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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 報道、記録、文化のために

「選挙で選ばれていないと自覚する政府の不安さを、貴方は決して理解できない」~今は獄中の中国要人は、BBCにこう語った。

……今の中国は実に強大で裕福なので、国内世論など気にしないだろうと思うかもしれないが、決してそんなことはない。1989年に当時の中国最高指導者だった鄧小平を批判する運動が、同年6月の天安門事件に至った。それ以来、中国の指導者たちは、国民の反応を徹底的に監視してきた。

私は天安門での出来事が展開するのをこの目で見て、取材し、伝えた。時には、あの広場で寝起きしたこともある。


習主席(中央)はこのところ、台湾への明確な脅しをほとんどしていない
1989年6月4日の出来事は、私たちが当時考えたほど単純な話ではなかった。「武装した兵士が非武装の学生を撃ち殺す」という出来事だったのは間違いないが、それ以外にも、北京をはじめ中国の多くの都市では別の戦いが進行していた。一般労働者階級の人が大勢、表に出ていた。当局による学生たちへの攻撃を、中国共産党の支配を打倒する機会にしようと、多くの人が決意していたのだ。

 
天安門事件の2日後に、各地を車で見て回った私は、少なくとも5カ所の警察署と3カ所の地元公安本部が焼け落ちているのを目にした。とある郊外地区では、怒る群衆が警官に火をつけ、その焼け焦げた遺体を壁に立てかけていた。制帽が遺体の頭に斜めに置かれ、黒焦げの唇にはタバコが突っ込まれていた。
 
結局のところあの時の軍は、長く続いた学生デモを鎮圧していただけではなく、普通の中国人による民衆蜂起を踏みつぶしていたのだ。

中国の政治指導部は、36年前に起きた出来事の記憶をいまだに葬り去ることができず、政府に反対する世論の台頭を常に警戒している。法輪功のような組織化された集団だろうと、独立系キリスト教会だろうと。あるいは、香港の民主化運動、さらには地元の腐敗に抗議するだけの住民の声だろうと。すべてが強力に踏みつぶされる。


私は1989年以来、かなりの時間をかけて中国を取材し続け、その経済的・政治的な台頭を見てきた。習近平のライバルで競争相手だったトップ政治家と、知り合いになったこともある。その人の名前は薄熙来。イギリス好きの彼は、中国の政治について驚くほど率直に語ってくれた。

彼はかつて私にこう言った。「自分たちが選挙で選ばれたわけではないと自覚している政府が、どれほど不安を抱えているか、あなたには決して理解できない」

薄熙来は、収賄、横領、権力乱用で有罪判決を受け、2013年に終身刑を言い渡された。
(後略)


ジョン・シンプソン BBC世界情勢編集長
www.bbc.com


薄熙来か…
民主化運動をしている反政府の闘士とかではなく、習近平と国家の頂点の座を争い、敗れて獄中にある人物。汚職や権力乱用での罪だが、別に冤罪じゃなく、まあやったんだろうなと思わせる(笑)、そんな人物……そんな人物のホンネだからこそ、ぞっとするような迫力がある。


こういう、ちょっと対外発信や積極的な外交を勧めようとする人物が、西側の人間にくだけて率直な本音を語り……それは阿吽の呼吸で聞いた側もオフレコにしているが、その人物が亡くなったり、対外的な影響が無くなったあとで聞いた側が秘話として披露する、ということはままあることだ(胡耀邦など)。その時、現状認識は往々にして夜郎自大とは程遠く、自分たちの弱みや今後の課題を正確に把握しており、だからこそ絶対に当時はオフ・ザ・レコードだった、ということが納得できるものが多い。


鳥の將(まさ)に死なんとするとき、 其の鳴くや哀し。 中国要人の將に失脚せんとするとき、 其の言うや善し。



「民意の後ろ盾がないと不安」というのは民主国家内でも、
党内政変の結果や連立の合従連衡によって生まれる政権もかなり意味は異なるが、原理的な部分は似ており、だから高市政権の解散総選挙は、前回からの期間の短さや予算審議前、厳冬時の実施云々という話はともかく、原理的な部分ではそうだろう感はある。自民党政権は、世論調査の人気が悪い時はしれっと選挙を回避して居座る(高市首相だっておそらくそうだったろう)のだからご都合主義すぎるのだが。



話戻って、にしても、中国の要人が言う「自分たちが選挙で選ばれたわけではないと自覚している政府が、どれほど不安を抱えているか、あなたには決して理解できない」が重い迫力があるのは、その「不安」は中国の行動を抑制的にする方向にはいかず、逆に、だからこそ攻撃的になるかも、ということだ。
習近平は、とくにそうである。

宇宙に自前のロケットで人を送り、運搬ロボットや掃除ロボットを日本のファミレスに行きわたらせ、春節には獅子舞ロボがパフォーマンスをする中国の進歩と発展はお世辞抜きで大したものだ。
だが、それゆえにこそ「選挙で選ばれたわけではないと自覚している政府」がそれを手中に収め、コントロールしていること。
その視線が、その不安から政府が1990年代に脱却しえた、南の島国……台湾島に向けられていることの、意味。
(了)


選挙でえらばれていないと自覚する政府の不安を、貴方は決して理解できない