INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

店員と客「顔見知り」になりたいか、否か…これ、「都市論」でもあると思う。

店員に「顔を覚えられたくない」という人が多数 「ウラで変なあだ名を付けられてそう」と警戒する声も http://news.nicovideo.jp/watch/nw2435850

……10月5日の「マツコ&有吉の怒り新党」(テレビ朝日系)で紹介されたのは、よく行くレンタルビデオ店で店員に顔を覚えられた25歳男性のこんな不満だった。

「自分のこれまでのレンタル歴を知っている店員が最近になって『このシリーズお好きですよね〜』と声をかけてくるようになった。しかし、私としてはあまり深入りされたくないのだが」

「コイツいつも来てるな」と思われたくない、という人も
コレはわかる。自分の趣味嗜好がバレてる店員というのは、たまに気まずい。店員のほうは挨拶感覚で声掛けをしているだけなのかもしれないが、そこは何も語らずサラッと業務をこなしてくれたほうが有り難い。

レンタルビデオ店に限らず…


レンタルビデオ屋か。
よりによって、一番、客の消費行動には無関心ですよ、という姿勢を書店と並んで
フィクションとしてでも保たなければいけなそうなビジネスだが(笑)

もちろん

なんてな交流もほほえましいのだが・・・・・・・・・・・・・・・

過去に、こんな記事を書いていたことがある

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081210/p3
10年先を見通す目を持った故ナンシー関は、さるやんごとなきところに嫁ぐことになった女性がまだ1民間人だった時代、「ご婚約決定、おめでとうございます!」という報道をチェックして、「その女性の人となり」を(美談として)報じるワイドショーに、こういうくだりがあったことを発見し、警告を発している。

(記憶による大意)
この女性のいきつけのレンタルビデオ屋が、「おめでとうございます。この方は光栄にも当店でドラマ『東京ラブストーリー』などをお借りになられていました」としゃべっていた。
いいのか、こんなの。
「おめでたいと祝福してるんだからいいじゃない」
「あたりさわりの無いドラマを借りたと言ってるんだからいいじゃない」
というつもりなんだろうけど、本人にとってみれば「東京ラブストーリーを観てることだけは隠したかった。まだアダルトビデオを借りてることがバレたほうがマシだ」ということだってあるかもしれないだろうに。

主なテーマは「おめでたいの無礼講」を批判、皮肉る文章だが、ここがなぜか記憶に残っている。

「都市の空気は自由にする」と「孤独なコンクリートジャングル」は表裏一体。

とんとん とんからりと 隣組
あれこれ面倒 味噌醤油
御飯の炊き方 垣根越し
教えられたり 教えたり
 
とんとん とんからりと 隣組
地震やかみなり 火事どろぼう
互いに役立つ 用心棒
助けられたり 助けたり
 
とんとん とんからりと 隣組
何軒あろうと 一所帯
こころは一つの 屋根の月
まとめられたり 纏めたり

小さな話でも みんなが知ってる
どこにいても一年は巡るから
ゆるやかに季節抱いて
ゆれる日々を築いた

前者は下町か地方都市か。都会であっても、制度的な親密さが設計された「隣組
下は実のところ、詳細はよく把握していないが、すごい田舎が舞台の話だったはず。


で、ぶっちゃけ、こういうのがいやだからみんな都会に出て、マンションやアパートで暮らして…たんじゃなかったっけかいな。
そして、都会に出れば「誰が店に来たか」「何を買ったか」
なんて(比較的)記憶にとどめない。

なぜなら(比較的)客が多すぎて覚えられない。店員も給与労働者、パートタイムワーカーで、客になんて関心をもたない。

そんな人情紙風船な、ひびわれた大都会…だからこそ自由だった、のであろう。


孤独のグルメ」、とある隣国で人気だったのだが、最初は非常に違和感を持たれたという。
「この国では、一人で昼食や夕食を食べるなんて考えられないことです」と。

http://d.hatena.ne.jp/kangazi20/20130112/1357943323
1人でグルメという文化スタイルは、今や多くの国で求められている。

もともとそれが難しくない日本や、台湾みたいな国に住んでいるとピンとこないかもしれないが、ヨーロッパなどはもちろん韓国だって1人でレストランに入って食事するのは大変なこと、「敷居」はとても高いのである。

ちょっと前まで、韓国は「1人で飯を食う人間はいない」と言われていた。私が初めて韓国の会社に就職した時も、社長自ら一緒にランチをする人を決めてくれた。韓国で1人でご飯を食べるほど淋しいことはなく、そんな可哀想な人はいないーーと思われていた。

でも、韓国人だって時には1人で食べたいし、1人で食べざるを得ないこともある。特に最近は…(後略)

