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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

イスラエルのネタニヤフ政権、末路がどうなっても「悪辣だが、有能だった」と記憶される”リスク”が…。田中角栄の害のごとく。

同じ日のニュースなんだよね…。

ネタニヤフ首相に組閣要請 イスラエル大統領

4/6(火) 23:06配信


 イスラエルで3月に行われた国会(一院制、定数120)選挙の結果を受け、リブリン大統領は6日、ネタニヤフ首相に次期政権発足に向けた連立協議を要請した。期間は最長で6週間。過半数(61議席)の議席確保して他党と連立政権を組めるかは疑問視され、やり直し選挙の可能性が取り沙汰されている。

 イスラエルでは単独政党が過半数を制することはなく、大統領が選挙後、議席を獲得した各党と話し合い、連立政権が組める可能性が最も大きい政党の党首に協議を要請する仕組み。…(後略)。

news.yahoo.co.jp

批判的な記事を消せと命令された」 ネタニヤフ首相の汚職裁判で初証言 イスラエル

BBC News

イスラエルで5日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の汚職疑惑をめぐる裁判が始まった。最初の証人となったニュースサイトの元最高経営責任者(CEO)は、ネタニヤフ氏に不利になる記事を「消す」よう命じられたと証言した。

ニュースサイト「Walla」のイアン・イエシュア元CEOはさらに、オーナーのシャウル・エロヴィッチ氏からネタニヤフ氏のライバルを攻撃する記事を書くよう指示されたと述べた。

検察側は、ネタニヤフ氏が自分に好意的な記事を書いてもらう見返りとして、エロヴィッチ氏に数億ドル相当の利益を生む規制上の便宜を図ったと指摘している。

ネタニヤフ氏とエロヴィッチ氏は共に容疑を否認し…(後略)

wedge.ismedia.jp


その一方で、イスラエルは最近、この話題でも頻繁に出てくる。

ワクチンの予防効果、「実世界」でも94% イスラエルの研究

2021年2月16日
レイチェル・シュレア保健担当記者

新型コロナウイルスの米ファイザー製ワクチンについて、イスラエルは14日、発症を94%防ぐ効果があるとする研究結果を発表した。

ファイザーのワクチンが、大人数への接種でも、臨床試験(治験)と同様の効果をみせていることが示された。

公衆衛生医ハガイ・レヴィン教授は、すべての年齢層で発症と重症化の予防に高い効果が表れているとしている。


「最も影響を受けやすいグループで接種率が高い」ことが重要だと、同教授は述べた。

重症化をほぼ完全に防ぐ
イスラエル最大の保健機構クラリットは、ワクチンを接種済みと未接種の60万人ずつに実施されたウイルス検査の結果を分析。
www.bbc.com


一方でこの背後に、本来なら衛生面でもイスラエルが(状況上、否応なく)責任を持つべきパレスチナ占領地域でのワクチン接種体制の不備や、そもそもそこの占領をしているという事実もあるわけだが…。
それはおいておく。



つくづくと思うのは、
ネタニヤフはいまだに「2年で4回の総選挙」を経て宙づりのような形でありつつも、権力を掴み続けている。
その上で、一説にはファイザー社と首相が直談判し、相場よりかなり高値での契約を結んで国民にいきわたるワクチンを先駆けて確保した、とも言われる…


汚職関係の裁判が最終的にどうなるかはしらないが、
その裁判、あるいはまた起きるかものやり直し総選挙、その他病気など…… あるいは十分に首相の座を務め、自ら満足して身を引くかもしれない。
どっちにしても、ネタニヤフ政権に終わりはくる。


しかし、今回のワクチン確保劇、そしてさらにはトランプ政権のたった4年というボーナスステージ期にばんばんマリオよろしくコインを集め、「中東世界・イスラエルとの国交ドミノ」を成し遂げてしまった結果。

こういうものを手に抱えたまま退場したら…たとえば汚職裁判が有罪となっても、

「あの男…ネタニヤフとその政権は、悪党だったが有能だった」と言う形で、イスラエル国民意識にへんなイメージが植えつけられるのではないだろうか。

そして、何かの不満が高まる時、幻想としての「悪辣だが有能だったネタニヤフ」がイメージとして登場し…それがどうかすると、ばかばかしい方向に人々を誘導しかねないと思う。


