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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ドラえもんで一番好きなコマは、のび太とドラが「ねよう。」と惰眠をむさぼる場面です(10巻)

藤子不二雄ファンはここにいる」の最近の記事で、
koikesan.hatenablog.com
ということで、ドラえもんの中でも特に「幸せそうな場面」がポスターになっているとの話を目にした。

なるほど、どれもすぐれたポスターだ。
ただ……自分の中では断トツの場面、あのベストオブベストのひとこまは無かった。・・・というか、じゃあと探してみたけど広大なネットでも、これをピックアップした引用は無いらしい。
では、そこで紹介しよう。

ドラえもんてんとう虫コミックス10巻には「スピードどけい」という回がある。

ドラえもん (10) (てんとう虫コミックス)

ドラえもん (10) (てんとう虫コミックス)

待望の夏休みまであと三日。のび太はそわそわして落ち着きません。そこでドラえもんになんとかしてくれと迫ったところ、しぶしぶ出してくれたひみつ道具が“スピードどけい”です。

機能と効果
ドラえもんのスピードどけいは、時間を早送りする懐中時計です。

この時計の針をぐるっと回すと、1回転につき1日時間が進みます。
moshimodogu.com


そう、この機能を使って、待ちきれない夏休みにすぐ入ったり、その中でも晴れの日や楽しいイベント日にすぐ行ける…そんな機械を得たのと、そして夏休み特有ののんびり感で、のび太もドラもこんなふうになる。

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ドラえもん「(宿題をほっておいて)ねよう。」~10巻の「スピードどけい」より

拡大……

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ドラえもん「(宿題をほっておいて)ねよう。」~10巻の「スピードどけい」より

寝るときに「ねよう。」と意思を示してから眠る奴がどれぐらいいるのか、はさておいて(笑)、表情を見せないドラの構図が最高でしょ。鼻ちょうちんもふくめ。からのコップ2つも含め。

そして聖書の七つの大罪のひとつ「怠惰」を、ここまで的確にあらわした図があろうか。


と同時に、まだまだ残り期間がある夏休みに、その時間を満喫するかのように、あえて宿題があっても、その存在と警告には目をつぶって遊び、ねむくなったら寝る。
この心地良さ、それをおもいだしませんか。

なお「しゅくだい」がひらがな表記されたバージョンもあった。



しかし、もちろん、それで問題は解決しないのである。

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ドラえもん「宿題がぜんぜんできてない」~10巻の「スピードどけい」より

そりゃあ、やってないんだから、できてないわな……



さて、本日は5月3日。ゴールデン・ウィークも後半ということになりましょうか。
この日に、この「ねよう。」と「宿題がぜんぜんできてない」の画像を紹介するのも、まあ、なんか含蓄があっていいよね。


以上。ねよう。

自身の過去の”鬼畜系”コラムを「やや不謹慎」で済ませるの、メンタルつえーな、と思った(香山リカ氏の著書から)

昨年出た、香山リカ氏のこんな著書がある。

ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論

ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論

バブルに沸く日本で「表現の自由」を拡張したサブカルチャー、その象徴でもある漫画家・根本敬の世界に魅せられた精神科医が、サブカルとともに歩んできた自らの歴史を振り返りながら、90年代「悪趣味」ブームと平成末期の「ヘイト」の関連、表現することの未来と自由の可能性を解き明かす。

私は、31歳のとき書いた根本敬論で、「見てはいけない」と禁止されているものを見るのは「恋」と同じなのではないか、と書いた。「根本のマンガに登場する素材のうち、性倒錯者、糞尿マニア、守銭奴、乱暴者、貧乏な人などは、暗い世界とはいってもあくまで日常の了解がぎりぎり通用する」としながら、「妄想や幻覚、奇形、屍体などが自在に活動しだす時点」では、ついに「見てはいけない」の線が越えられている。私が、それを見たいというのは「恋」の視線なのだ、だから弾圧されることなどあってはならない、と書いた。あのとき「恋」という言葉で説明してしまった根本の漫画を、平成も終わるいま、もう一度、社会の中で考えてみたい。それがこの本の目的である。(本文より)


