ひとつ前の記事で書いたちばてつやの短編、少し詳しく。
4月はちばてつや先生の短編集発売と44ページ読み切り掲載が決定!
— 野口征恒(メガロボクス2魂込作画中) (@Chom2Start) 2021年3月25日
4月が待ち遠しいです(^^) pic.twitter.com/9vmhKbJcZJ
ただ、タイトル通りの話。
すでにちばてつや氏、「長老」として自分の経験と交友を書くだけで十分なコンテンツだが(もちろんそこに、どれだけのテクニックが埋め込まれているかは言わずもがな)、それでも、今回は「あしたのジョーの最終回」を描くに至った経緯を、自身で漫画化した事態が歴史的なことだろう(以前も書いてないよね?)。インタビューや文章では何度もこのことは訊かれて、書いてで、自分も梶原一騎方面から調べて一連の経緯は何度も見聞きしたが…それは藤子不二雄Aの「まんが道」も、古典落語も同じで、何度聞いても読んでも嬉しい。
ビッグコミックのちば先生読切り『グレてつ』のジョーラストシーンは"初"だ、きっと。
— チェーン万次郎@あしたのジョーが好きやねん (@kitabanori) 2021年4月11日
画像一枚目は
100年保存複製原画集
と
少年マガジン最終回
です。
原画は空間が斜めになっており、コーナーポストの角度の違いでわかると思います。
画像二枚目は、講談社発行の単行本。
画像三枚目は pic.twitter.com/xpI8TNet0o
ameblo.jp
…… 下の「あしたのジョー」のラスト
シーンが絡む話なので、
昔を思い出しながら、
懐かしんで楽しんで描きました。
読んで下さると嬉しいです。
とても嬉しい回だったが、しかし読んでいて一寸悲しかったのは、
「もし梶原一騎があと数年余生を保っていれば、「男の星座」で梶原一騎側から、この一件が描かれて”競作”となったんだろうな……」ということである。
<読みてまた 不在を思ふ 劇画王>
それはともかく……
あしたのジョーを描いて、自身も「燃え尽きた」ちばてつや先生は、休みをもらう。3週間(笑) えっ、その間隔、我らが「喧嘩稼業」の木多康昭だったら毎回……
そんな中、家族を連れて公園に出向いたちばてつやは、ぼんやり少年時代を思い出す。
それが…かの竈門炭治郎と同じく、「長男だから」という責任感で我慢を重ねた思い出だったのだ!!
はい、このまんまです。
m-dojo.hatenadiary.com
さすがに大御所中の大御所。若者に大学で教える立場でもあり、すでに鬼滅の刃を読んだかもしれないし、一方ですでに一時代を築いた人の余裕で、まだ読んではいないかもしれない。
どちらにせよ、こうやって連想が行くのは間違いないところで、実にタイムリーでしたな。
【追記】結論的には、読んでた!!情報提供あり
「浦沢直樹の漫勉neo」
— はこし (@hacosi) October 6, 2020
81歳ちばてつや先生、「鬼滅の刃」もチェック。流石だ。 pic.twitter.com/3Q08qovQC1
…んで、そんなふうにリアルに「長男だからと責任感と我慢のし通し、羽目を外すこともない」経験があったからこそ「その正反対、自由に無法にやりたい放題の長男がいたら?」を描いてみたのが、氏の代表作のひとつ「のたり松太郎」だったと。
その暴れっぷりは実のところ、読み切り・あるいは超短期連載のつもりで描いたがゆえのことで、
だから最後は警察の御用となり「完」・・・・・・・と描いたのに、編集部が勝手にそれを消して続編を要請した!!!という。
この挿話、パロディとして「サルでも描けるまんが教室」に登場し、すでに定着しているが…自分はずっと「男一匹ガキ大将」が元ネタと思っていた。
だが、ちばてつや先生のこれも、たぶんどこかで業界の噂になっていたんじゃないかな、…というか、これが一例だけじゃなく、むしろスタンダードのひとつとなってた漫画業界って何なんだよ(笑)
ちなみに「松太郎」のふるまいは、「自由奔放」「憎めない」に収まるか
実のところ、自分もどこかの飲食店に置いてあって、最近1巻をぐーぜんに読んだのだけど…以前、こう書いたことがある。
ポリコレというか社会意識の変化が一番手っ取り早く感じられるのは、漫画のお話そのものやキャラクターの美点とかではなく
【憎めない欠点、愛すべき弱点】。
この部分は非常に、食べ物でいえば「足が速い」「傷みやすい」箇所で、当時はこうとされていたものが、完全にアウトになってく、という流れが、一番社会意識の変化を手早く反映しているのだと思うのです。
そういった個所が今回、漫画の中で引用されているから実際に読んでみるといい。
ただ実のところ、ちばてつやの漫画は以前から健全だ健全だと言われてましたが、実は先生のおかあさんが不道徳な内容がないか、きびしくチェックをしていた、んだとか。
<ポリコレも 表現規制も 何せむに まされる検閲 母にしかねども>
この話、漫画にも出てきているが、
新書「ちばてつやが語る『ちばてつや』」が詳しい。
- 作者:ちば てつや
- 発売日: 2014/05/16
- メディア: 新書
とはいえ、漫画家は自己韜晦がつきものだから、どこまでほんとかはわからん。
母親に説教されてわかりました、という人、「自分を押し通せない人」が、もっと暴力的でワガママコワモテ、一字一句の変化もまかりならん、としていた梶原一騎の原作「あしたのジョー」を、冒頭からラストシーンまで我を通して改変できるだろうか???
※このへんについては、いろんな考察がある。
当時の漫画界の「格」では、ちばのほうがやっぱりまだまだ上であり、そうなれば梶原はおとなしくなったのだろう…、
とか、やはりちば改変の出来が良かったからだ、とか、議論百出しています
今回の作品、そのまま月末の短編集に収録だってさ。
ちばてつや、23年振りの最新短編集!!巨匠・ちばてつやの23年振りとなる短編集!
戦後の満州引き揚げを描いた「家路 1945-2003」、漫画家デビュー時に謎の体調不良にさいなまれた日々を描く「赤い虫」、トキワ荘グループとの交流のきっかけとなった”事件”を描く「トモガキ」、そして最新発表作となる、名作『のたり松太郎』誕生前夜を描いた「グレてつ」といった、2000年以降に描かれた氏の貴重な自伝的読み切り作品を、掲載当時のカラーを含め完全収録!
【編集担当からのおすすめ情報】
ビッグコミックにて『ひねもすのたり日記』を連載中の、ちばてつや氏23年振りの短編集となります。
『あしたのジョー』『おれは鉄兵』『のたり松太郎』といった数々の名作を描いてきたちば氏。魅力あふれるキャラクターとともに市井の人々に向けた優しい視線が短編の中にも溢れています。
漫画史を語る上でも貴重な、氏による自伝的読み切りを集めた短編集です。