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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

佐高信さん、60歳の時に三度目の結婚をしてた/内田樹氏の批判文、単行本から除外?

佐高信氏、めっきりと見なくなっている、文章を読む機会がなくなっている。
月刊誌「創」の連載は続いているが、その他の雑誌連載が徐々に減っているし、そのぶん有料メルマガなどに行っているから、目に触れなくなるのも当然ではある。
年齢的にも、表舞台が減るのは当然ではある。

そんな折に、久しぶりに、こんなtogetterを検索だったか、うちへの来訪元をたどったんだったかしてた時に、こんなまとめを発見した。

togetter.com



へーーーーーー。

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佐高信氏、60歳で3度目の結婚

どなたの結婚でもめでたいことであり、祝福したい。
そして2005年に結婚して、昨年それをはじめて公にしたということだから、ほぼ15年公にしておらず、隠していたということなのか。そういうこともあるんだね。



その前の結婚(二度目)についての経緯は、多少存じ上げている。AERAの記事をまとめた「現代の肖像」を中古通販でわざわざ買ったからね(笑)


「昭和四十二年の春、卒業と共に帰郷して庄内農高の社会科教師となる。ここで三年、教科書はいっさい使わず、ガリ版の手製テキストで通したため”赤い教師”の非難を浴びた、庄内工高に転じて結婚もしたが、同じく”赤軍派教師”のレッテルを貼られる。教育の現場に怒って県教組の反主流派でがんばるうちに、同僚教師と同志的恋愛に陥った。「佐高なんかのツラも見たくない」と反発する教師仲間は陰湿に白眼視した。母・千代は孫娘を抱いて死ぬと言い出し、佐高も自殺を思いつめる。四十七年八月、ついに辞表を出して上京。

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佐高信氏の最初の離婚、二度目の結婚についての経緯(「現代の肖像」元はAERA記事)

そういう「同志的恋愛」、母から「(最初の妻との)孫娘を抱いて死ぬ」と言われるまでの犠牲を払い(この娘は郷里に置いてきた…というか佐高氏は自ら「妻子を捨てた」と称している)、再び結ばれた結婚相手とも、違う相手と、60歳でまた結婚をなさる…というのは、いろいろと経緯などがあるのだろう。


佐高氏は、「人物評はそういう異性との関係などを含めて成立するものであり、追及すべきだ」という論者(だからこそ噂の真相を高く評価していた)なので、いつかはこういう話も、人物論の一環として詳しく語られるかもしれない。
しかし、家族というものは本当に多様なものであります。




佐高氏「創」内田樹氏の批判原稿を書いていたが、単行本には収録しなかった???京都市長選絡み?




幹事長 二階俊博の暗闘: 新・佐高信の政経外科

幹事長 二階俊博の暗闘: 新・佐高信の政経外科

ここらへんは、あとで資料を捜してみましょう。

2019年7月号に、以下のコラムが載っていたことは創出版の公式サイトで確認できる。

〈連載コラム〉
タレント文化人 筆刀両断! 【内田樹】......佐高信
www.tsukuru.co.jp

村上もとか「龍」は大長編だが、北一輝が登場する「6巻」だけ試し読みしても面白い

小学館の「マンガワン」(スマホアプリ、たぶんPCブラウザからは閲覧できない)で現在(※2020年の話)、村上もとかの「龍」が全巻無料イッキ読みになってるようだ。それを知って後で語ろうと思っていたことがあるのだが、だらだらしているうちにもうまもなく終了日(2月14日)が迫ってきてしまった。

そこで大急ぎで紹介したいと思う。

本当はこれ、再来週…2月26日に書きたかったのだが、まあいいや。

↑ここまで執筆当時の話。



その前に…そもそも「龍」も、 かなりの高評価を受けた人気漫画だとは思うが 、早いもんで終了からもう2020年から数えると14年も経過している(驚いた)。10年一昔どころか一つ半昔ということになるな。
だから改めて、まず概要を紹介したいと思う。

「龍」の舞台は、時間的には戦前から戦中にかけて…地理的には日本と中国をまたにかけて展開される。
主人公は「京の龍」と呼ばれる、剣道に青春をかける若者押小路龍だ。彼は戦前に実在した、日本武道の精鋭を集めた専門学校「武専」の学生であり、また日本有数の財閥・押小路財閥の御曹司でもある。同時に、風雲急を告げ、今にも戦端が開かれるのではないかという緊張関係にあった日中両国にまたがる「ある因縁」を背負った若者であった。

