎者なんだよ。悪い意味じゃないぞ。農場にいるのが好きで、有名になんかなりたくなかったんだ。煩わされるのが嫌いなんだ。WWEを辞める前には、プロペラ機を買って、パイロットを雇ったら、二度と空港に行かなくてもすむかなあ、なんて話していた。文字通り街から街へと飛べば、誰にも会わずに済むし、ただ会場に行ってプロレスをすればよくなる。それこそが、僕らが生活のためにやっている唯一のことだからね。
 
毎晩20分間リングに立つ。それが1日のハイライトなんだ。年に200日も遠征していても、おいしいのは毎晩20分間だけ。それ以外の時間は、そのためにケツを痛める時間なんだ。飛行機やら、空港やら、ホテルやら、レンタカーやら、20分のアドレナリンを味わったら、次の街に行くためにまたそれを繰り返す。ブロックが辛抱ならなかったのは、23時間40分の方なのさ。リング上での20分は愛していたはずだよ。

エンターテインメントに生きる人の、珍しくは無い…ありふれていてその分、典型的な挿話である。
野球選手も、歌手も、落語家も、小説家も。
「俺は自分の仕事の中だけで、いい仕事をやってきたい。スター扱いでキャーキャー言われるなんて苦痛でしかない」という人も必ずいるだろうし「街で誰にも声を掛けられない、サインをねだられないなんて苦痛で、屈辱的すぎる。もっと俺をちやほやしてくれよ!」という人も必ずいる。また同一人物でも日々、この両極をあっちにいったりこっちに行ったりしているのだろう。
ルー・テーズみたいな”ザ・プロレス”の人はもうこの旅から旅が完全に性に合っていて「スーツケースひとつで今日は東、明日は西。これがあるからプロレスは最高なんだ!俺のリングネームはジプシー・ルーにしたかった」と言っていた。
ルー・テーズニック・ボックウィンクルビル・ロビンソンの三人が「寅さん」映画を見たいと流智美氏にリクエスト、言葉も分からないのに寅さんの旅姿に共感した…という味わい深い一編が、別冊宝島に収録されている。
映画「レスラー」に絡んで、ここでも紹介されている 
http://d.hatena.ne.jp/RRD/20090616/1245172217

この曲を、昭和プロレスの集大成のひとつだったアントニオ猪木vs藤波辰巳の特番でエンディングにした人のセンスの良さよ。(もっとも自分は、この試合は特別名勝負だとは思わないけど)

毎日違う顔に出逢う
街から街へと
かみ締めてる間もないほどに
Oh、no、oh、no

喜びや夢ばかりじゃない
つらい思いさえ
一人きりじゃ出来ぬ事さ
ここにいるもの


そしてもうひとつの記事も抜粋。

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この3人が「寅さん」を見に行ったのは、前述のUWFインターでのロビンソンvsニックのエキシビションがあったとき…1992年5月8日の、翌日のことであった。
流智美氏は回想する。

試合後、テーズ、ニック、ロビンソンの3人と夕食をともにしたとき、ロビンソンが唐突に言った。
「ルーもニックも、帰国はあさってだろ?だったら、明日は私と映画にいかないか。どうしても見たい映画があるんだ…(略)もう初めてニッポンに着てから24年になるのに、いちども『フーテンノトラサン』を見たことがないんだ。いまじゃあ、アメリカでもたくさんのファンがいるくらいのポピュラーな映画なのに、何十回もニッポンに来た私が見ていないのは少しはずかしい…(略)」


(略)…日本語オンリーのスクリーンを眺めつつ、
3人とも意外なほど興味深そうだったのだ、という。
笑うべき場面では笑っていた、ともいう。

映画が終わった後…焼き肉屋でビールの大ジョッキを傾けながら、3人は口をそろえて「実に面白かった」と相好を崩した。

ここから、感想が結構長いので、3人の感想を箇条書きにする。

ルー・テーズ】(要約)
・トラサンは、実家に帰っても落ち着かず、1日でホカイドウ(北海道)に行っちゃうだろ?あれはまさにプロレスラーの習性なんだよ。自分の師匠のエド”ストラングラー”ルイスは故郷で試合があっても、自宅で奥さんのコーヒーを飲み終えるとすぐにニセの用事をでっち上げて出て行く。「落ち着かないんだよ。女房なんてクリスマスの時に一緒にいればいいんだ」。というか私も、地元で試合があっても自宅によらなかったもんな。
・だから俺たちもトラサンと同じ”ジプシー”なんだ(※ジプシーという呼び方は、発言者本人の意思を尊重しています)。私も本名で闘ったが、リングネームをつけるなら「ジプシー・ルー」だ。ジプシー・ジョーっていたけど、ありゃ最高の名前だな!!