香山氏の論説を、時間やカネをかけて読む価値はあまりないと思っているけれども、ただこのテーマ設定は面白そうだった。
というのは、やはりこの論を掘っていくと、香山氏が今身を寄せている”陣営”や、自分の基盤を掘り崩していくんじゃないか?感があると思ったからだった。

実際、そういう面は読んでみて感じられた。
たとえば第一章の中では、バルテュスの「夢見るテレーズ」が、倫理に反する作品だということでNYメトロポリタン美術館から撤去せよ、という署名運動があることを紹介している。

togetter.com
togetter.com
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香山氏はこう語る

「だからといってその昔、芸術的価値があった作品が、社会の中で芸術ではなくなり規制の対象となる、ということがあってよいものだろうか」
ポリティカル・コレクトネスと芸術との在り方についていま一度、考えることを迫るものであり、私は重い気分になるのである」


その後、根本敬について、香山流の作品論を語る。ここは読む必要とくになし。太田出版社は、この部分を全部カットして、本の価格を抑えるべきでありました。


それで第5章では、
togetter.com

この種の議論に関して

根本ファンである私自身、それにどう反論してよいか、言葉を見つけられなくなったこともあった
(P255 )

みたいなことを言ってる。

ただ、その前に・・・・・・・・・191、192P

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香山リカ氏、過去に連載した鬼畜系コラム「サイコのお部屋」を「やや不謹慎なタイトル」で済ませる

なにしろ「すぎやまこういちは右翼なので音楽を聴きたくないから、無音でドラクエをやっている」ほどの香山氏である。
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「サイコのお部屋」に罪悪感を感じ、涙ながらに反省の弁を述べる記述でもあるかと思いきや
「やや不謹慎なタイトル」
「今考えると……”鬼畜系”のバリエーションとも言ってもよい」
で、さらっと済ませてることに驚いた。
メンタルつえーな!!!!



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まあ、超絶発言である「原発推進派は心の病気」もいまだに撤回しないし、

原発推進派は心の病気」(香山リカ氏、2012)に、木村幹氏らがあらためて批判 - Togetter https://togetter.com/li/1256098

「日本人」や「50(歳代)」「オトコ」なる、どちらも自分では変更しようのない属性をひとまとめにして「劣化」であると認定…

50オトコはなぜ劣化したのか(小学館新書)

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……しつつ、自身をリベラルであり反ヘイトだと自認している点でまー、その、なんだなんですけどネ。




閑話休題、「ヘイト・悪趣味・サブカルチャー」だが、意外なオチが待っている。

最後に近くなり、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の「なんJ」というところに書き込んでいる住民たちが通報祭りをして、人種差別的youtuberの”凍結祭り”を行っている、ということを絶賛し、

サブカルはやっぱりヘイトではなかった。ヘイトを駆逐するのはサブカルだった。サブカルでよかったのだ」(270P)

という結論に到達する。

・・・・・・なんかに似てるなあ、と思ったら、まさに似たような例を思い出した。

「モンゴル軍がイスラム諸国を攻撃して滅ぼしている、との情報に接した西洋キリスト教国が、そのモンゴル軍こそ、東方にあると言われた偉大なキリスト教の賢王『プレスター・ジョン』が率いる援軍に違いない!!と誤認した」という故事だ。

……その後どうなったかは、ワールシュタットの地が知っている。



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へえ、そういう雑誌か…


【再掲載】「悪趣味」とヘイトの関係とか悩む前に、げんきに香山さんは「実話BUNKA超タブー」のインタビュー(2019年)にご登場してる。

実話BUNKA超タブー vol.43

韓国国会議長の天皇謝罪要求は新天皇の「即位の礼」潰しだった
韓国が世界にバラ撒くウソ徴用工の真実を暴く

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実話BUKNA超タブー 香山リカさんも同じ号に出演
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香山リカ氏、そもそもなんで「実話BUNKA超タブー」に登場したのだろう

香山リカ 心の棚が ジャイアン

ちばてつやが遅刻の梶原一騎に代わり「あしたのジョー」舞台挨拶で先にマイクを握ったら…何が起こったか?(「梶原一騎伝」)

