という記事…といっても基本、ツイートを紹介したものですけどね…をUPして、それなりに読まれました。
で、それと全く別に、ちょっと厚めの本を休み休み読んでおりました。
保守的・愛国的な信条を背景に、その言動でしばしば他者を排撃する「ネット右派」。彼らはどのように生まれ、いかに日本社会を侵食していったのか。その真の意図とは何だったのか。ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド平成史1990-2000年代
- 作者: 伊藤昌亮
- 出版社/メーカー: 青弓社
- 発売日: 2019/08/14
- メディア: 単行本
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前史にあたる1990年代の雑誌論壇と草創期のネット論壇、55年体制の崩壊から現政権の成立までの政治状況、マンガ・アニメや「2ちゃんねる」などの文化状況、歴史教科書問題や外国人労働者問題、日本会議・在特会・極右組織などの団体の動向――。
日本社会に全面展開するネット右派の2000年代までを、嫌韓・反リベラル市民・歴史修正主義・排外主義・反マスメディアという5つのアジェンダ(論題)と、サブカル保守・バックラッシュ保守・ネオナチ極右・ビジネス保守という4つのクラスタ(担い手)からあざやかに分析する。
圧巻の情報量で「ネット右派の現代史」と「平成のアンダーグラウンド」を描き出す「ネット/右翼」研究の決定版。
そしたらあーた、突然にだな…
第7章「ネット右派の顕在化」の3、「ネイバー総督府とバファリン作戦」より
…その後、二〇〇三年五月には固定ID制度が導入された…その結果、それぞれの論者の力量が明らかになり、何人かの「論客」がその勇名をとどろかせるようになった。初期の論客にはkimura、polalis、j9(のちのzeong)などがいた。その後、kimuranobuo、dreamtale、myeloblast、tsubuan、yonaki1111なども盛んに活躍するようになる。特にjpn1_rok0、zeong、polalisの三人は、その該博な歴史知識と鋭利なディベート力のゆえに「三悪人」などと呼ばれ、韓国側からも日本側からもひときわ恐れられた存在だった。なかでもjpnl_rok0はそのリーダー格で、当時を振り返っているあるブロガーによれば、「頭はかしこく、性格きつ」く、「まったく隙を見せないさながらのその戦いぶりはまるで「不敗の軍神のようだった」という。
日本側のそうした圧倒的な攻勢に抗し、韓国側からもやがて何人かの論客を中心に反攻が開始される。そのなかの一人のdymaxionにより、○三年九月二十九日には「歴史板」に「[特集]青山里戦闘背景1」というスレッドが立てられた。韓国の「建国神話」の一部をなし、日本の植民地支配下の朝鮮独立運動のなかでも最大の戦果を挙げたとされる一九二〇年十月の戦役に関するものだった。韓国のいくつかの歴史書によれば、その際の日本軍の死傷者は千人とも三千人とも言われ、この事件を機に日本は朝鮮への弾圧姿勢を強めることになったと考えられていた。一しかしアジア歴史資料センターに保存されている出兵史料から……
はー、この前のツイートも、たまたまTLを見た時間にツイートが浮上していた、以上のことは知らず、書いた人がどういうかたかも知らぬままに、面白いから紹介したのだった。
(というか、今、記事をぜんぶ書いてから気づいて挿入するが、twitter上のzeong氏 = @zeong_dictator氏 と、 この本に出ている「エンジョイコリア」というサイトに登場していたzeongという人が、同一人物であると紐づいたデータがあるではない。名前が同じなのだから、同じかたなのではないか?とこちらが勝手に推測しているという前提で、以下の文章を書く。)
【さらに追記;後日確認がとれました】
同一人物ですよ。この高句麗一件はエンジョイコリア以前の出来事です。当時2chのハングル板の常連でして、そこで交流のあったとある在日青年の個人掲示板に書き込んだら、こうなりました次第で。
— zeong (@zeong_dictator) October 18, 2019
ただ、そういうバックグラウンドがあるならば、このやや突飛なるシチュエーションも、そういう風な流れで生まれたものなのだな、と知って、それで合点がいく。知り合ったあとに、小泉訪朝があったというから2002年の前のできごとであろう。
高句麗が何系かという話が出ているのか…以前、高句麗人に「朝鮮民族(韓民族)」としての自意識はないし、その源流の一つではあるかも知れないがイコールではないとネットで書いたら、北朝鮮系の在日の人に「それを俺の前で言えるのか」と凄まれた。
— zeong (@zeong_dictator) October 15, 2019
ちなみに、上記の本は今夜読み終わった。
インターネットの技術でなく、言論の歴史をたどる「歴史書」として面白かった。そのおもしろさは、今年の正月にNHKで放送された「平成ネット史」や、「教科書に載らないニッポンのインターネっットの歴史教科書」の面白さと同種のものでした
● NET TRAVELLERS 200Xシリーズ第4弾
- 作者: ばるぼら
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2005/05/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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あなたの「インターネットが一番楽しかった頃」はいつですか?
日本でインターネットの接続実験から約20年、商用インターネットサービス開始から約10年となる2005年春、あの伝説のウェブページ「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史」が教科書になって帰ってきました。時流に合わせて生まれては消えていく個人サイトに焦点を当て、日本のインターネットをネットコミュニティの動向から振り返った民衆史です。移り変わりの激しい個人ホームページの変遷を詳細に掘り起こした年表は、オリジナルのウェブページから大幅に加筆され、さらに各時代ごとにテーマ分けされた個人サイトの解説を、60万字にも達する膨大なテキストで書き下ろしています。
ニッポンのインターネットは、あなたが見知っているよりずっと広いかもしれません。
で、「社会学的分析」のほうは、事実関係を知っている部分ではさてどうかな、と思うところも多かった(たとえば2点。日韓をめぐる論説では、韓国国内の90年代に、まだグローバル化されないがゆえに拡大していた「外の目から見たらちょっと『?』な極端ナショナリズム」を面白おかしく、ユーモラス&シニカルに紹介した、野平俊水(水野俊平)氏の言論も源流にあるはず。/ゴーマニズム宣言や浅羽通明、大月隆寛の名前が出るなら、呉智英の話も読みたかったが、まあ氏は平均して「インターネット」とはかかわりなく活動していたか。)が、まずは今回の一件のように、そもそも知らない分野の過去史も多いので、そういうのも含めて、おしなべて興味深いものでした。
あ、あと「反知性主義」という用語が出てくるんだけど、そこで使う時『”通念的な”反知性主義』という表現をしていて、あ、あの議論をフマエテイルのですね、と個人的に(・∀・)ニヤニヤ。
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執筆した伊藤氏のアカウント。
twitter.com
朝日新聞に少し前、書評が載ったらしい
www.asahi.com
よみうりにもインタビュー記事が載ったとか。
今日の共同通信の書評でも拙著『ネット右派の歴史社会学』が取り上げられています。こちらは倉橋耕平さんから的確なご解説をいただきました。どうもありがとうございます。 https://t.co/ofL9DmWHYQ
— 伊藤昌亮/Masaaki ITO (@maito1212) October 12, 2019
そういや、自分もこういうのを、自分の分野(なのか?)でまとめておかなきゃと思ったことがあり、3本だけ記事を書いたんだけど中断してるな。
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この続きを書くのも、労力的にしんどいから、せめて「年表」でもあとで作れればねえ。