元はtwitter投稿で、再構成をしています。
【ミステリー特集2】
ミステリーは謎と、その論理的解決があればよく、パイプの探偵もトレンチコートの刑事も、マントの怪盗やピエロの殺人鬼も必要としない…というのは常識だが、そういう視点で考えると、ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」初期の試合は、極上のミステリーだなあと思う。
もともと、この作品の主人公…ピッチャーの三橋は、最初の特殊能力として、独特の「まっすぐ」(ストレート)を持っていた。
剛速球では全然ないのだが、速度や回転に極めてめずらしい特徴があり、普通の感覚では捉えにくい球なのだ。
(※ブクマで指摘を受けたが、これは三橋の「超高校級の抜群のコントロール」とあわせて、効果を発揮する)
ここがまず、すごかった…悪い意味でのSF的、漫画的(これ漫画だけどさ)な魔球じゃなくても、ほんのちょっとのそんなアヤが、てきめんにバッターにとっては打ちにくいものとなる。
おっと、
主人公のまっすぐの特徴、いいまとめがあった。図で分かるおお振り三橋のまっすぐ http://blog.livedoor.jp/nanj_bom/archives/34348125.html
しかし強豪校の四番レベルに対しては『最初の打席は有効だが…1、2打席この球をバッターボックスで見せたら、見破られて打たれる可能性が高い』のである。だからどう、ふつうは変化球でかわしつつ、ここぞという時だけ「まっすぐ」を投げるか、その打者までにどう走者を殺すか…
そんな駆け引きが延々と描かれるのである。
テニスも「ベイビーステップ」、
サッカーも「GIANT KILLING」
……などなどを読むと休憩時間などに、やはり高度な戦略のバトルがあると分かるが、それにしても野球は、ルール上「駆け引き」と「戦略」を打席ごと、イニングごとに展開する余地がありすぎる。
日本で野球が、輸入直後から大人気スポーツ、スポーツの王を譲らなかったのは、このへんにあるのかねえ。でもアメフットも米国で人気か。米国では「攻守」の色分けがはっきりしたスポーツが人気が出る、とも聞くが例外も多いので、話半分に考えておこう。
閑話休題、「おおきく」話にもどる。
「おおきく振りかぶって」をミステリー感覚で読むとすると、特に面白いのが4巻から始まる西浦高校vs桐青高校。前も一回どこかで書いたな…。
その「走塁」をめぐってのストーリーだ。主人公のチーム・西浦高校には、本来なら超強豪校から誘われてもおかしくないような、センスに富んだ天然の大天才・田島が四番(
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3番と最初書いたがミスです、ご指摘感謝)にいる。(自分の家から近い高校として、西浦を選んだ)で、この田島は、なんと相手ピッチャーの背中のしわの様子で、つぎの動作が牽制なのか、本当に投げるのかを見破ることができるのだ!
それを利用し、田島の号令で百発百中に近い走塁を西浦高校はできるようになり、試合を優位に進めるのだが…当然、その田島本人が打席にいたり、塁に出たらそれはできなくなる。 田島の見破り方はその天才のセンス由来なので、他人は真似できないのだ。
前年優勝の超強豪である桐青高校は、もちろん監督も名うての知将だが、この”トリック”にはさすがの彼も難渋する。
「フォームを盗まれた?」
「でも、ならば何で、ここで走らないんだ?」
しかし、少しずつ推理の材料は増え、知将(=探偵)は謎に迫っていく。そして、その一方でイニングは進み…「走塁の謎」と同時に、三橋の投げる「まっすぐ」の 謎もあれこれと「推理」によって明らかになっていく。
そこから「まっすぐ」を巡る攻守の駆け引きもさらに激化、深化する……「秘密がばれつつある」ならば何を決め球にするのか。カウントをどう稼ぐか、その順番はどうするか。残りイニング、次の打席があるかも考えねばならない。
「1点を許す回」だってある。「失点するなら、どう失点するか」。
逆に、そんな読みを越えた「イチかバチか」が奏功したり。
それがスポーツ。
……てな訳で「ミステリーは好きだけど野球は興味ないなあ」という人も、シリーズ前半でもあるので、この西浦高校vs桐青高校戦だけでも読んで貰いたい。
逆に「野球は好きだけど、ミステリーはねえ…」という人も…。
多分、野球ミステリーとかもあるんじゃないかな?
それは読者の情報提供を待つ。
(了)
【補足】
ちなみに「クセ」や「読み合い」勝負では
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