ひとつ前がちばてつや先生の記事なので…直接の縁はないんだけど、この話を紹介しよう。
元は最近出た「純情 梶原一騎正伝」と比較させる意味で、「梶原一騎伝 夕焼けを見ていた男」を再読したのでした。

1995年に初版が出た時読んだから、もう30年近く前。そりゃ細部を覚えている訳が無かった。

ちばてつや梶原一騎に関する記述はいろいろあり、例えば冒頭部分でドヤ街描写など、相当原作をいじってちば先生がオリジナル描写を加えたこと、そのころから「原作の一字一句の改変もゆるさず!」だった梶原一騎がどのように納得したか、
体格差のあるように描いてしまった力石徹が、その後永遠のライバルになったため「同じ階級にするために力石が死の減量をする」という展開になったこと、
白木葉子はジョーが好きなのか嫌いなのか、揺れ動いたこと、逆に紀子がジョーではなくマンモス鈴木と結ばれること
そしてラストシーン……他でも語られていたいろいろな伝説が過不足なくまとめられている。
ちば先生が今度の短編集に収録した最新作「グレてつ」でも一部描かれていた。


そして…へー、斎藤貴男氏、この話に特化した別のノンフィクションも本にしてたのね。

(※ただこの後、夏目房之介氏であったかな、紫電改のタカやハリスの旋風ですでに大人気漫画家だったちばてつや梶原一騎と五分か、或いは格上の存在であり、力関係に敏感な一騎は、最初から一目も二目も置いていたのではないか、と推測していた。)


しかし、その「ジョー」が不世出の人気を確立したあとの話・・・・・・・・梶原一騎が設立した映画会社「三協映画」が、あしたのジョーを映画アニメにする…。

あしたのジョー2 COMPLETE DVD BOOK VOL.5 (<DVD>)

あしたのジョー2 COMPLETE DVD BOOK VOL.5 (<DVD>)

  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: 単行本

……昭和五十六年七月、劇場用アニメ「あしたのジョー2」が、全国の東映系劇場で一斉公開された。制作は梶原の三協映画。前年、その十年前にヒットした「ジョー」のテレビアニメを劇場用に再編集して公開したのが当たったので、その続編というわけである。パート2にはちばてつやの「ちば企画」も出資した。パート2では、力石の死後からラストのホセ・メンドーサ戦までが描かれた。同時平行でテレビアニメ「ジョー2」の企画も進み、こちらが映画公開の頃にはすでに回を重ねているという連携作戦が当たって、試写会の人気も上々だった。

試写会後、東京・渋谷のパーティー会場。挨拶は原作者であり三協映画のトップでもある梶原、続いてちばの順に予定されていたのだが、梶原はここに来る途中で渋滞に巻き込まれ、到着がかなり遅れてしまった。仕方なく、ちばがマイクを握る。「皆さんすみません。梶原先生が遅れているようなので、私が先にご挨拶をさせていただきます―――」
せっかくのお客さんたちを、あまり待たせるわけにはいかない。舞台挨拶は無事進行したが、これが梶原の気を損ねた。
その晩は関係者たちと飲み明かしたちばが、翌日の早朝に帰宅して床につくと、一本の電話に叩き起こされた。初め父親が受話器を取り、本人が眠ったばかりであることを告げたが、どうしても本人を出せという。
電話の内容は、抗議であるようだった。昨日の挨拶は何だ、梶原先生を馬鹿にしたな、というのである。酔った寝入りばなのこととて、初めは相手が誰で、何のことを言っているのかもわからなかったちばは、やがて相手が自分も知っている、梶原にごく近い人物であることに気がついた。
「ああ、あなた○○さんでしたか」「誰だと思ってたんだ、このバカヤロー!」


