【トンガ噴火お見舞】INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

日本大好きのエジプト人、広島・長崎も復興もよく知ってる~その結論「で、いつアメリカにリベンジするんだ?」

…私のエジプト留学時代のことなので、前世紀末です。日本ではバブル経済がはじけ終わった後でしたが まだ世界第二の経済大国とされていました。エジプト人は気さくでおしゃべり好きなため、街中で見知 人と雑談をすることも多くあります。「どこの国から来たんだ?」と聞かれ、「日本から」と答えると、か り高い頻度で戻ってくるコメントがありました。
「日本、いいね、ナンバー1! トヨタ、ホンダ、ソニー......なんでも、技術は日本が世界で一番。戦争でアメリカに負けて、ヒロシマナガサキに原爆を落とされただろう。でもその後すぐに経済復興して、今やアメリカに負けていない。本当に日本はすごい、いいよ。大好きだよ」
そして時々、ここに加えられたのが、「で、日本はいつ、アメリカにリベンジするんだ」という質問でした。
日本のことを好いて褒めてくれているので、もちろん不愉快な気持ちになることはありません。けれ このような日本人観は、実際の日本人の自己認識とはズレがあります。
日本人はアメリカにリベンジを誓って経済復興に邁進したわけではありません。ただ、西洋諸国に長きにわたって蹂躙されてきたと感じ る中東の人々にとっては、日本は西洋に立ち向かい、対等かそれ以上の経済力を持った最初のアジア国であり、独特の感情移入の対象になっていたのです

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日本大好きのエジプト人「日本はいつアメリカにリベンジするんだ?」

このエピソードは、「リベラルなイスラーム」という本から。著者は明治学院大の大川玲子氏。

在進行形のイスラーム

時代が変わり、クルアーンの読み方も変わりつつある。ムスリムとして、一人一人が生きやすい社会をつくろうと奮闘する姿から、その最前線を見る。

なぜ男性が優位な社会なのか?
なぜ過激派はテロを起こすのか?
その根拠は、イスラーム聖典クルアーンにあるとされている。
しかし、新たな解釈を試み、男女平等やテロ抑制に取り組むムスリムたちも出てきている。
本書では、クルアーンという豊かなテクストを「リベラル」な解釈へと開き、変革を期す者たちに着目。
他者を認め、自分らしくあることを目指す「読み」の奥深さと、その実践を見ていく。

【目次】

ガイダンス

第1講 どうして聖典が重要なの――?クルアーンの力

第2講 クルアーンは戦争を命じている――?聖典の表と裏

第3講 平和を説くムスリムって――?インドでの模索

第4講 クルアーンはテロに反対している――?ムスリム国際NGOの挑戦

第5講 女性は離婚を言い出せない――?宗教マイノリティと男女平等

第6講 同性愛者は認められる――?英国紙ガーディアンのクルアーン解釈

最終講 リベラルなイスラーム――人類の共生する世界


講義を終えて――あとがきに代えて
参考文献

この本全体を通していうなら、リベラルにクルアーンを解釈する「必要に迫られ」、いろんな国で「やや無理やりに」リベラ―るなイスラームクルアーン解釈をしちょるなー、という感想で「理屈と膏薬はどこにでもくっつく」な感じでした。
おそらくガチンコで、厳格な解釈をする派とリベラル解釈派が討論したら、純粋な文献解釈としては後者が勝つのは難しいんじゃないかと思う。ただ、たとえば欧米社会では、後者の解釈の方が「都合がいい」ので、それに応援されればワンチャンあるかな、と。

あと、その解釈の手段で面白かったのは、たとえば異教徒攻撃や異教徒蔑視の章句は、「この言葉は、その当時の固有の事象について神が言及したものである」と。
つまり、「異教徒と闘って倒せ」というのは、ムハンマドを通じて神が、その時、その場でムハンマドウンマと戦争をしている、<その異教徒>という個別の対象、個別の戦争について語ったので、今現在、21世紀の異教徒のことでない……みたいな解釈。なるほど。


話を元に戻すと、
上の、エジプトのみならずムスリム圏で日本に好意的な言及がある、広島・長崎のこともよく知られている……と言う話はよく聞く。それは別に昨今の「日本SUGOI」勢ばかりじゃない。「日本はイスラムにこれだけ好かれている、だからパレスチナやイラン・イラクについてアメリカと共同歩調を取るべきではない」みたいな主張も多かった。

ただ、その日本への厚意の中に「(非西洋・非白人の)日本がアメリカと闘ったこと(どうかするとロシアとも)」、その戦争があったからこそ好き、という流れもあったことは間違いない。
それはメキシコなど中南米や、どうかするとアメリカの非白人層の中にもあった、とも言われる。

「そうだろう。誇りがあるんだ。ネイティブアメリカンは奴隷になることより、死ぬまで戦うことを選んだ。だからほとんど生きのこってない。日本人だって屈服することよりも、死ぬまで戦うことを選んだじゃないか…(略)」


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この話と大きくつながる「力・軍事を全体的に肯定的評価する風潮」についてはは、同じくエジプトに留学していた池内恵氏もときどき語っていたな。

増補新版 イスラーム世界の論じ方

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  • 作者:池内 恵
  • 発売日: 2016/05/07
  • メディア: 単行本




この発想だと、日本の「平和」でなく「(過去の)武」が評価されていることになる。軍事や戦争を、そういう文脈で評価する国や文明もそれなりにあること、そこを忘れるのもいろいろ危険なのだろう。