これは、「田中角栄現象」という不思議な光景・・・しかもあまり根拠のなさそうな幻想を、平成末期から令和初期に先に見分した日本国民として(笑)、イスラエルのそれを心配して言うている。



ネタニヤフといえば、この”変化球”が、ある意味でものすごく恐ろしかった。

m-dojo.hatenadiary.com



イスラエル首相が天皇に「わが国と日本は共通点がある。ホロコースト・原爆を体験した」。すごく…「取り扱い注意」!! http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140522/p3

http://www.asahi.com/articles/ASG5F4W42G5FUTIL01J.html
 天皇、皇后両陛下は13日、皇居・宮殿で、来日中のイスラエルのネタニヤフ首相夫妻と懇談した。
 宮内庁によると、懇談でネタニヤフ首相は「イスラエルと日本には共通点がある」と述べ、いずれもおびただしい数の市民が犠牲となったホロコーストユダヤ人大虐殺)と、広島、長崎への原爆投下を挙げた。天皇陛下は「ホロコーストは大変に痛ましいことだったと思います」と語ったという。

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田中角栄幻想について。
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高島俊男氏、逝く~中国学「無差別軽量級」の絶対王者。

 言葉をめぐる人気エッセー「お言葉ですが…」シリーズで知られるエッセイストで中国文学者の高島俊男(たかしま・としお)さんが5日、心不全のため死去した。84歳。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主は妹、森沢敦子(もりさわ・あつこ)さん。

 兵庫県相生市出身。東京大大学院で中国文学を専攻、岡山大助教授などを経てフリーの文筆家に。中国文学や、その影響を受けた日本語や日本文学についての深い学識を背景に、大手出版社や新聞、学界の権威の誤りを批判する軽妙なエッセーが好評を博し、「週刊文春」に平成7年から18年まで連載した「お言葉ですが…」は、全18巻におよぶ人気シリーズと…(後略)
www.sankei.com


以前から、おそらくあまり体調が思わしくないのではないか、と推測していた。
その思いが強くなったのは
このブログが終了した時だ。

okotobasaishin.blog.fc2.com
おしらせ
 諸般の事情により、ブログ「お言葉ですが…最新版」を終了いたします。ご愛読ありがとうございました。  (管理者)

 終了にあたり、先に収録しました「嗚呼、大ヶ瀬幹人先生」――2018年11月 (1,2)、2018年12月(3,4)――の後編を一挙掲載いたします(5~10)。左の「月別アーカイブ」2020/6の7篇をご覧ください。
なお、これまでのブログ掲載分は一括して連合出版のホームページでご覧になれます。

アナログ人間の高島氏だが、書いた文章をだれかPCに強い知人を通じUPする形でブログを開始。
5年間、自主的にネットに発言の場を持っていたのだ。トータルにすればかなりの数の投稿だよ。

http://okotobasaishin.blog.fc2.com/

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2016/04 (13)
2016/03 (9)
2016/01 (7)
2015/12 (10)
2015/11 (1)

今後はどうなるのだろうね。消滅するかもしれないわけで、この機会に、読んでもらうのもいいかもしれない。


だから今回の訃報は、ああ、やはりか、と感慨深かった。
というか84歳ともなれば十分、人生をまっとうしたと言えるし、最晩年は創作・文筆から離れても自然だろう。とはいえ、それでもさみしく、かなしい。


そもそも当ブログ、はてなブログ内では本当に頻繁に、氏のことを紹介することが多かったんじゃないかな。
いや、1年に1回漢字検定(ことしの漢字)をDisるために同じ文章を再放送している、とかもあるんだけど(笑)、それ以外でも何度も氏の知見や、寸鉄人を指す皮肉な警句を引用させてもらっていた。

たとえば…
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がんばって、一部リンクを張る。
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つづく。
後でこの後をかいていきます

あ、タイトルにした「無差別軽量級」ってそれこそ「お言葉ですが…」矛盾した表現じゃないか、と思う人もいるでしょうが……それも、このあとに。

ここから、追記した後半。

追悼のため、氏の著作を少し見てみようと思ったら本棚から次々と出てくる。
それほど多作というイメージはないが、通算してみるとそれなりに出ていたんだな。
しかし目当ての本だけがなかなか出てこない。
目当てでない本を開くとそれはそれで面白いわ、書きたいことがたくさん出てくるわで全然進まない。