  

ビル・ロビンソン】(要約) 
・トラサンが居候したアニマルドクター(三船敏郎)で、最初は無愛想だったドクターが後からトラサンを引き止めて、娘のことや自分の再婚を相談してたろ!!あれはまさに私だよ!!私は行く場所行く場所…イギリスのマーチン、日本のヨシハラ(国際プロレスの吉原代表)、インドのダラ・シン、AWAバーン・ガニア…どこでも引き止められた、そこで大活躍してトップを助けてあげたんだ。そして恩を着せることもなく次の旅へ…… うん、私はトラサンだな。

 
そして、ニックだけはちょっと違っている。
字幕がないから、逆に表情や場面で、会話を想像したというのだ。とくに面白かったのは、ホカイドウでのフェスティバル(縁日)での、寅さんと観客のやり取り場面で、やはり自分の人生になぞらえてこんな想像をしたという…

ニック・ボックウィンクル】(これは原文引用)
私はもちろん日本語が分かるわけじゃないんで、トラサンとお客がどういうやりとりをしていたかは知る由もないんだが、たぶん、こういうやりとりをしていたんじゃないか?
「お客さん、お客さん!ここにある品物は世界中のどこを探したって簡単に見つかるもんじゃないよ!買わないと一生損するよ!」
「ところであんた、威勢のいいタンカ切ってるけど、そんなに言葉が切れるなら、なにもそんなヤクザな商売してなくても、いくらでも他にまっとうな職業があるんじゃないの?なんでそんな服着て、炎天下でシンドイ思いをしているの?」
「お客さん、ご心配ありがとう!でもね、俺はあんた方みたいに毎日毎日背広着てネクタイ締めて、一日中椅子に座って電話のお相手しているような仕事は考えられねぇんだよ。俺たちの商売がどう見えるか知らねぇが、やってる者しかわからないような面白さがいっぱいあるのさ!」
どうだい?ざっとこんな感じの会話だったんじゃないのか?


ジョシュ・バーネットも念願の「プロレスラー」として新日本プロレスに参加したとき、「この仕事をしなかったら絶対に来ないような小さな町(格闘技試合はたいてい大都会の会場だ)を巡って、そこでファンと交流できる。こんな素敵なことってないよ!」(大意)とどこか…たぶんkamiproで語ってたのだ。
まったくジョシュのプロレス分析は的を綺麗に射抜いている。なお実践は(略)


そんなことで、サザン・オールスターズの「旅姿6人衆」はプロレスファンにとって、ちょっと特別な歌である,という話。

www.youtube.com

施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」電子版が50%還元(残り3日)~関連過去記事リンク集

えーと、ちょっとAmazonポイントとかの関連がよくわからん
本当に半額還元のところに飛んでいるのか、終了してないかは慎重に確認してね。
はてなの、Amazonとの連携がちょっと不十分なのよ!)


自分は紙版を持っている。だが、この機に買い直した。
これは、この時に表明した藩政改革を実行した、ということである。
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しかし、これは電子書籍を買った分だけ、その旧紙版を棄てるか売るかすべき、ということになるのだが、それをできない場合はどうすればいいのか。答えは出ていない。


ニコニコ静画」でも、だいぶ遅れて一話ずつ配信されている…と、埋め込みできないんだよななぜか
URLで
https://seiga.nicovideo.jp/watch/mg662548



==過去の関連紹介記事==

「読書好き…のふりをしたい子」vsSFファンの名勝負…そして「SFファンがいかに危険か」を描く名作「バーナード嬢曰く」(施川ユウキ

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「ニンジャ」や「パンをくわえて登校する女の子」と同じく「偏狭なSFファン」もどこかにいてほしいもの(そうか?)

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読書好き…のフリをしたがる、彼女が帰ってきた!「バーナード嬢曰く」2巻、毒や風刺も含んで堂々発売

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「ファン漫画」の歴史を年表化してたどってみる【創作系譜論】

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「図書館」「図書館員」「図書委員」「愛書家、蔵書家」イメージについて【創作系譜論】

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「ネタバレは法的にも賠償責任がある」って本当かねえ?だって「言論・表現の自由」があるでしょ?

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【完全版】「2016年マンガ10傑」を選定します。「特別功労賞」もあの作品に

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「関係性ショートコミック」に関して、あらためて一から考えるのでお付き合いのほどを。
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「バーナード嬢曰く」4巻発売。「1976年のアントニオ猪木」がネタになる中で「プロレスvsSF」の危険な接近遭遇!!

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「孤独や孤立を抱えたキャラ」が「ある種の”図々しい(無遠慮)”キャラ」に絡まれて、いい方向に変化する…という話が、最近多いような気がする

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「周りの人を『買収』するなら、こんなふうに」…イスラエル元大物諜報員のノウハウがヤバい(ハヤカワ文庫)

この前の「ルポ トランプ王国2」から、有能な新聞記者が、バーで取材相手を見つけるまでのノウハウを抜き出して紹介した記事は、当ブログの中でも有数のアクセスとブックマークをいただくことになりました。ほとんど、原著の力によるものなんだけどね(笑)。
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しかしそれでも、こういう話題に興味を持つ人が意外なほど多いんだな、と感心した…ので、せっかくだから(その部分だけの)類書を紹介したい。

元記事でも

「本質的に共通してるから当たり前なんだけど、ジャーナリストでなく凄腕のスパイ、諜報員もおそらく同じようなスキルを身につけてる。ついでに言うと遺憾ながら、凄腕のカルト勧誘員もこういうスキルを身につけてそうである(笑)」

