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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「手塚治虫×石ノ森章太郎展」開催で、二人の関係を描いた作品などを振り返る。

まず催し情報。

長いけど、ごそっと引用させてもらう。

http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/145/
特別展「手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから」  展覧会概要
 
 
夢、希望、勇気・・・ “マンガのちから”は、私たちにたくさんの感動を与えてくれます。
いまや世界的な文化として成長したマンガ。その地位が確立したのは、マンガの可能性を大きく広げた“マンガの神様” 手塚治虫と、それに呼応しマンガを育て上げていった“マンガの王様”石ノ森章太郎の存在があったからと言えるでしょう。その親しみやすいイメージとユニークなキャラクター、普遍的なテーマを含んだ物語などに特徴づけられる彼らの作品は、今もなお人々を魅了し続けています。
本展では、この二人の歩み、作品に込められたメッセージを、「鉄腕アトム」、「ブラック・ジャック」や「サイボーグ009」、「仮面ライダー」といった代表作の原画や様々な映像などで振り返りながら、“マンガのちから”の源流を探ります。二人のマンガから大きな影響を受けて育った、現在各界で活躍する著名人たちによるオマージュ作品も紹介します。世界を変えてきた“マンガのちから”を感じる、またとない機会となるでしょう。
 
本展のみどころ
 
1.初公開! 手塚治虫×石ノ森章太郎 未使用・未発表原稿 
“マンガの神様”手塚治虫の初期の名作、「メトロポリス」の今まで公開されたことのなかった原稿や、新たに発見されたデビュー前の未発表マンガ原稿がこの展覧会で初めて公開されます!また、“マンガの王様”石ノ森章太郎の初公開のアイデアノートなどから、巨匠の知られざる構想の秘密が明らかに!
 
2.大集合! 手塚治虫×石ノ森章太郎 キャラクターが一堂に
現代のマンガやアニメ、戦隊特撮作品の原型ともなる二人の代表的キャラクターが勢ぞろい。手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」、 「ブラック・ジャック」 、「リボンの騎士」や、石ノ森章太郎の代表作である「サイボーグ009」、「仮面ライダー」や「おかしなあの子 さるとびエッちゃん」などなど、二人が生み出したキャラクターの数々と出会えます。
 
3.大放出! 手塚治虫×石ノ森章太郎 生原稿展示
二人の直筆のマンガ生原稿が惜しみなく展示されます。作家の息遣い、気迫、想いを生原稿から感じてください!生原稿からは、当時のマンガ家たちが新たな表現を模索し生み出したテクニックや、マンガ表現のために日夜努力した苦労のあとも感じることができます。
 
4.再現! 手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガ創作の世界!
本展では、戦後の日本を代表するマンガ家が集い、伝説的逸話が数多く生まれた、東京都豊島区にあったマンガ家アパートのトキワ荘を、なんと展覧会場内に再現します!昭和の高度経済成長の中、当時のマンガ家たちが額に汗し、互いに競い合いながらも楽しく日本のマンガを生み出していった青春の現場を体感できます。
 
5.もりだくさん! 手塚治虫×石ノ森章太郎 映像展示
会場では、マンガが生まれた時代背景を写し出す数多くのNHK記録映像や、二人の代表的なアニメーション、TVシリーズの映像がふんだんに展示されます。
 
6.あの著名人が! 手塚治虫×石ノ森章太郎 オマージュ作品
国内外のマンガ家、イラストレーター、映像監督、ミュージシャン、タレント、現代アーティスト… 二人のマンガから大きな影響を受けて育った、現在各界で活躍する著名人たちによる、二人へのオマージュ作品を紹介します。

オマージュ作品 出品作家 ジャンル別五十音順(敬称略)
■マンガ家、絵本作家、イラストレーター(国内)
羽海野チカ/ 小畑健/ 呉由姫/ さいとう・たかを/ 島本和彦/ ちばてつや/ 次原隆二/ 天神英貴/ 永井豪/ 原ゆたか藤子不二雄Ⓐ/ 細野不二彦/ 松本零士/ 水木しげる/ やなせたかし/  ヤマザキマリ/ 和月伸宏 

と、まぁこんな感じだわさ。
手塚治虫展」というのは趣向を変えて何度も行われていて、自分も複数回言ってるけど石ノ森章太郎のこういう展示は、自分は初めてだねー。あの人も作品量がとにかく多いから、何をチョイスするかで違うだろう(たとえば特撮原作だけだってスペースを占領するほどあるんじゃないか?)
まあ、いずれにせよ楽しみです。