その武専で鳴らした剣道の腕、財閥御曹司という立場、日中にまたがる因縁……そして何より涼やかで一本気な性格… そんな背景を持つ龍は、昭和初期の日本、アジアを動かした実在の巨人とも様々に絡み、 大きな歴史のうねりに巻き込まれてゆく‥‥。

全体的にはそんな話なのである。
ついでだから本題に入る前にもう少し語るけど、この主人公「龍」というのは、私が思うに「性格のいい金持ちのおぼっちゃん」というキャラクターの造形においてはすごくお手本だと思うのね。
一昔前は、 金持ちお坊ちゃんというのは主人公のライバルに位置する悪玉、といったところだった気もするが、最近は結構金持ちイケメンの善玉というのも それなりに登場するようだ。そういう善玉の金持ち坊ちゃんとして龍は最高の造形だと思う。
例えばなんだけど、ある時期彼はほぼ無一文で乞食浮浪者同然(というかそのまんま浮浪者)の立場になるのね。しかしそこの食うや食わずの環境や浮浪者仲間との交流も楽しんでしまう。その一方で、ある時は事情あって、祇園お茶屋で仲間を引き連れ豪遊をしたりする。その豪遊が、全く板についたもので、何の気後れも気負いもないというね…。
そこは作中でも指摘されているが、金持ちだからこそ両極端、無一文にちかい生活も超高級料亭での豪遊も 、どちらも自然体で楽しめるという、こんな造形が非常に好ましい主人公であります。


さて本題。この作品の6巻には「魔王」北一輝が登場する。

この作品はビックコミックの単行本では全42巻。

最初期の1-5巻も非常に面白いし、6巻に出てくる登場人物の関係性も分かるので、できれば続けて読んで欲しいところなんだけど、御用とお急ぎの方のためにズバリ!『1-6巻まで』あるいは、さらに絞って『6巻』だけでも読んでほしい、というのが今回の趣旨なのです。

なぜか。それは昭和初期の日本を揺るがす奇妙な活動家にして思想家、「国体論及び純正社会主義」「日本改造法案大綱」などによって青年将校国粋主義者に絶大な影響力を及ぼした北一輝が登場するからだ。


龍が、この男と出会うようになった経緯は…説明すると長くなるが
・龍は、とある理由で当時の大金である「100円」が必要となる。
・ そのため、押小路財閥を実際に取りしきる叔父から持ちかけられた「京都滞在中の北一輝先生の護衛役」 の仕事を引き受けた。

村上もとか「龍<RON>」に登場する北一輝(コミックス版第6巻)

…だが自他共に認める「魔王」北は、一筋縄ではいかない。
龍に「私の護衛にふさわしい剣の実力を見せてみろ」と課題をふっかけたり、
不気味な法華経の読経を続けながら「まもなく戦争が起きる」という予言をしたり、
特高警察、ジャーナリスト、そして命を付け狙う刺客らに取り囲まれたり…

村上もとか「龍<RON>」に登場する北一輝(コミックス版第6巻)
そんな騒動を巻き起こしながら

「革命は下からではなく上から起こすべきもの」
「国家主権論に基づく社会民主主義

村上もとか「龍<RON>」に登場する北一輝(コミックス版第6巻)
などを、片方が義眼の目を光らせながら、冷静に、されど熱を込めて話す。

そんな革命論者の一方でありながら押小路財閥のみならず 他の財閥からも多くの資金援助を得ているのではないか、と追及される。

村上もとか「龍<RON>」に登場する北一輝(コミックス版第6巻)


すると、この男は微笑んでこう語った。
「ライオンにはライオンの餌がいる」

村上もとか「龍<RON>」に登場する北一輝(コミックス版第6巻)



…率直に作品論で指摘すると、この辺の「北一輝」という人物の造形は、ある種の美化…というより「劇化」がなされすぎているのではないか、という思いもある。

つーか、坂本龍馬土方歳三沖田総司が史実としての彼らより「司馬遼太郎が描いた彼ら」としての存在感の方が大きいのと同様、北一輝には、在野の近代史・アジアナショナリズムの研究者だった松本健一という人がいて、「松本健一が描いた北一輝」がある種のスタンダードになっているのである。それ以降の作品、この漫画も含めて北一輝が語る、語られるあれこれは、実はそれなりに資料に基づいてる部分も多いのだが、その資料の取捨選択が、そもそも”松本史観”にとっているという部分があるんだな。

