50周年記念愛蔵版 ハレンチ学園 (1) (ビッグコミックススペシャル)
- 作者:永井豪とダイナミックプロ
- 発売日: 2018/06/29
- メディア: コミック
50周年記念愛蔵版 ハレンチ学園 (2) (ビッグコミックススペシャル)
- 作者:永井豪とダイナミックプロ
- 発売日: 2018/06/29
- メディア: コミック
以下の話は、発売中の「ビッグコミック」掲載のコラムより。一字一句正確ではなく、あくまでざっくりした要約です
いまこの雑誌では、永井豪先生がデビルマンシリーズ連載しちょるもんね。
ビッグコミック13号では、永井豪先生の「ハレンチ学園」を、漫画コラムニストの夏目房之介さんの解説によるセンターカラーで特集。連載当時の、若かりし日の永井先生の貴重なコスプレ?姿も掲載されています。 pic.twitter.com/EBl1SObGLB
— 009R (@naohisakanda) 2018年6月26日
twitterの文章を再構成
ビッグコミックで画業50年を記念したミニ永井豪特集が組まれ、夏目房之介氏が書いたコラムのこういう指摘が面白かった。
端的に要約すると
・永井豪は、その実力で、”力づく”で自分の作品を既に70年代には世間に認めさせた。
・その結果として「少年漫画に性も暴力もアリ」となった。
・いま「日本の(少年向け)漫画は、性と暴力が描かれている」は良くも悪くも確かに日本の特徴で、外国からは驚かれ、称賛されたり批判されたりしてる
・これは「永井豪を起点に、ファン・読者が共同して力づくでもぎ取った地位」であり、その点では日本は確かに特殊なのだ(夏目房之介)
1989年の手塚治虫の逝去時、朝日新聞の社説で「なぜ日本人は漫画を読み、外国人はそれほど読まないのか?答えの一つは、彼らの国に手塚治虫がいなかったからだ」と書いて、今でも語り草だがマンガの性描写、暴力描写の日本・海外の差は「答えの一つは、彼らに永井豪がいなかったからだ」か。なるほど(了)
この話が面白いのは、「まぁそういうことで日本は特殊なんだから、日本漫画の基準が海外で通じなくても仕方ない」というふうにも受け取れるということだ。
それが顰蹙を買うも、「なんて先進的で前衛的なんだ!うちではやりたくてもやれない、読みたくても読めない、羨ましい…」と羨望されるも、運しだいか、と。ただ「何でそういう風に差があるのか」を説明する一仮説にはなっていましょう。
そんな折に、公の中の公、日本国家が、永井豪氏の過去の仕事を「偉大な業績」と顕彰したわけだが。
https://www.nihonmangakakyokai.or.jp/?tbl=event&id=7182
2018年度 第47回日本漫画家協会賞 発表
2018年05月07日掲載公益社団法人日本漫画家協会(ちばてつや理事長・会員数1500名)は、漫画文化の普及と漫画界の向上発展をはかる目的のもとに優秀作品を顕彰するため、1972年より「日本漫画家協会賞」を設けています。
日本漫画家協会賞選考委員会は先に募集いたしました協会賞の候補作品について、厳正に選考を行った結果、以下の方々に受賞を決定致しました。(略)
永井豪 氏(ながいごう)
「全作品」
受賞理由 常にマンガ界のトップにあり、挑戦的な姿勢は、マンガ家にとって希望であり、
読者にとっては神にも近いのかも知れません。そのすべての作品に栄光あれ!
いいですか「全作品」ですよ。ハレンチ学園もバイオレンスジャックも、デビルマンも…ですです。全作品を、文部科学省が肯定した!肯定ペンギン!!
