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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「クジマ歌えば家ほろろ」最終話。完結5巻は5月発売/なんとか長文紹介を近いうちに書きたい

クジマ歌えば家ほろろ完結



しかし、自分にとってはまだ終わりではない。
2023年の「漫画10傑」に選んで…この10作に順位はつけてないけど、敢えて言えばやっぱり筆頭格と認定していた。

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で、この時本当ならレビューをつけるんだけど「長文になるので、あとで本格的に書きたい」といって当時留保し、そしてことし1月にあと3話で完結、と言われた時も「完結前に長文の紹介を書く」といって果たしてなかった。
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近いうちに、本当に書いて、さよならをこの作品に言いたい。




遠藤浩輝が格闘技漫画「無敗のふたり」で帰還。ネット連載か/「同じ場所から練習を眺める」について

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無敗のふたり 遠藤浩輝

格闘技をこよなく愛する青年・三島ユタカ。目はいいけれど体が弱いユタカは、ジムに出没する天才セコンド・外山晃一郎に、自分のセコンドになって欲しいと頼む。外山は、組んだ人間を誰でも勝たせてしまう天才トレーナーであり、金に五月蠅く、そしてアル中であった。「無敗」の戦績で国内最強になる事こそ、MMA(総合格闘技)の頂点への最速ルート……異色の超王道格闘漫画、ここに開幕!

「異色の超王道」という言葉は一種の反語だけど「バクマン。」で似た言葉が使われたね、「邪道の王道」。
それはともかく、格闘技漫画があらたにスタート。


ブクマが3桁超えたのを見て、はてな界隈が格闘技に興味あるんだか無いんだか、またわかんなくなってきた。
[B! マンガ] 無敗のふたり - 遠藤浩輝 / 第1話 | 月マガ基地



ただ、最前線のジャンプで、兜首が討ち取られたばかりで……いや、それの復讐戦だ!!と思いたい。敗退したが集英社戦線、レッドブルーで小学館戦線、そして講談社でも戦線が開かれた!!秋田書店は、まあ完全に制圧して占領してるとみなしたい(笑)。 ばきらへん。


遠藤浩輝氏は、二つのSF作品をオールラウンダー廻以降連載していたな。片方の「元素を操る超能力者のバトル」って斬新だなーと思ったのだけど、これは自分に素養がなかっただけでけっこう他作品にも登場してた設定らしいね
愚者の星は、ほかの惑星を舞台にした作品だった。
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過去の「オールラウンダー廻」関連記事は多すぎて紹介できない。
この最終回直前の総括回に、主要記事へのリンクは貼ってある。
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しかし、今回「月刊マガジン」にて連載が始まったのかと思ったら、完全ネット連載で……このへんはどんな経緯だったのかはちょっと気になります。いまやそうやって、ネット連載に主流が動いていくんだ、とポジティブに見なすこともできるし、やはりいまだに「鳴り物入り」の連載は紙雑誌に載るが、社内的な判断で格闘技漫画は「鳴り物入り」にならなかったのかもしれない。




やっと作品に話が行くが、スポーツ漫画で「指揮官」「参謀」的な人を中心に置いた作劇も最近は多い。GIAINTKILLINGもいまやスポーツ漫画を代表する大河長期連載だし(ただし物語内の進行の遅さはおどろくほどだが(笑))。
格闘技漫画を、トレーナーの視点から描くとなると、かなり専門的な説得力ある蘊蓄が必要となるが、作者の実績的にはこの心配はいらないでしょう。
そして第一話の段階では、少し皮肉でピカレスクで、冷たい感じもする「勝利請負人」な感じのトレーナー。これがやや思慮は足りなそうだが、陽性のキャラクターを持つ若者と絡むことでどう別の面が描かれるか、或いは双方が変わっていくのか……という感じだろうか。



で、印象的だった、トレーナーが主人公の怪我を見破るシーンで、こんな話があった。

無敗のふたり 同じ場所から見る

これが最近紹介した、落合博満を描いた「嫌われた監督」にも登場してたんです。

「ここから毎日バッターを見ててみな。同じ場所から、同じ人間を見るんだ。それを毎日続けてはじめて、昨日と今日、そのバッターがどう違うのか、わかるはずだ、そうしたら、俺に話なんか訊かなくても記事がかけるじゃねえか」