まあこれは責めても仕方がない。それだけの仕事をした松本健一があっぱれな部分もある。(ちなみに司馬遼太郎松本健一は、その歴史の見方に、大きなところで重要な違いを持ちつつ、親しく交流していたという)。

そしてそれに基づいて漫画を書いた村上もとかも、彼らに決して負けているわけではない。
そういう形でたくみに劇化された「北一輝像」を光源として、実は主人公の押小路龍に、あえてぶつけている節があるのだ。そして主人公は、その光を跳ね返し反射することによって、逆に彼自身の思想と人格の輪郭をはっきりさせるのである。それは一種の「決闘」と見て差し支えない。
北一輝の「上からの革命」論に対して、あまり勉強ができるとは言えない龍が、素朴に語る言葉は、ラインハルトとヤン・ウェンリーが民主主義に関して交わした議論に匹敵する思想的なコントラストを見せる名場面だ。
それを言われた北のリアクションも………

村上もとか「龍<RON>」に登場する北一輝(コミックス版第6巻)
また例によって長い文章になってしまったが、そんなわけでアプリ「マンガワン」(どうも携帯専門アプリらしいね。PCのブラウザからは見られないようだ)での無料公開を活用し、「龍」6巻(ビッグコミック版)での 北一輝登場回だけでも、読んで欲しいと思うのであります。
あるいはこの巻だけ買うというのも、一つのおすすめになるかもしれないな。

村上もとか「龍<RON>」に登場する北一輝(コミックス版第6巻)

伝説のドラマ「まんが道」第1話から再放送(BSトウェルビ)

コメント欄から

野球とMSX

きょう2月13日(木)午後7時20分ごろー7時45分、BS12でドラマ「まんが道」第1回

「ごろ」と曖昧な時間になっているのは、この前の時間、午後7時から別のドラマが1回分放送されるため。

来週2月20日(木)からは、毎週木曜日午後7時ー7時45分、2話ずつ放送。全15話。
ただし3月19日と26日は3話ずつ(それぞれ10~12話、13~15話)放送予定。詳しくはBS12HPで。

1986年に、NHK銀河テレビ小説」で放送されたもの。
主役の満賀道雄竹本孝之才野茂長江健次。新聞社図案部員(原作での「変木さん」)はイッセー尾形手塚治虫先生は江守徹が演じました。

BS12では、昨年にもプロ野球中継のない日に放映されていました。視聴や録画するなら、今回の方が便利かもしれません。



id:gryphon

それ「藤子不二雄ファンはここにいる」さんにも伝えるがよろし


つまりこのことだ
www.twellv.co.jp


まんが道 全2巻セット

まんが道 全2巻セット

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

大屋雄裕氏、NHKラジオで「著作権と法」「監視社会」語る(現在も配信で聞けます)



2020年2月12日(水)
慶應義塾大学法学部教授
大屋 雄裕

「監視社会の今を見る」

2020年2月12日(水)
慶應義塾大学法学部教授
大屋 雄裕

著作権法改正案、再提出へ なお残る課

www.nhk.or.jp


こんな話も

2020年2月11日(火)
PHP総研主任研究員
工藤 郁子

「AIの自動運転について考えなければならないこと」
2020年2月11日(火)放送 2020年3月11日(水) 午前11:00配

野村と長嶋のエピソード、その他

まず最初に。本日のテレビ朝日「モーニングショー」長嶋一茂出るかな? ジュニア長嶋との挿話

多分出ると思うし、そしたら当然この話についてコメントするだろう。
普段見てない人も、朝8時からテレビ朝日にチャンネルを合わせるといいかも。
(※けっきょく今日は出演のない曜日だったようだ)

その「マンガ」とは…


blog.livedoor.jp

 番組MCの羽鳥慎一アナウンサー(47)が一茂に「野村監督のミーティングの時に書いてましたよね」と尋ねると、「漫画をね」と即答し「ETとかドラえもん」とかを書いていたことを明かした。羽鳥アナからそれが「今につながっている」となだめられると「バカにされている気がするな」と応じていた。

