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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

中国で既にライトノベルが「軽小説」とまんま訳され「テンプレも共有」してるという…サブカルの世界連帯はあるのか?

絵柄とは裏腹にけっこうシビアな状況も描かれている速水螺旋人の変わった軍事漫画「大砲とスタンプ」で、それでもちょっとほっとする場面が、敵国・共和国軍の捕虜(かなりの重要人物の息子)と、主人公側である、大公国軍兵站軍の大尉(こちらも名門の家系)で、その一方でSF作家でもあるキリュシキンが、SFマニアとして心が通じ合う場面。

その後もとある交渉の場で対面するのですが、本題そっちのけで朝までSFを語り合ったり…。

大砲とスタンプ(5) (モーニング KC)

大砲とスタンプ(5) (モーニング KC)

これもまた一つの「大人のおとぎばなし」ではあるのでしょうが、実際に日本SFは、読み終えたペーパーバックを焚き火代わりに燃やそうとした米軍に少年矢野徹氏がダイブしてペーパーバックを譲り受け、その後まだ戦争から10年もたたない1953年に、アメリカのSFファンから招かれてSFコンに出席したりした、そんなところをルーツに持つそうで…
自分はSFアンソロジーに収録された「コレクター無残!」でそのころの話を読んだ

wikipedia:矢野徹
1946年か1947年[3]:進駐軍兵士が燃やそうとしていたペイパーバックや古雑誌を譲り受けたことがきっかけでSFに目覚める。
1953年:米SF雑誌への投書がきっかけで文通をしていた、アメリカの編集者にして高名なSFファン、フォレスト・J・アッカーマンらの働きかけ[4]で渡米。5月末にロサンゼルスで開催された西海岸ローカルコンのWestercon6に参加。そのままアッカーマン宅に滞在後、9月にフィラデルフィアで開催された第11回ワールドコンPhilcon2[5]に参加。合計6ヶ月間の滞米中、アッカーマン宅に尋ねてきたレイ・ブラッドベリやヴァン・ヴォークトの知遇を得る[6]。


さて、別に先方と戦争をしているというわけでもないのですが(笑)、
少し前にネットで話題になった、この記事が気になっています。

日本のラノベのネット小説化に戸惑う中国のオタク | ダ・ヴィンチニュース http://ddnavi.com/anime-bu/277732/

表題の部分は、ネット事情とかがいろいろあって、ちょっと複雑なのですが、そこからやや枝葉の、中国のこういうサブカル方面の事情というのが大変に興味深い。

……近年はライトノベル(中国語で「軽小説」)の存在感が増してきて、ゲームの代わりにライトノベルが入ってきている感もあります。

 中国でオタク層が形成される原動力になったアニメには『涼宮ハルヒの憂鬱』『灼眼のシャナ』『ゼロの使い魔』といったライトノベル原作の作品が多く、それに加えて文学青年層や日本のミステリ小説のファンがラノベ読みと重なることもあり、日本のライトノベルはある種のオタク的なブランド……

まず、ライトノベルを「軽小説」と称したところが「そのまんますぎるだろ」小一時間問い詰めたい(笑)。
別に日本の「ライトノベル」もたいそうな意味合いなくつけられた名称なんに。それに「軽さ」の軽さたるゆえんである、あの饒舌な文体をどういうふうに翻訳してるのかね……(といいつつ、自分も日本のライトノベルには暗いのだが)


※追記


それより何より。

「トリップ」や「俺TUEEEE」はネット小説における日中共通のお約束

 最後に、日本のネット小説と中国のネット小説の内容で共通する「テンプレ的な要素」に関して紹介させていただこうかと思います。

 中国のネット小説だろうと日本のネット小説だろうと、「よくある話」「テンプレ的な展開」というのがイロイロとあるかと思いますが、中でも「トリップ」(中国語では「穿越」)系の作品は、日中どちらでもよくある話です。

 トリップ(穿越)系の作品は中国のネット小説でも一大ジャンルとなっていて、異世界や過去にトリップしたり転生したりして、やはりその際にはチートな能力を得たり現代の知識やアイテムを持ち込んで大活躍、無双するというのもお約束となっています(そしてそんな「俺TUEEEE」な主人公やその活躍を指す「龍傲天」という言葉も存在します)

 もちろんトリップの方法や、チート能力を得る展開などに違いもあるようですが、大まかな流れとしては似たようなものに見えるのも確か・・・


「そこを共通させなくてもいーだろ!!!!」と最初に思ったのだが、逆になんというかね、…「サブカルの国際連帯」みたいなものを感じてワクワクしたのもまた事実なんだよ、ほんとに。
あと、数百年数千年たったら「最初に男女がぶつかって出会うという神話が共通している…この大陸で、同じ民族が東から西へ移動したとわしは考えておる!!」と、民俗学の教授が力説してるかもしれないし(笑)。