「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか 第二章 森野将彦 奪うか、奪われるか」より

同じように、コンバートの話があった。

慣れない守備位置に変わることで
鉄壁と思われていた二遊間守備(特に遊撃手)の送球エラーが激増したそうです。
でもチームはその年に優勝してしまいます。
周囲の人たちは、
「鉄壁の守備位置をなぜわざわざ変えるんだ!それによってエラーが激増してるじゃないか!」
と非難轟々。
守備位置をコンバートされた本人たちすらもなぜ替えられたのかわからない。
しかし、周囲からは鉄壁と思われていても、
徐々にその守備範囲が狭くなっていっていることに、
定点観測をしていた落合監督だけが気が付いたそうです。

守備位置を入れ替えることで守備範囲が広がり、
増えるエラー以上に、これまでヒットになっていた打球をアウトにできるようになっていた、
ということに後から気が付かされたとのことでした。
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記録上のエラーは全く出ない。だが慣れと惰性により、ボールを足で追うより「目で追う」ようになり、これまでなら追いついていた球をあきらめるようになった。
コンバートで失策の記録数は格段に増えた(記録に残るほど)が、その一方で、以前ならヒットだった球に食らいついて止めた守備がいくつもある……



ということを、同じ場所でずっと見ている落合は気づいた、という話。



これらは純粋に格闘技でもどこでも同じだ、ということもあるだろう。


その一方で…ひょっとして、トレーナーや指導者の名人談というのは、物語の中で別ジャンルから応用しても「らしく」なる、ということかもしれない。それもまた取材や知識の成果である。
そのへんもまた、連載中においおい明らかになっていくだろう。



ついでに、この機に遠藤氏も、Xへの投稿を復活させればいいのにな。

ディズニーがジブリと提携直前に抱いた「懸念」、今では「お前らド素人?」に見えるけど「常識もすぐ変わる」の実例なんだろーね…

こちらで紹介した本の続き。というかニューヨークタイムズの俺様っっぷり話なんてやっぱり枝葉だからね。
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本題は、やはりジブリ映画とその作り手が海外で評価され、賞を受賞するなどゆるぎないものになっていく過程である、のだが…

ディズニーのジブリへの「無理解」

そうは問屋が卸さなかった。まず、われわれが問題になるとは想像さえしなかった作品についても、アメリカ国内配給部門は難癖をつけてきた。

天空の城ラピュタ』では、少年が銃撃されるシーンをアメリカの子どもには見せられない。

となりのトトロ』では、父親が裸になり娘たちと風呂に入る場面をアメリカでは上映できない。

平成狸合戦ぽんぽこ』では、なんとタヌキたちが陰嚢を使って魔術を行う。子どもに動物の陰嚢を見せるわけにはいかない。

風の谷のナウシカ』では主人公が飛んでいるときお尻が見える場面があり、それはまずい。

おもひでぽろぽろ」では少女が初潮の話をする。それを子どもに見せるわけにはいかない。女の子はまだしも男の子にはまずい、といった具合だ。

MOJ(引用者註 マイケル・O・ジョンソンというディズニーの偉い人)はできるだけ彼らを説得しようとしたが、国内配給部門は『魔女の宅急便』を試しに上映して様子を見ることに固執した(キキが飛んでいるときパンツが見える場面があったが)。彼らの目には「魔女」がジブリの作品のなかではいちばんリスクが少ないと映ったのだ…


ま、この話はいろんなところで聴きます。
となりのトトロの”問題点”とか、ジブリトリビア話が大好きな人も多いので、上の話は周知の事実って人もいるでしょう。でも逆にいえば、その現場を直接見聞きし、何が問題かの議論を通訳ではなく直接聞いたのは、この本の著者ぐらいなわけで……つまりこの本が、一種の元ネタだし、その話の事実性を担保する”出典”なのですよな。


にしても……これがディズニーのなかでも、やや「経営者」側に立った人たちの感覚というなら、「アホなんですか」という思いが頭に浮かびますが、これは個人の感想ということで。




ま、上ではなんとかジブリ擁護の側で説得に回ったMOJの方なんだけど、この人はまぁ、社内的にはジブリ推しに社内地位を『全額BET』してたような立場だったそうで。最終的には成功が評価されたと思うけど、そもそもジブリとの提携話を持ってく前に、こんなレベルだったんだから…。