 さらに森保監督が練習日誌について「若い頃から練習方法や目的までもっと細かく書いておけば良かった」との言葉を紹介した。これに一茂は「これは私もあります」とし「野村監督のノートを持っている人、私の同級生を含めてたくさんいますけども、みんな野球界に復帰してコーチ、監督やってますよ。書いてないオレは復帰できないもん」と明かし「書いておけばよかったなぁ。あん時、野村監督、どういうこと言ってたのかなぁって知りたいもん」と後悔していた。
hochi.news

しかし、その一茂が、ドラえもんを金曜夜から追い出したというから因縁ですなあ(全然因縁じゃないよ!!!)



twitterから転載。パパ長嶋との挿話



よし、ここは直接転載しよう

捕手としての駆け引き
野村がプロ生活を始めた当時、捕手の地位は打者としての役割を求められないばかりか大柄で、ミットの薄い部分でキャッチングして大きな音を出すことで投手の気分を良くさせる程度しか求められていないなど、現在とは比べ物にならないほど低いものであった。その中で野村は自身の打撃成績の向上のため蔭山和夫や尾張久次とスコアの研究を重ねる過程で、スコアの研究をリードに生かすことで効率よく打者を抑えることを研究するようになっていった。

捕手として守備に就いた時には、相手打者にささやくことで集中力を奪うことを得意とした。この策は「ささやき戦術」として知られる。野村のささやき戦術は1950年代、当時同リーグで活躍していた西鉄日比野武を参考にして(著書「野村克也 野球論集成」では日比野、「野村の遺言」には、阪急の山下健と書いている)始まったといわれる。当初は「次は頭にいくでぇ」「今度こそ頭だぞ」「当たったら痛いだろうナァ」などといった直接的な脅しだったため、当時ライバルだった阪急の西本幸雄監督が「先に野村にぶつけろ」と指令を出した。その後、鶴岡と西本の会談が持たれたために脅しは止めたが、今度は相手打者の私生活などについてささやき、集中力を乱す方向へ変更した。東京都であれば銀座、大阪府であれば北新地といった繁華街の高級クラブに頻繁に出向き、その店のホステスから常連客として姿を見せるライバル選手の情報を仕入れるのが常だったという[15]。

このささやき戦術は多くの選手に影響を与え、有名選手を中心に様々なエピソードを残している。白仁天はささやきによる集中力低下を避けるために耳栓を用いたが、かえって意識しすぎて打てなかったという。一方で大杉勝男にささやきかけると「うるさい!」と一喝されたものの、その一喝は野村のささやきをそれだけ気にしていた結果であった。

ただし、この戦術が全く通じない選手も存在した。王貞治はバッターボックスに入るまでの雑談には応じたものの、いざ投手と構えると集中し、話を全く聞かなかった。長嶋茂雄は、野村のつぶやきに「よく知ってるねぇ。どこで聞いたの?」と意に介さずに会話を続けたり、かみ合わない話を返したりするなど全くささやきが通じなかった。さらに動揺を誘う為「(バッティングの)フォームが少しおかしいんじゃないの?」と長嶋にささやいた際には、「本当?ちょっと待って」とタイムをかけられ、1、2回素振りをした後に次の球を本塁打にされてしまった。そしてホームインした長嶋から「教えてくれてありがとう」と言われ、野村は唖然としたという。天才肌の榎本喜八に対しては、榎本独特のオーラに呑まれて、野村自身余裕をなくして戦術を実行できなかった。また、投手のクセの研究に関しては野村にもヒケをとらない高井保弘は、打席で「何(のボールを)待ってんのや」と聞いてきた野村に「ヤマの張り合いをしよう」と持ちかけ、ことごとく球種を言い当てた上に最後に本塁打を打ったという[16]。

オールスターゲームでも、パ・リーグ捕手としての地位を最大限に利用して同リーグ投手のデータ収集を行ったが、稲尾はこの意図を見抜いていたため野村のサイン通りに投げることはなかった。パ・リーグの投手にとってオールスターはセ・リーグの打者との戦いではなく「野村との騙し合い」だったと言われており、稲尾は後年「オールスターでは野村さんとの駆け引きに専念せざるを得ず、セ・リーグの打者の記憶はまったくない」と語っている。また、稲尾はマスコミや周囲に「自分の決め球はスライダーである」と吹聴していたが、実際はスライダーは見せ球で、本当の決め球はシュートであった。これを見抜いていたのは野村だけだった[17]。
野村克也 - Wikipedia

「オールスターは自分のリーグの、別チーム投手の情報収集場」「投手にとっては野村との騙し合い」だったとは。

きのう紹介した過去記事を再度。
m-dojo.hatenadiary.com
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野球理論の「体系化」をしたのではないか

