文春新書の売れ筋のひとつに、たくさんの学者に短い文章を寄稿してもらい、それをまとめた歴史解説シリーズがある。そのうちの一書。
ローマ帝国を滅ぼしたのは難民と格差だった、イスラームはなぜ台頭できたのか、明朝を揺るがした日本の火縄銃、イギリス料理がまずい理由とは──知っているようで知らない世界史のエッセンスを凝縮した一冊。激動の時代を生き抜くには、歴史を学び直す必要がある。世界史の教養をこの新書一冊で身につけることができる!日本を代表する23人の論者による世界史入門。テーマ別ブックガイドも収録。
カエサル暗殺の理由とは 佐々木毅
なぜ釈迦は仏教を開いたのか 呉智英
ムハマンドのリーダーシップ 山内昌之
モンゴル帝国支配力の秘密 杉山正明
イギリスで産業革命が始まったわけ 中野剛志
ルネサンス期は魔術の最盛期だった 樺山紘一
史上「最も幸せな国」はどこ? 出口治明
世界史から何を学ぶか 野田宣雄 ほか
ここの115ページに杉山正明氏の「異民族を活用したチンギス・カン」という章があり、そこで唐突に……いや、ユーラシアの広範囲にわたる交流を開設したところから繋がるから、本人にとっては唐突ではないのだろうけど。
……ようするに、地球規模ではないけれど、ユーラシア世界の世界史は古くからたしかにあった。ひるがえって、もうかなり以前のことにさかのぼるが、日本の西洋史学を代表するふたりの知り合いが,大航海時代、という新造語をひねり出して、さかんに喧伝した。陸から海へと、世界をつなぐにない手が交代しはじめる幕開きだったといいたいようであった。だが、はたしてそうか。そもそも、『大航海時代』といえるような様相になるのは、じつのところずっとあとのことである。率直にいって、十八世紀、かのキャプテン・クックの時代以降でしかない。もっともそうした批判をかつていくらか綴ったところ、『グレイト・マリタイム・エイジ』という日本式英語は看板を下ろすことになった。ヨーロッパ人が進出してこなければ、『旧世界』というまとまりすら成立していなかったかのようにいうのは、あんまりだろう。壮大な嘘であり、愚かしい所業であったというほかはない。
おっふ。
昨年はだいぶん、この大航海時代スイッチ版をやり込みました。ただ、全ての謎を解く前に、全ての港を支配下におさめ、敵対勢力はすべて消滅させてしまったし、世界もすべてを回って地図を完成させてしまった。それでも終わらないとなるとどうすればいいんだ。
いや、ゲームの話ではない。
たぶん、何の予備知識もなしに上の文春新書の、杉山正明記事を読んだらひっくり返ったか、逆に意味するものが解らなかったに違いない。
実は、こういう予備知識を持っていたから、意味するところが分かったんです。
【メモ】「大航海時代」は特定の命名者(増田義郎)がいて、年代の定義もある(「ダンピア」おまけ漫画より)
#ダンピアのおいしい冒険
— ダンピアのおいしい冒険 告知 (@oishiibouken) April 19, 2021
一昨年の4月18日に連載を開始して、2年が経ちました。こんなにたくさんの方に読んでもらえる作品になるなんて…。
本当にありがとうございます。
おかげさまで、ダンピアの航海はもう少し続きます。
最後まで見届けていただけるよう、精一杯頑張ります。 pic.twitter.com/tIChR3bXCa
以前も書いたけど「新語」「新概念」…ことに「歴史区分」って不思議なもので、別にそれをやったからって、現実のほうに何か変化があるわけでは無い。海賊たちが「俺たちは今、大航海時代を生きている!」とは思わなかったろう。
例の「鎌倉幕府の成立年が何度も変わった」というのも「ここに、鎌倉幕府成立せり!!」と佐殿や武衛殿が宣言した訳でもない。歴史学者が、どう命名するか、どう定義するか、ってだけのことである。
kamakura-life.net
togetter.com
togetter.comseekingmist @seekingmist
最近は鎌倉幕府の成立年を確定させる必要あるのか?と思ってる。
1180年頃から徐々に出来ていった、でいい気がしているが、研究者たる諸先生方はそうもいかないのかな… twitter.com/fzk06736/statu…
2022-04-12 00:23:33
山田邦和 @fzk06736
↓のようなご指摘をいただきました。確かに、確定させる必要などない、という研究者もいると思います。ただ私は「自分なりに」確定することが大事だと思います。それは「鎌倉幕府の本質とは何か」という命題を深く考え、それに自分なりの解答を出すことだからです。
twitter.com/seekingmist/st…
2022-04-12 09:42:55
山田邦和 @fzk06736
⇨「鎌倉幕府の成立年」は研究者によって異なっていてもいい。研究者が自分なりに「鎌倉幕府の本質は何か」を深く考え、それに結論を出す。その結論が他と異なっていてもいいし、その場合は「成立年」も違ってくる。逆に、困るのは「だれそれ先生が言っているから従う」など、自分の頭で考えないこと。
たしかにそれが、思想や我々の視点、価値評価に影響を与えることも確かで、だからこそ、学者やインテリたち(プロもアマチュアも含めて)は、新語や新概念を作って飽きず、また相互にそれを潰し合う(笑)
そういう新語や新概念、あらたな区分を作る試みの面白さを語った過去記事が、たとえばこちら。
m-dojo.hatenadiary.com
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引用
……実のところ、新元素や新種の動物、数学の新公式の発見なんてのはシロウトは不可能に近いが、「概念」を発見、というか創作し、それを提唱する。それが広く受け入れられ、定着する・・・・・というのはどうもあまり専門性がいる話ではなく、むしろ市井の住人こそが専門家と五分以上にわたりあえる分野っぽいと思うのだ。(略)「新概念」の創作と定義万歳!!
そういえばそもそも、杉山正明先生も「モンゴル語の読みに従えば、ジンギスカンでもチンギスハーンでもなく『チンギス・カン』が正しい」とか「モンゴルがあくまでも主体なのだから、中国風の『元朝』でなく『大元ウルス』なのである」とか、そんな感じで新しい言葉や概念を提唱・宣伝すること一方ならず。
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ただ、こっちはいまのところコーエー・テクモが採用しないのが残念なところだ(笑)
そういえばこれ、スイッチ版あるの?