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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

【建国記念日再放送】平田篤胤の狂信的国学を、常識・穏健の立場からツッコミ倒した「片山松斎」という人がいた(「お言葉ですが…」別館4より)

元は2017年の記事だったかな?もう夕方ですけど、この日に記事を「再放送」します。



建国記念日特集。
建国記念日がこの日になったのは、神武天皇がうんたらかたらだからですが(よく覚えてない)、そういう日本神話の復権に一枚かんだ人々が、江戸期のいわゆる国学者、あるいは神道家の人たちでした。
で、
賀茂真淵とか
本居宣長とか
平田篤胤とかは

教科書にも載ってますし、そもそもMS−IMEで一発変換できる、いわゆる歴史上の重要人物です。
とくに最後の平田篤胤は、水木しげるサンも興味をもって生涯を漫画化するほど、個性的な人物でした。たいそう熱心な勉強家でもありました。フハッ。


ただ・・・・・・・・・水木しげるが扱っているということは、実はかなりその言動・主張がアレであった、ともいえるのだ(笑)

片山松斎を紹介するためには、まず大前提として
平田篤胤のアレな感じを紹介しなきゃいけず、いまこの文章の元ネタにしている高島俊男氏は、それをやっているのだけど、そこまで引用するとおいらがしんどい。

この原典が岩波文庫になっていることを紹介し、あとは片山松斎の言葉を紹介しよう。


ただ、いまパソコンがなんか不調でフリーズが多いので…習作的にtwitterで以前書いた、ごく短文を再録することにする。

https://twitter.com/gryphonjapan/status/558049282256011266
 @matu2syun @ITAL_ 平田篤胤のせいで古事記で何の活躍もしない天之御中主神が急速に偉くなってしまった。この説をそのまま「日本神話」として説明しちゃう本もある


gryphonjapan ‏@gryphonjapan 2015年1月22日

一種の「ヒラタ教」なんですよね。宗教は宗教で、それを広めたのはみごとなもんですけど 

いつか書きたいけど「片山松斎」という同時代人が平田篤胤をたしなめた文が「神話は神話として扱いなさい。証明しようとするから矛盾が出る」「日本と外国に、上とか下とかないよ」という理性的なものなのだが、そんな人は全く無名、平田は歴史を動かした… 


【参考】現在(2015年1月)、"片山松斎"でのグーグル検索ヒット数は約 374 件 。
https://www.google.co.jp/#q=%E7%89%87%E5%B1%B1%E6%9D%BE%E6%96%8E
(※2017年1月現在、ヒット数は約 209 件に減ってた!)
 ※2022 年の計測では 715 件。

自分が知ったのは高島俊男お言葉ですが…別巻4」収録「平田篤胤と片山松斎」





なかなか片山松斎のことを書けないのは、「片山の平田へのツッコミを銀魂風に翻訳したい」という不要なハードルを考えているから(笑)

あのそれ キリスト教だよね
どう考えても聖書のパクリだよね
おもいきり子供だましの妄想なんだけど

みたいな…



全く無名ながら、江戸時代の良識・常識の最高水準を示す「片山松斎」についてのツイートが多数RTされた。嬉しいので、元ネタの史料(高島俊男お言葉ですが…別館4」)を紹介しておきますね。ただ字数制限の関係で画像にて。適宜補足します。


片山松斎の平田篤胤批判(1)
「世界に本末を分かちて我国を以って万国の本国と褒め、外国を末国と貶すが如きは道理に於いて当ることなし。異邦人是を聞かば嘲笑軽賎せんこと疑いなし…(略、要は「地球は丸いのだから」)国土に上下本末いささかも有る事なし。」


片山松斎の平田篤胤批判(2)
「日本の天皇を万国の大君と称する事甚だ以って不通の論なり。…(略)…万国の中、何れの国にても日本の冊封を受ける国はなし…日本は独立の国にして山城の天皇は日本国の天子也。万国の天子に非ず。支那には支那の天子あり。西洋諸国各々其国の天子あり。」


片山松斎の平田篤胤批判(3)
「(古事記の)神代の事は強いて【XX(当方この字読めず)】する事無く唯其の儘置いて可なるべし。・・・…神代巻は夢幻也。うつつの事を以って談ずる事なかれ。巫祝の徒古事記神代巻の蹄(わな)にかかり、遁るる事能ず、憐れむべし。」



