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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

万延元年のジャッカルたち…「風雲児たち」で、桜田門外の変がカウントダウン。

風雲児たち」でまどか☆マギカのパロディ?

twitter上で、こんな話題がありました。
http://twitpic.com/82o60w

@pd_araki
そういえば昨日、東京駅のキオスクで買った時代劇漫画雑誌の「コミック乱」にこんなコマが。この雑誌を買う年齢層に、このネタが分かるのだろうか。

ジジイ(みなもと氏は1947年生まれ)なにやってんだよwwwwww
現役続行杉だろwwwwwwwww
 
と、おもわず普通は使わない2ちゃんねる用語にそまってしまうが、というかこれでは済まない。実は2段3段がさねでこのギャグかましてるんだよ、このじじい(笑)
心の準備はできたか、おまいら。

…実は上(ブラウザによっては「左」か)のコマのほうは、該当作のパロで間違いないだろうが、もうひとつの顔に穴が開くほうは別の作品かもしれない。わたし詳細よく知らんのよ。
(※【追記】コメント欄で教えていただいたが、これも「まどか」パロで間違いないとのこと)
てか、ン年も年下の俺が結局まだこの作品見てないのに、なんでジジイが見てんだよwwwwwww 
漫画界の黄忠かおまえwwwww
しかも説明抜きでパロ挿入wwwwww
単行本にギャグ註があるから置いてけぼりかwwww
とまた2ちゃんねる的用法になってしまう。

では真面目に論ず

さて、居住まいを再登城の前田慶次ばりに直して。
最初の話題のtwitterに、自分はこうコメントした。

gryphon この回はそれ単独でも非常に面白い回だった。だが「まどか」パロディ(だよね?)は俺もわからん(笑)/まあ、みなもと太郎氏のほうが詳しいこと、それ自体はなんら驚きではない(笑)

みなもと太郎と同年代、もしくはそれより少し下の年代の漫画評論家、アニメ評論家、オタク評論家は次々と「おれはもう、いま現在の作品にはついてけないわー。リアルタイムの作品評は若い人に任せるわー。自分の守備範囲の作品だけ論じるわー」といま、”引退”していってる。それはほとんど、野球選手や力士が「体力の限界」を感じ去っていくのと同じで、仕方ないことだと思う。
問題はまれに工藤公康とかランディ・クートゥアとか、そしてみなもと太郎みたいな例外の化け物がいることだ(笑)

まんが学特講  目からウロコの戦後まんが史

まんが学特講 目からウロコの戦後まんが史

まあ、この人の感性と趣味の現役っぷりは、毎年のコミックマーケットにいち作者として参戦しているから、毎回何十万人が目撃者となっているってことだろうな。こんなに論じる必要もないか。

いよいよ桜田門外の変へ。「経過報告型ノンフィクション」の手法も織り込み。

さて次に、コメントした
「この回はそれ単独でも非常に面白い回だった」
の部分について語らせていただきます。
そもそも上の回でパロディ導入役を務めているのは作者本人。この作品が「大河歴史ギャグ漫画」だからこそ、作者が作中に登場し、登場人物とこんなしょーもない会話をしているわけですが、それはこの作品の弱みではなく強み。
実は、作者はここで「私は実際に桜田門外の周辺を取材してきたんですけどね…」と語り始めます。


いろんなノンフィクションを読んでいると自然と分かりますが、ノンフィクションの一技法として、調べている「僕」が、あっちへいって人に聞いたり、こっちへ行って古い資料をあさったりする経過をそのまま書くというスタイルがあります。
その一方で、そうやって必死に調べた結果を「Aは、Bであった。」と、ぽんと一行に集約させるスタイルもある。
前者はいま現在、旬の存在でいうなら安藤健二森達也。古いところでは鈴木明。
後者は、いわゆるニュージャーナリズムの旗手たち。
沢木耕太郎は、初期作品ではストイックなまでに後者を貫いていたが、あるとき「前者に徹したノンフィクションを書いてみたい」と思いたち、自分の行動それ自体がノンフィクションの材料になりうる分野に首を突っ込みます(ボクシング選手の復帰と、興行)。
それを書いた作品を「私小説ならぬ、私ノンフィクション」と称しました。

一瞬の夏 (上) (新潮文庫)

一瞬の夏 (上) (新潮文庫)

一瞬の夏 (下) (新潮文庫)

一瞬の夏 (下) (新潮文庫)

 
まあ、ノンフィクション分野ならこの2ジャンルは苦もなく共存する。だけど虚構の世界を築く小説や漫画だと、けっこうこの手法はおきて破り・・・というと大げさですが、まあ敢えてやる人は少ないですよね。
司馬遼太郎はこの手法を取っているから、慣れている人もいるかもですが、本人は結構、確信犯というかアナーキーな感覚でこれをやっていると宣言している(笑)