なので正確な資料の引用は諦め、全て記憶に頼って、過去記事を紹介しながら「一筆書きのスケッチ」を書くことにしよう。


まず前段で記した「無差別軽量級」 という言葉の種明かしですが、これは高島氏が宮崎市定を紹介した時、中国に関するどんな話題でも縦横に、面白く語ってゆく様を「無差別」、その上でその思想や考察が非常に「分厚い」ものであることを評して「重量級」と選んだわけです。そしてそれを自分に対比させて自分は、中国のさまざまなテーマを縦横に語ることでは同じように「無差別」だが、その語りが比較して「軽量級」だと、謙遜を込めて語っていたわけです。
※ちょっと関連記事
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この軽量級は謙遜と言ったが、はたから…少なくとも自分から見ると軽量というよりは「軽妙」であり、その軽妙さこそが高島中国学の真骨頂でした。
語るテーマが深遠なものに繋がっていくという点ではまったく宮崎市定にも引けを取らないので、これは格闘技もそうですが重量級も軽量級もそれが呼ぶ感動は同じなのですな。

学者は自分の学問を、わかりやすい言葉で一般社会に還元するべきである。
それが使命であり、それが出来ない学者は、学者失格だ……との信念を持っていたという。そのお陰で我々は氏の一般向け著作を楽しめるわけである。


本質ではわかりやすいもの、分かりやすくすべきものをこけおどしのように難しく書くことを激しく批判し、唾棄していた。
その代表例が、当方が毎年紹介している「漢字検定のあほらしさ」なんだけれども。
たまたま今回の追悼でページを開いた「漱石の夏やすみ」でも、夏目漱石正岡子規に読ませるために書いた漢文の紀行文「木屑録」を解説している。ここで力説していたのは、この文章は元々、いまでいえば大学の同級生と言った当時の二人の関係性から考えれば、この漢文は「おふざけの戯文」と読むべきであり、それを何か重々しく高尚なものであると捉えるのはおかしい…ということだった。

「ほんとうにこまったことであるのは、こういうシロモノ(※夏目漱石の文章のことではなく、それを重々しく読み下す解釈)を上等だと思い、高級だと思い、ありがたがる日本人がいる、ということなのだ。だからまた、こういうのを持ち出して、人をおどかす連中が出てくる。」


もちろんその博識ぶりは言うまでもないのだけれど、一方で学術論文ではない「コラム」という形式を利用して鎧兜も裃も同時に脱いで、 「自分もよく分からない謎があり、それはこれこれ」「今まで、調べた限りでは…だけれども、読者の〇〇さんからこんな情報が寄せられた」…みたいな”同時進行の考察ルポ”もよく書いていて、それも実に面白かった。

言葉の問題でも流行や変化に妥協しない、なかなかに偏屈な態度を貫いていて、それは文章の表記をめぐる編集や出版との攻防(たとえばそれが「『支那』は悪い言葉だろうか」などの研究に結実している)、あるいは日常生活での企業や役所窓口とのやり取りなどにも表れていたが、一方でそういった読者や知的興味のある市民との交流をとても大切にしていて、”琵琶湖仙人”として滋賀を拠点にした際には、地元の図書館から 講演・講座を依頼され「定期的にやっていいならやります。月一回?それじゃ足りない、週一回なら」とやって、本当に談論風発のサロンが作られていたという。

一度そこにお邪魔したいと思いながら、遠方ゆえ叶わなかったのは実に残念だ。 様々な質問や感想にも、丁寧に返事を書いていたというから、こちらに関しても手紙を出せば良かったなぁと後悔している(聞きたいことは山ほどあったんだがなあ…)

結婚などもしなかったそうなのだが、そういう一般的な家庭生活の楽しみ、しあわせを放棄したことへのかなしみや後悔、みたいなことを向田邦子を論じた「メルヘン誕生」の末尾で率直に書いていたことも印象に残る。



その人の様々な、歴史や「言葉」に関する考察は、…誰か…この訃報に際して一度に紹介しようと思っても、とても不可能であろう。

ここは本当にその都度、ブログで紹介していてよかったと思う。

リンクを貼るの面倒なので、上の当ブログ内「高島俊男」検索結果をつらつらと見ていただければありがたし。

ただ今回もパラパラと開いたコラムの中に…(以下は「お言葉ですが…」11巻より)