片山松斎の平田篤胤批判(4)
「無理無体に日本を褒称し、日本を漢土と同じ様に開闢(かいびゃく)も久しと偽り…空蒙虚冥を構て云い紛らす…(歴史の古さは自慢でも欠点でもない)…開闢の前後を争ひ日本は万国の本国などと誇耀するが如きは皆小智小見のなすところにして、大人のいふべき事に非ず」


実に正論で常識的。…で、そのせいでインパクトが無かったのではないか(笑)…と、高島氏がさらに元ネタとした研究者(中野三敏氏)も語っている。


「歴史のダイナミズムは却って篤胤の強引・片頗な解釈を、時代の牽引車として位置づける動きを示した」
…それが、歴史や宗教なのでしょうかね…(了)

少し、銀魂的ツッコミに翻訳してみる



西洋の窮理を断ずるに随て古事記神代巻は弥つまらぬものと成て守備善ふする事能力はず。西説を以て彼書を和合するときは木に竹接ぎたるごとくして一向に折り合わず。(略)所謂贔屓の引き倒しにして、神代は神代にさし置、西学は西学にして少しも附会する事なく正路に是を修学せば国家の益と成りて実の国者たるべし。


ちょっと篤さん(※平田篤胤)、アンタ、
なにさらっと西洋の天文学古事記の描写をまぜてんですか!まぜるな危険どころじゃないよ!
木に竹ついでるから、継ぎ目が初心者の造ったプラモデルよりバレバレなんですけど!
普通に西洋の学問は学問で、その古事記をちょっとこっちにおいといて学べばいーでしょーがァァァ!
それが国のためにもなるし、アンタも真の愛国者になるんじゃないですかァァァ?
(声:阪口大助

神代といふは日本書紀発端に術るがごとく太古の別名也。太古の人外国を経営する事はさて置き、自国を経営する事能はず。野に処り穴に住て、衣服もなく火食もなし。今の奥蝦夷の地、並びに当方亜墨利加の辺地など、神代といふべし。汝等神代といえへば滅多無性に有難がれ共、我は然らず。神代は一向羨むべきものにあらず。居家田畠もなく、茫々たる広野のみにて…禽獣に異なる事なし。実につまらぬ世の中也。仏者の仏在世を褒め神道者の神代を党と部は同床各夢の盲味、大笑すべし。


あのスイマセン
神代とかそういうのいいんで

そういうの、今でいえば(ピー)や(ピー)みたいなライフなんで
ぼくら都会っこなんで、ユニクロもガストもジャンプもないとか
マジありえないんで

そういう何にもない何にもないまったく何にもないなのは、ギャートルズムッシュかまやつさんにおまかせしますんで
(声・杉田智和

・・・・・・・・・・・やっぱ日本ツッコミ界の頂点に立つ「銀魂」、マネするのもむつかしいな(笑)


この無名人が、高島俊男氏に紹介されるまで

本人が詳しく書いている。

岩波書店のPR雑誌「図書」2010年5号、中野三敏先生の連載「和本教室」第24回で紹介された。
・片山松斎の平田篤胤批判書「国学正義編」は、現在その連載をかいた中野氏の蔵書と、もう一冊しか現存してない
・高島氏が興味を覚え、中野氏がこの書について論文を書いた「国際高等研究所報告書0701(中川久定編、2007年)」を読みたいと思ったのだが見つからず、やむを得ず中野氏に直接論文の読み方を問い合わせた
・そしたら中野氏が、資料だけでなくもとの原文コピーも送ってくれた。
・論文には、片山だけでなく同じように常識的・穏健的な学識と判断によって平田神学を批判した奥州二本松の服部大方という侍も紹介されていた


のだという。
専門の碩学・中野氏の論文を、専門家でもあるが現在はコラムニストとして一般の啓蒙にかかわる知識人がかみ砕いて教えてくれる。

それによって、現在著作がたった二部しか残っていない、ひとりの隠れた知識人が
「歴史法廷の再審」を受けることができ、平田篤胤の虚妄の学へのすぐれた批判が記録に残った。
ついでにブロガーが便乗で記事を一本書いた。