続けて「配球とか、野球やってるとみんがなんとなく知ってることを野村さんが整理してくれた。球界の源泉になっている気がする」と栗山監督。「解説者時代にも『ノムさんとやってなかったらゾッとするな』と思ったことがいっぱいあった。1年間だったけど、その1年間のミーティングが濃かった」と、原点となった“ノムラの教え”に改めて感謝した。
baseballking.jp

歴史や古典好きは有名だけど、さる名言の元ネタについて
togetter.com


球漫画の進歩も、この人がいたからではないか

野球を
推理と分析と駆け引きの場所にしたという意味では、「ドカベン」などの水島新司漫画も、その影響下に生まれたこの作品も、野村チルドレンなのですね



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おおきく振りかぶって(32) (アフタヌーンKC)

おおきく振りかぶって(32) (アフタヌーンKC)

第1話 ホントのエース

第1話 ホントのエース

  • 発売日: 2016/03/14
  • メディア: Prime Video



下は財を残す
中は仕事を残す
上は人を残す

野村の遺言 (小学館文庫)

野村の遺言 (小学館文庫)

【建国記念日再放送】平田篤胤の狂信的国学を、常識・穏健の立場からツッコミ倒した「片山松斎」という人がいた(「お言葉ですが…」別館4より)

元は2017年の記事だったかな?もう夕方ですけど、この日に記事を「再放送」します。



建国記念日特集。
建国記念日がこの日になったのは、神武天皇がうんたらかたらだからですが(よく覚えてない)、そういう日本神話の復権に一枚かんだ人々が、江戸期のいわゆる国学者、あるいは神道家の人たちでした。
で、
賀茂真淵とか
本居宣長とか
平田篤胤とかは

教科書にも載ってますし、そもそもMS−IMEで一発変換できる、いわゆる歴史上の重要人物です。
とくに最後の平田篤胤は、水木しげるサンも興味をもって生涯を漫画化するほど、個性的な人物でした。たいそう熱心な勉強家でもありました。フハッ。


ただ・・・・・・・・・水木しげるが扱っているということは、実はかなりその言動・主張がアレであった、ともいえるのだ(笑)

片山松斎を紹介するためには、まず大前提として
平田篤胤のアレな感じを紹介しなきゃいけず、いまこの文章の元ネタにしている高島俊男氏は、それをやっているのだけど、そこまで引用するとおいらがしんどい。

この原典が岩波文庫になっていることを紹介し、あとは片山松斎の言葉を紹介しよう。


ただ、いまパソコンがなんか不調でフリーズが多いので…習作的にtwitterで以前書いた、ごく短文を再録することにする。

https://twitter.com/gryphonjapan/status/558049282256011266
 @matu2syun @ITAL_ 平田篤胤のせいで古事記で何の活躍もしない天之御中主神が急速に偉くなってしまった。この説をそのまま「日本神話」として説明しちゃう本もある


gryphonjapan ‏@gryphonjapan 2015年1月22日

一種の「ヒラタ教」なんですよね。宗教は宗教で、それを広めたのはみごとなもんですけど 

いつか書きたいけど「片山松斎」という同時代人が平田篤胤をたしなめた文が「神話は神話として扱いなさい。証明しようとするから矛盾が出る」「日本と外国に、上とか下とかないよ」という理性的なものなのだが、そんな人は全く無名、平田は歴史を動かした… 


【参考】現在(2015年1月)、"片山松斎"でのグーグル検索ヒット数は約 374 件 。
https://www.google.co.jp/#q=%E7%89%87%E5%B1%B1%E6%9D%BE%E6%96%8E
(※2017年1月現在、ヒット数は約 209 件に減ってた!)
 ※2022 年の計測では 715 件。

自分が知ったのは高島俊男お言葉ですが…別巻4」収録「平田篤胤と片山松斎」





なかなか片山松斎のことを書けないのは、「片山の平田へのツッコミを銀魂風に翻訳したい」という不要なハードルを考えているから(笑)

あのそれ キリスト教だよね
どう考えても聖書のパクリだよね
おもいきり子供だましの妄想なんだけど

みたいな…



全く無名ながら、江戸時代の良識・常識の最高水準を示す「片山松斎」についてのツイートが多数RTされた。嬉しいので、元ネタの史料(高島俊男お言葉ですが…別館4」)を紹介しておきますね。ただ字数制限の関係で画像にて。適宜補足します。