ここしばらく、何人もの方から「刺客」についてお話を聞いたり、たずねられたりした。読者からもお手紙をちょうだいした。言うまでもなく、さきごろの衆議院選挙の件である。
郵政法案に反対した人の選挙区に「小泉首相が刺客を送った」とマスコミがはやしたてたらしい。…「シカクという人とシキャクという人がいるけどどっちがいいの」、とか「本当はセッカクが正しいらしいね」とか。
結論をさきに言ってしまうと、みなOKです。どれでもお気に召したのをどうぞ。
(略)
結論だけ聞けばよろしい、というかたは、以上でおしまいです。以下は全て雑談。


まず「客」から参りましょう。
これはもと 「よそから来た人」の意で、それからひろがって「もっぱら~する人」さらには単に「~する人」の意にもちいられるようになった。食客、墨客、棋客………この「客」に音(おん)が二つある。 呉音キャクと 漢音カクである……(後略)

お言葉ですが…第11巻

お言葉ですが…第11巻


この文章のリズム、情報の提示の仕方、散りばめられたユーモアをを見よ。どれもこれも一級品の出来である。
知識と楽しみを 同時に得られる文章の真髄である。





高島氏は、今までの人生を振り返った文章も多々残っており、自分がいかに本が好きになっていったかを振り返る「腹ペコ少年読書録」もたいへん興味深い。…これほぼ同年代の矢口高雄(昨年81歳で亡くなった)の経験と、本当にダイレクトにつながる。最初に矢口の「ボクの手塚治虫」を読んだ時、真っ先にこのコラムを思い出したもの。


そして、 おそらくは現実にならないであろう、自分の理想の葬式風景をユーモラスに描いた「ボクのお葬式」などを、彼の死に際して紹介したいのだが、それを今目の前にある、氏の著作集から探すのはまたまた大変なのである。


今後もおいおい、高島俊男氏の文章には触れていくだろう。それほどまでに自分の血と肉になっているのだから。

あらためて、ありがとうございました。





水滸伝と日本人―江戸から昭和まで

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広辞苑の神話 (文春文庫)

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再放送情報。「魔法少女まどか☆マギカ」BS朝日(1話放送済)/「かくしごと」BS日テレ その他

再放送の告知の時は、さすがにテンションが初放送と同じというわけにはいかず、淡々と。

魔法少女まどか☆マギカBS朝日

第1話からお伝え出来ず、すまん

かくしごと』4/6(火)深夜 第1話再放送


www.bs4.jp


一般論としていうと、BS日テレはかなり早いサイクルでリピートする傾向があるよね。

ジョジョのイタリア・マフィア編もやる

自分はこのへんから、原作も読んでないので思い入れが無いんデス。これは情報のみ
www.bs4.jp


ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風

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「雑誌『映画秘宝』の記憶」(はてな匿名ダイアリー)が40回を突破しています

リンク集はこちら。

m-dojo.hatenadiary.com

ただURLを並べただけだが、こんな簡単な作業も、40回を超えるとなると ちょとへとへと…。

しかし不屈の闘志でこちらもリンクの追加を継続してるのである。

町山智浩柳下毅一郎の問題発言集】が、最近のメインコンテンツ。

あと、最近はこの記事への反応・レスポンスも多いので
anond.hatelabo.jp
のほうで、この関連用語を含む記事をざっと見るのも一興。


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神聖モテモテ王国パロ「群がる〇〇をちぎっては投げ」

映画秘宝 2021年5月号 [雑誌]

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皇帝、タレーランにかく敗れたり…「ナポレオン覇道進撃」フランス降伏時の話が興味深い

「ナポレオン 覇道進撃」(長谷川哲也、コミックアワーズ連載)は、いま欧州各国の対仏連合軍によってパリが陥落し、ナポレオンが皇帝を退位するか、最後まで戦って戦死するか……・というところを描いている。

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ナポレオン覇道進撃 パリ陥落、皇帝退位へ

年号でいうと1814年。日本では化政文化が爛熟した時代だ。


じつは自分の知識としては
・1804年にナポレオンは皇帝に即位
・しかし1812年に、ロシア遠征が冬将軍の猛威もあり失敗
www.youtube.com

・その後…「いろいろあって」降伏し退位
・しかし間もなく、隙を見てエルバ島から復活、いわゆる「100日天下」を得る
・しかしワーテルローで敗北、セントヘレナに再度流され生涯を終える