ディズニーがジブリと手を組んだ時の話

……あまり注目されなかったが、ディズニーの幹部向けプレゼンテーションは、おもにアメリカの一般の観客にもっとも「わかりやすい」ジブリ作品を取り上げていた。MOJを含む幹部は「となりのトトロ」、「天空の城ラピュタ」、「魔女の宅急便」の三本しか見ていなかった。いずれも子どもにやさしいアニメーションでディズニーが全面的に認めるような作品である。ディズニーの幹部はジブリの作品がすべてこれら三作品のようなものだと思いこんでいた
最初のフィルムを見た。
一九九七年四月、来日したMOJは徳間の本社がある新橋の徳間書店ビルの徳間ホールにやってきた。鈴木さんは制作中の『もののけ姫』の最初の予告編を上映する段取りをとっていたのだ。予告編は未公開で、それを見た共同製作者の間でも意見が大きく分かれていた。共同製作者のなかには鈴木さんに構想を練りなおしたほうがいいとまで主張した者もいた。ホールの照明が暗くなるなか、そんなことをまったく知らないMOJはゆったり座り、自分の会社が取得したばかりの作品の人間の腕が切断され、矢が貫通して頭が吹っ飛ぶ、巨大なイノシシの体がどろどろとくずれ、きゃしゃなヒロインが口の周りの血を手でふき取るといった場面が映しだされた。ホールの照明がついたとき、MOJは言葉を失い、顔面蒼白だった。彼はそこにいるディズニー・ジャパンの人たちやジブリや徳間のスタッフ、そして『もののけ姫』のメーキングをつくっていた撮影スタッフの前で自分の感情を見せないようこらえた。ただし、後で鈴木さんと星野と夕食を共にしたとき、宮崎さんに少なくとも暴力を相殺するものを加えるよう言ってくださいと懇願した。たとえばヒーローとヒロインのロマンチックなシーンとか。キスがあればほんとうにすばらしい。宮崎さんは私がすごく尊敬する芸術家であり、作品を変えてくれと言う資格は自分にありませんが、どうかお願いですからそうしてほしいのです。私はディズニーでこの事業提携を支持し、みなさんを支持してきました。私はそのために自分のクビを差しだしたのです。ですから私をクビにする口実をディズニーに与えないでください、お願いです、と訴えた。
鈴木さんは考え深そうにうなずいただけだった。MOJはわかってくれたと理解したが……


繰り返すが既に「もののけ姫」まで宮崎とジブリのキャリアは到達してたんだぜ?
それでも、ジブリと手を組もう計画を進めていたMOJをはじめとしたディズニーの認識はこの程度だった、という。
そして、「私を首にする口実をディズニーに与えないで」、という泣き落としから入って、なんでか腕の切断や矢が頭を貫通するシーンの埋め合わせが「ヒーローとヒロインのキスがあればすばらしい」となるのか…実にどうも、異世界もので「日蝕だ!神の呪いだ!」とか「脚気は不治の病、予防もできない、どうすればいいんだ…」とか「消毒?なんだそれは?」みたいな連中の言動を見るようで、なんとも低レベルな優越感が刺激されるよ(笑)。「現代アニメ・映画表現倫理無双」ってやつか(笑)。
しかし、MOJのこの感想と提案がいかに「あほらし屋の鐘がなる」、のレベルであっても、この種の表現規制は、まだあるような、無いような、である。むしろ強化されてる面もあるかもしれないな。


だけど、一方でネットフリックスとかが制作に乗り出した日本漫画の原作アニメ、かなり原作準拠の残酷描写や性的描写も入っているとも聞く…これは各国の状況に合わせてカットしてるのかな?