と書いた…まあ、当たり前というか平凡な連想ですけどね



実は、こういう連想をしたのは具体的な例がある。

早川書房から昭和57年に文庫版が発売された、実在の諜報員が書いた「スパイのためのハンドブック」という本がある。


見る限り紙版しかないらしいが、ただ「新品」があるからいまも発行されているな!!それだけで超人気作品の証明だ。ただ、電子書籍も出すべきだよな……


著者はウォルフガング・ロッツ。
またの名を…『カイロに置かれた、テルアビブの眼』。

ja.wikipedia.org


名前に聞き覚えがあるなあという人は、
ひょっとしたらこちらもかのレジェンド作家の、単行本に載ったインタビュー記事を読んだのかもしれない(笑)



それじゃ逆に胡散臭いじゃないか、というもっともな疑念を抱かれるかもだが(笑)、そうではなく彼の実績は確かなものだ。
というのは最後の最後には彼は正体を暴かれて、敵国エジプトで(見世物的な意味もある)大々的な裁判を起こされ、終身刑に処されたからだ。
その後、第三次中東戦争イスラエルが得たエジプト人捕虜5000人と交換する形で釈放された。
ということで、多大な諜報活動に貢献した実績が保証され、しかし既に面や経歴は割れているからこれ以上諜報の現場に戻ることは不可能。そういう点で、或る種、使い勝手の良い「競馬を PRするための、引退後の競走馬」 的な扱いをされていたため、落合信彦および週刊プレイボーイの「取材」に、上手く対応できるちょうどいい素材だった…と思しい。


別に落合信彦と本当に親友でイスラエルから深夜に電話で、「 AAA」 の機密情報を教えてくれるという人ではないのだ(笑)


まあ、そんな実績のあるスパイだが、引退後の身過ぎ世過ぎのために、スパイ時代の回想録、 そしてこの「スパイのためのハンドブック」を書いた。


何も諜報員時代のリアルな体験談に加え、その諜報員時代に、機密情報を持つ多くの上流階級、高級軍人などをひきつけた軽妙なユーモアがいかんなく発揮された面白い読み物となっている。


ただ、「スパイのためのハンドブック」というだけあって、「じゃあ実際に〇〇ができるかやってみよう!」的な記述があり


・相手に気づかれず上手く尾行し、個人情報を収集するコツ

・連絡係とさりげなく接触し、情報を交換するコツ

・「偽の経歴」を造りそれを気づかれないようにするコツ

・相手に追及された時に嘘と真実を少しずつちりばめ、最低限のダメージでクリアするコツ



などが列挙されている。

ただ基本的に、法に触れるようなことはないわけだけれど、
このハンドブックでかなり具体的に書かれているように、誰か特定の人を疑念を掻き立てることなく尾行し、名前や経歴や趣味を調べる……というのは、かなりヤバいと言えばヤバイ話でありましょう。

しかし一方で、それを推理ゲームのように楽しむ、そんな層もいたりする…
news.tv-asahi.co.jp



そういう危うさもある本だが、
ここで本題。
この本には「どういう風にすれば、人は買収しやすいか」を論じる1章があり、そこでは、例として「ちょっといいホテルに5、6泊する間に、ホテルの従業員を買収する方法」について語っている。


もともと、彼の情報収集活動は、「結構な大金持ち、上流階級の社交好き」という偽経歴のもとに、カネや贅沢品をばらまいてエジプトの上流階級とコネを作り、そこから情報を引き出すというスタイルだから買収についてはお手のもの。

「賄賂の効かない官僚とか公務員にまだお目にかかったことはない」
「どんな男もその人なりの値段がある」
「私は面白半分に賄賂を使ったのではない」
「こういう話は任せてもらいたい。私は場数を踏んでいる」

…といった言葉が列挙され、ほとんど「わいろ職人の朝は早い」的な職人的自信を見せている。

そこで、「カイロに置かれたテルアビブの眼」ことウォルフガング。ロッツが「ホテルの従業員来週はこういう風にやる。君達もやってみよう」と語りかける手段は以下の通り。
これは「仮想演習」だという。



以下の仮想演習に

1 ホテルに五、六日の予定で宿泊する。ボーイはあなたの荷物を部屋に運び、あなたは彼にチップをたっぷりはずむ。やりすぎてはいけないが、彼が上客から期待する額の倍くらいをあたえ、親しくなりたい様子は見せるがなれなれしくはさせない。彼が退出してから、部屋係のメイドに電話し、ベッドを整えさせたり、その他のこまごました用事をさせる。ここで、また多めのチップを渡す。



2 しばらくして、バーに行き、一、二杯飲む。バーテンは喜んであなたと会話をするものだ。話は雑談程度にとどめおき、自身についてはあまり語らず、かなり金めぐりのいい実業家といった印象をあたえる。長居せず、深酒もしない。帰り際にバーテンにたっぷりチップをはずむ。