そして連動するテレビ番組もあるみたいなんよ、BSプレミアム

http://www.rbbtoday.com/article/2013/06/21/109359.html

日本マンガ界の巨匠・手塚治虫石ノ森章太郎NHKBSプレミアムがこの7月、日本のマンガを築いた2人を特集する。2人の創造の秘密にせまるドキュメンタリードラマや、『鉄腕アトム』『サイボーグ009』などの初回・最終回を見ることができる。
 
●第一夜:ドキュメンタリードラマ 手塚治虫編 「神様 最後の一日」
7月6日(土)22時00分〜23時00分
●第二夜:ドキュメンタリードラマ 石ノ森章太郎編「神様への 鎮魂歌」
7月13日(土)22時00分〜23時00分
  手塚と石ノ森、その創造の秘密に迫るドキュメンタリードラマ。「手塚治虫 最後の日」をポイントに、両者の出会いと別れのドラマを交え、二人のコントラストを描く。爆笑問題の太田が手塚に迫り、田中が石ノ森を演じる。関係者の証言とともに、2人の生きざまを浮き彫りにしながら、爆笑問題が、手塚と石ノ森の心中に挑む。

●第三夜:手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記
7月15日(月)21時00分〜23時00分
MC:爆笑問題
ゲスト:浦沢直樹秋元康吉木りさ

石ノ森の手塚回想漫画。「嫉妬する神」を「された側」から描いて貴重な作品

さて、以前ぼくはアシスタントだった古谷三敏の回想記の書評を書いて

ボクの手塚治虫せんせい

ボクの手塚治虫せんせい

そこで、手塚を4人に分類するとわかりやすい、と述べました。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100707/p2

手塚治虫のエピソードに関しては、
(1)藤子不二雄氏らが「まんが道」で描いた様な、やさしさと心配りにあふれた人格者
という像。

があり、それと同時に
(2)己に厳しい求道家にして、アイデアとそれを支える技術(作画の早さなど)を持つ超人像。
そして最近、ってわけではないけど、
(3)それでも殺人的な締め切りに追われて逃げたり言い訳したり、それでもなんとか間に合わせたりという、喜劇的な編集者との攻防などの「畸人伝」的な話。
そして
(4)とにかく貪欲で全ての漫画家に勝ってやるというライバル意識、嫉妬深さを持ち続け、あの大御所がそういうライバル意識を後輩に持つこと自体がギャグになっている面。

なんかがよく描かれます。少なくとも自分はそういう面に注目します。そして今回のこの本、1-4がすべて網羅されていて大変楽しく読めました。

んでね。
自分はたまたま、手塚治虫没10周年を記念して出版された「ある日の手塚治虫」という本を持っている。

そこに、石ノ森章太郎の作品「風のように」が採録されている。
解説文には「手塚治虫先生の死後間もなく、『ビッグコミックスピリッツ』に2回にわたって掲載された作品」とある。

この作品では・・・、たとえばまんが道は(1)〜(3)を主に描いているわけだけど、残った(4)を「トキワ荘住人」が描くという貴重な記述があるのです。




手塚治虫追悼の作品だから、葬式の場面から始まる。
葬式(通夜?)の席で。、旧トキワ荘住民が集まって
「アカツカは酒を飲み過ぎだ」
「フジモト氏(この「氏」という呼び方がまた泣かせる)、退院してから体調はどう?」
「まァまァなんとか」
「元気がいいのはイシモリだけだ」
「ご冗談・・・この間ドッグに行ったんだ」
「おいおい、仲間の最年少者がそんな情けないことを言ってくれるなよ」
 
こんなやり取りをする喪服の初老者の姿が、若き六畳一間のトキワ荘になっていくファースト・シーンや、生前のパーティで「すこし痩せすぎなんじゃ(石ノ森)」「あなたが太りすぎなんです(手塚)」といったやりとりをするシーンなどが挿入され・・・ 
さらに
手塚急逝直後は、通夜のある日に朝日新聞から追悼イラストを頼まれて大急ぎで仕上げたり、西岡利夫文部大臣と「手塚は勲三等勲章がふさわしいか、国民栄誉賞がふさわしいか」と議論したり…(石ノ森は栄誉賞を強く要請したが、残念ながら実現せず)