もちろん、「一人で食事なんて寂しいだろう、と、社長がやってきて、就職したての人と一緒に食事する人を決めてくれた」韓国の社会に感激し、ここに真の人情あり!と考える人もいるだろうが…
いや、こうやって横に広がる以外に、時間という縦軸でとらえても
孤独のグルメは、一人で自由にうまいものを店で食う…というのが当時(発表された1990年代初頭)は、ちょっとした異端だった。だが、時間が徐々にたつにつれ、それが不自然ではなくなっていった」という論評を読んだこともある。


しかし、やはり「誰も自分に関心を持たない」場所を…少なくとも選択的に選べるという社会の自由さ、呼吸のラクさは、厳然としてあるのじゃないかな。


お店の人を、客が覚えて、(一方的に)親しみを表現することもある。

「やっぱり職場で名札はやめたほうが……」高齢者のストーカー増加に恐怖の声 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/844147

レジのレシートに従業員の名前を載せるのはやめてほしい http://anond.hatelabo.jp/20150218160118
高校3年生から、大学2年生までの3年間。
私は地元のスーパーでレジのアルバイトをしていました。
昼間はパートのおばさん、夜は高校生や大学生が多く、そのほとんどが女性でした。
私の働いていたスーパーはレシートに本名がフルネーム(漢字)で印字されるようになっていました。
本名と顔が一致することによって、たくさん怖い思いをしました。
私だけでなくて…
(略)
「ねえ、○○ちゃんって言うんだね。」と声をかけてきたので、心臓が止まるほどびっくりしました。
聞こえないふりをしていても、「○○ちゃんの家はこの近く?おじさんも近いんだよ」などと、
まるで家を特定しているのかのようなことを…(後略)

"高齢者ストーカー" 10年間で4倍に増加 #BLOGOS http://blogos.com/outline/120619/
…スーパーで働く三田さん(仮名)にストーカー行為を働いたのは、常連客の71歳の男性。 愛想良く対応していたところ、男性は段々馴れ馴れしくなってくる。その頃、三田さんの自宅前には送り主不明の花束が置かれるようになった。

気味が悪くなり、管理人に「花束を置く人を見たら教えて」と頼んだところ、後日見せられた写真に写っていたのは、その常連客の男性だった。レシートに印字された担当者の名前をネットで検索し、三田さんのフェイスブックを探り、その写真から自宅を

まあ、「都市の自由」の基盤は「人間は何百人もの顔や行動を覚えてなんかいられない」という物理的・肉体的制約。この前提を「超人」「機械」が破ると…

「都市の人ごみ、雑踏や店の来客の中から、一人を簡単に発見できる社会」とは http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090611/p5
何があっても、「顔認証」技術は進歩し、普及するだろう…それがどうなるかだ。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140314/p3
顔認証技術で、AV出演歴を探る……【となりのビッグブラザー】の、これが完成形。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160429/p1


(関連記事の一覧)「情報技術データ管理の技術進歩が社会に及ぼす影響」を考えた過去記事リスト。http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140407/p4

お店の人が、話しかけたりしなくても、どこのどんな客か覚えていなくても…顔認証システムと商品管理システムの組み合わせは、1回来たお客、1回買った品物…その相関を未来永劫覚えて、記録していくだろう。すべての街で。すべての店で。



機械がなくても「超人的な能力」があればいい。

一度見た人の顔は忘れない。あなたは超相貌認識力の持ち主か?「スーパー・レコグナイザー」チェックテスト http://karapaia.livedoor.biz/archives/52194456.html

一度見た顔はほとんど記憶しているという人がいる。以前に見た顔の80パーセント以上を特定できるという特殊能力の持ち主は存在し、彼らは”スーパー・レコグナイザー”と呼ばれている。…(略)

訓練というより、偶然のマッチングで先天的な能力のある人がそういう仕事を始めるのかもだが、タクシーの運転手やホテルマンに、このへんの顔の記憶が異常なまでに優れているひとが稀にいて、それをサービスに応用して喜ばれる、プロだと驚嘆される…というエピソードは稀に聞くが、
「一回でその人の顔、服装、来店日時を覚えているドアボーイがこのホテルにいます」
「いいねえ」
「送迎の運転手も、同様に一回で完璧に覚えます。どこでお乗せし、お降ろしするかも」
「すごいねえ」
「特に、誰と一緒にいらっしゃったかは絶対に忘れません」
「キャンセルで」


なんてね。

ま、特に解決策はないわねえ。店員さんが『このシリーズお好きですよね〜』と声をかけたから、そこから次々と傑作を生みだす漫画家コンビが誕生するかもしれないし、一生の伴侶、一生の友が生まれるかもしれない。

きのう、孤独感を募らせて、誰もこないアパートで手首を切ったあの人は、
きのう、店員が密かに思っていた「よくいらっしゃいますね。この大福、いつも買われますが、お好きなんですか?」と声をかけたら、自殺を図らなかったかもしれない。


結論は未完のまま、この話はなんども繰り返すことになるのだろう。