ブクマも含め、話題になった。
主要駅の安全対策としてJR東日本が7月から、顔認識技術を用いて刑務所からの出所者、仮出所者の一部を駅構内で検知する仕組みを導入していたことがわかった。JR東の施設などで重大事件を起こした人を想定。国の個人情報保護委員会と相談して判断したとしていたが、同社は21日、「社会的なコンセンサスがまだ得られていない」として取りやめた。
同社によると、検知対象として、指名手配中の容疑者や駅で不審な行動をとった人に加え、乗客らが狙われたテロ事件などで服役した出所者や仮出所者を想定していた。痴漢や窃盗などは対象外という
当ブログ、このテーマ(広く言うと「撮影」と監視と人権について)もずっと追ってきた自負があります。どれぐらいずっとかというと、グーグルが「ストリートビュー」を導入した時からですから(笑)。というか、世代によっては「物心ついた時からストリートビューはあって当たり前だった」人もいるんでしょうね…。ま、過去記事紹介は記事の後半で。
自分は、今後どうなっていくか、を小説仕立て?で予想してみようと思います。
近未来小説「顔認証を行う企業」
「皆さまの安心と 笑顔のために。DHG社の社会貢献ーーー」
ある日のインターネットに、「DHG」社の公告が大規模に出稿・掲載された。DHG社は、化粧品や健康食品を販売し急成長したが、立志伝中の人物であるワンマンオーナー社長が、精神的な正常ぶりをすら疑うような奇矯な差別感情と陰謀論を語ることで、社会に大きな反発を受けていたいわくつきの企業である。ただ、独特の商品に代替が利かないとか、逆にその陰謀論が一部の「Dアノン」と揶揄される信奉者を引き付けるなどして、大企業としての地位は維持していた。その広告は、このようにうたっていた。
「わが社は、治安と防犯の強化のため、店内防犯カメラ、および屋外を撮影する防犯カメラと、自社開発の最新顔認証システムを連動させ、ネットワークで一元管理をし始めました。これにより、不審人物や犯罪につながるおそれのある人物を発見し、いち早く情報を共有するようになりました。将来的には、検索システムを一般に開放し、皆さんが自由に検索できるようにすることを目指します・・・・・・・・・」DHGは、日本に数百の店舗を構えているほか、自前の建物から、面した通りの歩行者を撮影するカメラを供えている。その多くは、大企業ゆえ自然と、まちのメインストリートを歩く人を捉えていた。1日で何千人にもなろうかという大雑踏だが・・・・・・
そして、広告は挑発するかのように、こう記されていた。
「近年、逮捕が報じられた〇〇事件のXXXX容疑者は、弊社の顔認識システムで発見し、当局に通報し逮捕につながったことを報告させていただきます。運用を行った3カ月で、他に63人の容疑者逮捕につながりました」
ーーーこれが報じられた時、世の中は騒然となった。ただ、その多くはたしかに批判、非難の声だったが、それにはやや及ばぬものの、意外なほどの多さで「XX容疑者を逮捕したDHGたん、まさに神」「安心できるからDHGのお店にいくことにしました」という、賞賛の声もあったことである……(了)
今回の論点について
過去記事読んだことのある人は「またかよ」話かもだが、繰り返します
・『撮影』という行為はそもそも、近代の法律の基礎が固まったあとの新概念である。そして、他者危害の原則からいって、何も触れない、壊さない「撮影」は、ほぼ「なにもしてない」というのと同じ扱いになってしまう。その一方で、実際上は一種のパワー、暴力、権力である…だから、なんとか整備したつもりでも時々バグが発生する。
・一種の「超能力」「魔法」なのである。都会の大雑踏から、駅の構内から、一人の人物を発見するなんて。「十分に発達した科学は魔法と見分けがつかない」のまさに実践、「魔法が実現した社会」なのだ。(だから自分は興味あるんだけどね)
・それは…「この人ごみの中だ、誰にも俺のことはわかるまい」という…「都市の空気は自由にする」と言われた時代から1000年ぐらい続いた「社会の前提」をぶち壊すことにつながるのだ。いい面でも悪い面でも。