片山松斎の平田篤胤批判(1)
「世界に本末を分かちて我国を以って万国の本国と褒め、外国を末国と貶すが如きは道理に於いて当ることなし。異邦人是を聞かば嘲笑軽賎せんこと疑いなし…(略、要は「地球は丸いのだから」)国土に上下本末いささかも有る事なし。」


片山松斎の平田篤胤批判(2)
「日本の天皇を万国の大君と称する事甚だ以って不通の論なり。…(略)…万国の中、何れの国にても日本の冊封を受ける国はなし…日本は独立の国にして山城の天皇は日本国の天子也。万国の天子に非ず。支那には支那の天子あり。西洋諸国各々其国の天子あり。」


片山松斎の平田篤胤批判(3)
「(古事記の)神代の事は強いて【XX(当方この字読めず)】する事無く唯其の儘置いて可なるべし。・・・…神代巻は夢幻也。うつつの事を以って談ずる事なかれ。巫祝の徒古事記神代巻の蹄(わな)にかかり、遁るる事能ず、憐れむべし。」



片山松斎の平田篤胤批判(4)
「無理無体に日本を褒称し、日本を漢土と同じ様に開闢(かいびゃく)も久しと偽り…空蒙虚冥を構て云い紛らす…(歴史の古さは自慢でも欠点でもない)…開闢の前後を争ひ日本は万国の本国などと誇耀するが如きは皆小智小見のなすところにして、大人のいふべき事に非ず」


実に正論で常識的。…で、そのせいでインパクトが無かったのではないか(笑)…と、高島氏がさらに元ネタとした研究者(中野三敏氏)も語っている。


「歴史のダイナミズムは却って篤胤の強引・片頗な解釈を、時代の牽引車として位置づける動きを示した」
…それが、歴史や宗教なのでしょうかね…(了)

少し、銀魂的ツッコミに翻訳してみる



西洋の窮理を断ずるに随て古事記神代巻は弥つまらぬものと成て守備善ふする事能力はず。西説を以て彼書を和合するときは木に竹接ぎたるごとくして一向に折り合わず。(略)所謂贔屓の引き倒しにして、神代は神代にさし置、西学は西学にして少しも附会する事なく正路に是を修学せば国家の益と成りて実の国者たるべし。


ちょっと篤さん(※平田篤胤)、アンタ、
なにさらっと西洋の天文学古事記の描写をまぜてんですか!まぜるな危険どころじゃないよ!
木に竹ついでるから、継ぎ目が初心者の造ったプラモデルよりバレバレなんですけど!
普通に西洋の学問は学問で、その古事記をちょっとこっちにおいといて学べばいーでしょーがァァァ!
それが国のためにもなるし、アンタも真の愛国者になるんじゃないですかァァァ?
(声:阪口大助

神代といふは日本書紀発端に術るがごとく太古の別名也。太古の人外国を経営する事はさて置き、自国を経営する事能はず。野に処り穴に住て、衣服もなく火食もなし。今の奥蝦夷の地、並びに当方亜墨利加の辺地など、神代といふべし。汝等神代といえへば滅多無性に有難がれ共、我は然らず。神代は一向羨むべきものにあらず。居家田畠もなく、茫々たる広野のみにて…禽獣に異なる事なし。実につまらぬ世の中也。仏者の仏在世を褒め神道者の神代を党と部は同床各夢の盲味、大笑すべし。


あのスイマセン
神代とかそういうのいいんで

そういうの、今でいえば(ピー)や(ピー)みたいなライフなんで
ぼくら都会っこなんで、ユニクロもガストもジャンプもないとか
マジありえないんで

そういう何にもない何にもないまったく何にもないなのは、ギャートルズムッシュかまやつさんにおまかせしますんで
(声・杉田智和

・・・・・・・・・・・やっぱ日本ツッコミ界の頂点に立つ「銀魂」、マネするのもむつかしいな(笑)