その後もしばらくの間、梶原周辺からの同様の電話が続いた。ちばが知っている人からの場合も、そうでない場合もあった。「よく恐ろしくもなく、町ん中を走れるな。近くにウチの若い者が行ってないか?」
と、これはジョギングから帰ってきた時にかかってきた電話。梶原の秘書を名乗る男からの、こんな電話もあった。「今、周りの者がそちらに向かって行ったようなんです。知りませんか」
中には、「会いたい」と言ってきた男もいた。指定されたホテルのロビーに出向いたちばが、いったい何を要求されるのかと考えていると、やってきた男は頭を下げてきた。「ちば先生、申し訳ありません。みんな梶原に言われてやってることなんです。すぐ後ろで、梶原が私の足を蹴りながら見張ってるんです。そうでなければ、私だってあんなこと、したくないんです」


梶原とその周辺は、荒みきっていた。それにしても、仕方なく先に挨拶しただけのことで、なぜこんなことをされなければならないのか、ちばには皆目見当がつかなかった。
ちばは当時、この話を誰にもしなかった。が、ちばプロダクションにも毎日大勢の人が出入りしている。梶原周辺の若い者が、自慢げに吹聴したかもしれない。
この話は漫画界で旗原の火のように広まり、編集者たちはそこここでこんな挨拶を交わした。「梶原さん、いよいよ駄目だよ」。
すでに、つのだじろうにまつわる一連の事件は漫画界の常識だった。松本零士の「宇宙戦艦ヤマト」が大ヒットした時も、梶原の周囲には息巻く者があったといわれる。
昭和三十年代、まだ漫画原作に手を染める前の梶原が、やはり戦艦大和が再生され、羽をつけて空を飛ぶというアイディアの少年小説を「おもしろブック」に発表したことがあるからである。もっともそれも、「昭和遊撃隊」で知られる戦前の児童文学者・平田晋策の「新戦艦高千穂」にヒントを得ていたのだが。「それまでの事件には、それなりに理解できる部分がありました。脅迫なんかいけないに決まってるけど、つのださんの件なんかは、梶原さんに分があるとも思います。だけど、このちばさんの一件だけはね。
それだけ、ちばさんはこの業界では人格者で通ってるんですよ。みんなに好かれている。そのちばさんを脅した。ついに、そこまでいっちゃったか......と、業界全体がなってしまったわけです」
今では役員クラスに昇進している、当時のある少年週刊誌の編集長の回想である。この年の秋、ちばの漫画家生活二十五周年を祝うパーティーが催されている。「あしたのジョー」で燃え尽きることのできた男は、なおこんなにも皆に愛されている。
燃え尽きることができなかった梶原の胸に残った燃えかすは、まだブスブスと不完全燃焼を続けていた。
梶原を新たに起用する編集部は、ほとんど談社系の出版社だけになった。「少年マガジン」では、昭和五十七年の一月から「悪役プルース」(峰岸とおる・画)が始まった。前後して「ヤングマガジン」で「女子レスラー紅子」(中城健)、「月刊少年マガジン」で「タイガーマスク=世」(宮田洋一)の連載が開始されている。いずれも当時の梶原のビジネスに連動した格闘技漫画であるという点で共通していた。大ヒットにはならなくても、格闘技界の黒幕が自ら書く情報漫画として、一定の読者層は見込めるという判断が、講談社側にあった。


梶原一騎の言動を「稚気愛すべし」「ガキ大将がそのまんま大人になったようで、憎めない」「悪人というより、コワモテの”悪役”を演じていた」……みたいな感じで弁護する向きもあるが、たしかにそういう面もあるにせよ、結局この一事件だけで、十分に「こういう人物とはかかわりあいを持ちたくない」と思わせるに足る。第一、挨拶の順番にこだわって、かつてのビジネスパートナーに対して取り巻きに脅迫させるなんて稚気というより陰湿な大人のふるまいだろう。


そして、そういう序列への意味のないこだわりなんて…ぶっちゃけ、そのへんの会社にも学校にも業界にも、石を投げれば当たるほど数多い。
梶原一騎、やっぱり弁護の余地ない巨悪だわ」の半面、逆に「悪にしても、そのへんに一山いくらでいる、平凡で凡庸な悪やなあ」感も。




そんな形で、マンガ業界では祭り上げられつつ敬遠された梶原一騎は、ますます格闘技や映画の世界にのめり込み、酒色におぼれ、取り巻きとのタテの人間関係のみになっていく…。
土田世紀編集王」のマンボ好塚は、このへんの業界伝説に尾ひれをつけてデフォルメしたんだろうな。