みたいな、ざっとした知識しか持ってなかったのだよ。だからナポレオンが1回目の敗北・退位をする経緯というのを、今回あらためてきちんと知った。
池田理代子の「エロイカ」も読んだはずだが、正直最終盤の記憶なし)


今月と先月、作品ハシラの編集者の煽りがタレイラン無双」。

いや実際、陰謀といってもいい形で、タレーランは連合国と渡りをつけてナポレオンを葬ったのだが、じわじわと皇帝が敗色濃厚となっていく(実はその敗色の中、ナポレオンが直接指揮する軍隊は何度も神のごとき用兵で勝利していく。だが、局地的勝利をいくらナポレオン直轄軍が収めても、それはむしろ反仏同盟を結束させ、全体的な和平が遠のくという皮肉な結果に…)そんななかで、そのタレーランの決断と陰謀は「フランスの」害だったか、益だったか?となるとねえ。

そしてそのバランス感覚と政治センスは芸術性を増し、ブルボン王家を王政復古させる一方で、国旗の「三色旗(つまりフランス革命そのもの)」を認めさせ、そもそも敗北したはずのフランスの領土なども連合国から最大限に守りきる仕掛けをしていくのだ。

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ナポレオン覇道進撃 パリ陥落、皇帝退位へ
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ナポレオン覇道進撃 パリ陥落、皇帝退位へ

そしてちょっと面白かったのが、この当時でもやはり国家が敗北し、和約を結ぶ際には政府の正統性とか、どの機関が意思決定をするのか、とか降伏や休戦の権限は誰にあるか、が重要となっていたようだ。

もっとむき出しの闘争で「相手が死体になれば国家の勝利だ、焼け野原になれば敗北だ」では、なかったようなのだ。


ただ、それが自然状態での”戦”とはちょっと違った感じにもなる。
「法的には、これでフランスは敗北した。あとは…実態として、まだ闘う気満々のナポレオンとその近衛軍をどうするんだ?」みたいな、おかしな話にもなってくる。

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ナポレオン覇道進撃 パリ陥落、皇帝退位へ

やや三谷幸喜テイストも入った、そんな極限状態での人々の葛藤や裏切りや、それでもなお残る友情や英雄的精神などを描いて、近年の回は面白い。

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ナポレオン覇道進撃 パリ陥落、皇帝退位へ

そして長谷川先生のナポレオン伝…「獅子の時代」「覇道進撃」と続いたこの作品も、いよいよファイナルまでのカウントダウンが見えてきたのかもしれない。



フジで深夜に全日本選抜柔道

BSでも生放送やってたんだけど、すまんそっちはもう放送終了だ

全日本選抜柔道体重別選手権2021

4/5月
02:05〜03:05

全日本選抜柔道体重別選手権2021<サンデーMIDNIGHT>
2年ぶりの開催となる日本トップレベル選手による「世界選手権」代表の座を懸けた大一番!2024年「パリ五輪」を目指すヒーロー&ヒロイン候補たちにも注目‼

https://tv.yahoo.co.jp/program/84288603


日本大好きのエジプト人、広島・長崎も復興もよく知ってる~その結論「で、いつアメリカにリベンジするんだ?」

…私のエジプト留学時代のことなので、前世紀末です。日本ではバブル経済がはじけ終わった後でしたが まだ世界第二の経済大国とされていました。エジプト人は気さくでおしゃべり好きなため、街中で見知 人と雑談をすることも多くあります。「どこの国から来たんだ?」と聞かれ、「日本から」と答えると、か り高い頻度で戻ってくるコメントがありました。
「日本、いいね、ナンバー1! トヨタ、ホンダ、ソニー......なんでも、技術は日本が世界で一番。戦争でアメリカに負けて、ヒロシマナガサキに原爆を落とされただろう。でもその後すぐに経済復興して、今やアメリカに負けていない。本当に日本はすごい、いいよ。大好きだよ」
そして時々、ここに加えられたのが、「で、日本はいつ、アメリカにリベンジするんだ」という質問でした。
日本のことを好いて褒めてくれているので、もちろん不愉快な気持ちになることはありません。けれ このような日本人観は、実際の日本人の自己認識とはズレがあります。
日本人はアメリカにリベンジを誓って経済復興に邁進したわけではありません。ただ、西洋諸国に長きにわたって蹂躙されてきたと感じ る中東の人々にとっては、日本は西洋に立ち向かい、対等かそれ以上の経済力を持った最初のアジア国であり、独特の感情移入の対象になっていたのです