しかし、中国のネット小説が、日本とテンプレが共通してるってどういうのかね

「あいや 遅刻遅刻あるよ」
肉まんをくわえた少女が街を全力疾走すると
十字路で男の子とぶつかる
「こら前を向かずに走るのポコペンな この胡弓に何かあったらどうするあるか」
「いやなやつあるなあ」

…って、田河水泡の中国描写レベルあるよ(笑)。
 この「あるよ」言葉は実在してたあるが、最近はポリコレ的にまずいので避けるよろしな。





これは以前、ミステリ、推理小説の世界に関して語ったことがある。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121014/p3
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20151012/p5

これ長いから(笑)、要約するけど
推理小説の、特にトリックとかを考える能力は、世界に遍く存在しているだろう。
・だから例えば、「名探偵コナン」が人気の中国から、天才的なトリックを考える名作家が出てもおかしくない…というか、既に出ていて、日本で知られていないだけじゃないか?
・ミステリー以外でも、こういうサブカルは相互に影響を与え、反響を呼びながら各国で育っているはず。
・日本独自のようなサブカルのあれこれも、例えばそのまま使えって違和感のないぐらいのものが、意外な国から生まれるだろう…



というようなことです。

そんなことを考えていたら、ついにことし…だっけ?

http://reikenzan.net/
あらすじ
落下した彗星によってもたらされる運命の子を探すために、長い歴史をもつ霊剣派一族は門下の入門試験を再開することにした。
天からの申し子である王陸(おうりく)は、千年に一人と言われる「空霊根」を持って、霊剣派に入門試験に挑み、異例の仙人への道を歩みはじめた!
 

本作の魅力
謎の多い主人公「王陸」が様々な難問が降り注ぐ修行の旅。試験が難題であるほど、いとも簡単に解いてしまう天才「王陸」の痛快な物語。「王陸」の普段の姿から感じぬ、奇抜な戦術、機転が利く洞察力、その能力は神の子か、もしくは大物詐欺師か。
作中にふんだんに散りばめられたギャグの嵐で、次の展開に引き込まれる面白さ。

 
原作コミックは中国で大人気
2014年8月に中国でオンライン掲載が始まった原作コミックは、目下、第115話まで連載中。
週に2回、フルカラー、計20ページのペースで更新し、既に2億9627万ビューを突破!(2015年12月1日現在)


ここで「自分も見た、おもしろかったorつまらなかった」…と続けるのが正統派レビューなんだろうが、見てないのでパス(笑)。
すまんすまん、評判いいのか悪いのか、それは知らないけんど、やはり「中国でオンライン掲載されたファンタジー風物語が、日本でアニメ化されました」というのは、毛沢東の時代からついにここまで来たのか、これが到達点か……と思うわけです。



さらに、中国ではこういう動きもあったとか…

中国初のVOCALOID4エンジン搭載ボカロ!星塵(STAR DUST)が近日登場!+中国ボカロは本当に失敗したのか? - Togetterまとめ http://togetter.com/li/922318

僕はこのtogetterまとめに、こうコメントした。

ボーカロイド的なものが、日本以外に生まれるのは当然だと思うけど、なんでまた擬人化・キャラクター化っていう、東洋の島国が取ったニッチな路線を取るんだろう、王道をいけ王道を(笑)。

それでも「現実は、正解なんだ」という立川談志の言葉に従えば、逆に言葉をしゃべれる、歌が作れる「ボーカロイド」を自国の言語で開発しようとしたとき、こういうアニメ風のキャラクターをつけて「擬人化」するのが正解なのだろうな。
そしてインドネシア語タイ語アラビア語……のヴォーカロイドも、どこかで誕生するのかもしれない。



発想を転換すべきで、サブカルチャーにおいて日本で流行っている何かがあれば、それの「各国版」がある、と考えてあたらずとも遠からず、なのではなかろうか。
「中国の星新一
「韓国の田中芳樹
インドネシア米澤穂信
「タイの夢枕獏
が、われわれは知らないだけでたぶんいるんですよ。そして、一読すれば驚くようなクオリティの、ショートショートや架空歴史小説や「日常の謎」や格闘家の決闘する小説などを書いているわけです。

将来、翻訳ソフトなどが発達して、言語の壁がなくなって、自由に読めるようになったら、そういう人たちが知られないまま…ということもなくなるのでしょうけどね。