にせよ、宮崎駿の「もののけ姫」を、その描写を撤回せずにぶつけたことも大きな意味を持ったエポックメイキングであったのでしょう。

ちなみに、上のMOJの「暴力を相殺する描写を」「キスシーンがあればすばらしい」に対してジブリ…というか鈴木敏夫宮崎駿は……、ぶっちゃけ「あんたら詐欺師か?人の心とかないんか?」な解決?策を示して痛快である(笑)。そこは本書を読んでくれ。


さらに言うと、このへんは永井豪が、暴力や性描写もありつつ、芸術・文化のクオリティ的に高い作品を創作して、実力で『それもあり』にしてしまった」という流れを、宮崎駿もなぞった、という気もする。
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だから、今現在のあれやこれやの「槍玉」も、時間がたてば…どうなるかな。



あと、MOJの泣きの要求だけどさ、たしかシン・ゴジラと、ゴジラー1.0が両方ヒットしたけど、海外人気はゴジマイの方が圧倒した、という話から
「ああいう映画でも、こてこての、人間ドラマ…と称して、惚れた腫れたの恋愛劇を無理にでも盛り込むのは、むしろハリウッドの伝統」という話があった。それ、そのまんま。




そういえば、この本には、有名なハーヴェイ・ワインスタインジョン・ラセターなど、その後の「Me Too」運動で失脚したり刑事罰を受けた人も出てくる。出版年が2016年なので、もちろん彼らの犯罪・スキャンダルは描かれることなく、ふつうに有能な大物の映画人として登場するのだ。
ラセターはピクサーのほうの偉い人だった(ピクサーは2006年にディズニーに買収された)のだが、けっきょくディズニーの偉い人というより、現場のアニメーターレベルでいえば「ジブリ」「ミヤザキ」といえば、それは圧倒的な支持を受けていたらしい。試写会は押すな押すな。

ラセターは、ジブリを訪れると、ラピュタから財宝を持ち出した空賊のように、こんなことまでやってた。

ラセターは宮崎駿が捨てた絵コンテを持ち帰っていた


なお、逆に鈴木敏夫ジブリのアニメーターをピクサーのスタジオ見学に連れて行ったこともあったが、その感想がこぞって「ゆったりした空間があることがすごい」「ジブリも見習えませんか」だったので、その意見を聞いた鈴木敏夫は深く感銘を受け…アニメーターを海外見学させる企画を、それっきりで終了させたという(笑)



あと、ジブリvsディズニーの興亡は「ディズニーにはヒットしないと思った作品を配給しない権利があるか」と「DVDなど「デジタル化」の権利はどうするか」で、面白い展開があったそうなんだけど、これは後日。

「だんドーン」「風雲児たち」読者必見! 歴史探偵で「桜田門外の変」

桜田門外の変

初回放送日: 2024年4月10日

桜田門外の変。新史料が発見され、従来のイメージが大きく変わろうとしている。井伊直弼暗殺にかかわったピストルと事件直後に起きた内戦の危機。幕末の大事件を調査する。



東京都(東京)
4月10日(水) 午後10:00 〜 午後10:45


桜田門外の変といえば
風雲児たち
「だんドーン」という見立ては、もう何度も書いたが、今現在(4月10日)、だんドーンの無料公開回がまさに第29話「桜田門外の悲劇」だった。


第二十九話 桜田門外の悲劇
2024年03月07日


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だんドーン 桜田門
だんドーン 桜田門

先行作「風雲児たち幕末編」との対比はここで書いたのでいちいち繰り返さない。

風雲児たち幕末編 桜田門外の変

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「うちは普通の新聞じゃなく、NYタイムズだよ?なんで明日、宮崎駿にインタビューできねぇの?」…すげぇな!!

異文化の交流や発展の話って面白いけど、映画や小説、漫画やアニメゲームなどのコンテンツビジネスが海外とやり取りする時の裏話って、どれもけっこうおもしろくて愛読しています。
それは知的財産にまつわるビジネスものでもあるし。
あと、映画だと字幕とか場面のカットとか、吹替の声優とか、権利の諸問題とかでお国柄がいろいろわかったり、というのもありますね。

最初に読んだのは周防正行の「shall we ダンス アメリカを行く」だったかな。

ハリウッド流儀を蹴散らし、契約至上主義ビジネスの罠をかいくぐり、米国アカデミー賞に異議を申し立て…悪戦苦闘の末に勝ちとった日本映画初の全米大ヒット。米国に乗り込んだ監督の痛快ノンフィクション。


その後、そもそも世界中でコンテンツはサブスクなどによって均等に売れる時代になったし、たとえば日本のプロレスを海外ファンが見られるとかも普通になった。海外興行も…
そういうバックステージものも実におもしろい。


そして、そういう点では非常に蓄積の多い企業が「スタジオジブリ」。なにしろ、それを担当する外国人まで雇っている企業である。
ディズニージャパンとシティバンクを経てスタジオジブリに入り、長年、海外への売り込みや通訳やアテンドその他を務めた人が書いた、この本が面白かった。

