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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「万引きを疑う客の情報を共有」、顔認証技術はやはりこのように”進化した”…大屋雄裕の本が示唆した「新しい中世」時代。

■客の顔情報「万引き対策」115店が無断共有(読売新聞) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140405-00050045-yom-sci
 
 
スーパーやコンビニなどの防犯カメラで自動的に撮影された客の顔が顔認証で解析され、客の知らないまま、顔データが首都圏などの115店舗で共有されていることが4日分かった。
(略)
 各店舗は、防犯カメラで全ての客の顔を撮影。万引きされたり、理不尽なクレームを付けられたりした場合、該当するとみられる客の顔の画像を顔認証でデータ化した上で「万引き犯」「クレーマー」などと分類し、ソフト開発会社のサーバーに……(略)

 いったん登録されると、再び来店した場合、店員に分かる形で警報が発せられる。登録されたのとは別の店舗を訪れても、サーバーに記録された顔データで照合され、警報が出る。…

関連してはてブがたくさんついた記事、その対象だと思われた会社の反論記事、togetterやまとめ記事もある

「客の顔情報を115店舗が無断共有」というニュースで調べたことと切なる願い
http://reynotch.blog.fc2.com/blog-entry-779.html
 
客の顔情報「万引き対策」115店が無断共有 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/651666
 
平成26年4月5日(土)読売新聞朝刊掲載記事について重要なお知らせです。
http://www.face-lykaon.com/sp/info/info_2645.php

痛いニュース(ノ∀`):【防犯】 客の顔情報、115店が無断共有 「万引き犯」「クレーマー」など分類 http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1792969.html
  
客の顔情報「万引き対策」115店が無断共有
http://alfalfalfa.com/archives/7180659.html


ことしで創立10年を迎えた当ブログですが、こういう高度技術による情報の集積・分析能力の向上が生む社会問題……ということを、ずっと追いかけてまいりました。オーウェル筒井康隆らのSF小説がこういう現象への問題意識を育ててくれたわけですが。
そしたら、結果的には「グーグル・ストリートビュー」の誕生から定着までや「ビッグデータ」の流行、顔認識技術向上、GPS機能つきの携帯電話、スマホの普及…などを追うことになってしまいましたよ。
そのリンク集をずらっと並べると長くなるから、別のところに。

※ここに作りました。
「情報技術データ管理の技術進歩が社会に及ぼす影響」を考えた過去記事リスト。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140407/p4

さて、この前の土曜日に稲葉振一郎大屋雄裕トークセッションがあり、予定外の事態に泡を食ったものだが奇跡的に時間があり、行くことができた。
この催しのきっかけとなった大屋氏の新刊「自由か、さもなくば幸福か」の第二章「見張られる私」では、まさにこういう、情報・データ管理技術を握った「民」=営利企業に関する問題が詳しく語られているのであります。

監視の多くを実施しているのは国家そのものではない。警察が管理する街頭防犯カメラは2011年度末で全国791台に過ぎないのに対し、民間事業者や商店街・マンションなどが設置する監視カメラはすでに300万台を超えているという。(略)当然ながら、これらの民間団体は自分たちにとって利益があるからカメラを導入したのであり…警察は事件が起きたあとで…いわばおこぼれに預かっただけ
(略)
さらに言えば我々一人ひとりも、監視を行わないわけではない。youtubeなどには、ドライブレコーダーで記録された交通事故の映像がしばしば公開されている。

アーキテクチャに直面した我々が問わなくてはならないのには、古典的に「法」を通じて動作する国家権力がこれと比較してはるかに危険な存在なのかということだ。…おそらくそうではない…第一に、国家は確かに全体からすれば非常に大きな実力を独占しているが、チェック・アンド・バランスが確保されている…企業が責任を負っているのは主にその株主に対してであり…「お客様」を優遇するのはごく一般的な慣習だろう

つまり全体的に言えば、その暴走を警戒して国家にはさまざまな制約が加えられているのに対し、中間団体にはそのような制約が乏しく、だからこそサービスの提供は効率的であるのかもしれない。だが、そうであるとして、我々の生活や人権が、我々を平等に扱わなくてもいい主体に自由に制約されることを、我々は望むのかどうか。それが規制主体としての国家と中間団体を比較する際に問われる問題なのだ。

さらに大屋氏は、この例として「グーグル八分」やフェイスブックの同意なき仕様変更などを紹介している。それらの例は、今回の「顔認識を基にした万引き犯情報の共有」にもそのまま、一直線につながるのではないか。
こういう状況を指して「新しい中世」と大屋氏は呼ぶ。どういう意味だろうか。

生まれるのは、対象に規制を及ぼそうとするさまざまな主体が並存し、相互に対立し相克する社会なのだ。その中で生きる人々の視線に立てば、自己の影響力を及ぼそうとするさまざまな規制主体たちが発する、あるいは矛盾しあるいは対立する掟のうち、何に従い何に従わないのかをそれぞれの帰結を予想することを通じて決めていかなくてはならない社会だということになる。
(略)だがそれは、我々にとっても決してまだ見ぬもの、完全に新しく不知のものではない。近代がそれを乗り越えるために形成されたもの=中世こそ、そのような社会の古典的モデルだからである。どういうことだろうか

このあと、その説明がされている。



自分はこのブログの中で、この種の問題を【となりのビッグブラザー】と名づけていた。主には検索で一覧的にヒットさせるために挿入したキーワードなのだが、実のところ「国がこういう高度IT技術による監視をすることを何とか阻止することができても、技術がどんどん普及し一般化したら、『民』の側がそれを利用し始め、『誰もが誰もを監視する』時代になっていくのではないか?」という問題意識があったからこういう造語をしたんだったな。
実はいまだに覚えているけど、まさに1984年に新聞のインタビュー記事で、とある学者が「オーウェルの予言は外れましたね。外れた理由は『技術を国家が独占できる』と枯れは想定していたが、そうじゃなかったからです」と語っていたのだ。子どもの自分がなぜそんな議論を覚えているのか不思議だが、SFというフィルターを通すとそういうこともあろう。
 
そういう点で、今回の第二章は、非常に自分の疑問に答えてくれる…解決策の提示という点ではなかなか名案は出ないが、「そういう問題が社会に存在しているよね」ということを再確認できたのはよかった。
いや、一応大屋氏はこの本でも、トークセッションでもひとつの解決策を示唆している。それは「監視する人を監視する機能」だ。
既に警察のカメラ運用を確認するオブザーバー制度や、だれが端末検索を動かして閲覧したかが記録に残る機能(橋下徹大阪市長の戸籍などを好奇心で覗き見した職員はこれで処分された)などなどが既に実現している。
ただ、そうすると、つまりは「権力」の「監視」する機能、権限はもっともっと拡大するのである。そんなジレンマをどう解消していくのかだ。


あとひとつ。顔認証やそのデータの共有は、企業に有利なだけでなく、その企業〜悪質なもの〜から、個人、庶民を守る武器にもなるんじゃないか?ということ。
フィクションだけど、こういう形でインターホンボタンと録画を連動させ、悪質なセールスマンは「貴方の顔は録画しました」と。
これ、たしかに有効な手立てじゃないか?

顔画像認識、訪問販売者の顔録画・・・、悪質商売は減少?(テツぼん、こち亀) - http://t.co/ONsbrSiHJS