……小説という表現形式のたのもしさは、マヨネーズをつくるほどの厳密さもないことである。小説というものは一般に、当人もしくは読み手にとって気に入らない作品がありえても、出来そこないというものはありえない。
 そういう、つまり小説がもっている形式や形態の無定義、非定型ということに安心を置いてこのながい作品を書きはじめた。(「坂の上の雲」1巻あとがき)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

てめえwwwww
そういえば彼は「土方歳三はサイゾウと読むのか、トシゾウと呼ぶのか」をわざわざ現地に取材して、「このへんじゃトシさんと呼んでましたね」という証言を得た過程を、たしかそのまま「燃えよ剣」に盛り込んでいたような・・・(ちょっと曖昧です。別作品かも)
http://www.sinanoya.com/etcetra/others10/index.htm

燃えよ剣

燃えよ剣

そんな手法のひとつとして、今回みなもと太郎は還暦をとうに過ぎた肉体にムチうち、「襲撃現場から、井伊邸に引き返すか、救援要請をするのに要する時間は?」というのを実地検分したわけです。そしてそれを、単なる背景取材ではなく「自分が21世紀の現在、現地でやってみた実体験」としてあえてここで証言したことで、その暗殺事件の綱渡りぶり、一方にとっての幸運、一方にとっての不運が、よりはっきりと分かるようになるわけです。

自分も、「桜田門外の変」があった場所は当然把握している(てか、地名が事件名にあるもの)し、たぶん歩いたこともあると思うが、そこで実際に事件現場の距離を測ってみようか、なんて発想はしたこともなかった。半蔵門なら日本武道館の縁で何度もくぐったのだがね(笑)。こういう点でも、精神(と肉体)が若い!!こういうところには若い編集者を派遣して、データを報告させるような人もいるのだから(それも一手法で、常に否定すべきものではありませんが)。
そしてその調査結果が、
桜田門外の変の襲撃計画は)「どう考えてもズサンだ」「ババッ(銃撃)」というパロディのネタに通じるのです。
志士たちも、「大名の登城は、その華やかな行列を見物する田舎侍が多いから、ガイドブックを手にして観光客を装う」など、考え抜いた準備をしているのだが、それでもなお難しい、万に一つの僥倖を求めてのチャレンジだったと。

ちなみに、このパロディで銃撃をするのに使われる銃のことも、その前に紹介され、日本の軍事史的にも興味深い事実(外国の拳銃のレプリカ製造に、一私人が成功していた)が解説されています。史実がギャグの材料か、ギャグが史実の紹介用か。この「一体化」がすごいのですよ、この作品は。


自分も、この後桜田門前をもう一度見に行こうかな、と思ったけど、大晦日以来、桜田門の前の警戒態勢はヒッジョーに厳しくなっていると思われるので(爆笑)見学は某容疑者出頭の、ほとぼりがさめてからのほうがいいようである。

そして偶然と必然が、運命の天秤を傾けて・・・・・・

浅沼稲二郎暗殺事件。
グリコ森永事件。
そして福島東電原発事故。
 
どれも、「こんな馬鹿な!」「こんな偶然あるの?」的な、あり得ないようなこと(一方から見れば「ミス」、一方からは「天佑」)が、最終的な結果につながっている。
天気一つとっても、

この雪がなかったら、行列を護衛する彦根藩士が刀を袋に入れることは無く、抜刀が遅れることは…今回の作品中でも「3月(太陽暦は4月)に雪が降るわけない」と、その偶然性が語られている。
 浅沼稲二郎暗殺事件も、テロリスト・山口二矢はあの立会演説会に入るキップを用意しておらず、本来ならすごすごと引きかえすほか無かったんだよ。それが、皮肉にも・・・
詳細は

新装版 テロルの決算 (文春文庫)

新装版 テロルの決算 (文春文庫)

話を桜田門外の変に戻すと、この事件は、上に書いた様に見物客などもいるような、当時の世界最大級の都市のど真ん中で発生。行政機構にも識字階級にも不足のない時代と場所であったゆえに、記録は実に膨大。
行列のうちの、何番目にいた藩士はどんなふうに怪我をし、どんなふうに奮闘し、あるいはどの藩士が逃げ出したか(笑)について、すべて分かっていて、子供時代、死者に印がついた絵を見て怖かった記憶がある。
おれ、みなもと氏は山本直樹「レッド」をパロディにするんじゃないかと思ってたぐらいで(笑)。でもあれに近いんですよ、桜田門外の変の記録って。おなじテロ活動つながりというか(笑)。

レッド(1) (KCデラックス)

レッド(1) (KCデラックス)