ただ、本人もそれを自覚していて、本質的にさびしがりやな彼は……、ごく少数の、梶原一騎にものおじしない漫画家とは、たまには温かい交流の場面も持つ。
矢口高雄原田久仁信氏が、それだ。

そこだけが、どんどん暗く転落していく梶原一騎の人生の、ときおりのセピア色の温かい場面として、この本では挿入されている。


残念ながら矢口高雄氏はこの前逝去されたが、ちばてつや原田久仁信氏も、このへんで「パートナー作画者から見た梶原一騎の一場面」を漫画で描いてくれないかなあ。上のような話を敢えて回避して、いい思い出だけでも構わないから……(了)


ちばてつやとトキワ荘の縁を描いた「トモガキ」の前半がtwitterにUPされた


ボクの感想ブクマ

ビッグコミック編集部 on Twitter: "ちばてつやが言えなかった、トキワ荘を巻き込んだ“事件”の話(1/11) #ちばてつや https://t.co/tQr1AUowlK"

あっ、これをネット上にUPしたのね。ちばてつや負傷の経緯のあほらしさと「あほらしかろうとなんだろうと、歴史は動くときは動くよな」という納得感があってね(笑)

2021/05/01 08:38
b.hatena.ne.jp

この「トモガキ」は、白眉中の白眉であってね。これを売りにPRするのは当然でありましょう。


ただ、満州からの引き揚げ経緯を描いた作品や「あしたのジョー」最終回から「のたり松太郎」誕生に至るまでを描いた作品も、非常に重要。
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その他
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『トキワ荘の寺田ヒロオ』に”業界充”の漫画家がなぜか深く共感~「一度きりの大泉の話」から再び連想

ただ単に、慧眼の士のツイートを紹介しただけの記事だが、そのお力で、はてな界隈では大いに読まれた。
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そしてそれほどまでに萩尾望都「一度きりの大泉の話」が反響があるんだろうね。

一度きりの大泉の話

一度きりの大泉の話


そして、その機会に、当時ツイートされた時にすごく印象に残ったが、紹介しそびれた、あるツイートのやり取りに再度光を当てたい。
ことし3月、映画の再上映や再建なった建物で展示会があって話題となった「トキワ荘」と「寺田ヒロオ」についてだ。

トキワ荘の青春 [DVD]

トキワ荘の青春 [DVD]

  • 発売日: 2009/10/28
  • メディア: DVD



これを読み、リツイートしながらこういう感想を持った。


そう、タイトルにうたったけど、登場する皆さんはいずれも作品が大ヒットを飛ばし映像化された…だけでなく、業界内でも比較的…少なくともSNSを見る限りでは相互に、そして他の漫画家も含めての交流があり、それこそまさにトキワ荘のように、機知に富んだ会話で盛り上がり、互いに高め合っているように見える人たちばかりなのだ。だからリア充でなく”業界充”という単語をこしらえた(笑)
ネットがトキワ荘、という見立ては、以前も何度か行ったっけ。
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だけれども、そういう人たちが、楽園ではない影の部分に注目して描かれた「トキワ荘の青春」、そしてその中でも、現実でも一種の”敗者””去り行く者”として描かれた寺田ヒロオに、これほど心を揺さぶられるのだ。

