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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

みなもと太郎のジジイ(67)がまたとんでもないパロディをやったと話題〜それはともかく「対馬事件」について

たくさんの人が紹介してるけど

https://twitter.com/longlow1/status/537811892966653952
ロングロー
‏@longlow1
今月の「風雲児たち」にやられた(^^)

ジジイ、この期におよんでw
しかもこれ、岡昌平という人に頼んで書いてもらったらしいぞww
(こちらの右側の画像⇒https://twitter.com/betafujihara/status/538697593325244416  )
岡昌平http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%AC%BE%BB%CA%BF
トシを考えろトシをwww
この前のこれで懲りなかったのかよwwww
おかげでうちの過去記事にもけっこうアクセスあったわwwww


万延元年のジャッカルたち…「風雲児たち」で、桜田門外の変がカウントダウン。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120105/p2

と、このひとがこういうことをするとふだん使わない「w」まで使うことになるんだが、ある意味反応したら負けだ(負けたけど)。
だいたい自分も「艦これ」はよく知らない…というかパロディばっかり耳にはいってくるぞ(それが人気、ブームということなのだが)。
【追記】???

id:hobbling 艦これと見せかけて中身はガルパンダージリンオレンジペコイギリス海軍だから。

id:feita ほんとだ!よく見ると艦これに見せかけてキャラはガルパンダージリンオレンジペコじゃないか。艦これを目くらましに使う67歳ェ…。ガルパンはなぜかオッサン人気が高いのは知っていたが…。

しかししかし、問題はそんなことではない。
このパロディもはさんで描かれた「対馬事件」は、なかなかに重要な事件でありました。
単行本はまだ出ていないので、単行本派にとってはウィキペディアこの項目を読んでしまったとなるとネタバレなのだが、それは史劇の宿命と思っていただきたい(笑)。某大河ドラマで、「坂本龍馬は暗殺されるんだよな」とか「織田信長が本能寺で光秀に殺されて…」もネタバレ!と怒られる人がいるとかいないとか。


ペリーの黒船はまぎれもない砲艦外交ではあるが、大統領から脅迫や武力行使は慎むように、と釘をさされたこと、日本の大君政府(江戸幕府)もなんだかんだと世界情勢をそれなりに把握し、それなりにタフな交渉を行ってきた、ということは近年の研究が徐々に浸透しており、常識化しつつある。「風雲児たち」もそれらのことはお台場の人工砲台などによって描いてきた。
その直後のロシアとの交渉は、江戸幕府幕末期の傑物の一人・川路聖謨
http://ktymtskz.my.coocan.jp/denki/kawaji.htm
プチャーチンが信頼関係を結んだこともあり、非常に巧く行く。「日露の連携によって英米と対峙しよう」という潮流まで生まれたのだ。

だからその後、その関係からは想像もつかなかった「ロシアの軍艦が対馬を占領」という事件が発生したのは、幕末期に日本の領土が侵略の脅威にさらされた大きな事件だといっていい。またこの時ロシアは「対馬の藩主と交渉して許可をもらえば、対馬の領土を租借できる」という法律論で理論武装していた。
このへんをそもそも考える必要もなかった日本国大君政府にとっては盲点だった。
このとき、ロシアがもくろみどおりに対馬を租借できていたら、その後はどうなっていたか。おそらく本当に近代アジア史は一変していただろう。
ちょっとこの「If」はすごく壮大な歴史変換をしそうで、想像もつかない。(日露戦争の前提条件とかぜんぶ変わってくるよ!!)


そして最終的には江戸幕府は、中国古典の兵法のごとく
「夷を以って夷を制す」、すなわちイギリス海軍に依頼して圧力をかけさせることによってこの危機を免れた。だから上のパロディ画像になるわけだがね。もちろんイギリス海軍が正義のために立ち上がるわけもなく、ここは非常に複雑で綱渡りの駆け引きがあるのだが…。




19世紀半ばから20世紀初頭にかけて非西欧世界は、全面的に西欧世界からの「隙あらば」の圧力にさらされていた。自分はエジプトやトルコなどの事例を知るたびに、映画「七人の侍」で、野武士に殺された幼子の遺体を見て菊千代がさけぶ「この子たちは俺だ!」のように、「半歩まちがっただけで、日本もこうなった!!」という戦慄を覚えざるを得ない。

朝鮮は同時代、
丙寅洋擾 辛未洋擾
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%99%E5%AF%85%E6%B4%8B%E6%93%BE
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%9B%E6%9C%AA%E6%B4%8B%E6%93%BE
という戦乱があり、ひとつはフランス軍を撃退するという近代初期の「西欧vs非西欧」星取表で燦然と輝く大戦果を挙げた。虎狩り猟師で狙撃兵団が作られたというのはこのへんかな?もう一方では米軍に戦闘では敗北したものの開国を徹底拒否。それを成功というなら成功だった。


そしてそれが明治の江華島条約、征韓論日清戦争保護国化…とつながっていく。西欧近代の圧力を浴びた国家は領土を割譲するはめになったり、積みあがっていく対外債務に苦しんだり、そして西欧を真似て「それをやる側」になったり…

小栗忠順は「失敗」、勝海舟は「成功」でいいのか?

