まず、最新刊32巻が発売された、と。
- 作者: みなもと太郎
- 出版社/メーカー: リイド社
- 発売日: 2019/05/27
- メディア: コミック
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今回は、何度か言及しているように、ついに「生麦事件」が描写される。
ここについても面白いのだが…その前に、雑誌のほう、最新号の話を紹介しておきたい。
【月刊コミック乱七月号・絶賛発売中】桜田門事件の首謀者たちへの大赦と生麦事件の熱狂を受け、尊皇攘夷を掲げる過激派たちが跋扈する暗殺時代に突入。桜田門で井伊直弼を守ろうと奮闘した彦根藩士たちは一転して罪人と化し次々と処罰され……『風雲児たち〜幕末編〜』、ご注目ください!(な) pic.twitter.com/AC9IItLVjW
— 月刊コミック乱 (@gekkancomicran) 2019年5月27日
そう、井伊直弼が桜田門外の変で暗殺されたあと、急転直下、島津久光が”挙兵”。その軍事的…というより、時勢全体の圧力を受けた幕府は、大きく方針を変え、人事も刷新する。松平春嶽や徳川慶喜が復権する(これが「文久の改革」)。かつての指導者は、蟄居などの処分を受ける。
今月の乱の『風雲児たち』で堀田正睦さん久世広周さん完全終了のお知らせ。今後千葉県民出てくるのかなあ。 pic.twitter.com/NNGSk7Q1G4
— ハチマキくろだ@北ティアI26 (@hatimaki_kuroda) 2019年5月28日
しかし、それは「安政の大獄は悪であり、捕まって罰を受けた被害者は英雄。取り締まった側は、悪党である。」という逆転現象であった。木の葉が沈んで石泳ぐ。ぜんぶがひっくり返る…その結果、井伊大老を生んだ彦根藩が、「このままではお咎めを受ける!おとり潰しになる!」との危機感(「安政の大獄が悪になる」だけでなく、「そもそも藩主の首を取られることが士道不覚悟だ」という弱みもある)を持つことになる。
その結論は…『公的な責任追及の前に内部粛清の形で「安政の大獄」「桜田門外の変」の関係者を処分する』ということだった。
そのあおりをもろに食らって、かつては「影の大老」だった長野主膳は、武士としての名誉の切腹すらままならず、「打ち首」に加えて、そのまま身分なども剥奪され墓も作れない「打ち捨て」の処分を受ける。
今月の『風雲児たち幕末編』のメインは彦根の獄だ。
— よし (@korakuyoshi) 2019年5月29日
マンガでこんなに描かれるの初めてじゃないか?
有り難いです。 pic.twitter.com/ByovHGz9Ux
あ、この事件て「彦根の獄」っていうんだ…。
そして、桜田門外の変で行列に加わった武士たちが、「そこで戦死していないなら、それはお前の仕事が不十分だったからだ」という、とんでもなく苛烈かつ強引な論理で、次々と実質的な処刑、流刑となっていく。
みなもと太郎氏はここで「1860年の桜田門外の変の罪を、1862年に問われたってことは…実質、彦根藩では赦免状態だったものを、慌てて再度処断したんじゃないの?」という疑問を提示されている。だとしたら、その処刑や流罪は、さらに暗く陰湿な影を帯びてくる(2年前の事件で、「いろいろあったが、何とか命は長らえたようだ、やれやれ」というところから突然、再度罰を受けるんだぜ)。
「飛鳥川 昨日の淵は 今日の瀬と 変わる習ひを我が身にぞ見む」(長野主膳辞世の句)
とは、いまに通じる普遍性を持つ詩だ。
さて、そこまでやった彦根藩の運命は???
それは言及を避けるが、幕末に起きた、ある一事件、自分は「なんであそこが、あの場でそうなるのかねー」と冷笑していたが、この話と繋がっていたのだ!! そこでようやっと腑に落ちた。
・・・・・・・というのが、最新号のあらましだが、最終盤、次号へのヒキ部分で、ついに「会津藩、京都守護職仰せつかる」の場面が登場する。
『風雲児たち幕末編』
— 弾正 (@naoejou) 2019年5月29日
今月号でとうとう家訓を盾に松平春嶽から松平容保に京都守護職要請が😱 pic.twitter.com/e0J9jBah2W
「會津肥後様、京都守護職つとめます、内裏繁盛で公家安堵、トコ世の中ようがんしょ」
という俗謡が、今後は悲劇のバラードとなる……
あ、最新号の話だけで、コミックスのほうは紹介書けなかった。
たとえば、
みなもと太郎風雲児たち32巻面白い。最終話まで寿命持ってください先生。 pic.twitter.com/yM8JnFGwUN
— やまちゃん (@next_chigasaki) 2019年5月30日
で引用されている、「ガチで欧米列強、日本侵攻に乗りだしたら」という話や、生麦事件のディテール、また生麦事件が島津と薩摩藩の「虚名」を高めるという話も興味深い。