3 ホテル中に、あなたはチップを出し惜しみしない人であるという評判を確立した。
あなたは一級のサービスを受け、従業員は互いに競い合って、あなたにちょっとした 便宜をはかってくれる。あなたの部屋は他のどこよりも早く念入りに整頓され、受け付けの伝言は一番早く伝達され、バーでの飲み物はなみなみと注がれ、誰よりも優しくされる。これらはより多く、大きい報酬を期待して、いずれも自発的になされるものである。今までのところ、あなたは特別なことは何ひとつ頼まず、チップの返礼は求めなかった。
しかし、たっぷりチップははずみ続けるものの、ときおり従業員にそのホテルのこと、彼らの家庭、政治およびその類いの話をさせる。あなたは今や彼らの人気客であり、従業員の全員あるいはほぼ全員について自分の考えをまとめた。 一段階終了。



4 かなり他愛もない性質の特別な頼みごとをしはじめる。
・他の宿泊人についての情報。
・就業時間外にしてもらう特別な使い走り。
・他の宿泊人に来た電話および(あるいは)伝言の内容詳細。
・会いたい人への紹介 (バーテンを通じてしてもらうのが最上)。

頼みごとに応じてくれたら、かならず適当な高額チップで報いてやる。従業員は今 や自分たちが賄賂をもらって、職務織囲をこえたことをしていることを知っており 、 魚が水に慣れ親しんでいるように、それに慣れてしまう。ホテル従業員はそれに 適合している。第二段階終了。



5  あなたは今や、どの従業員が賄路にいちばん敏感で、誰が渡すのに最適の立場にいるかを知っている。第二段階で、すでに目標は達成され、求める情報は得られたかもしれない。それは結構であるが、ここにまた来る機会が少しでもあるなら、そのままで放棄しない、あなたに対する特別サービスを半永久的に続けてくれるよりどころになりえるのである。鼻薬をたっぷりかがされたバーテンや受け付け係は、やがて小切手が郵送されてくることを知っていれば、あなたが関心を抱くような情報を長距離電話で伝えてくることさえするものである。同じく、ボーイあるいは給仕も、あなたのいる いないにかかわらずいつでも、”微妙”な使い走りをしてくれよう。(誰かのお茶に砒素をもるというよな用事はだめだが、他のホテル客の部屋に盗聴器をつけるとい ったようなちょっとした頼みごとならよい)

この「比較的単純な演習」のあと、より具体的な、もっとリアルな「周囲の人を買収する方法」を述べていくのだが、基本的な形・テクニックは変わりがない、と著者は自信満々である。

ただここから先は具体的に移すことを、引用者もはばかる…


ほんの一部だけ抜き出すと、まず最初は「テニスのラケットを借りる」と言った、そもそも何の問題もない公然とした、やけどちょっとした個人的依頼をするのだという。


もちろんそれは傷ひとつつけずすぐに返却し、感謝感激しているところを盛大に示してお礼も渡す。

そういうことを繰り返して「次の段階」に入るのを待つ。

「…時いたらば、彼を直撃する。ただし、そーっと。きつすぎてはいけない。まだ初回なのである。……この段階では明らかに違法なものはまずい。ほんの少し”本道から外れた”くらいのところがよろしい…かくして彼は針にかかった……慌てずに間をとる。…今度は前より少し…」

人を買収するにはこういうふうにやる イスラエルの伝説スパイウォルフガング・ロッツ談(スパイのためのハンドブック)


このくだりは、基本的にユーモアを失わず楽しんで読めるこの本が一転して空恐ろしい「怖い本」に変わる場面でもある。

こんな風に一流の「賄賂職人」が、細心の注意を払ってあなたに接触した時、私に笑顔で話しかけてきた時、自分達は最初に、或いは途中で、そうでなければ最後に、彼らの欲望を見抜き、それを拒否することができるだろうか?


それを考える時、冷や汗が出る思いをしない方は、あるいは少ないのではないか。



……とそんなことを、凄腕新聞記者がバーで初対面の人間と親しくなり、インタビューに応じてもらうノウハウの記述を読んだ時に、双子の兄弟を思い浮かべるようにこの本のこの記述を思い出したのであります。


実はこの本は、このブログを始めた時から「面白い本なのでいつか紹介しよう」と思っていながら、ずっと本棚にたな晒しにしていた作品でした。

皆さんの「トランプ王国2」への反響をきっかけに、やっと「夏休み」?に宿題の一つを片付けることができました。
(了)

「酒場で見ず知らずの人と親しく話し、取材する方法」を書いた朝日新聞記者の記述が面白かった(「ルポ トランプ王国2」)

今なお、アメリカをひっくり返す力を持っているのか、Qアノンの暴走によって命脈を絶たれつつあるのか…ドナルド・トランプをめぐる勢力図はイマイチ外国からはわかりづらい。

まあそれが現在進行形であれ過去の話であれ、トランプ支持者の実態をルポした金成隆一・朝日新聞記者の
「ルポ トランプ王国」


「記者 ラストベルトに住む」


両方のルポとも大変面白く、貴重なジャーナリズムの記録となっている。
関連の紹介記事を何度か書いた。
togetter.com
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そしてトランプ王国は、岩波新書なのに何か俗っぽいタイトルの(笑)

