少年漫画界のラスト・レジェンド、ちばてつや先生の回想。
…当時の漫画界ではおてんばな女の子を書くのはタブーだった。
よく先輩のマンガ家や編集者から、「笑わせるのは、ヒロインといっしょにいる三枚目のキャラクターで、ヒロインはいつもうれいを含んだ眼をしていて、うつむいて笑う時も静かにやさしくほほえまなければいけない」
と注意された。これをやぶると漫画は売れなくなる…と思いこまされていた。いくども注意されたことだったが、ついにぼくはがまんできなくなった。……つい悪戯半分で「ユカをよぶ海」のユカちゃんにこれをやってみた。
- 作者: ちばてつや
- 出版社/メーカー: ホーム社
- 発売日: 1997/07
- メディア: コミック
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…まだ父の顔を知らず、父をさがしもとめるユカの前に、犯罪者である父がすがたをあらわすというシリアスなストーリーのマンガだ。その中で、ヒロインのユカがちょっと失敗する小さなシーンがあった。その時、ぼくは、ユカのほおを真っ赤にして、長い舌をペロリと出して「いけね…」 というセリフをいれてしまった。
すごい反響だった。そのほとんどが「よかった」という手紙だった。 わが意を得たりとばかり、ぼくもうれしかった。自分の独自なストーリー展開ができるとなると、筆もひとりでに動きだした。女の子だって人間だから。 すましていたり、ガマンばかりしている必要はない。それ以降……ぼくのマンガに、そして、ほかの少女マンガにも、男の子をけとばしたり、おっかけたりする女の子たちがつぎつぎ登場しはじめた。ほんのちょっとしたアイデアが、マンガを大きく変えることになったのである。
以上、かなり昔の…1986年刊行の本ですが、「だからマンガはやめられない」
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「少女クラブ」1959年6月から1960年8月にかけて連載されたそうである。
mangapedia.com
時代は、変わる。この変化が「思想」ゆえなのか「お話」ゆえなのかも、またわからない。