井伊直弼 このとき46歳 攘夷志士によって襲撃暗殺されるまで あと12日」とか。
 
そんな詳細な記録をもとに、いよいよ次回か?
江戸は、安政7年3月3日の朝を迎える・・・・・・
(表題の「万延元年」は実は改元によって生まれた年で、実際の事件は”安政7年”に発生。てか、この事件によって改元されたんですがね)
ラソンでいえば、35km地点ぐらいまで来たとしていいのかな?いまや、完結はあのジジイの体力と健康にかかっている「風雲児たち」だが、ひとつの節目となることは間違いない。
信念と責任感が、視野狭窄と強引さに転化してしまった悲劇を面白悲しく描写された井伊直弼が、この作品で、最後の舞台に立つ・・・。

関連作品

史実に基づく作品は、他の作品がそのままネタバレになるという問題もあるが…(笑)

■一昨年が、事件からちょうど150年だったということで、映画になりましたね。

桜田門外ノ変【DVD】

桜田門外ノ変【DVD】

風雲児たち」とは面白い縁があって、今回の回にて。

関「鉄」之助だから、鉄人28号wwww
何しろ登場人物が多いし、資料も人によって多かったり少なかったりので、時どきこうやって安易にキャラづくりするwwww
だけど、このキャラ登場後に映画のほうができて、そっちはスターの大沢たかおが演じて主演wwww
みなもと太郎涙目wwww
いや、まあ、こういうお遊びを盛り込む人だ、そりゃ確かに「まどか」パロディのひとつやふたつ、どんと来いだわな(笑)。

 
■ある意味、この作者、吉村昭が資料を発掘・整理したという部分もある。吉村氏は小説家としては珍しいほど資料に厳密で、「資料に何も根拠がないことは書かない」的な発言もしていたと記憶する。それが好きという人も、嫌いな人もいるが。

桜田門外ノ変〈上〉 (新潮文庫)

桜田門外ノ変〈上〉 (新潮文庫)

桜田門外ノ変〈下〉 (新潮文庫)

桜田門外ノ変〈下〉 (新潮文庫)


■そうそう、表題の「ジャッカル」は、言うまでもなくこの作品から。

ジャッカルの日 (角川文庫)

ジャッカルの日 (角川文庫)

フランス大統領ドゴールの暗殺を請け負った殺し屋ジャッカル(エドワード・フォックス)の行動を詳細に追ったフレデリック・フォーサイスのベストセラー小説を、巨匠フレッド・ジンネマン監督が映画化。原作の味わいを損なうことなく、ドキュメント・タッチの淡々とした、それでいてじわじわと緊迫感みなぎる名人芸の演出をとくと堪能できる、まさにプロ級のプロが作った映画の中の映画。大傑作である。 終始クールにふるまう主人公をエドワード・フォックスがこれ以上にないほどのリアルな演技で魅せきる。また彼を追うフランス司法警察ルヴェル警視役の名優ミシェル・ロンズデールも素晴らしい。両者の息詰まるシーソーゲームが実にスリリングに展開され、観る者を圧倒する。本作の日本公開後、映画ファンの間でやたらとスコープ付きのモデル銃が流行った。(的田也寸志

全部じゃないけど、このブログ内や外部の主要リンク集。

■かなり以前に書いたみなもと太郎風雲児たち」紹介文を再録
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081028#p2
安政の大獄で「これは冤罪だ!」と声を上げた幕府官僚・木村敬蔵という男がいた
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100804/p2
文化庁メディア芸術祭、マンガ部門 大賞は「ヒストリエ」。「風雲児たち 幕末編」が優秀賞
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101209/p2

■「釣りキチ三平高田屋嘉兵衛編」紹介
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081027#p6

※これは他のブログですが
■「日本史を勉強したければ『風雲児たち』を読め。」
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20081018/p1
■同エントリのブックマーク
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/kaien/20081018/p1

※初期の「会津藩誕生」に関連したエントリ
■「「3月のライオン」に便乗し、「風雲児たち」と保科正之を宣伝する。」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080909#p11

■そのとき作った海賊版動画【保科正之、江戸大火に処す】

※外部リンク。この作品での田沼意次はちょっと褒めすぎかも、という話
■「田沼意次論争」
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20080116

■江戸時代の科学や技術を考える
漫棚通信から2 絵画技術ってどうして世界で同時多発しなかったんだろうね 」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20071229#p5
大麻の鎮痛作用に迫る」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070412#p1
■解体新書関連
18世紀の「人力検索はてな」。建部清庵杉田玄白(「風雲児たち」関連)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070927#p5
■開国とハリスと国際経済について(幕末編)
「「風雲児たち」とハリスと黄金とをめぐる謎」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070628#p6
「「お台場」とはなにか?・・・。」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20040703#p1
「ディファ、ガンダムのある「お台場」の歴史的意義をみる」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090719#p1
尊王思想、儒学的思想の発展と自己崩壊について
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070523#p2
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20060204#p5

余談

自分のコメントを自分で採録

友人と電話で話していて、ちょっと面白い指摘。
『黒船来航が1853年(いやでござるペリー殿)。
大政奉還が1867年(一夜空しく大政奉還)で14年。
これを「幕末」とするなら1860年桜田門外の変は、ちょうど折り返し点だ』