「ルポ トランプ王国2」

があることは知っていた。

ニューヨークを飛び出し中西部に広がるラストベルトへ。再訪のロードトリップで見えてきたトランプ王国のその後を追う。都市と地方の中間に位置し揺れる「郊外」、さらには深南部(ディープサウス)に広がる熱心なキリスト教徒の多い「バイブル(聖書)ベルト」へ。4年半で1005人に取材した真のアメリカがここに。


ただ
「読めば面白いことは分かり切ってるから、急いで読むまでもない」

と言った変な意識が出てね、積ん読状態だった。


何の気なしに読み始めたらやっぱりおもしろく、そして考えさせられた。



で普通に最初から最後まで紹介したらすごい膨大になるから

金成記者は、どのように普通のアメリカ人と仲良くなって「あなたはトランプ支持者か?そうでないか?その理由は?」と聞けるようになるのか


・そうやって答えた人たちの 「アメリカ無名人語録」ともいうべき印象深いフレーズや、印象深い行動、生い立ちなど


を中心にメモしておきたい。(※と言いつつも…後述)


※「はてなブックマークで同時期に話題になってた記事」の記録なんて残らないだろうから
togetter.com
が一緒にホットエントリだった、とも記録しておきたい。繋がる話。


どのように、東洋人の記者が「普通のアメリカ人」に政治インタビューするのか?

初めてのバーへの入店は、何度やっても緊張する。
車外の気温は摂氏2°c。それでも入店時はコートを着ない。何物も持たない。
人口のほとんどが白人の町。しかも地元民しか入らないようなバーに、コートを着込んだ、見知らぬアジア人の男が一人で入店すれば 、みんなぎょっとする 。

こいつ誰だ、まさか銃を乱射するんじゃねえのか。やばいぞ_____。
そんな視線を一斉に浴びることになる。彼らの視点は私の手元と腰回りに集中する。これが銃社会アメリカの現実だ。相手の警戒心を解くには、できるだけ薄着にして腰回りを隠さない、手ぶら。これが一番だ。

入り口のドアを開けた。想像していた以上に小さな店だった。
「あら一人?」少し驚いた様子でバーテンダーの女性が最初に声をかけてくれた。助かった。存在に気づかれなかったり、無視されたりするのが一番辛い。
「はい、一人です。初めて来ました」「ニューヨークからオハイオに向けてロードトリップ中で、お腹が空いていて、できれば地元ビールも飲みたいです」
カウンターをほぼ埋めている客にも聞こえるような声で目的を告げた。「私は無害な来客ですよ」というメッセージを送るためだ。そしてカウンターに近いテーブル席に座った。
先ほどのバーテンダーがメニューを持ってきた。やり過ぎぐらいの笑顔で礼を伝え「あなたの一番のおすすめ、地元の生ビールをください」と注文した。
こう注文して喜ばないバーテンダーに出会ったことがない。
初めての店では、とにかく店の人と打ち解けることを最優先にしている。
大抵は「 任せなさい」といった表情でビールを持ってきてくれる。目の前に「Breaker」という銘柄が運ばれてきた。(略)うまそうに飲んだ。最初の10分ぐらいは、とにかく必死に「無害ですよ」メッセージを送り続けた。


一杯目を飲みながら、頭の中で取材相手のターゲットリストを作った。この日の最上位は、カウンター席で最も大きな声を出して楽しんでいた女性だ。彼女と仲良くなれれば、他の人ともうまくいくのではないか、そんな気がした。

店内の壁に地元誌の切り抜きがあった。バーの経営者の紹介記事だ。立ち上がって読んでいると背後で陽気な声がした。「なー--に読んでんのよ!」

振り向くと、 さっきまで友人らと大声で話していた彼女だった。「私はヘザーよ」。どうやら今夜はついているようだ。ターゲットが向こうから声をかけてきてくれた。


私は丁寧に自己紹介した。

日本からやってきた記者です。今はニューヨークに住んでいますが、運転してここまでやってきました…地方の人々の声を聞くことが旅の目的です__。

記者証も二つ示し、名刺も渡した。店の客の半分ぐらい、10人ぐらいはヘザーと私のやり取りを眺めている。 この頃には私への警戒心はだいぶ溶けていた気がする。名称眺めていたヘザーがまた大声を出した。

「ちょっとみんな聞いて!私、!ニューヨークタイムズよ!!ニューヨーク!」

勘違いされているので慌てて訂正する。「朝日新聞という日本の新聞の記者です。ニューヨークタイムズではありません」朝日新聞ニューヨーク支局はニューヨークタイムズの本社ビルに間借りしており、名刺の住所欄に New York Times の文字が入るためしょっちゅう勘違いされる。
ヘザーは私の訂正 など全く聞いていない。きっとそんなことはどうでも良いのだ。
ヘザーはしばらく騒いだあと「何であれ、インタビューなんて初めてよ。何が聞きたいの?」