・これらの監視技術、(民主)国家は歯止めが比較的かけやすい…といっていいかわからんが「攻め筋」は分かる。企業の場合…そもそもJRだって今回「ほんのちょっと退いた」だけで、基本的にはまだやる気満々ですよ。これについては法哲学者の大屋雄裕氏が、監視問題での必読書「自由か、さもなくば幸福か?」でこう書いている。
第一に、国家は確かに全体からすれば非常に大きな実力を独占しているが、チェック・アンド・バランスが確保されている。立法・司法・行政の三権が互いを監視し、抑制しあうことで国家全体が暴走する危険を防いでいるのだが、これに対してたとえば企業では経営陣の意思が統一され、全体として行動できることが重視されるだろう。
第二に、国家のなし得る行為に対しては憲法という枠がはめられているし、実際の手続にも、たとえば行政手続法のように多くの規制が加えられ、国民に対する透明性や答責(アカウンタビリティ)の確保が求められている。これに対して、企業が責任を負っているのは主にその株主に対してであり、たとえその行動その行動の影響を強く受けるとしても、一般の消費者や頭客に対する情報提供は限定的なものにととまるし、手続面での規制も乏しい。
第三に、たとえば憲法一四条一項目が「すべて国民は、法の下に平等であつて人種、信条、人は社会的関係において、差別されない」と定めているように、国家にはその成員をすべて平等に・無差別に扱うことが求められる。
これに対して企業が「お得意さま」を優遇するのはごく一般的な慣習だろう。もちろん経営効率という観点からは、利用頻度の高くない・あまり金を持っていない顧客よりも「お得意さま」へのサービスに力を注いだほうが有益に違いない
同書より
…全体的に言えば、その暴走を警戒して国家にはさまざまな制約が加えられているのに対し、中間団体にはそのような制約が乏しく、だからこそサービスの提供は効率的であるのかもしれない。だが、そうであるとして、我々の生活や人権が、我々を平等に扱わなくてもいい主体に自由に制約されることを、我々は望むのかどうか…
・まだ、上場企業レベルの話だから、抗議なり報道なりが「利く」けど、この技術が、上の小説のDHG社のような奇矯なオーナーなら…いやそれ以上に「そもそもこの技術がどんどん低コスト・大量生産となり、一自営業者や一個人でも可能になったら」??
・あなたは、「ご自宅のインターホンを鳴らした人物が、前科のある元犯罪者・強引な悪質訪問販売でクレームが多い人物かどうか一瞬でチェックします!」という機能がついたインターホンカメラが発売されたら、使いたいですか?絶対に使わないですか?
・トロンの生みの親、板村健氏が「顔認識を全国システムで活用すれば、『徘徊高齢者の行方不明』の多くが解決する」と毎日新聞で2014年に提言したりしていた。これに賛成?反対??
坂村健の目:「ミエコシステム」 毎日新聞 2014年05月22日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140522ddm013070037000c.html
認知症やその疑いがあって行方不明となる人が年間およそ1万人に上っているというテレビの特集番組を見た。高齢化に従い確実に増加する認知症の方々の−−いわゆる徘徊(はいかい)問題について、社会としての体制が未整備だという。特に認知症による行方不明者を捜すシステムに問題があるという。
(略)
今一番有力なのは、顔認識システムだろう。…(アメリカでは)行方不明者の顔写真を登録すれば、即座にどこで見かけたかを検索するシステムも構築されている。(略)…問題はマッチングのシステム整備だけだ。
・ひとびとが「こっそり」行くとこ、やっていることを、顔認識で確認する世界ももうすぐ。「あのイベントのコスプレさん、どこの誰?顔認識で探そう!SNS上の600万人と比較検証」サイトとか「ファンシーショップの前にアダルト店出店なんてまじ許せない!うちの店舗前を、あのお店のお客も絶対通るから、監視カメラに『たまたま』映ったものを顔認識で…」「あの新宿●丁目に、何度も出入りしていた有名人は??設置カメラで検証」、アダルトビデオ出演女優の写真が、どこのだれに似てるかを写真で検索するシステムは実際に生まれ、そして…最後はひっこめたんだっけ?