石ノ森には、そんな「漫画界のリーダー」としての仕事もつぎつぎと舞い込んで来る。

加えてちょうど、大長編「マンガ日本の歴史」の仕事が始まろうとしていた。
ここで石ノ森は漫画でもマンガでもなく「萬画」だという宣言をするに至るのだが、その原点としてやはりトキワ荘時代、「新漫画党」を結成した時代のことは描かれるのだ。

「新漫画党」は「新しく良質のマンガを描く党」。
だが「良質」はともかく「新しい」とは何か?チューハイをのみ、(鈴木伸一氏が)インスタントラーメンを食べながら議論する。
「構図か?画風か?」「テーマじゃないの?」「自分の個性だろ」
「まずは新しい表現技法から始めよう・・・」

てんで、石ノ森先生、いや当時はまだ石森先生か・・・だいたんなコマ割り、見開きの活用に乗り出した。
そしてストーリーも台詞も無い、実験マンガ「ジュン」が生まれる。
掲載誌は、手塚治虫が発行していた「COM」!

COM、そして連載された「火の鳥」や「ジュン」は漫画史を語るときに欠かすことの出来ない存在であり、実際多くの研究本で紹介されている。

そうやって後世から歴史を眺めると、この作品(の作家)と雑誌(の発行者)は相思相愛であり、忠臣石森章太郎が、名君手塚治虫の元に馳せ参じて大活躍、という構図にとらえてしまうが・・・あにはからんや、そうではないのでした。
なんと読者から「手塚はファンに『ジュン』の悪口を言っている」と密告が。
[t]

いや、この読者君も、こういうことをやってはイケナイ(笑)。
ただ、ここからドラマが生まれたから結果オーライか・・・
石森はさっそくCOMの編集部に電話し、ジュンの連載をやめる、と申し出る。神様にしてCOMを作っている当の手塚治虫に批判されたから、という理由も率直に語った。


すると深夜、トキワ荘の石森の部屋をノックするベレー帽のシルエット。
手塚治虫が、直接彼の元をたずねてきたのだ。そして、真正面から「申し訳ない」と謝る。

たぶん、手塚が漫画家に平謝りに謝るのは、「イガグリ君」の福井英一以来だったのではなかろうか。

神から言われたらあんた、そりゃ一も二も無く
「いいんですよ、もう。本当にもういいんです・・・」
「『ジュン』は続けさせていただきます」
となりますね。
そしてわだかまりなく作品を再開するシーンから、このマンガは最初に手塚のアシスタントをカンヅメ旅館で行った回想、また今回開かれる二人展のような「マンガの美術展」のおそらくはしりであろう、近代美術館での手塚展示会の打ち合わせ、などの場面に移る。

ただ、このときふと石ノ森は、かつて手塚に言われた言葉を思い出す。

マンガは残りませんよ
「そうかなあ」(石ノ森)
 
作者と一緒に 時代と共に
風のように 吹き過ぎていくんです
それでいいんです
「・・・風のように―ですか」(石ノ森)

・・・後知恵で未来を見ての結論からいうと、神様の予言は大はずれに外れたわけであり(笑)、彼の作品は風どころか大地のように揺るぎ無く存在する。
ただまあ、石ノ森はその「風」を吹きやませることなく、新しいメディア、表現として定着させたいと考えて「萬画」という名称を考えたのだという。そしてこの作品が「萬画」の宣言文となったのだが・・・定着しなかったことはご存知のとおり(笑)。このへんは両者いたみわけかと(笑)。


まあ、そんなわけで、別に両者この「ジュン」事件で根深い確執ができたわけでもなんでもないし、そもそも彼らの世代にとっては「いやー、俺の作品、手塚先生からねたまれちゃってさ。てひどい批判を食らったよははは」なんてのは金鵄勲章より光り輝く名誉だものね。またこの名誉の受賞者、けっこう多いんだ(笑)

■手塚先生吼える
http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_77ce.html
 手塚治虫が他のマンガ家や評論家について書いた、しんらつな文章のかずかず。

・ボクにいわせれば、白土三平氏や赤塚不二夫氏や、水木しげる氏を推賞する一部批評家ごとき、なんにもわかっちゃいない連中・・・(略)

