関連過去記事を読んでから、今回の「社説」という答え合わせを…
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朝日新聞(社説)迫る北京冬季五輪 懸念と不信の解消遠いまま
2022年1月31日 5時00分
強大な隣国の首都で、間もなく冬季五輪が始まる。
選手はもちろん、多くの人が開幕を待っていることだろう。
一方で、指摘されてきた数々の懸念や不信の解消は遠く、いまも引きずったままだ。
収束する気配のない感染症への恐れ。中国が抱える深刻な人権問題。それらに目をふさいで、開催ありきで突き進む国際オリンピック委員会(IOC)の独善的な体質――。
何をめざした、誰のための五輪なのか。大会中も、そして閉幕した後も、この疑問に向き合い、問い続ける「冬の祭典」になるのは間違いない。
■隔絶された環境で
今回の五輪は、世界の感染者が連日のように300万人を数え、約1万人が命を落としていくなかで挙行される。
昨年の東京五輪・パラリンピックについて、社説は地元国のメディアとして、予定されていた夏の開催の中止を求めた。
心配したとおり、期間中に感染爆発と医療逼迫(ひっぱく)が起き、診療を受けられぬまま自宅で亡くなる人が相次いだ。一方、大会組織委員会をはじめとする主催側は、大会参加者に絞った陽性率の低さなどをもとに「成功」をアピールし、現実社会と五輪がパラレルワールド(並行世界)にあることを浮き彫りにした。
その構図は北京も変わらず、一層顕著になっている。
ワクチンの普及や公表されている現地の感染状況、夏季大会と比べたときの規模の小ささ、そして、その強権的なやり方の是非はともかく、「検査と隔離」を徹底する中国政府の措置によって、リスクは低減されるとの見方が一般的だ。
しかし、それと引き換えに失うものは多い。
外国からの訪問者と開催地の市民が、人種や国の違いを超えてふれ合う機会はない。国内観客も競技会場に入ることを許されず、選手は東京大会よりもはるかに厳しい「バブル」の中で行動を著しく制約される。一番リラックスでき、親交を深める場であるはずの選手村でも、食事は天井から機械経由で届き、「孤食」を強いられる。
市民不在、交流不在。この「隔絶」こそ、東京から引き継がれる今大会の大きな特徴といえるだろう。
■大会の「成功」とは
国際社会と中国の間にも、深い隔絶がある。
各地で北京五輪に反対するデモは絶えない。香港や新疆での重大な人権侵害に多くの人が心を痛め、中国での開催を支持できないと訴えている。
共産党政権はこうした声に正面から向き合わねばならない。異論を力で封じ込めようとしても、反発は高まるばかりだ。
ところが現実は、いつもの統治手法を五輪に持ち込むのではないかとの疑念が渦巻く。
例えば、条件つきで認められるようになった選手の政治的な発言や行動への対応だ。東京五輪の際、サッカー女子の試合で日英両チームがともに片ひざをつくポーズをとり、人種差別に抗議したのは記憶に新しい。
これに対し北京の組織委員会は今月19日、中国の法律や規則に反する行為は処罰の対象になると述べた。大会の成功に向けて、中国に対する異議申し立てを受け付けない姿勢を明確に打ち出し、選手らを牽制(けんせい)したと見るべきだろう。
そもそも中国がめざす北京五輪の「成功」とは何か。
習近平(シーチンピン)国家主席によれば、それは中国の人々が「中華民族の偉大な復興を信じる気持ちを強める」ことであり、「希望に満ちた国家のイメージを世界に提示する」ことなのだという。
国威を発揚して政権の求心力を高め、中国の印象を改善させる。五輪の露骨な政治利用であるのは明らかではないか。
■ともる赤信号
こうした中国の振る舞いにIOCは毅然(きぜん)とした態度で臨むべきなのに、女子テニス選手の「失踪」をめぐる対応のように、迎合した姿勢に終始し、不信を深めている。
世界大戦による中止やテロ、冷戦下のボイコット、さらにIOC幹部らの腐敗などがありながらも五輪が続いてきた背景には、人間の尊厳、反差別、連帯など、五輪憲章がかかげる理想への共感と期待があった。
ところが近年の五輪は商業・拝金主義にまみれ、開催時期から競技の開始時刻までスポンサーの意向が幅を利かす。これに東京大会によってあらわになったIOCの権威主義への反感も重なり、持続可能性に赤信号がともる。開催を引き受けられる都市が極めて限られてきていることが、何よりの証拠だ。
環境保護の観点からも疑義が尽きない。巨大施設の建設や周辺整備に、これまで多くの資源が費やされてきた。この大会でも大量の人工雪をつくる必要があり、地域の水不足が深刻化するとの声があがる。