千と千尋の神隠しアカデミー賞受賞の陰に、この男の活躍あり。世界中の配給会社を駆け巡り、『もののけ姫』の翻訳に目を光らせ、旅行嫌いの宮崎駿を連れて欧米の宣伝ツアーを回る。ガイジンでありながら、誰よりもジブリ映画の「日本らしさ」のために戦い、海外に売り広めた人物の、ユーモア溢れる回想記。


この人の回想はそのまま「海外のジブリ受容史」であり、ジブリが世界のブランド、権威、オーソリティになっていく過程や、その時のカルチャーギャップ、時代ギャップを描き面白いのだが……その前に、小ネタ的なところでこういう場面が印象に残ったのでそこを紹介する。
皆さんが好きそうな話題だし。


「まだ」もののけ姫が話題になったころ……我々の感覚だと「とっくに」宮崎駿は権威だったように感じられるが、それでも普通のメディアや活字で、別格の権威扱いされてるとは国内でも断言しきれない頃、と判定してもいいかもしれない。
ましてや、海外では…それでも「もののけ姫」は圧倒的な興行収益を日本でたたき出したので、そこからぼつぼつ、さてこいつを我が国でも紹介してやっか、と思う駐日記者もいたようだが……



そこで、こんなやりとり。

NYタイムズ記者が宮崎駿にすぐ会わせろとごねた話

ニューヨーク・タイムズとのやり取りは忘れ難い一件である。それは、日本の特派員が金曜日に電話をかけてきて、「巨大なトラに乗った少年と小さい宇宙人が出てくる宮崎駿の映画」(※引用者註 もののけ姫のポスターかなんか見て勘違いしてるらしい…トトロかも?)を見て監督にインタビューしたいと言ってきたことに始まる。
私は(丁重に)宮崎さんは月曜日に外国に発つことになっているので、帰国してからにできませんかと答えた。すると彼は今日か明日はどうかと尋ねた。私は(前回よりやや無愛想に)彼はほんとうに忙しく、二週間後に帰国してからでないとインタビューは無理ですと言った。
特派員はこう続けた。「ねえ君、うちはニューヨーク・タイムズなんだよ。そこらへんのマイナーな新聞ではないんだ。ニューヨーク・タイムズなんだ。だから今日か明日のいつインタビューできるか言ってくれよ」と。
それに対する私の対応はプロとは言えないかもしれない。私は次のように答えたのである。「これは日本の映画で、ニューヨーク・タイムズがどう思うか誰も気にしていないでしょう。私ができればあなたの要望に応えたいと思うのは、両親がニューヨーク・タイムズを読むので、私の名前と映画の名前を活字で読んだら喜ぶと思うからです。しかし監督は今日も明日も空いていません。

これとタメが張れる。

平野耕太 以下略 なんで俺が平野綾と結婚できねえんだよ

この後も引用したいけど、まあ要約しよう
NYT特派員
「君のその断りを引用させてもらうよ」
 ↓
ジブリ海外広報・アルパート「どうぞ」
 ↓
かなり批判的な記事を書かれる。ついでに日本の漫画・アニメ全体の人気の秘密も分析され「漢字が難しいから(漫画・アニメが人気なの)だろう」と(爆笑…なのだが、天下のNYTの分析なので日本にも逆輸入でこの分析が報じられたという。)
 ↓
しかし、友人や親せきは「NYTに君の名前が出てたね!おめでとう」と大喜び
 ↓
「あんなに批判的に書かれてたのに?」
 ↓
「そうだっけ?気づかなかったけど、君の名前は載ってたじゃん!!」
 ↓
新聞の記事は「内容までは読まれてなかった」と実感したそうな(笑)
 

NYT、日本の漫画やアニメ人気は識字率と関係、という記事を出す?