神話として、青春を振り返る時、楽しかった思い出だけが『歴史』に残り、そこは『楽園』として描かれるかもしれない。

記された文(ふみ)だけがこの世に残ってゆく
形ある物だけがすべてを語ってゆく
叫べども あがけども
だれがそれを知るだろう

www.youtube.com

だが、それは・・・・・・・・・・・・・・
その点を、敢えて描いたのが長谷邦夫 の「伝説 トキワ荘の真実」だったのかもしれない。

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トキワ荘の真実 長谷邦夫

伝説 トキワ荘の真実

伝説 トキワ荘の真実

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長谷邦夫 伝説 トキワ荘の真実 寺田ヒロオについて

最後に…この前書いたけれども、寺田ヒロオ氏とトキワ荘の仲間の別れを見るたびに、あの歌がまるでテーマソングだな、と思ったりするのです。
今回の「大泉の話」も……

togetter.com

僕たちは燃え盛る 旅の途中で出会い 
手を取りそして離した 未来のために
夢が一つ叶うたび 僕は君を想うだろう
強くなりたいと願い 泣いた 決意を餞に


www.youtube.com




ゆうきまさみ修業時代、しげの秀一先生と

GW,29日の番組いろいろ

NHK BS

庵野秀明密着ドキュメント100分版・前編
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NHK

映画「聲の形



BSトウェルビ

GW特別企画「シャークネード」一挙放送
4月29日(木)~5月6日(木)よる 7:00~
【ゴールデン・ウィークサメ映画特集】
今年のゴールデン・ウィークはBS12のゴールデン・サメ劇場でサメざんまい!
「シャークネード」シリーズ6作品を放送。


とか、そういうやつ。
ほかにもあるだろうけど、おいおい。



映画『聲の形』DVD

映画『聲の形』DVD

  • 発売日: 2017/05/17
  • メディア: DVD

萩尾望都-竹宮惠子氏の関係に、石ノ森章太郎-手塚治虫を思い出す、との指摘(『一度きりの大泉の話』)


このツイート、途中で拙ブログの過去記事にリンクを貼っていただいた。その縁で遡って、読むことができた。
その記事とはこれだったが、これはドラマ放送に絡めての再紹介で、
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メインの内容はそこから飛んでいるこちらになる。

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作品内容は、その記事を読んでもらうとして…この、「石ノ森先生から見た手塚治虫」を描いた短編が、石ノ森生誕80年を記念して最近、新しい本に収録された、ということをあらためてお伝えする。

213… 風のように……背を走り過ぎた虫 『 ビッグコミックスピリッツ小学館 1989年 8月 14日号・8月 21日号
(略)

石ノ森章太郎は1954年のデビューから1998年60歳までの44年間に及ぶ作家生活の中で770もの作品を描いている。
石ノ森章太郎が巨匠と言われるのは「仮面ライダー」「サイボーグ009」などのヒーローものから「佐武と市捕物控」といった時代劇、「HOTEL」のような現代劇などあらゆるジャンルを手掛け、どの分野でもヒット作を持っているから。

そんな石ノ森章太の膨大な作品群の中から、著者自身が登場した作品をセレクトしたのが本書『石ノ森章太郎の物語」。
トキワ荘での生活を描いた「トキワ荘チャルメラ」や姉、由恵との思い出を描いた「青いマン華鏡」、息子たちとの夏休みを綴った「小川のメダカ」、手塚治虫とのエピソードなど、各作品を386ページにわたり紹介しています。

石ノ森章太郎のファンだけでなく、新しく石ノ森章太郎作品を知った読者にぜひ手にとってもらいたい永久保存版の1冊となります。

【追記】その前の、@kieteki氏の竹宮・萩尾論

あ、そうそう、冒頭に紹介したスレッドだが、最初のツイートに「追記」とあることに気づいた。そのひとつ前にも、同書を論じたツイート群があったのだ。

銀の三角 (白泉社文庫)

銀の三角 (白泉社文庫)

6年に一度の朝を迎える惑星『銀の三角』。そこに住む民人は長い金虹彩の瞳を持ち、近未来を予言する音楽を奏でることができた。だが、彼等は特殊な能力を持つがゆえに、星系の惑星戦争に巻き込まれ、星系の消滅と共に絶滅したと伝えられていた。しかし、それから3万年後、絶滅したはずの銀の三角人がなぜか再び姿を現す——。過去から未来へと時間移動の能力を持つ時空人・マーリーの遙かなる時空をめぐる謎解きの旅が始まる。