これも、歴史のダイナミズムかと思います。


平田篤胤についてもっと知りたいひとは

ウィキペディアや上記水木しげる漫画もあるんだけど、
このかた(ハコ氏)が、よく平田についてツイートしていて、面白いです

https://twitter.com/hakoiribox


https://kakuyomu.jp/users/hakoiribox

このひとの篤胤ツイート、今思えば折に触れてまとめてればよかったんだけど、
ごくわずかに、以下のまとめなどに採録させてもらってた

日本の「歴史の長さ」の議論から、神話や歴史の性質について - Togetterまとめ https://togetter.com/li/1032120


資料

野村克也氏逝去/スポーツ報知は「…とTBSでニュース速報があった」という第一報記事を配信

野村克也さんが死去 ヤクルト監督時代に日本一3回…TBSが報じる
2/11(火) 9:23配信スポーツ報知

 元ヤクルト監督で野球評論家の野村克也さんが死去したことを、11日放送のTBS系「グッとラック!」(月~金曜・前8時)がテロップで報じた。84歳だった。

https://hochi.news/articles/20200211-OHT1T50032.html
headlines.yahoo.co.jp

智将、逝く。やはりだいぶ老いられたという印象があり、覚悟は少ししていた。安らかなれ


ついに「テレビ番組の内容をそのまま記事に」はここまで来た。別に悪いことではない。

「元ヤクルト監督で野球評論家の野村克也さんが死去したことを、11日放送のTBS系「グッとラック!」(月~金曜・前8時)がテロップで報じた」と、別にTBSとの系列関係もないであろうスポーツ報知がネットの記事にした。
いつ、どこで最初に報じられたのか(TBSが最初なのか?)とかわからないけど、
とりあえずスポーツ報知はそうやってネットでの第一報とした。
※その後更新して、その記述を変更している(自分たちでも確認できたのだろう)。元画像はこのスクリーンショットの通り。

f:id:gryphon:20200211102207j:plain
2020年2月11日の野村克也氏逝去ニュース、報知の最初のソースは「TBSのテロップ」

この話、何度も書いてきたが、別に悪いことではない。少なくとも、読者のほうで、これで困るひとはいまい。逆に、このおかげでいち早く情報に触れたひともいるし、番組出演者の発言の文字起こしに関しては非視聴者にも内容が分かるのでありがたいことだし、世のなかの「進歩」といって差し支えないのではないか。


ちょっとびっくりしたのも事実だが、慣れるべきなのである、社会全体が。

関連過去記事

…最近、J-CASTニュースとかハフィントンポストは、こういうテレビ番組の発言をそのまま文字起こしして「ニュース」として伝え、それが安易だと批判されたりもするけど、実際にニュース価値があることも多いし記録として貴重なのだから肯定されるべきだろうと、こういう時はつくづくに思う。あとで消すにしろ、見ながらずっと録画しっぱなしで、こういうスクープ発言があったら再度見直す、聞き直すということを本当はすべきだと思うら
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…ところでこの機会に、この話を再論したい。ハフポスのこの記事は、張本勲氏のテレビ番組に出演しての発言と、ダルビシュ有氏のツイートを紹介・採録し、それに書き手の論評、感想を付け加えているだけである。いわゆる「コタツ記事(コタツに入ったままでかける記事)」というやつだ。
だが、である。
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野村克也追悼で過去記事紹介

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ちょっと読んでいただけると、往年の野球ファンには面白いと思う。元ネタはとある記録記者の本だし。


野村克也 野球論集成

野村克也 野球論集成

新書大賞(中央公論社)2020が発表。1位は大木毅氏『独ソ戦』(岩波新書)

中央公論 2020年 03 月号 [雑誌]

中央公論 2020年 03 月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/02/10
  • メディア: 雑誌


独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)


ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)

ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)

  • 作者:宮口幸治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/07/26
  • メディア: Kindle


教育格差 (ちくま新書)

教育格差 (ちくま新書)





幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)

幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)


女性のいない民主主義 (岩波新書)

女性のいない民主主義 (岩波新書)



一切なりゆき 樹木希林のことば (文春新書)

一切なりゆき 樹木希林のことば (文春新書)



オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史 (中公新書)

オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史 (中公新書)




www.chuko.co.jp


この新書の賞、だいぶ権威感、ステータス感を増していると個人的には思う。「賞」としての成長も併せて見守りたい

ドラえもん・ひみつ道具の「AI手塚治虫」、そのAIに「敬語を使う」ドラがエモい。

と、いう視点から。



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ドラえもん、AI手塚治虫にも思わず敬語を使う

藤子不二雄コンビが、というかトキワ荘グループはほとんどみな、手塚治虫を神のごとく仰いで漫画の道に入ったことは論を待たないが、ある時期に手塚との葛藤があった石ノ森章太郎…などなどとは別に、藤子・F・不二雄先生が、晩年までかなり純粋な手塚崇拝者だったことは事実のようですね。


