INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

8月8日は「猪木vs藤波・横浜決戦」のあった日。特番EDがサザンの「旅姿六人衆」であったことも伝説。

number.bunshun.jp
 新日本において、毎年同じ日付と会場で行われる大会といえば、1.4東京ドーム「レッスルキングダム」や、3.6大田区体育館の「旗揚げ記念日」、5.3福岡国際センターの「レスリングどんたく」などがあるが、そういった特別なイベント名も付いていない、G1公式戦の1大会でしかない「8.8横浜文体」が恒例となっているのには意味がある。

 その原点は、'88年8月8日横浜文化体育館藤波辰巳vs.アントニオ猪木IWGPヘビー級選手権。この伝説的な一戦が行われた「8.8横浜文体」という呼称には、昭和のプロレスファンにとって特別な響きがある。いわば「ストロングスタイル記念日」なのだ。

 この藤波vs.猪木戦が行われた1988年は、新日本にとってどん底の時期……


プロレスを「ミスター高橋本以後」の文脈で見ると、「結局アントニオ猪木は、「劇団の座長」の役を、藤波に渡すことを最後まで拒んだ」とも解釈できるが、それはおいておく。
自分はそもそも、藤波の試合をどーにも面白いと思わなかったので、これもワンオブゼムだった、当時は。

ただ、そのあと、語り継がれたこのことのほうをよく知っている。


これへのレスポンス


そう、当時はこういうOP映像、ED映像にも作者があり、選曲一つとってもそのイマジネーションやアイデアが映像に反映されている、なんてこと、ちょと考えればわかる筈だが意識したことなんてなかった。

それを意識したのはPRIDEで「佐藤大輔」が名前を知られてからだ。


実際、ここでサザンの「旅姿六人衆」を選んだ人物、もちろん関係者の証言を辿ればわかるのだろうけど、今のところは不明ということにしておく。

毎日違う顔に出逢う
街から街へと
かみ締めてる間もないほどに
Oh、no、oh、no

喜びや夢ばかりじゃない
つらい思いさえ
一人きりじゃ出来ぬ事さ
ここにいるもの

【メモ】このことがKAMINOGE70号で語られているのだという。



プロレスラー本人は予想以上に、この「旅から旅、興行をしながら各地を渡り歩く」ことにアイデンティティを感じている。


m-dojo.hatenadiary.com
この2011年の記事を、そのまま再掲載しよう。


もうひとつ、同じリンクの
http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-1172.html
から、大半になるが、名言の資料的保存として御用者いただきたい

Q しかしブロックは、若くしてプロレスを去ることを決めた人ですが。


トリプルH まあ、揉めたわけではないしね。ブロックは田舎者なんだよ。悪い意味じゃないぞ。農場にいるのが好きで、有名になんかなりたくなかったんだ。煩わされるのが嫌いなんだ。WWEを辞める前には、プロペラ機を買って、パイロットを雇ったら、二度と空港に行かなくてもすむかなあ、なんて話していた。文字通り街から街へと飛べば、誰にも会わずに済むし、ただ会場に行ってプロレスをすればよくなる。それこそが、僕らが生活のためにやっている唯一のことだからね。
 
毎晩20分間リングに立つ。それが1日のハイライトなんだ。年に200日も遠征していても、おいしいのは毎晩20分間だけ。それ以外の時間は、そのためにケツを痛める時間なんだ。飛行機やら、空港やら、ホテルやら、レンタカーやら、20分のアドレナリンを味わったら、次の街に行くためにまたそれを繰り返す。ブロックが辛抱ならなかったのは、23時間40分の方なのさ。リング上での20分は愛していたはずだよ。

エンターテインメントに生きる人の、珍しくは無い…ありふれていてその分、典型的な挿話である。
野球選手も、歌手も、落語家も、小説家も。
「俺は自分の仕事の中だけで、いい仕事をやってきたい。スター扱いでキャーキャー言われるなんて苦痛でしかない」という人も必ずいるだろうし「街で誰にも声を掛けられない、サインをねだられないなんて苦痛で、屈辱的すぎる。もっと俺をちやほやしてくれよ!」という人も必ずいる。また同一人物でも日々、この両極をあっちにいったりこっちに行ったりしているのだろう。
ルー・テーズみたいな”ザ・プロレス”の人はもうこの旅から旅が完全に性に合っていて「スーツケースひとつで今日は東、明日は西。これがあるからプロレスは最高なんだ!俺のリングネームはジプシー・ルーにしたかった」と言っていた。
ルー・テーズニック・ボックウィンクルビル・ロビンソンの三人が「寅さん」映画を見たいと流智美氏にリクエスト、言葉も分からないのに寅さんの旅姿に共感した…という味わい深い一編が、別冊宝島に収録されている。
映画「レスラー」に絡んで、ここでも紹介されている 
http://d.hatena.ne.jp/RRD/20090616/1245172217