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なお、このテーマを小説にした人がいるそうだ。
“半ば騙されるようにアダルトビデオに出演した。卒業後は銀行に勤務していたが、高校時代の同級生から「おまえ、AVに出てないか」とのメールが(略) 「顔認識」の技術を悪用し女性達の過去を暴く行為は許せない―” / “「おまえ、AVに…” https://t.co/BpAIc0CXJI
— gryphon(まとめ用RT多) (@gryphonjapan) 2017年12月4日「おまえ、AVに出てないか」――顔認識技術を悪用して女性の過去を暴く行為を許すな
プログラマー作家・柳井政和
『顔貌(がんぼう)売人』(文藝春秋)
仕送りの乏しい地方出身の女子大生が、飲食店ブラックバイトで体調を崩した後、地味顔に厚化粧され「顔なんて分かんないから」と半ば騙されるようにアダルトビデオに出演した。卒業後は銀行に勤務していたが、高校時代の同級生から「おまえ、AVに出てないか」とのメールが届く――。ショッキングな出だしの『顔貌(がんぼう)売人』(文藝春秋)は、プログラマー作家・柳井政和さんの「ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬」シリーズ第二弾だ。(略)「顔認識」の技術を悪用し女性達の過去を暴く行為は許せない――IT技術者を企業に斡旋する会社の社長・裕美と腹心・百合は、利益にならない「人助け」に奔走する。
・ただ、今回の案件で「そういう場合があるか!」とハッとしたのは、JRが「どうやって、過去の犯罪者の履歴・情報を得るの?」⇒「自分が直接の被害者だからです」という展開。被害者が「犯人の出所情報を知らせてほしい」といって当局が応じるのも、被害者が、過去の被害歴を自分でまとめて、さらなる被害がでないよう自己防衛するのも、まったくもって悪い事ではない。各地に駅を持ち、暴力や痴漢が連日発生するJRが行うと、それがとんでもない巨大データベースになるというだけで…
そんなこんなの過去記事
総括的な記事
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2014 年のまとめでごく不完全だが、過去記事リンク集
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シンプルにこのブログ内を「顔認証」で検索したり(「顔認識」より「顔認証」が一般的だったはず)
※準タグとしてこの問題記事には基本入れている「となりのビッグブラザー」で検索してもらってもいい。
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ストリートビューって2008 年ぐらいの導入だっけ。
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ブクマとインタラクティブにあれして、反響から記事に追加しとく。中国の話が無い?リンクを辿りたまへ、君たち。
”先進”中国の事例が関係してくるなんて、基本のキやんか。そこはぬかりない。
…監視カメラ技術顔認証技術で世界の先端を走るのがMEGVIIという会社で2011年に設立され既に評価額10億ドル以上のユニコーン企業となっている。 その顔認証や AI 技術を組み込んだカメラは最低でも中国で2000万台以上。
このカメラ網を「天網工程」と…
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というか皆さま、これ読んでるよな?
防犯上の効果が確かにある、という話。「会話の録音」もそう。
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それはファクトとして正しくないですね
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) September 1, 2021
>私たちは「防犯カメラ」と表記せず、「監視カメラ」としています。事後に検挙の役にたつかもしれませんが、事前に犯罪を防ぐわけではないですからhttps://t.co/MsCJoOEd8G
人々が「こっそり」やりたいものを、顔認識技術は妨害?
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で、実際にやってる・やった・怒られた例(JR、2014年にもやろうとしてた)
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【となりのビッグブラザー】 ※準タグです。この言葉でブログ内を検索すると関連記事が読めます
※「となりのビッグブラザー」とは?
当道場本舗の造語です。準タグ的にも使っており、この語で当ブログ内を検索すると関連記事が出ます。
(1)技術が進歩しまくり、
(2)そして普及しまくることで、
(3)「フツーの人」にかつては権力機関や専門家など少数の人しかできなかったことができるようになり、
(4)その一方で、そういう少数限定の時には可能であった歯止めやブレーキがなくなってしまう・・・
という、諸々の社会現象のことをそう呼んでいます。