晩年、大御所になったときも、うっかり編集者が手塚治虫を揶揄というか批判したところ、その人が藤子プロ出入り禁止になったという話は有名。

この話は大全集のあとがきのどこかにあることは間違いないのだが、今回改めて検索してみた所「ミラ・クル・1」の回に、当事者の千葉和治コロコロコミック初代編集長が回想しているようだ。

藤子・F・不二雄大全集 ミラ・クル・1/宙ポコ/宙犬トッピ

藤子・F・不二雄大全集 ミラ・クル・1/宙ポコ/宙犬トッピ

巻末に初代コロコロコミック編集長の千葉和治さんの
あとがきが掲載されています。
千葉さんが手塚先生を批判したときには
温厚で誰にでも優しかった、あのF先生が
ひどく怒ったというこぼれ話なども楽しかったです
plaza.rakuten.co.jp

手塚治虫をdisった編集者が藤子・F・ 不二雄に大激怒され、1週間の出禁になった話は知っていたのだが、
後書きが月刊コロコロコミック初代編集長、千葉和治で、その事を書いていたので編集者が誰だったかが解った。
でも、この文面を読むに千葉和治は「手塚治虫の新人潰し」を批判した事だったらしい。
だとすれば、石ノ森章太郎とのジュン事件を筆頭に「手塚治虫の新人潰し」は事実だから言われても当然だろと。
read.seesaa.net

関連まとめ

togetter.com



とりあえず、こういう人とは大違いであった

「インターネットが初めて来た時代」を描く漫画「オンラインの羊たち」という作品がある

viewer.heros-web.com

1999年、とある片田舎。3人の中学生男女は、誰にも知られることなく情報を発信できる新たなツールを手に入れた。時間も距離も関係なく、顔の見えない相手とも繋がれる自由なネットの海に、彼らは飛び込んで行って……。忘れられないオンラインの青春が今、始まる! チャットでマニアックな会話を楽しんだり、お絵かき掲示板に常駐したり――“テレホタイム”が待ち遠しくて仕方なかったインターネット黎明期を描いた、ネット時代の新感覚ノスタルジックストーリー!

オンラインの羊たち 1巻 (ジヘン)

オンラインの羊たち 1巻 (ジヘン)

  • 作者:詩原ヒロ
  • 出版社/メーカー: Nagisa
  • 発売日: 2018/11/29
  • メディア: Kindle
オンラインの羊たち 2巻 (ジヘン)

オンラインの羊たち 2巻 (ジヘン)

  • 作者:詩原ヒロ
  • 出版社/メーカー: Nagisa
  • 発売日: 2018/11/29
  • メディア: Kindle

と、いう作品なわけです。

全然存在をしらなかったけど、作者は 詩原ヒロ というかたで
twitter.com

この作品はどこかのアプリで連載されてた。 で、これがアプリ時代、ネット漫画時代のおもしろさだろうけど、そのサイトなのか、また別のサイト?なのか「リバイバル連載」というのが始まったらしいのね。
ああ、あれか、月刊HERO'Sの公式サイトか…以前「異世界もう帰りたい」の時で見つけたよ。そのまま忘れてたよ(笑)


あと、この前のひろゆきインタビューに出ていた「初期のインターネットはほとんど男性がやっていた」が事実かどうかって議論とかするんで、その流れで話題になり、紹介されているようだ。

www.huffingtonpost.jp

その時代の「あるある」も一般常識も、言い残しておかないと伝わらない、と実感

パソコンがテレホーダイの時間じゃないとつなげないなんて当たり前のことじゃん、とかいうのも肌感覚でわかる。だから正直「この作品、当時の当たり前の日常と、それへのリアクションを当たり前に描いてるだけでちょっとひねりがないんじゃない?」と思う部分も最初の最初はあった(笑)

だが、ネット黎明をWIN95の出た1995年とするなら、もう25年、四半世紀。ど根性ガエルの先生の、教師生活と同じ年数なのだ(笑)
そして自分に置き換えてみたまえ。テレビが来てから生まれた子はテレビが当たり前、ビデオが最初から家にあった子はビデオが当たり前だった。
家に初めてテレビが来た日、ビデオを初めて買った日を鮮明に覚えている世代とは、感覚が違っていて当然だったではないか。