ルポ トランプ王国2 取材対象者と酒場で仲良くなるまで


これで一丁上がり。

彼女をきっかけにバーの人たちが次から次へと話しかけられ酒を奢られ、そこでトランプに関する、愛憎様々な意見をそれぞれのライフストーリーとともに聞く…という展開になる。

そして最初はそれを紹介するはずだったのだが、
上の文章を写すだけで結構くたびれたし、お腹いっぱいなので今回はこれでいいや(笑)




何しろこの直後も、同店では
「ジャパンから来たのか!ジャパニーズの男よ、手の甲に塩を振れ!」
「さあ一緒に飲むぞ」
「いいか、手の甲の塩を舐めてからウォッカは一気飲みだ。その後にレモンをかじるんだぞ。何度も言うがレモンを忘れるなよ」
という、「アルハラ」概念はどこへ行ったんだ的な歓迎をされる。


他のお店では掲示板にオススメとして紹介されていた「ドイツ風ザワークラウトポーランド風ソーセージ定食」を注文しただけで、近くの白人男性が振り向いて「良い選択だ!」と大声を上げつつ「だがここのザワークラウトは酸っぱさが足りないんだ」などと言い出しそこから話が弾んでいき、「82歳の俺はトランプ支持で、オバマ支持の息子夫婦とは折り合いが悪くなった」何て告白を聞く。


オハイオ州のバーでは、日本製クッキーをカウンター客に配って歩いたところ
「これはあっちに座ってるベティのおごりよ」「今度はあちらの男性の奢りよ」と『1ドルも使わせてくれないバー』となった…

…なんて話が続くのだけど、そこまで紹介したらこの本を直接読んでもらったほうが早いし(笑)




んで、
改めてこのやり取りを映して思ったのだけど、著者の記者としての優秀さも,もちろんある。
多分、個人的な資質も
人懐こくて
陽キャ
ウェーイ
…なあれなんじゃなかろうか(偏見)。


だけどそうだとしても、いやだからこそ、陰キャの「 オタクくんさぁ…」な人間でも応用できるスキルがあるわけです。

・地元民が集まるような小さな飲み屋に行く
・初めは笑顔で、大きな声で「自分がどこの誰か」を話して警戒心を解く。
・安心感を与えたところで「この人と話して仲良くなれば他の人とも話が広がりそう」な陽キャをターゲットに定める。
・相手が声をかけやすいような行動をとる。
・そこから丁寧に自己紹介し、先方に語ってもらえるように話を振る

…これ、本質的に共通してるから当たり前なんだけど、ジャーナリストでなく凄腕のスパイ、諜報員もおそらく同じようなスキルを身につけてる。ついでに言うと遺憾ながら、凄腕のカルト勧誘員もこういうスキルを身につけてそうである(笑)
※ここについて、類書を紹介してみました。
m-dojo.hatenadiary.com


ただまあ最後の人達は警戒するとして、我々そういう冒険や陰謀に縁のない人間としては「出張先、一人旅の旅先で、地元の人たちと話して盛り上がってみたい」というような人間は、 これは試してみていいのではないでしょうか。


一人旅と言うけど、本当に一人で旅して、旅先の人々と全く交流がないまま帰ってきた、というのもそれはそれで味気ないものだ。

特に海外で、せっかく来たのだからその土地の人々と、この種の政治思想と言うか、「おたくの国の大統領は好きですか?」「選挙ではどこに投票してますか?」くらいのことを(当然語学力がいるけど)バーで話し込めたらそれは楽しいし、司馬遼太郎になった気にもなれそうだ(笑)

それに思ったより上手くいかなくても、どうせそれは旅先での失敗だ、あまり引きずらなくていい……


ということで、本題も大変面白かった「ルポ トランプ王国」だが、その本題はいつかかくとして今回は「朝日新聞ルポ記者が語る 旅先の飲み屋でそこの常連客と仲良くなって話を聞く方法」というのを抜き出してみました(笑)

闘病中のアントニオ猪木が出演「ライブ・エール2022」NHKプラスで無料配信中…と思ったら前半のみ!(不測の事故とのこと)


うっかりここでは地上波放送の告知をし忘れたけど、だから逆にNHKプラスでの無料配信を伝えられるか。
こちらでどうぞ。

ライブ・エール 宇多田MISIA福山あいみょんJO1氷川猪木!司会は内村光良
8/6(土) 午後6:05-午後6:45
配信期限 :8/13(土) 午後6:45 まで

共有

公式サイト
内村光良作詞、森山直太朗作曲のオリジナルソング初披露!宇多田ヒカルが4年ぶりにNHKでパフォーマンス!福山雅治はヒット曲「虹」を!MISIA×加藤登紀子さだまさしが平和への祈りを歌う。アントニオ猪木・内村の対談&炎のファイターSPステージ!出演:あいみょん大黒摩季・JO1・純烈&ダチョウ・セカオワDAPUMP・NiziU・氷川きよし平原綾香細川たかし三浦大知緑黄色社会桑子真帆アナ他


https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2022080623256


しかし!!!
猪木の出てくるところが配信されてない!!どういうこと?
こういうことだった。



再放送、配信など今後の情報を待て。



「『義経=成吉思汗説』を何度も聞かされ内心うんざり」「井上靖『蒼き狼』は性格がモンゴル人らしくない」…”日本のモンゴル像”をめぐるアレやソレ(宮脇淳子)

<蒙古襲来>──海を渡ってやって来たのは本当にモンゴル人だったのか!?