・恐怖まんがの楳図一雄(ママ)に(※賞を)やったらどうだ、という冗談まで出るしまつ

ちばてつや氏の「ハリスの旋風」はりっぱな作品だが、かなりマンネリズム・・・(略)

赤塚不二夫氏の・・・あまりおとなを意識しすぎると子どもの気持ちからはずれて・・・(略)

石森章太郎氏に申し上げたいことは、SF小説にしろ・・・(略)どうもイミテーション(まね)に見えることが多いのだ。

望月三起也氏のは、どうかすると、ヤクザっぽいのがゴロゴロ登場。。。(略)、

はは。リンク先はぜひ読んでほしいですな。


しかしこの「ある日の手塚治虫」はすごい本だ・・・僕は持ってるぞヤーイ。

漫画家、関係者の回想記がごっそりと載っていて、しかも漫画家の場合短編の漫画とか、イラスト+文章になっていることが多いというね・・・この本のために書き下ろしがあったのか、どこかの作品を再掲載したのか、いずれにしても驚異の内容だ。
だって、そういう人たちをほんの少しだけ列挙するとしても
ちばてつや永島慎二高井研一郎山根青鬼しのだひでお長谷邦夫やなせたかしみなもと太郎つのだじろう、里中美智子、藤子・F・不二雄・・・そのた数え切れず、だぜ!!
ちょっと見せてやろう(えへん…っておれがいばるな)。


いやこれが朝日新聞社から出ました、文芸春秋から出ました、ならわかるけどさ、この本が出た当時(1999年)経営がすごく大変だったといわれる(婉曲表現)「ふゅーじょんぷろだくと社」から出てるのだから・・・
この雑誌(会社)の経営に関する逸話は、なんかいろいろ聞いているけど(笑)、こういう本が出るだけで価値がある。
http://www.phoenix.to/books/1999-2.html

本日の記事のテーマは、ひっつめて言うと
「僕はこの本持ってるぞ、君らは持ってないだろ、うらやましいだろヤーイ」というものでした(笑)
ふふふ、お気の毒なことにこの本は天下のamazonリストにもないっぽいな。
ただし「ある日の手塚治虫 古本」などのキーワードで検索すると、いくつか古本屋のネットにも出ていて、実はけっこうお安い。
(5万円ぐらいになってるかと思ったよ!)
よっぽど買い占めて2冊3冊手元に置こうかと思ったが、登録が面倒くさかったので断念した。早いものがちでほしい人は購入するとよろしな。

でも「風のように」、何かに収録されているはず・・・この本か!!!

そういえばここで紹介した石ノ森章太郎「風のように」、このアンソロジーでしか読めないってことはないよね・・・今は何に収録されているのだろう?
いろいろ検索してみて・・・見つかった!!

ジュン 0: 石ノ森章太郎とジュン

ジュン 0: 石ノ森章太郎とジュン

石ノ森が青春をかけた実験作「ジュン」を完全復刻する全5巻(0-4巻)シリーズの0巻。

本巻では連載以外に書き下ろされた 「ジュン」をすべて収録。
また、石ノ森自身が「ジュン」を語る原稿、
漫画家、評論家による解説、 書きおろしイラストも全点収録し、
余すことなく「ジュン」を楽しむ一冊。

全てのカラー原稿をフルカラーで掲載。
http://www.pot.co.jp/books/isbn978-4-7808-0164-4.html
2「ジュン」その背景
○自叙伝
石森章太郎氏のこと……157
・青いマン華鏡……171

○「ジュン」と手塚治虫
・風のように… …背を走り過ぎた虫……203


【2021年追記】少し前に、生誕80年を記念し、氏の自伝的な作品だけを集めた本が編まれ、この「風のように」も収録された。



もうひとつキャンペーン。『「手塚×石ノ森展」会場から徒歩10分のところに入館・読書無料の「田河水泡のらくろ館」が!帰りに行こう!!』

詳細はこちら

東京都現代美術館庵野秀明特撮博物館)と森下文化センター(『杉浦茂のとと?展』)はけっこう近く。両方見よう!!!
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120822/p2

ここで当時「杉浦茂展」をやってた会場=森下文化センター内に「田河水泡のらくろ館」があるので、つまりはイコールなんです。
のらくろ館」情報
http://www5a.biglobe.ne.jp/~norakuro/sub1/index.htm

地図もドーゾ。青と赤で囲んどいたよ。

あとで写真をyoutubeにでもしてみるか・・・。