それはインターネットも、2ちゃんねるも、Iモードも、ブログも、togetterも、youtubeも、スマホも…まったく同じ道をたどっているのだ。


だから、天下のNHKだって「インターネットの歴史を振り返る」特番を流したし、なんといっても、そういう黎明期を回想する「インターネット老人会」という洒落た造語も生まれた(この造語者は誰ぞ?あなたには、名誉を受ける権利がある)

ゲームには、そんな黎明期を回想する漫画がかなり出ている。

ピコピコ少年

ピコピコ少年

ピコピコ少年EX

ピコピコ少年EX

8bit年代記 (GAME SIDE BOOKS)

8bit年代記 (GAME SIDE BOOKS)



その他リンク集
plan-ltd.co.jp

ならば、
ほぼ隣接ジャンルというか、そこからつながってネット黎明期を語る作品もないではないけど、ゲーム回顧からの派生ではなく、真正面から「インターネットの時代を回顧する漫画」があっても、それは面白いはずだ。

いまは昔のものがたりか、今なおなのか…漫画やアニメにはまったり、その絵を描く人は「オタクだオタクだ」とはやされた時代。

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インターネット黎明期を描く「オンラインの羊たち」


特に田舎、地方だと、マイナーな趣味を「同じように愛好する人」がどこに何人いるのかもわからない。雑誌には「ペンフレンド募集」コーナーが並ぶ。

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インターネット黎明期を描く「オンラインの羊たち」

そんな中でインターネットには、周りでは誰も話をしていない、自分が大好きなあのジャンルの「ファンサイト」がある!!

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インターネット黎明期を描く「オンラインの羊たち」


はい、これらの感覚を、基本、今の20代、30代は「知らない」「実感していない」のです。
ならば、語り継ぐべし。
と、いう作品なわけです。

・人は、自分が生まれた時に既に存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる
・15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられる
・35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる

ダグラス・アダムスの法則
togetter.com

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杉田玄白は「蘭学事始」で解体新書の苦闘を記録する(みなもと太郎風雲児たち」)

書洩かきもらしは? と歴史家が聞く。
 書洩らし? 冗談じょうだんではない、書かれなかった事は、無かった事じゃ。芽の出ぬ種子たねは、結局初めから無かったのじゃわい。歴史とはな、この粘土板のことじゃ。
 若い歴史家は情なさそうな顔をして、指し示された瓦を見た。それはこの国最大の歴史家ナブ・シャリム・シュヌ誌す所のサルゴン王ハルディア征討行せいとうこうの一枚である。話しながら博士の吐はき棄すてた柘榴ざくろの種子がその表面に汚きたならしくくっついている。
 ボルシッパなる明智の神ナブウの召使めしつかいたもう文字の精霊共の恐おそろしい力を、イシュディ・ナブよ、君はまだ知らぬとみえるな。文字の精共が、一度ある事柄を捉とらえて、これを己の姿で現すとなると、その事柄はもはや、不滅ふめつの生命を得るのじゃ。反対に、文字の精の力ある手に触ふれなかったものは、いかなるものも、その存在を失わねばならぬ。
www.aozora.gr.jp

そんなわけで「ふらっとヒーローズ」で「インターネット黎明期回顧マンガ『オンラインの羊たち』がリバイバル連載中」と覚えてもちかえってください。
viewer.heros-web.com


あと、この作品は今現在、「マンガ図書館Z」に載っていたが、「リバイバル連載」に伴って(かな?)マンガ図書館Zから作品公開を引きあげるらしい。
こういう仕組みもあるんだね。

オンラインの羊たち 1
著作者:
詩原ヒロ
提供出版社:
Nagisa
閲覧数:7,087

本作品は2020年02月14日にて掲載を終了しますので、お早めにお読みください!「WEB本棚」に登録されている場合には
終了日に自動で削除されます。
www.mangaz.com
www.mangaz.com

