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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

タイは文化省が、自国のBLドラマを海外発信コンテンツとして重視。同国ではYシリーズと呼ぶが語源は…

赤松健議員がタイを視察して文化行政について調べたという。


分野に疎い当方だって、『タイに「BLドラマ」がある』『それが、日本でもBSや地上波も含めて放送されるほど人気で、需要がある』ことは知ってたけど


……いやねぇ、この話聞いて思い出した話があるんだよ。
それは、空手バカ一代その他で「日本の空手が世界雄飛を目指して海外進出!」「だが、タイにおいては『我が国伝統のムエタイこそが最強だ』と、最大のライバルとして立ちふさがる!」という構図(爆笑)

いや、ぴったりでしょ?

プロレススーパースター列伝 vsムエタイ
空手バカ一代 vsムエタイ ブラックコブラ


タイでBLドラマが作られ世界的に注目されるのは、ひとつには輪廻転生の概念が広く知られて、日常に定着していたため、以前からLGBTは「輪廻の際に魂が男で肉体が女も、その逆も、まぁいろいろあるのだろう」と思われて寛容だった…という説をよく聞く。これが事実なら、しばしば宗教概念(迷信)といってもいい、それが逆に、近代的な思想や科学的発想と偶然共鳴する(禊・沐浴が、結果的に衛生面で有効だったりなど)、というものとしても興味深い。そのへんが伝統のムエタイが日本カラテを待ち受ける、という構図と相似なのだ。



ただ、その一方で、ムエタイというより「グレイシー柔術」かもしれない。
というのは…

タイではBLドラマを「Yシリーズ」と呼びますが、何とYは「やおい」の頭文字であり、YAOIは既にタイ語になっているとのこと。ちなみにパリや北米のマンガ系書店にも「YAOI」漫画コーナーがありました

あっ…日本発だ(笑)。だが、そこで独自の進化を遂げ、生まれた国に逆輸入、そして世界に広まっていこう、という点ではまさにグレイシー柔術ブラジリアン柔術)ではないか!!

しかし、世界語になるとわかってりゃ、ヤマなしオチなし意味なし、という自虐ネタの命名じゃなくて、もっとちゃんとしたほうが良かったんじゃ?とか思うけど(笑)、「スペースオペラ」とか…いや、そもそも「小説」という言葉も、もとは蔑称だったものが定着し、悪い意味が消滅したことも枚挙にいとまがない。その殿堂に入るんだろうか。




ただ、これもすごいことであって、タイ語になるまでに「YAOI」が普及したなら、それは輸出した人、輸入した人がいる。
夏目房之介氏が2000年にこう書いていた。

584 名前:夏目房之介投稿日:2000/11/10(金) 23:56
>583さん 昔は「少女マンガの文法はやはり特殊過ぎて、外国の人が理解しにくい僕も昔そう思っていました。実際、昔の欧米コミックに、ああした効果やコマ構成はなかったように思います。
個人的感想ではここ5年以内に欧米でも似たコマ構成を見る気がします。
ただ、それが本当に少女マンガの影響なのかどうかは不明です。
また、国内でも少女マンガ手法は80年代に普遍化してますから、直接の影響が商業的に出るのは、韓国と台湾ぐらいかもしれません。
この2国ではむしろ少女マンガのほうが市場としても強いようです。
ただ少女マンガ系には特殊な影響力があって、オタクレベルのマニア層でやおい的な波及をする、いわばコアな影響は欧米、東アジアともに見られます


考えてみればすごい話で、明治に「文学」「近代小説」を海外から持ち込んだ文豪たちや、トキワ荘やSF作家集団のような……いや、フォークソングやラップ、レゲエ、そういった音楽需要の世界拡大にも似ている。

以前、やおい文化を海外に広めるために芦原英幸のような人々が海外に赴き、道場破りをしていったら?みたいな冗談を言ってたが、結果的にそうやって普及して、その源流としての日本が「YAOI」という言葉が残ることではっきり刻まれつつ、そのコンテンツが逆に日本に輸入されるほど国際地位を得ている、というのが、一大文化的偉業、感動的なエピソードである、そのことはもっと周知されねばなるまいと思ったので報告ルポ漫画の、そこにスポットライトをあてて見た。

赤松健のタイ視察とBL振興

実際、タイのBLドラマってどんなのがあるのか

www.nitteleplus.com

www.bsfuji.tv

maruttol.com

https://x.com/tvasahi_thai



もちろん、BLドラマと、たとえばLGBTの諸問題を社会的テーマとして描くドラマ・映画は、ちょっとジャンルが違う。後者では「ブローバックマウンテン」などアメリカでもかなり早い時期に作られていた。
だけれども、男女の異性間恋愛に関しては無数の、社会的テーマとは少し別の恋愛模様を描いたエンタメ(メロドラマ)があるのだから、
当然同性に関しても、そういうメロドラマがあるのはおかしくない。社会問題と切り離されたそれがあるのは、ある意味で豊饒さでもあるだろう。










そのほかの視察報告をまとめて







世界のエンタメは「何かのジャンルがどこかで受けたら、その国独自のコンテンツも生まれる」状況になっていくと思う(サブカルの世界連帯)

という話の過去記事
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そしてこのジャンルの”手塚治虫”として
栗本薫がいた…

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「とにかく中島さんからはこのJUNEというジャンルで、後に続く人を育てようとされている気持ちを感じました。この分野を世の中に定着させたいという意志で、私たちのことも応援してくれた。デビュー当時から売れっ子作家だった中島さんにとって、こういうジャンルの小説を書くのはリスクでしかなかったはずです。それを敢えてやり続けたというのは、彼女のなかにやらなければならない必然性があったのでしょう。私はJUNEというひとつのジャンルが立ち上がる時にそこにいられたことは幸せでしたし、中島さんがその場所を作ってくれたことは本当にありがたかったです」(288P)