一度目の文永の役(1274年)、ニ度目の弘安の役(1281年)で、日本に「蒙古」から大船団で襲来したとされる人々……
彼らを〝草原で遊牧をする民族"という、現代のわれわれがイメージする「モンゴル人」と同一と考えるのは間違いである。
史書『元史』『高麗史』には、当時の船員たちの名が記されている。そのほとんどは高麗人である。つまり元王朝=モンゴル人ではないのである。

元寇を『蒙古襲来』なのだから〝モンゴル人が来た"と思い込んでいるのと、今の中国、ロシア、朝鮮の実像を正確に把握できないのとは根が同じような気がしています」(著者)

では、元朝はなぜ高麗人をよこしたのか。
元寇」をフビライ、ひいては世界史的な目線で、元と高麗を舞台として読み解くと、強国モンゴルに取り入り、「元」の日本遠征に自ら名乗りをあげた当時の高麗と現代の朝鮮半島の姿は、いろいろな面でオーバーラップしてくる。
一方、日本は二度の「元寇」から何を学んだのか。対外的に反省しすぎると世界では〝弱い"とみなされることを忘れていないだろうか。
本書では、蒙古、高麗、日本、それぞれにとっての「蒙古襲来」の意義と日本人の誤解を、当時の大陸をとりまく真実の歴史から検証する。
中央アジア遊牧民を中心に、中国からロシアまで幅広く歴史研究をしてきた著者の真骨頂!<本書の構成><; br> 第一章 日本人のモンゴル観
第二章 モンゴルとは
第三章 高麗とは
第四章 蒙古襲来前夜
第五章 大陸から見た元寇
終章 その後

の中から。この本は話の本題よりは、根幹じゃないけど枝葉の話や体験談が面白かった。いくつかシェアしたい情報があったんだけど、まずこちら。

駐日モンゴル大使館の人たちがこぼしていました。会う日本人会う日本人が、必ずといっていいくらいに話題にするのが「義経=成吉思汗説」だと。モンゴル人のほうはしかたがないので、「義経=成吉思汗説」をいろいろ調べて、適当に話を合わせるらしいのですが、ほとほと困るというのです。モンゴルの英雄チンギス・ハーンが、史実でもなんでもないのに、源義経という日本人だと言われたのでは、モンゴル人はイヤな思いをするだけです。
第一章にも出した、マンガ『ハーン』が「義経=成吉思汗説」を採用しているのも、日本の中で、モンゴルの話をいかに日本人に引きつけて、身近に感じさせて興味を持たせるかという手段としては評価します。読者はそこに惹かれて買って読んでいるわけですから。
でも、当のモンゴル人相手に「義経=成吉思汗説」を話すのはやめたほうがいいと私は思っています。

日本人がモンゴル人相手に何も話題がなく、定番の三題噺さながらに出てくる話は「義経=成吉思汗説」、相撲、モンゴロイドなのだとか。

モンゴル大使館、義経=成吉思汗説にうんざり 「世界史の中の蒙古襲来」


なんか、すいませんね・・・・・


もうひとつ。
日本人のチンギスカン像に大きな影響を与え続けているのが、井上靖の古典「蒼き狼」だと思われる。

チンギスカン。
くり返される戦。惨忍冷徹な闘将は、何故にすべてを壊滅し尽くしたのか。

上天より命(みこと)ありて生まれたる蒼き狼ありき。その妻なる惨白(なまじろ)き牝鹿(めじか)ありき。大いなる湖を渡りて来ぬ。オノン河の源なるブルカン嶽に営盤(いえい)して生まれたるバタチカンありき。――最初の祖先バタチカン生誕の伝承

風の如く蹂躙せよ。嵐の如く略奪せよ。
遊牧民の一部族の首長の子として生れた鉄木真=成吉思汗(テムジン=チンギスカン)は、他民族と激しい闘争をくり返しながら、やがて全蒙古を統一し、ヨーロッパにまで及ぶ遠征を企てる。六十五歳で没するまで、ひたすら敵を求め、侵略と掠奪を続けた彼のあくなき征服欲はどこから来るのか?
――アジアの生んだ一代の英雄が史上空前の大帝国を築き上げるまでの波瀾に満ちた生涯を描く雄編。用語、史実等の詳細な注釈を付す。

著者の言葉
私が成吉思汗について一番書きたいと思ったことは、成吉思汗のあの底知れぬ程大きい征服欲が一体どこから来たかという秘密である。(略)
大国金を制圧しただけで収まらず、西夏、回鶻(ウイグル)と兵を進め、ついに回教国圏内にはいり、カスピ海沿岸から、ロシアにまで軍を派したのである。それも全く彼一人の意志から出ていることである。一人の人間が性格として持って生れて来た支配欲といったようなものでは片づきそうもない問題である。(「『蒼き狼』の周囲」)