参考別記事

この作品は、あとから当時を回想したものだから、この一覧で探した資料とは違うけど、隣接はしているので。
m-dojo.hatenadiary.com

『8.6秒バズーカー』は「原爆投下日との連想に『十全な検討』が無かった!(意図的でなくても)」と怒られて然るべきなのかなあ(イヤイヤイヤ)

headlines.yahoo.co.jp
集英社は7日、『週刊少年ジャンプ』2020年10号に掲載された連載漫画『僕のヒーローアカデミア』第259話に登場したキャラクター名について、「中国をはじめとする海外の読者の皆様に不快な思いをさせてしまいました」と謝罪した。作者の堀越耕平氏も「大勢の方に大変不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」とコメントを発表した。

【画像】ジャンプ編集部が投稿した『ヒロアカ』キャラ名についての謝罪文

 同作に登場したキャラクター「志賀 丸太(しが まるた)」について、「過去の悲惨な歴史の記憶を想起させるとのご指摘を、中国をはじめとする海外の読者の方々から多くいただきました。『志賀(しが)』は他の登場人物名の一部から、『丸太(まるた)』はその外見から命名したもので、過去の歴史と重ね合わせる意図は全くありませんでした」と説明。

 その上で「しかしながら、『悪の組織の医師』というキャラクターの設定とこれらの名前が合わさった結果、中国をはじめとする海外の読者の皆様に不快な思いをさせてしまいました。事前に編集部が表現について十全な検討を行うべきでした。深くお詫び申し上げます」


「ヒーローアカデミア」未読の作品ですので、当初はあまり追っていなかったのですが(ほぼ、はてブ経由)、そんなブクマなどでちょっと目にしたのが「8.6秒バズーカー」という名前。(その連想に、最初に至った方々に敬意を表します)
これも、すべてはてな経由で見知った話題だったなァ…と思い出すのっでした。もう遥か以前……とオモタら、まだ5、6年前の話かいな!! 
これも自分、ネタ自体はほとんど目にしてねーーー。ラッスンゴレライがコンビ名か、8.6秒バズーカーがコンビ名かもわからんかったし、バズーカじゃなくて最後に「ー」が入るのも初めて知ったわ。


ただ、世界に開かれた窓、はてなブックマークのおかげで、うっすらと騒動は覚えている。

その総括、後日談のような記事が昨年出て、話題になったよね。

times.abema.tv

で、これではなく、配信されたヤフー記事に多くのブクマがついた。
b.hatena.ne.jp
※記事自体は消えてる。ブクマを読んでください


で、当時も、何しろコンビ自体を知らないものだから、とりたてて大きな関心はなかったけど、
「8.6秒の8.6が広島原爆投下の8月6日に由来するなんてこじつけ、デマのたぐいだろう。そりゃまた災難だな」と思った。
いまでもそれにはまったくかわりない。
意図的に、広島原爆投下にちなんだ名前をコンビがつけた、なんて意図にまで踏み込んで決めつけるのは邪推のたぐいだ。


だが。
世は令和になり、テン年代も境を迎えたいまとなっては、別の解釈と判断があろう。

なにしろ、「8.6」は数字としても、そのあとにつくのはバズーカー…軍事用語である。しかも「爆発」と関りある言葉である。

いつしか成立、施行されてた「事前に十全な検討を行わなかった罪」には問われるんじゃないかな???
(※罪とは法的な意味ではありませぬ)


abemaTVのニュースで書かれているこれら……

f:id:gryphon:20200209012833j:plain
8.6秒バズーカーが言われたあれこれ。「意図的」とするのはデマでも「事前に十全な検討を行うべきだった」???


これらも、「意図的にこんな意味を込めてやってた!!」は「バカバカしい、そんなことあるかい」でございますが、「そういうふうに連想されないよう『事前に十全な検討を行うべきだった』のでは?」と言われたら…はてどうしよう。


というか、今回の「ヒーローアカデミアの一件」に関して、8.6秒バズーカーコンビにご意見を伺う、語ってもらうという企画はどうでしょう??
これ、けっこうリーズナブルなギャラで引き受けてもらえるんじゃないでしょうか???

