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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「火ノ丸相撲」の横綱・刃皇は、最近でも有数の悪役(ヴィラン)として魅力的な個性だと思う。モデルも超えて(笑)


火ノ丸相撲、アニメになるのはこの夏じゃなくて、秋でしたか。


この作品、相撲というテーマがやっぱり地味っちゃー地味なこともあって、昔「単行本が売れない!」みたいな情報もあり心配ではあったのだが、それはジャンプの四番打者には物足りない、ってことで、十分アニメになるほどの人気はあったんだね。ただこの作品、完結したドカベンが甲子園編→プロ野球編だったように、高校相撲編→大相撲編となっている。これはそうくるか!と唖然としたし、今もどういうところに着地するのか不安はあるけど、面白いことは確実に面白い。

ただ、その面白い「火ノ丸相撲 大相撲編」でひときわ異彩を放つのが……


こういうときウィキペに任せれば手っ取り早く良質な紹介になるのも考えもんだね。

刃皇(じんおう)

モンゴル出身、鳥取白楼高校留学から角界入りした現役最強の横綱。32歳[17]。晩年の大和国を破り引退に追いこみ、自らは優勝44回を数える横綱となった。既婚者で、土俵の外では妻の由美に頭が上がらないらしい。
普段は立場相応の威厳と風格を供え、一方で格下の力士にも明るく接する気さくさを見せる大人物。しかし突然子供のように泣き出す、口汚い言葉で相手を威圧するなど情緒の波が激しい。物事を熟考する際、脳内に性格の違う『刃皇』が多数現れ議論する「刃皇会議」なる思考方法を行っている。
大相撲編でも変わらず彼の一人横綱になっている。表彰式で登壇した檀上で「自分に勝てる力士がいない」「相撲が可哀想」と突然号泣。次場所で自分を倒せる力士がいなければ健在のまま引退する、と勝ち逃げを宣言。この発言は物議を醸すが、鬼丸ら若手力士の闘志に火をつけることとなる。

これはだいたい2017年の秋…11月ごろだったかな? これで半年以上引っ張ってんだな、ってこともあるけど、当時、これは偶然の面が大きいと思うけど、ちょうど「日馬富士事件」があり、現実とオーバーラップする場面も多々あった。


その後「貴の乱」とその失敗などがあったので、ちょっと記憶が薄れているかもしれませんが、同じモンゴル人横綱である日馬富士の不祥事(…という認識だった、当時は)に対して、白鵬はその場所で強さを発揮して見事優勝。その上で優勝インタビューでは「膿を出し切って日馬富士関たちをふたたび土俵に…」「万歳三唱で締めたいと思います」と言い放ち、物議を醸していたわけです。


火ノ丸相撲 21 (ジャンプコミックス)

火ノ丸相撲 21 (ジャンプコミックス)

うん、時系列では火ノ丸相撲の「引退インタビューが物議」は白鵬が「膿を出し切り万歳三唱インタビューが物議」より速いわ。


でも、物語は事実より、事実を超えた「真実」をえぐることはよくあることで、この時、フィクションとしての刃皇が語った


「俺に誰もついてこない。待ちくたびれちゃったよ」
「お前らは俺が衰えるのを待ってるんだろ?」
「俺がいなくなった後、勝手に二位争いをしてろ!」
「自分たち(日本人)の弱さを棚に上げて外国人力士を締め出して」
「相撲にすべてをささげたものに品格だのなんだのと粗をあげつらう」


などのことばは、かなり鋭い刃を含んでいて、フィクションの世界からリアルの相撲の一面、日本社会の断面を切っていた、と言えよう。


そして、今につながっている話題だけど、刃皇関は、「次の場所で優勝したら、体はまだまだ元気ですが引退します!」と宣言した、という……ここは正直、先行する相撲漫画「ああ播磨灘」を思い出したところでもある。
あれは連載第一回から「これから先、1回でも負けたら、わしゃその場で引退する!!」と宣言して始まるという破天荒なモードで、一読者として「無茶言うな、それでお話が続くわけがないだろう」と思ったのだったが…かなりの長期連載にして人気作品になったことは周知の事実だ。

逆にその後、かわぐちかいじが「バッテリー」で「1点でも相手に奪われたら引退する」と宣言するピッチャーを出してきたし、播磨灘の作者さだやす圭も「セーブごとに年俸は倍の倍の倍…と増額、しかし1試合でもセーブ失敗なら1ドルに逆戻り」という野球ものを描いて、今まさにそっちもクライマックスなんだ。

フォーシーム (15) (ビッグコミックス)

フォーシーム (15) (ビッグコミックス)


こういう感じのぎりぎりの厳しい条件みたいなのを提示して、釣りで、話を展開させていくのがいいか悪いか…というか自分の好みでいうと、ちょっと好みではない。
ただまあ、火ノ丸相撲のそれは、「この場所」の刃皇優勝がなくなれば引退も撤回されるのかな?それならば許容範囲か。

刃皇の「気さくさ」「子供っぽさ」が増幅する、怖さ




ぬけぬけと「愛」などを口にしたり、あと印象深かったのは、けいこ場ではさんざん同門力士を痛めつけ、力尽きた相手を足蹴にして「これじゃ練習にならんなあ」とかいうのだが、ちゃんこの時間にから揚げを揚げるその力士(ちゃんこ版をやるような番付ではないのだが、趣味として料理している)のから揚げをつまみ食いしようとして手をぴしっとはたかれ「痛っ」「横綱ともあろう方がつまみ食いなんて!もう少しですから待ってください」なんてやり取りをするというね。
けじめをしっかりとつけて、仕事(練習)の場では鬼にも悪魔にもなるが、それ以外の場では裃を脱いで気さくに目下と接する…って、いいやつやんけ。



というか、その気さくさ…正直さが、物議をかもす現在の相撲社会批判や引退宣言になるわけだが。
だが、同時に、それはこういう狂気を生み出している。


と同時に、刃皇のこういう二面性は、いままさに横綱にウドむために何もかも捨てて、それだけを見据えてぶつかっていこうとする主人公に対して「そんなふうな周囲の何も見ようとしない特攻スタイルは、間違っているよ」と、狂気とは別個の「余裕」を持つ側として対峙しようとする。




そう、実は次回のジャンプで、主人公と刃皇はいよいよ…というか、意外にもかなり早く直接対決するのです!!!(物語中では、場所の2日目だったはず)

「どっちが悪役かわからない」という声も(笑)


自分はここ最近、悪役というのを物語全体の評価とは別に、キャラクターの展示会として見る癖があって「ほう、この悪役像は斬新だね」「この悪役キャラはいかにもテンプレだけど、そのテンプレを堂々と、かつ丁寧に描写するのはすごいよね」みたいに見てしまうんですけど、そういう目でみると
『「火ノ丸相撲」の横綱・刃皇は、ここ5、6年の漫画の中の悪役(ヴィラン)像として、かなり斬新かつ、優れた造形ではないか?』と思うのですが、いかがでしょうか?
将来的にはまさにレジェンド・ヴィランの「内海課長」がそうであったように、このキャラクターを起点にしたバリエーション「刃皇的悪役キャラ」のフォロワーも生まれてくる…そんな力があるような気がします(了)。