本書「解説」より
作者の心をこめて描いているのは、成吉思汗の生成の秘密である。彼をしてこういう運命に赴かしめた根本のものは何か。言わばモンゴル族の夢のみなもとを、彼の生のみなもとに結合させつつ、苦難にみちた生涯を辿らせているわけで、ここには外的事実だけでなく、成吉思汗の内心の苦悩をもつきとめようとする努力がある。(略)
狼の裔(すえ)として、自分こそ「狼になる」――これがモンゴルの男性の情熱の根源であった。
――亀井勝一郎(評論家)

井上靖(1907-1991)
旭川市生れ。京都大学文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって多くの小説を手掛け、1949(昭和24)年「闘牛」で芥川賞を受賞。1951年に退社して以降は、次々と名作を産み出す。「天平の甍」での芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」での日本文学大賞(1969年)、「孔子」での野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章した。

まず最初に余談を……これはかなり有名になってるトリビアな気がするが。

蒼き狼」と言うが正確にはモンゴル語の言語ボルテ・チノの色を示すボルテは「斑点のある」とでも訳すべきものだった。漢語をへて日本語に訳されるとその意味が失われてしまったが、何しろ「蒼き狼」は言葉としてかっこいいので好みも広まってしまった。「白き牝鹿」能代も本当は黄色い毛を表すと言う。

本題。
ところで井上靖の小説「蒼き狼」は、モンゴル人ネイティブが読むと、そもそもチンギスハンの人物造形に大いに問題があるという。

……それは自分の出生にまつわる悩みです。

テムジンの父とされるイェスゲイはテムジンの産みの母であるホエルンを他の部族の男から略奪し結婚しました。ホエルンがテムジンを産んだのはその後です。テムジンは自分が本当に父イエスゲイの子供だろうかと悩みます。

テムジンの一人語りが続く場面で、弟達は間違いなくイェスゲイの息子だというのに自分一人だけは違うかもしれない、といった悩みが吐露されます。
テムジンのそうした悩みは日本の小説には馴染み深い題材です…源氏物語にも描かれているぐらいですから。

しかしモンゴル人にとってそれは全くと言って良いほど理解できない心情です。モンゴル人曰く、モンゴルの男は出自に関して悩んだりはしない。誰の子供でも皆同じだと。
日本人が 作った映画を観たモンゴル人の中には、世界制覇をした男が、そのように自分の出自に関してウジウジと悩むような女々しい性格であるわけがない、と怒った人もいます。

井上靖の描く「蒼き狼」のチンギスハンはモンゴル人とは思えないどころか、実はとても日本人的な人物なのです。
井上靖が作ったなんだかモンゴル人でなさそうな英雄像が一人歩きして、後世の作品でもそれが描かれイメージとして再生産されているのです。


…なんかすいませんね2。

いやでも、井上に成り代わって言い訳するが、言葉や服装や歴史はいろいろ調べがつくけど、別の時代の別の国、別の民族の「メンタリティ」をトレースするのって難しいもんでね・・・・・・。
ついついこの「〇〇に関してどうリアクションするか?」にお国柄が出ちゃう、舞台設定のその国っぽくなくなっちゃう、ってのはあるよね。

ハリウッドならぬニャリウッドとはいえ、そこで自分の理想の映画を撮りたいと思った監督さんが、プロデューサーさんに「土下座」して頼む、なんてこともあるのだし。



今現在でいえばヴィンランド・サガのトルフィンが、ちょっと価値観や心情が近代化チートしすぎて、そこに危うさを感じるところもある…だけどバイキングのメンタリティを再現するのはほぼ不可能だし、ホントに再現出来たら読者が共感できずにヴィンランドにいくまでに打ち切られただろうしで(笑)、あれはあれで借景的近代人であることに開き直り、そのまま突っ走ることで見えてくる風景があると思う。


おっと、まさに井上靖のそういうモンゴル小説、中国小説は「登場人物の心理などがあまりにも現代日本人風の”借景小説”だ」と批判を浴びたのだよな、大岡昇平らから。
ちょっと因果めぐりし話。


そもそも井上靖が書いた時代はまだ中国も情報が開放されておらず、資料も研究も不十分だった

イノウエ=サンが書いた小説も

「ドーモ、ジャムカ=サン!テムジン デス」
とか
「ホラズム殺すべし、慈悲はない」
ぐらいの解像度だったかもしれないではないか。……。誰だよ、そういうのがむしろ読みたい、とかいうやつは



もう幾つか、面白いトピックがあったのだけど、まずこのふたつの「どーもモンゴルさん、すいませんっした!!」な話題を紹介。

「吉羽美華 RIZIN」の検索結果が日々剣呑になっていく


なんの

こと

やら。



で、まあタイトルの話だけど、
これはGoogle検索も、SNS内検索もしかり。
こちらは画像検索結果

吉羽美華 RIZIN 検索結果


以上。

追記 その後悪さがめくれちまったっ(ゴマシオ風)

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