その結果…。
https://www.sankei.com/premium/news/180629/prm1806290008-n1.html
縁のない賞
「最も自分と縁のない賞だと思っていました。50年近く前、学校の先生やPTAなど、大勢の人から激しいバッシングを受け、大変な時期を過ごしましたので…」
6月中旬に開催された贈賞式に登壇した永井さんは、デビュー後間もない当時をそう振り返った。ストライプ柄のしゃれたスーツ姿だ。
昭和42年に漫画家デビューした永井さんは、児童向けの漫画ではタブー扱いされていた暴力やエロスを大胆に作品に取り入れた。「デビルマン」や「バイオレンスジャック」、「キューティーハニー」や「マジンガーZ」などの作品を通じて、漫画やアニメなど戦後日本のポップカルチャーに大きな影響を与えた。
先進的な取り組みには、代償もつきまとった。永井さんの作品は、全国の教育関係者から集中砲火を浴びた。特に昭和43〜47年に週刊少年ジャンプで連載した「ハレンチ学園」だ。お色気シーンや教師をこき下ろす描写などが学校やPTAからの大反発を招いた。
読売新聞朝刊(45年10月9日付)は、「ハレンチの度が過ぎます」などとする主婦の投稿を掲載。中学生が「抜群『ハレンチ学園』」(同20日付朝刊)と反論するなど、あちこちで議論となった。
どよめき
だから、永井さん自身、今回の受賞に「耳を疑いました」。選考自体は文科省ではなく日本漫画家協会の選考委員会が行ったが、文科相からの表彰状が贈られることに変わりはない。
贈賞式の壇上で、永井さんと文化庁芸術文化課支援推進室の柏田昭生室長が握手を交わすと、会場がどよめいた。出席した漫画家の1人は「漫画界にとって歴史的な出来事」と称賛した。
当時、永井さんは、騒動でむしろ発奮したという。権威や常識を笑い飛ばす痛快なギャグを同作に織り込み、当時の若者は作品を支持した。漫画は、最終的に学園が戦争の舞台になるという常識を覆す展開をする。また、後発組だった「ジャンプ」を、人気少年漫画誌に押し上げた。
「今回(国の)お墨付きを頂いたので、全国の小中学校(の図書室)に『ハレンチ学園』を入れていただきたい」
永井さんが冗談めかして語ると、どよめいていた会場が、今度は笑顔に包まれた。
いや!これは冗談で済む話ではなく、まじめに検討されるべき話でしょ。
だから自分は、この記事にブクマを付けたんだ
へー、でもさ、今はポリコレ観点からこの作品批判されない?→『代表作の一つ「ハレンチ学園」が、教師やPTAから痛烈に非難・批判されてから半世紀だが、今回はその「ハレンチ−」も含めた全作品が対象の受賞』
へー、でもさ、今はポリコレ観点からこの作品批判されない?→『代表作の一つ「ハレンチ学園」が、教師やPTAから痛烈に非難・批判されてから半世紀だが、今回はその「ハレンチ−」も含めた全作品が対象の受賞』 / “漫画家、永井豪さんと教…” https://t.co/3HsnCZLwFy
— gryphon(まとめ用RT多) (@gryphonjapan) 2018年6月29日
その少し前、受賞が決まった時も書いてた
永井豪氏は、既にあるように「PTA」に「青少年への悪影響」を言われたものも多数だけど、さらに言えば「ポリコレ」でない作品も非常に多数(笑)。しかしそれでも総合的に評価に値するという判断は良いこと / “日本漫画家協会大賞に諸星大…” https://t.co/DIrWt5mX8x
— gryphon(まとめ用RT多) (@gryphonjapan) 2018年5月9日
今回、文部科学大臣賞が出ますたのは、
・「作品の価値とは、ポリコレ的観点とは、また別のところにある」
という成熟した観点から、そうなったのか(ぶっちゃけ「万引き家族」をめぐる評価や助成金云々の話も、万引きは格差社会におけるやむを得ない行動…、とかなんかより、これを持ち出せば話は解決すると思うのだが)
それとも
・「受賞が持つ、こういう意味について何の考慮もお上がしてなかった」
なのかといえば、まあ後者に賭けたほうが確実であろうとは思う(笑)
しかし、何はともあれ「永井豪の全作品」が「文部科学大臣賞」を得た、という事実、これは大きく歴史に刻み込まれることでありましょう。
永井豪に文科大臣賞を与えることを通した人物って、彼の作品が現代の基準でいうと色々アウトなことや、のちのち物議をかもす恐れがあることを承知の上で、むしろ現代のポリコレを巡る事情に一石を投じるために、うまく上を騙した策士なんじゃないかと妄想している。 https://t.co/37rZuAHuRe
— Jake Tamabukuro (@JakeTamabukuro) 2018年6月30日
※後日、夏目房之介氏の、その該当部分のコラムを資料としてあらためて入手した。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100322/p3
(「ザ・ワールド・イズ・マイン」は)ある意味けしからんマンガなわけですよ。そういうものをどう考えるかっていうときにね、ふつう言論の自由とか表現の自由なんて言うけど、俺ね、そういうバカなこと言いたくないから(笑)、いつもね俺、本居宣長のこういうのを引用するのね(笑)。
本居宣長の歌論、文化論ですね、うた論。
(歌の中には)
政のたすけとなる歌もあるべし、身のいましめとなる歌もあるべし、また国家の害ともなるべし、身のわざわいともなるべし
って言ってるんだよね。で、そういうものがあっても人間の真実が描かれているものは芸術であり文化であるって、本居宣長が言ってるんだよね。
呉智英(談)