視線の厳しさを認識し、あるべき五輪像を探る。自らの存続をかけて、IOCはこの課題に取り組まなければならない。
太字部分とか「地元国のメディアとして」とかは、色々考えたあとがうかがえる(笑)
読売新聞 政治の圧力で選手を妨げるな メディアの役割が重要さを増す
2022/02/04 05:00
新型コロナウイルスの感染拡大や米中対立で世界が揺れる中、北京冬季五輪が開幕する。選手が安心して力を発揮できる大会にし、感動を世界に届けてもらいたい。
アジアでの冬季五輪開催は、1972年の札幌、98年長野、2018年平昌(韓国)に続く4回目となる。北京での五輪開催は08年の夏季大会に続く2回目で、同一都市の夏冬開催は初めてだ。
今回は冬季五輪史上最多の7競技109種目に、約90の国・地域から約2900人が参加する。
◆東京の勢いつなげたい◆
日本選手は、海外での冬季五輪としては過去最多の124人が参加し、平昌の13個を上回るメダル獲得を目指している。
前人未到の4回転半ジャンプで3連覇に挑むフィギュアスケート男子の羽生結弦選手や、スピードスケート女子5種目に出場する高木美帆選手ら、平昌に続く活躍が期待される選手も多い。
スキーのジャンプやモーグル、スノーボードも金メダルが期待されている。
オミクロン株の感染拡大で、国際大会や強化試合が相次いで中止されるなど、選手はコロナ禍に 翻弄ほんろう されてきた。困難を乗り越え、大舞台で見せるパフォーマンスは人々を元気づけてくれるに違いない。
日本勢が過去最多のメダルを獲得した東京五輪は記憶に新しい。躍進に刺激を受けて北京に向かった選手は多いはずだ。東京の勢いをぜひつなげてもらいたい。
北京では、事実上のワクチン接種義務など、東京より厳しい感染症対策が取られている。チケットの一般販売も中止された。
◆表現の自由を保障せよ◆
万全の対策で安全な大会が実施されることは望ましいが、行き過ぎた規制には注意が必要だ。
選手や報道関係者が検温結果の報告に使うスマートフォンのアプリに、個人情報 漏洩ろうえい の危険があることが判明している。コロナ対策にかこつけて、自由が脅かされることがあってはならない。
中国政府の強い統制が隅々まで及ぶうえ、会場に一般の観客が入れないという制約もある。だからこそ、メディアの役割が一段と重要になってくる。
報道の自由や表現の自由が保障された上で、全てのメディアが大会を幅広く伝える責務を果たさなければならない。中国が内容を検閲したり、制限したりすることは許されない。
国際オリンピック委員会(IOC)は、選手が政治や宗教、人種問題で意見表明することについて、特定の国や個人を標的にしない条件で認めるようになった。
だが、中国は体制に対する批判を摘発対象としている。中国の五輪組織委員会の幹部は「中国の法律や規定に違反すれば処罰対象になる」と述べ、大会から追放する可能性に言及した。選手の発言を封じるための威嚇ではないか。
IOCの中国に対する姿勢も問われることになる。
バッハ会長は、中国の女子プロテニス選手が共産党幹部を告発した後、消息が途絶えた問題で、詳細を説明しないまま、選手の安全が確認されたとの見解を示し、中国寄りだと批判された。問題をうやむやにしてはならない。
IOCは、五輪の肥大化やテレビ局重視の運営の改善を迫られている。地球温暖化の影響もあり、冬季五輪の候補地は先細りが予想される。持続可能な五輪のあり方を考えるべきだ。
◆切り離せない国際政治◆
五輪はスポーツの祭典ではあるが、国際政治と切り離せない側面がある。開会式に政府代表団を派遣するかどうかは、各国の中国との距離感を浮き彫りにした。
米欧は中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧などを理由に派遣を見送り、日本も同調した。一方、ロシアのプーチン大統領は出席し、習近平国家主席と会談するという。五輪は中露の連帯をアピールする舞台となる形だ。
習氏は、大会の成功は「中華民族の偉大な復興への自信を高める」と国民に号令をかけている。秋の共産党大会での長期政権確立に向けて、自らの求心力を高める機会ととらえているのだろう。
08年の北京五輪では、日米を含む80か国以上の首脳が出席した。国際社会が関与することで、中国が人権や法の支配を重んじる「開かれた大国」に向かうことへの期待があったからだ。