最後の最後に、すごい企画を思いついてしまった。ネットメディアでも活字メディアでも、当方に無断でやってもらってかまいませんよ。(了)


先におの二者の共通性を論じた方がいたようだ

コメンテーターで「BuzzFeed Japan」記者の神庭亮介氏は「まず(お笑いコンビ)8.6秒バズーカーの『ラッスンゴレライ』を原爆投下と関連付けるデマが広がってすごく叩かれたことを思い起こした。実際に読んでみて『731部隊』を強く想起させるような内容ではなかったので、批判がやや強引かなと感じました」と同問題についての印象を語った。

times.abema.tv

漫画「望郷太郎」に説明抜きで「ポトラッチ」が登場したので、超絶おもしろSF「ポトラッチ戦史」(かんべむさし)も紹介したい

まず山田芳裕「望郷太郎」に関しては説明は省く。なぜならこの前、こういう記事を書いたし
m-dojo.hatenadiary.com

1-3話が無料で読めるコーナーもまだあるからだ。
comic-days.com


ようはそういった、いつの時代かわからなけど今から遥か未来……。
それも文明がいったん滅び、前近代的異世界っぽい世界になったと地球を、冷凍睡眠で「現在」から来た日本人が旅をするってSF話。


で、旅するなかで出会った村で、別の村とのまつりがあるのですが、これが「ポトラッチ」なんです。

ポトラッチ。
はいこれ、基礎教養だよね?みんな説明抜きでしってるよね……?  ってことがあるわけねー。サブカルというかSF的、民俗学的伝奇的なことを知りたがる界隈でしか通じない。
togetterで結構話題になる「あなたの『四神』はどこから?」「あなたの『臨兵闘者皆陣烈在前』はどこから?」と同じよーなもんだ。少なくとも義務教育で教えてくれるような知識ではないはず。

ところが山田芳裕はやっぱりガチで、これをナレーションで説明とかしてくれない。白土三平梶原一騎は、実はお母さんのようにやさしかったのだ。

しかし、まったく説明抜きにポトラッチが出てくるから、その異様な迫力や、「全く理解できないが、何かの論理と共有されている常識が、あの世界にはあるんだろうな」…と感じさせるものがあるのも事実。
では、実際に見てみよう。

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山田芳裕「望郷太郎」で描かれた『ポトラッチ』
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山田芳裕「望郷太郎」で描かれた『ポトラッチ』
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山田芳裕「望郷太郎」で描かれた『ポトラッチ』
以上、週刊モーニング7、8号より

例によって、サイト「コミックDAYS」有料会員なら、まだまとめて読める。
comic-days.com

ja.wikipedia.org

チヌーク・ジャーゴンで「贈る」または「贈り物」を表す言葉に由来する。ポトラッチは太平洋岸北西部先住民族の重要な固有文化で、裕福な家族や部族の指導者が家に客を迎えて舞踊や歌唱が付随した祝宴でもてなし、富を再分配するのが目的とされる。ポトラッチは子供の誕生や命名式、成人の儀式、結婚式、葬式、死者の追悼などの機会に催された。太平洋岸北西部先住民族の社会では、一族の地位は所有する財産の規模ではなく、ポトラッチで贈与される財産の規模によって高まった。ヨーロッパ人と接触する以前は、保存性のいいキャンドルフィッシュ(Thaleichthys pacificus)の油や干物、カヌーが贈与され、特に裕福な者のポトラッチでは奴隷が譲与されることもあった。

白人との交易が活発になると、先住民族社会の富の偏在が先鋭化し、また疫病の流行により部族内の重要な地位に空きができたことから18世紀後半から19世紀初めにかけてポトラッチのインフレーションが起こった。食料では、干物の他に砂糖や穀粉が分配されるようになり、毛布や金属製品、等価交換の媒体として用いられる装飾された金属、現金までが贈与された。等価交換の度が行き過ぎて、片方が貴重な品を破壊するともう片方もそれと同じ価値の品を破壊する、というふうに、分配された品物が受け取られた直後に破壊されることもあった。クヮクヮカワク族などでは社会的地位をめぐりポトラッチ開催の競争が起こった。


頼みのウィキペディアもいまいちわかりにくい。俺なりにもっとざっくりいうと
アメリカ大陸先住民の風習で、部族同士で「贈り物」をする。
・それは単なる好意ではなく「こんな贈り物をできる俺らはSUGEEEんだぞ。お前らはその下な」を意味し、上下関係や主従関係を左右する。
・それはどこかで過剰になり「貴重なものを相手にあげる」ではなく「貴重なものを目の前でぶっ壊す」にまでなる。


・・・・・・という、実在した風習なんです。初めて聞いた時はおいらも「いやー、なんて奇妙キテレツな風習なんだろう」と思いつつ「いや、そこに至る思考過程は、なんとなーくわかるな」とも思ったものでした。