この曲を、昭和プロレスの集大成のひとつだったアントニオ猪木vs藤波辰巳の特番でエンディングにした人のセンスの良さよ。(もっとも自分は、この試合は特別名勝負だとは思わないけど)


そしてもうひとつの記事も抜粋。

m-dojo.hatenadiary.com

この3人が「寅さん」を見に行ったのは、前述のUWFインターでのロビンソンvsニックのエキシビションがあったとき…1992年5月8日の、翌日のことであった。
流智美氏は回想する。

試合後、テーズ、ニック、ロビンソンの3人と夕食をともにしたとき、ロビンソンが唐突に言った。
「ルーもニックも、帰国はあさってだろ?だったら、明日は私と映画にいかないか。どうしても見たい映画があるんだ…(略)もう初めてニッポンに着てから24年になるのに、いちども『フーテンノトラサン』を見たことがないんだ。いまじゃあ、アメリカでもたくさんのファンがいるくらいのポピュラーな映画なのに、何十回もニッポンに来た私が見ていないのは少しはずかしい…(略)」


(略)…日本語オンリーのスクリーンを眺めつつ、
3人とも意外なほど興味深そうだったのだ、という。
笑うべき場面では笑っていた、ともいう。

映画が終わった後…焼き肉屋でビールの大ジョッキを傾けながら、3人は口をそろえて「実に面白かった」と相好を崩した。

ここから、感想が結構長いので、3人の感想を箇条書きにする。

ルー・テーズ】(要約)
・トラサンは、実家に帰っても落ち着かず、1日でホカイドウ(北海道)に行っちゃうだろ?あれはまさにプロレスラーの習性なんだよ。自分の師匠のエド”ストラングラー”ルイスは故郷で試合があっても、自宅で奥さんのコーヒーを飲み終えるとすぐにニセの用事をでっち上げて出て行く。「落ち着かないんだよ。女房なんてクリスマスの時に一緒にいればいいんだ」。というか私も、地元で試合があっても自宅によらなかったもんな。
・だから俺たちもトラサンと同じ”ジプシー”なんだ(※ジプシーという呼び方は、発言者本人の意思を尊重しています)。私も本名で闘ったが、リングネームをつけるなら「ジプシー・ルー」だ。ジプシー・ジョーっていたけど、ありゃ最高の名前だな!!

  

ビル・ロビンソン】(要約) 
・トラサンが居候したアニマルドクター(三船敏郎)で、最初は無愛想だったドクターが後からトラサンを引き止めて、娘のことや自分の再婚を相談してたろ!!あれはまさに私だよ!!私は行く場所行く場所…イギリスのマーチン、日本のヨシハラ(国際プロレスの吉原代表)、インドのダラ・シン、AWAバーン・ガニア…どこでも引き止められた、そこで大活躍してトップを助けてあげたんだ。そして恩を着せることもなく次の旅へ…… うん、私はトラサンだな。

 
そして、ニックだけはちょっと違っている。
字幕がないから、逆に表情や場面で、会話を想像したというのだ。とくに面白かったのは、ホカイドウでのフェスティバル(縁日)での、寅さんと観客のやり取り場面で、やはり自分の人生になぞらえてこんな想像をしたという…

ニック・ボックウィンクル】(これは原文引用)
私はもちろん日本語が分かるわけじゃないんで、トラサンとお客がどういうやりとりをしていたかは知る由もないんだが、たぶん、こういうやりとりをしていたんじゃないか?
「お客さん、お客さん!ここにある品物は世界中のどこを探したって簡単に見つかるもんじゃないよ!買わないと一生損するよ!」
「ところであんた、威勢のいいタンカ切ってるけど、そんなに言葉が切れるなら、なにもそんなヤクザな商売してなくても、いくらでも他にまっとうな職業があるんじゃないの?なんでそんな服着て、炎天下でシンドイ思いをしているの?」
「お客さん、ご心配ありがとう!でもね、俺はあんた方みたいに毎日毎日背広着てネクタイ締めて、一日中椅子に座って電話のお相手しているような仕事は考えられねぇんだよ。俺たちの商売がどう見えるか知らねぇが、やってる者しかわからないような面白さがいっぱいあるのさ!」
どうだい?ざっとこんな感じの会話だったんじゃないのか?


ジョシュ・バーネットも念願の「プロレスラー」として新日本プロレスに参加したとき、「この仕事をしなかったら絶対に来ないような小さな町(格闘技試合はたいてい大都会の会場だ)を巡って、そこでファンと交流できる。こんな素敵なことってないよ!」(大意)とどこか…たぶんkamiproで語ってたのだ。
まったくジョシュのプロレス分析は的を綺麗に射抜いている。なお実践は(略)


そんなことで、サザン・オールスターズの「旅姿6人衆」はプロレスファンにとって、ちょっと特別な歌である,という話。

www.youtube.com