しかしまぁ、本当に識字率とアニメ人気を、すくなくとも「もののけ姫」公開の時代に結び付けて論じてたらあまりにもひどいワザマエで、ペンタゴンペーパーズなど赫赫たる栄光をもつニューヨークタイムズの名折れ、セプクものではある。


だいたい、上のやり取り描写も、一方の当事者…それも「悪くかかれた」という当事者の言だから、何かのバイアスが在る可能性もある。



そこはニューヨークタイムスなので、過去に遡って記事を検証できるアーカイブは充実しているはずだ。
詳しい人、強い興味がある人は、本当にこういう記事があるのか、内容は正確な要約なのか、2つめの画像にあるように、「この記事に対する抗議と、それへのおわびを何週間にもわたって出さねばならなかった」というのは本当なのか、そのへん調べたら面白いでしょう。

自分はそこまででもないのでやらない。
ただ、日本漫画の人気と識字率を絡めた俗説はこの記者だけでなく広範囲にあって、呉智英夏目房之介があきれる、というか嘲笑したりしてた記憶もある。

※【追記】さすが知の殿堂、はてな村。数人が魚拓的なところも含め、記事を見つけたようだ。こちらを経由して読めると思います。
[B! ジブリ] 「うちは普通の新聞じゃなく、NYタイムズだよ?なんで明日、宮崎駿にインタビューできねぇの?」…すげぇな!! - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-



というか、この時代のニューヨークタイムズ特派員って誰?
ときおり、一社の枠を超えた有名人になることもある
東京支局長の歴代一覧とか、どこかにあればいいんだけどな。



それにだ、鈴木敏夫宮崎駿の他でのインタビューが、そもそもいい加減というか、含蓄あるというか、矛盾してるというか、気まぐれであまのじゃくというか…そういうことも遠因としてある気はするぞ(笑)

……鈴木さんは、「あらゆる年齢層の日本人にアピールしたのでしょう」と答え、記者たちはうなずいた。
「ではなぜあらゆる層の日本人にアピールしたのでしょうか」
「それはあらゆる層の日本人にアピールするからです」
「ああ、なるほど」。
 

宮崎さんは自然環境と人間の近視眼的な欲望のテーマについて聞かれ、「自分の映画にはテーマはない」と答えた。
「自然環境についてのメッセージがあるのではないですか?」
「自然の神が人間に殺され、自然界は黒いどろどろのものに覆われて全滅する。ここには人類へのメッセージがあるのでは?」
「いいやない」

この本の紹介、その二を書きました。

ディズニーがジブリと提携直前に抱いた「懸念」、今では「お前らド素人?」に見えるけど「常識もすぐ変わる」の実例なんだろーね…
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集英社の「漫画電子書籍半額」が5月8日まで延長……


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集英社「春マン!! 2024」
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※本キャンペーンの対象商品は、本ページに記載のタイトルのみに限られます。
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ブラウザ上にて無料で読める

こう、二つの記事を書いちゃったわけなんだけど……

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遠くへ行く人、もうなかなか会えないだろうと思う人との、お別れを盛大にしたあと、また帰りの電車が一緒だった、とかばったり出くわした、ときのやや決まりの悪い思いをしてるね(笑)

まあ、時間があれば、推薦の作品をひとつずつじっくり紹介するとかもできるか。

カメントツ「あのときのこどもさん」、自分たちでカードゲームを作る回が公開中。単行本も発売へ

雑誌最新号が出たら、いつまで公開されているかわかんないから、期間はあとわずかかもしれない。


www.sunday-webry.com

あのときのこどもさん カードゲーム回

と、思いついた天才さんがいて……

あのときのこどもさん ゲーム回

ただのじゃんけんに特殊ルールを加えると……

あのときのこどもさん ゲーム回
あのときのこどもさん ゲーム回


これは、雑誌掲載の時に評判の「地雷グリコ」と合わせて紹介しました。
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「こどもさん」の、このカードにじゃんけんを合わせた新機軸のゲーム、あまりに面白そうすぎて、本当にこの当時、作者の実体験としてこういうことがあったのか、あるいは過去に仮託して、そういう楽しさを描いたフィクションか正直判然としないが…
どちらであっても、カードゲームの原初的な面白さ、そして皆が知ってる単純な「じゃんけん」にあらたな制約やルールを加えて面白くできるね!という点を伝えているだけで傑作といえるのではないか。

次の回は、そろそろ更新されるだろう。


そして、この回は載っているのかわからないけど、単行本第一巻が出る。
(※結局この回は2巻収録の予定だそうな)
ここで紹介した
ノストラダムス」の回
「恐怖神話の生まれる民俗学」の回
は収録されているだろう。
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