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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「永井豪の海外紹介時『けっこう仮面』などは意図的に隠した…そうせねば、欧州で全作品発禁になってた」(重要証言)

Amazonでも取り扱って入るらしいんだが、今はまだ出回ってないのかな。
書店店頭にて、「スタジオジブリの小冊子『熱風』2018年7月号特集を入手しました。
ここに、イタリア人の方が連載を持っている…このブログとtwitterで、一度紹介したことがある連載なんだよな。

80年代にイタリアで「新日本プロレス」が突然人気になった話/〜ジブリ機関紙で連載中の、イタリア出身者のコラムが面白い〜 - Togetter https://togetter.com/li/1176969



経歴にもあるように、のちに彼―コルピ・フェデリコ氏は永井豪の「ダイナミック・プロ」に入社し、海外での売込みや権利関係の仕事に関わるのだけど(実はこの最新回はその話。彼の関わった永井豪魔王ダンテ」の翻訳出版は、日本のマンガ権利者と欧米の出版社の初の直接契約だったという)、その前、記者としてインタビュー記事にかかわったときの話が最高に面白かった。

……日本には手塚治虫を始め石ノ森章太郎藤子不二雄など、「巨匠」と呼ばれる漫画家は数人いらっしゃるが、イタリアでは彼らの知名度はそれほど高くなく、やはり大ヒット漫画家といえば「 UFO ロボグレンダイザー」…の原作者だった。永井豪はイタリア、フランス、スペインの3カ国では神様のような存在だ… (略)
永井豪は当時の欧米では「スーパーロボット」の神様として崇められていたが実は「デビルマン」をはじめとするダークな作品や「ハレンチ学園」に始まったエッチ路線の作品も描いていることを、ほとんどの人が知らなかった(デビルマンはテレビ版のスーパーヒーロー的なキャラクターとしてしか知られていなかった)。
まず「イタリアでは放送されなかった結末」と「実はスーパーロボットだけではない永井豪」の2点を中心にインタビュー記事を書こうと考えた。そして一点だけにはあえて触れないようにした。それは先生のエロ作品の存在である。
ロボットアニメであれだけカトリック団体から叩かれていた原作者が「けっこう仮面」のような作品も描いているという情報がヨーロッパ各国で拡散したら、彼の全作品が放送禁止になる危険性さえあった。だから僕が永井豪とダイナミック企画に入社して、欧米向けに彼の作品をプロモートすることになった時も、一部の作品の存在にはあまり触れないようにした(「アラーくん」のように国際問題になりそうな作品は作品歴から全面削除したこともある)。一部の作品を伏せることは真実をありのままに語るべきという記者としての自分の理念に葛藤を生じさせたのだが、やはりそのような作品の存在を大々的に公表するのは当時のヨーロッパでは危険性が高すぎたのだ。(ジブリ機関誌「熱風」187号=2018年7月号)

実にどうにも、笑ってしまうのだけど、その笑う理由にはいくつかの要素がブレンドされている。

1:本人も言ってるが、これ厳密には情報の隠蔽、虚報、忖度なんだよね。最初はインタビュー記事だったわけで、仰る通り「真実をありのままに語るべきという記者としての自分の理念」とまっこうからぶつかる。


2:だけど事実として、おそらくこの時の「情報隠蔽」によって永井豪とその作品は、欧州や海外でパージされずに地位を確立し、今もリスペクトされているという現実がある。


3:いわでもの話だけど、永井豪作品を過去にさかのぼってポリコレAK的観点で検証すると、さあ、あの作品とあの作品の、あの描写どうでしょうね…?、という話になりましょうよ。たぶん全弾撃ちつくせー、の蜂の巣状態になるで(笑) でもたぶん皆スルーするだろう、さあ、みんなで共犯になろうよ、と。何しろ文科相が出した賞を「全作品」が受賞したし(笑)


4:最後。http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20180701/p1 で紹介し、反響があった夏目房之介氏のテーゼは、やはり慧眼だったのだ。自分なりの言葉で再度要約する。
永井豪は結果でなく原因なのである。 氏の作家性が余りに優れており、ファンが支持したので、地位を確立してしまった。その結果、日本では永井豪的な少年漫画も『アリ』になり、性や暴力表現の許される範囲が拡大したのだ』


※上の「4」の話を詳しく書いたのが

永井豪は力づくで作品を世間に認めさせた。結果、日本は(特異的に)『少年漫画でも性や暴力を描ける』となった」(夏目房之介氏)〜永井豪とポリコレ。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20180701/p1

というね。上記のコルピ・フェデリコ氏の回想は、とくに4の、「答え合わせ」だった。

夏目房之介ビッグコミック寄稿コラムと、コルピ・フェデリコ氏がジブリ小冊子に載せた回想記が、割符のようにぴったりとはまった。そこが実にどうにも、感動的ではあるまいか??


※後日、夏目房之介氏の、その該当部分のコラムを資料としてあらためて入手した。