一度きりの大泉の話

一度きりの大泉の話

  • 作者:萩尾望都
  • 発売日: 2021/04/21
  • メディア: 単行本

352ページ、12万字書き下ろし。未発表スケッチ多数収録。
出会いと別れの“大泉時代"を、現在の心境もこめて綴った70年代回想録。

「ちょっと暗めの部分もあるお話 ―― 日記というか記録です。
人生にはいろんな出会いがあります。
これは私の出会った方との交友が失われた人間関係失敗談です」


――私は一切を忘れて考えないようにしてきました。考えると苦しいし、眠れず食べられず目が見えず、体調不良になるからです。忘れれば呼吸ができました。体を動かし仕事もできました。前に進めました。
これはプライベートなことなので、いろいろ聞かれたくなくて、私は田舎に引っ越した本当の理由については、編集者に対しても、友人に対しても、誰に対しても、ずっと沈黙をしてきました。ただ忘れてコツコツと仕事を続けました。そして年月が過ぎました。静かに過ぎるはずでした。
しかし今回は、その当時の大泉のこと、ずっと沈黙していた理由や、お別れした経緯などを初めてお話しようと思います。
(「前書き」より)

――お話をずっと考えていると、深い海の底から、または宇宙の星々の向こうからこういうものが突然落ちてくることがある。落ちてこない時はただ苦しいだけだけど、でも、それがふっと目の前に現れる時、宝物を発見した、という気持ちになります。自分が見つけたというより、エーリクが見つけてくれた、そういう気分になります。
そしてこの言葉を見つけたことで、『トーマの心臓』を描いて本当に良かったと思いました。
(「17『ポーの一族』第1巻 1974年」より)

――今回、この筆記を書くに当たって、封印していた冷凍庫の鍵を探し出して、開けて、記憶を解氷いたしましたが、その間は睡眠がうまく取れず、体調が思わしくありませんでした。
なので、執筆が終わりましたら、もう一度この記憶は永久凍土に封じ込めるつもりです。
埋めた過去を掘り起こすことが、もう、ありませんように。
(「29 お付き合いがありません」より)

【目次】(※一部)
●前書き
●出会いのこと ― 1969年~1970年
●大泉の始まり ― 1970年10月
●1972年『ポーの一族
●下井草の話 1972年末~1973年4月末頃
●『小鳥の巣』を描く 1973年2月~3月
●緑深い田舎
●引っ越し当日 1973年5月末頃
●田舎と英国 1973年
●帰国 1974年
●『トーマの心臓』連載 1974年
●『ポーの一族』第1巻 1974年
●オリジナルであろうと、原作ものであろうと
●排他的独占愛
●鐘を鳴らす人
●BLの時代
●それから時が過ぎる 1974年~2017年
●お付き合いがありません
●あとがき(静かに暮らすために)

【特別掲載1】「萩尾望都萩尾望都であるために」(文・マネージャー 城章子)
【特別掲載2】 萩尾望都が1970年代に描き溜めた未発表スケッチ
【特別掲載3】 マンガ『ハワードさんの新聞広告』31ページ

ご注意】
※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。

竹宮惠子の大ヒット自伝が、ついに文庫化!

★文中に多々登場する竹宮作品、書籍執筆時に著者が本当は入れたかった作品の中身(コミック立ち読みファイル)を、主だった12作品・計130頁の参考画像集として電子版だけに収録。


石ノ森章太郎先生に憧れた郷里・徳島での少女時代。
高校時代にマンガ家デビューし、
上京した時に待っていた、出版社からの「缶詰」という極限状況。

のちに「大泉サロン」と呼ばれる東京都練馬区大泉のアパートで
「少女マンガで革命を起こす!」と仲間と語り合った日々。

当時、まだタブー視されていた少年同士の恋愛を見事に描ききり、
現在のBL(ボーイズ・ラブ)の礎を築く大ヒット作品『風と木の詩』執筆秘話。

そして現在、教育者として、
学生たちに教えている、クリエイターが大切にすべきこととは。

1970年代に『ファラオの墓』『地球(テラ)へ…』など
ベストセラーを連発して、
少女マンガの黎明期を第一線のマンガ家として駆け抜けた竹宮惠子が、
「創作するということ」を余すことなく語った必読自伝。

漫画ファンはもちろん、そうではない読者からも
感動の声が続々と寄せられ、
朝日、読売、毎日など各紙書評や
各種SNSで大反響だった単行本が、ついに文庫化。

カラーイラスト増ページ、「文庫刊行によせて」を収録。