で、これを題材に、80年代の現代思想、ゲンダイシソーは「過剰と蕩尽」だとかバタイユだとか栗本慎一郎だとか、そのへんがこのへんをあれこれ言ってたらしいし、自分も確かにそれで断片的に知識を得てはいるのだが、そんなものを紹介するほど俺は暇人ではないし、悪人でもない。
金銀財宝盗んでも、畜生外道と現代思想語りは許せねえ。



だから紹介するのはかんべむさし「ポトラッチ戦史」のほうなのである。長編化ものちにされたらしいが、そっちは未読だ。

中核は、けっこう単純なワンアイデア・ストーリーなのである
世の中、いいんだかわるいんだか、最近はこういうフィクションのあらすじ書いていかがでしたかなサイトもあり
ara-suji.com
実際にこれを読めばあらすじはつかめるんだけど、ちょっと業腹なので自分なりに語る。

コロンブスが、探検の旅の中でポトラッチに出会う(事実)
コロンブスはこの風習を、タバコや梅毒のように(笑)、欧州に持ち帰る。そしてポトラッチはたばこや梅毒のように、欧州から世界中に広まる(笑)
・ポトラッチはある意味戦争の代わりであるから(事実)、以降の世界の歴史は「戦争」に「ポトラッチ」が代入される。
・つまり、第一次世界ポトラッチの惨禍のあと、ヒトラースターリンルーズベルトや東條が、さらにすさまじい「第二次世界ポトラッチ」を……


ここの「パピルス」という電子書籍サイトでは、一篇から読めるっぽいが。
サンプルより。

… 「ええ、それでは唯今より、ソ連邦の名において、米中両国に対し、礼をつくさせていただきます」
 アナウンサーは言い、採掘されたダイヤモンド鉱を無造作につかんで、かたわらに設置された超高熱炉の中へ放り込んだ。
 「さあ、皆もやってくれたまえ」
 声に応じて、採鉱夫達がワッとむらがり、我がちにダイヤを投棄しはじめた。
 「この、この」
 「ダイヤ鉱、燃やしてみればただの炭」
 画面がかわり、シベリアの大森林地帯が写った。飛行機からの空撮だった。
 「紹介しましょう」
 別のレポーターが快活に言った。
 「ピオネール少年団の諸君達です」
 眼下にひろがる無限ともいえる巨木の陰から、これまた無限とも思える子供達が現われ、空を見あげて手をふっていた。それぞれの手の先でキラキラと光っているのはノコギリらしい。
 「この母なる大地の大森林と、それを倒す彼らの貴い労働力。この二つの価値を同時に提供いたしましょう」
 合図があったらしく、少年達はいっせいに巨木の根本でノコギリを使いだした。何十万何百万本の銀の刃が、キラッキラッと規則正しく光っている。光って地の果てまでつづいている。
 「ふうむ」
 大統領は腕を組み、ため息をついた。
 「手強い奴らだな」
 「こちらも、よほど覚悟を決めませんと」
 「中国はどうなんだ」
 「すぐ写ります。これもなかなかです」
 地肌に蟻の大群が写った。ウジャウジャと集まり離れ、動いている。これも空撮だ。
 「奴ら、何をしているんだ」
 「いまに分ります」
 グッとカメラがアップした。
 「あっ」
 ブラウンは思わず声をあげた。
 「万里の長城を崩している」
www.papy.co.jp

書いててなんだけど バカバカしいな、この話!!

しかし、そのバカバカしさこそが、異能のSF作家かんべむさしの真骨頂であり、われわれはそれに熱狂したのでした。

うちでは「かんべむさし」について以下のような記事を書いていたけど
かんべむさし の検索結果 - INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

気合を入れて本格的に書いたのはこれぐらいか。
m-dojo.hatenadiary.com

かんべむさし作品を再度紹介して、再ブームを作りたい、という夢想はしているんだけど、力不足で果たせていません。
少しツイートしたものを、ほかの人がまとめてくれてた。
togetter.com


補足続報 「20年25号」にて、文章での『ポトラッチ』解説記事が掲載された。筆者は中沢新一氏だが…

描いたあと、「あっ、ポトラッチの説明全然してねーや、通じないかもしんね」とやっと気づいたんだなコレ(笑)

連載が再開された、週刊モーニング 2020年25号にて、ポトラッチの解説記事が載っていた。
ただ、執筆したのは、学問的な姿勢にさまざまな批判のある中沢新一氏であったことも、批判的に付け加えておきたい。