実は「風雲児たち」はそのところをうまーく書いていてそんな単純な見方をしてないんだが、そういうふうに評価する史書もいくつか読んだのですよ。


だが、そもそもがですね。
勝海舟は自分の功績を盛っているんじゃないか」問題があって(笑)

そもそもにしてから、勝海舟はたいへん偉大な傑物だが、それなのに、というかそれゆえに、というか、川路聖謨小栗忠順、木村摂津守など、その才能や実直さにおいて十二分に賞賛に値するような幕末期の「幕府良識派」とはたいへん折り合いが悪かった。小栗は血統的に名門中の名門だが、川路とは同じように低い身分から頭角をあらわしてきた人だったのにのう。

まあ、最終目標も違っていたのだろう。
英伝で、もしゴールデンバウム王朝末期に、アンスバッハのような王朝守護の立場にありつつ才能がある人々が何人もいてそれなりの要職についていたら、ラインハルトにとってはそれは無能な連中以上に目障りな障害になるわけでな。
また風雲児たちでは、かつて夭折した将軍候補の遊び役だった勝が、14代将軍・家茂にその面影を見て、理屈抜きの親しみを感じたという変数を想像していたな。幕末良識派は、なんのかんので実務の有能さを盛っていた慶喜派が多かったし。


で、このブログでずっと語っているテーマのひとつ「最後の勝者は物語」にもつながるのだが、勝海舟は老いてますます元気、時々女中にも手をつけて、奥方からは「一緒に墓に入りたくない」と遺言されたりする晩年をすごした(笑)。
そして速記術も伝わったその時、半藤一利氏が「日本史上最初の評論家」と評する、談話方面での活躍が始まる。

幕末の動乱期の中、幕臣の中心として江戸城無血開城という大仕事を成し遂げた後の人生を勝海舟はどう生きたのか。新旧相撃つ中で旧幕臣たちの生計をたてる道を探り、福沢諭吉らの批判を受けながらも明治政府の内部に入り、旧幕府勢力の代弁者としての発言力を確保して徳川慶喜明治天皇の会見を実現。また一方では逆賊とされた盟友西郷隆盛の名誉回復に尽力した海舟の後半生に光を当てた名評伝。
 
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
半藤/一利
1930年、東京生まれ。53年、東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「週刊文春「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て現在、作家。『漱石先生ぞな、もし』(新田次郎文学賞受賞)、『ノモンハンの夏』(山本七平賞受賞)、『昭和史』(毎日出版文化賞特別賞受賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

なにしろ頭脳明晰、談論風発、当意即妙。
べらんめえ調で話の面白さも抜群、聞いて速記してそれを載せれば本も新聞記事もあっという間に出きてしまう。
安彦良和の画は、そんな雰囲気をすごくうまく伝えている。


代表作「氷川清話」は青空文庫で編集中。完成がまたれる。
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person354.html

勝海舟bot
https://twitter.com/katsukaishubot


そんな中で勝海舟のサービス精神はいかんなく発揮され、嫌いな相手はだいぶんクサすし、「アレオレ(あれは俺がやった)精神」もかなり旺盛な人だった。
一歩間違えばこれになったかも…

http://www.bs-j.co.jp/workingdead/special/zukan/01.html
アレオレデッド【森田哲矢さらば青春の光)】
特徴・・・
他人の手がけた仕事を「あれ俺」と自分の手柄のように吹聴するただ乗り社員。恥ずかしげもなく「アレオレ」を連呼するが、逆に不利な結果を招くと「アレカレ(あれ彼)」と責任転嫁する。
 
生息する業界・・・
IT企業などのベンチャー業界

勝海舟対馬事件解決にどの程度具体的に貢献したのか、は今回の風雲児たちでも、かるーく、ジャブ程度に疑いをはさんでおりましたな。

ま、生き残った人のくそおもしろく盛ったホラ話回顧談を資料にしつつ、本当はどうだったんだろう?と考えたり調べたりするのも歴史の醍醐味であります。


そんな部分でも、このロシアによる対馬占領事件はおもしろい題材でありました。
だからみなもと太郎氏がこれについて数話を使って論じたのは慧眼でありました。また話が進まなくなるけどさ(笑)。
だから3Pもパロディにつかってんじゃねえよジジイ(笑)

あ、最新話の〆だが……

対馬は突然、心無い外国からの被害を受けた。
・たしかにこの話に限っていえば、外国勢力が全面的に悪い。
中央政府は、あまりスピーディで一刀両断の解決をできなかった。
・その結果、対馬では対外強硬派勢力が一気に伸張し、攘夷の熱狂が吹き荒れた!!


のだという。
まあ、21世紀の今は無縁な話……であることを切に祈る。