中国がその後、国際協調を軽んじ、独善的な姿勢を強めたことが今回の五輪の重苦しさを生んでいるのではないか。中国は批判を 真摯しんし に受け止めねばならない。
毎日新聞 北京冬季五輪あす開幕 調和の精神に立ち返る時
朝刊政治面
毎日新聞 2022/2/3 東京朝刊 English version 1657文字
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北京冬季オリンピックがあす開幕する。新型コロナウイルス禍に加え、米中対立が深刻化する中での大会である。北京では2008年夏季大会に続く五輪となる。1924年に冬季大会が始まって以来、夏冬の五輪を同じ都市で開催するのは史上初めてだ。
世界第2位の経済大国に成長した中国は、2度目の五輪を国際的地位を固める場にしようとしている。習近平国家主席は「中華民族の偉大な復興への自信を強める」と述べ、独自の政治体制の優位性を強調した。
国威発揚につなげようとする中国の思惑が前面に出る大会とならないか、気掛かりだ。
影を落とす大国の対立
国際社会の分断も大会に影を落としている。米英などは中国の人権状況を厳しく非難している。新疆ウイグル自治区の少数民族に対する抑圧を理由に、大会に政府関係者を送らない「外交的ボイコット」を表明した。日本も政府高官の派遣を見送り、国会は中国の人権状況に懸念を示す決議を採択した。
一方で、ロシアのプーチン大統領は開会式に出席し、習主席と会談する。ロシアはウクライナをめぐって欧米とにらみ合い、中国に接近している。五輪にも欧米と中露の対立が持ち込まれた形だ。
過去の大会に際しては、五輪期間中は紛争地でも戦闘を停止するとの休戦決議が国連総会で採択されてきた。だが今回は中国を含む173の共同提案国に日米豪印などが加わらず、足並みが乱れた。
台湾選手団の呼称をめぐっても混乱が起きた。これまで使われてきた「中華台北」で参加予定だが、中国の報道官が「中国台北」と呼んだことを受け、台湾選手団が一時、開閉会式の欠席を発表する一幕もあった。
北京五輪を取り巻く現状は、「平和の祭典」の理念に沿っているとは言いがたい。五輪憲章は「人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる」ことを根本原則に掲げる。関係国は改めて原点を思い起こし、五輪を政治利用しないよう留意しなければならない。
コロナの感染拡大防止のために、昨夏の東京五輪以上に厳しい対策が取られる。選手や関係者だけではなく、報道陣も外部との接触が遮断される「バブル」の環境で行動を制限される。
「ゼロコロナ」政策を掲げる中国だが、既に関係者からは多くの感染が確認されている。大会中も対策に万全を期すのは当然だ。
ただ、行き過ぎた統制や監視は自制すべきだ。五輪関係者の健康状態を管理するアプリによって、情報を抜き取られるのではないか、との不安が出ている。私有のスマートフォンやパソコンを持参しない選手団もある。
人権を尊ぶ大会運営に
人権尊重は五輪の根幹をなす考えだ。国際オリンピック委員会(IOC)は昨年、政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じた規定を一部緩和した。特定の個人や国を標的にしないことが条件だ。
これを受けて、東京五輪では選手たちが競技場での行動やネット交流サービス(SNS)での発信を通じ、人種差別や国家による圧力に抗議の声を上げた。
だが、今大会の組織委員会は中国の法律や規制に従わなければ、処罰の対象になると表明した。これに対し、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は「中国の法律はあいまいで、自由な発言は取り締まりの対象になる」と懸念を示している。
処罰をちらつかせるような高圧的な運営が世界に理解されるとは思えない。各国の若者が自由に言葉を交わし、交流を深められる環境が必要だ。アスリートの意思表示が不当に封じられるようなことがあってはならない。
IOCには選手の安全を守り、競技に専念できる舞台を整える責任がある。
中国の女子テニス選手、彭帥(ほうすい)さんが共産党幹部に性的関係を強要されたとSNSに投稿し、削除された問題も尾を引いている。IOCのバッハ会長がオンラインで彭帥さんと面会したが、詳しい経緯は明らかにされていない。不信を拭う説明が求められる。
人種、宗教、性別、国籍などの垣根を越え、世界の人々がスポーツの喜びを共有する。そんな祝祭を実現するために、参加国は「調和の精神」に立ち返るべきだ。