この無名人が、高島俊男氏に紹介されるまで

本人が詳しく書いている。

岩波書店のPR雑誌「図書」2010年5号、中野三敏先生の連載「和本教室」第24回で紹介された。
・片山松斎の平田篤胤批判書「国学正義編」は、現在その連載をかいた中野氏の蔵書と、もう一冊しか現存してない
・高島氏が興味を覚え、中野氏がこの書について論文を書いた「国際高等研究所報告書0701(中川久定編、2007年)」を読みたいと思ったのだが見つからず、やむを得ず中野氏に直接論文の読み方を問い合わせた
・そしたら中野氏が、資料だけでなくもとの原文コピーも送ってくれた。
・論文には、片山だけでなく同じように常識的・穏健的な学識と判断によって平田神学を批判した奥州二本松の服部大方という侍も紹介されていた


のだという。
専門の碩学・中野氏の論文を、専門家でもあるが現在はコラムニストとして一般の啓蒙にかかわる知識人がかみ砕いて教えてくれる。

それによって、現在著作がたった二部しか残っていない、ひとりの隠れた知識人が
「歴史法廷の再審」を受けることができ、平田篤胤の虚妄の学へのすぐれた批判が記録に残った。
ついでにブロガーが便乗で記事を一本書いた。

これも、歴史のダイナミズムかと思います。


平田篤胤についてもっと知りたいひとは

ウィキペディアや上記水木しげる漫画もあるんだけど、
このかた(ハコ氏)が、よく平田についてツイートしていて、面白いです

https://twitter.com/hakoiribox


https://kakuyomu.jp/users/hakoiribox

このひとの篤胤ツイート、今思えば折に触れてまとめてればよかったんだけど、
ごくわずかに、以下のまとめなどに採録させてもらってた

日本の「歴史の長さ」の議論から、神話や歴史の性質について - Togetterまとめ https://togetter.com/li/1032120


資料

野村克也氏逝去/スポーツ報知は「…とTBSでニュース速報があった」という第一報記事を配信

野村克也さんが死去 ヤクルト監督時代に日本一3回…TBSが報じる
2/11(火) 9:23配信スポーツ報知

 元ヤクルト監督で野球評論家の野村克也さんが死去したことを、11日放送のTBS系「グッとラック!」(月~金曜・前8時)がテロップで報じた。84歳だった。

https://hochi.news/articles/20200211-OHT1T50032.html
headlines.yahoo.co.jp

智将、逝く。やはりだいぶ老いられたという印象があり、覚悟は少ししていた。安らかなれ


ついに「テレビ番組の内容をそのまま記事に」はここまで来た。別に悪いことではない。

「元ヤクルト監督で野球評論家の野村克也さんが死去したことを、11日放送のTBS系「グッとラック!」(月~金曜・前8時)がテロップで報じた」と、別にTBSとの系列関係もないであろうスポーツ報知がネットの記事にした。
いつ、どこで最初に報じられたのか(TBSが最初なのか?)とかわからないけど、
とりあえずスポーツ報知はそうやってネットでの第一報とした。
※その後更新して、その記述を変更している(自分たちでも確認できたのだろう)。元画像はこのスクリーンショットの通り。

f:id:gryphon:20200211102207j:plain
2020年2月11日の野村克也氏逝去ニュース、報知の最初のソースは「TBSのテロップ」

この話、何度も書いてきたが、別に悪いことではない。少なくとも、読者のほうで、これで困るひとはいまい。逆に、このおかげでいち早く情報に触れたひともいるし、番組出演者の発言の文字起こしに関しては非視聴者にも内容が分かるのでありがたいことだし、世のなかの「進歩」といって差し支えないのではないか。


ちょっとびっくりしたのも事実だが、慣れるべきなのである、社会全体が。

関連過去記事

…最近、J-CASTニュースとかハフィントンポストは、こういうテレビ番組の発言をそのまま文字起こしして「ニュース」として伝え、それが安易だと批判されたりもするけど、実際にニュース価値があることも多いし記録として貴重なのだから肯定されるべきだろうと、こういう時はつくづくに思う。あとで消すにしろ、見ながらずっと録画しっぱなしで、こういうスクープ発言があったら再度見直す、聞き直すということを本当はすべきだと思うら
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…ところでこの機会に、この話を再論したい。ハフポスのこの記事は、張本勲氏のテレビ番組に出演しての発言と、ダルビシュ有氏のツイートを紹介・採録し、それに書き手の論評、感想を付け加えているだけである。いわゆる「コタツ記事(コタツに入ったままでかける記事)」というやつだ。
だが、である。
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野村克也追悼で過去記事紹介

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ちょっと読んでいただけると、往年の野球ファンには面白いと思う。元ネタはとある記録記者の本だし。


野村克也 野球論集成

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