f:id:gryphon:20210404102829j:plain
日本大好きのエジプト人「日本はいつアメリカにリベンジするんだ?」

このエピソードは、「リベラルなイスラーム」という本から。著者は明治学院大の大川玲子氏。

在進行形のイスラーム

時代が変わり、クルアーンの読み方も変わりつつある。ムスリムとして、一人一人が生きやすい社会をつくろうと奮闘する姿から、その最前線を見る。

なぜ男性が優位な社会なのか?
なぜ過激派はテロを起こすのか?
その根拠は、イスラーム聖典クルアーンにあるとされている。
しかし、新たな解釈を試み、男女平等やテロ抑制に取り組むムスリムたちも出てきている。
本書では、クルアーンという豊かなテクストを「リベラル」な解釈へと開き、変革を期す者たちに着目。
他者を認め、自分らしくあることを目指す「読み」の奥深さと、その実践を見ていく。

【目次】

ガイダンス

第1講 どうして聖典が重要なの――?クルアーンの力

第2講 クルアーンは戦争を命じている――?聖典の表と裏

第3講 平和を説くムスリムって――?インドでの模索

第4講 クルアーンはテロに反対している――?ムスリム国際NGOの挑戦

第5講 女性は離婚を言い出せない――?宗教マイノリティと男女平等

第6講 同性愛者は認められる――?英国紙ガーディアンのクルアーン解釈

最終講 リベラルなイスラーム――人類の共生する世界


講義を終えて――あとがきに代えて
参考文献

この本全体を通していうなら、リベラルにクルアーンを解釈する「必要に迫られ」、いろんな国で「やや無理やりに」リベラ―るなイスラームクルアーン解釈をしちょるなー、という感想で「理屈と膏薬はどこにでもくっつく」な感じでした。
おそらくガチンコで、厳格な解釈をする派とリベラル解釈派が討論したら、純粋な文献解釈としては後者が勝つのは難しいんじゃないかと思う。ただ、たとえば欧米社会では、後者の解釈の方が「都合がいい」ので、それに応援されればワンチャンあるかな、と。

あと、その解釈の手段で面白かったのは、たとえば異教徒攻撃や異教徒蔑視の章句は、「この言葉は、その当時の固有の事象について神が言及したものである」と。
つまり、「異教徒と闘って倒せ」というのは、ムハンマドを通じて神が、その時、その場でムハンマドウンマと戦争をしている、<その異教徒>という個別の対象、個別の戦争について語ったので、今現在、21世紀の異教徒のことでない……みたいな解釈。なるほど。


話を元に戻すと、
上の、エジプトのみならずムスリム圏で日本に好意的な言及がある、広島・長崎のこともよく知られている……と言う話はよく聞く。それは別に昨今の「日本SUGOI」勢ばかりじゃない。「日本はイスラムにこれだけ好かれている、だからパレスチナやイラン・イラクについてアメリカと共同歩調を取るべきではない」みたいな主張も多かった。

ただ、その日本への厚意の中に「(非西洋・非白人の)日本がアメリカと闘ったこと(どうかするとロシアとも)」、その戦争があったからこそ好き、という流れもあったことは間違いない。
それはメキシコなど中南米や、どうかするとアメリカの非白人層の中にもあった、とも言われる。

「そうだろう。誇りがあるんだ。ネイティブアメリカンは奴隷になることより、死ぬまで戦うことを選んだ。だからほとんど生きのこってない。日本人だって屈服することよりも、死ぬまで戦うことを選んだじゃないか…(略)」


m-dojo.hatenadiary.com


この話と大きくつながる「力・軍事を全体的に肯定的評価する風潮」についてはは、同じくエジプトに留学していた池内恵氏もときどき語っていたな。

増補新版 イスラーム世界の論じ方

増補新版 イスラーム世界の論じ方

  • 作者:池内 恵
  • 発売日: 2016/05/07
  • メディア: 単行本




この発想だと、日本の「平和」でなく「(過去の)武」が評価されていることになる。軍事や戦争を、そういう文脈で評価する国や文明もそれなりにあること、そこを忘れるのもいろいろ危険なのだろう。