またぞろ、話題になった。
同性婚を認めるなら近親婚も認めろ←意外と論破できない
もう、こちとら簡単なもんです。ルーティンワークです。
はい、どうぞこちらへ。
もともと、これに関する考察記事は馬に食わせるほど書いている。あまりに膨大で紹介し切れないから、上のやつは「FAQ」的に多くの論点をダイジェストしたものとなっています。
ただ、そこでも述べているけど、もう一度……
ここに、環縁氏の読切漫画「冬の海」が掲載されている。
きょうだい間の恋愛に関しては、漫画・小説をはじめ多くのフィクションが描かれている。
ただし、この作品は極めてダイレクトに、そのきょうだい間の恋愛と、世間との関係(偏見、迫害)は、同性間の恋愛に対するそれに通じるものではないか?という問いかけ・構成がなされている…という点で特筆されるべきだろう。
作中でも、はっきりと「お前が同性を選んだように、俺は妹を…」「お互い、肩身の狭い恋してますねぇ」などの台詞を登場人物に言わせている。
もし、そういう描き方…両者の同一視、そのものがけしからんという立場に立つなら、とてもけしからん漫画でありましょう。糾弾は講談社に。やり方は、某教団がよく知ってる(という話題も、覚えてる人はすくないか…90年代の話だもんな)
或いはぶっちゃけ、外国語に翻訳されて、LGBTQの動きが活発・定着した文化圏で読まれたらどうなるだろうね。
…それは置いておくとしても、この読切漫画が今後、単行本になるか、どこでも気軽に読めるようになるか、というと正直、大変心もとない。
つまり、この2015年12月刊行の雑誌を、どこかで入手するしか、実際に読む、保存する方法はない。
そして、なぜかは分からないけど2023年現在、アフタヌーンはまだ8年前のバックナンバーを電子書籍として販売している。
この古い雑誌はいつまで電子版を販売しているか?は正直わからない。ひょっとしてあすにも終了するのでは?という気がする。
であるから、この超問題作、ひょっとして批判されてお蔵入り?…かもしれない作品を、「いま」或いは「今のうちに」購入しておくことをお薦めしておく次第です。
※上の引用画質がバラバラなのは、発表当時に紙の雑誌をぱしゃりと撮影した画像と、最近上のようなことに気付いて電子書籍購入したものの違いという訳。
あとはこれまたルーティンだけど、ブクマコメントを題材に再度「FAQ」をしてみよう。
◇こどもの遺伝・障害編
・婚姻は性的な関係を前提とするので、近親婚を認めることは生物学的に有り得ない
・遺伝子配合が近くなり過ぎて障害持ちだらけになってしまったハプスブルク家という歴史的に世界的に超有名なサンプル例があるのに
・近親の交配は子の遺伝病の確率が高くなる
・あらゆる哺乳類で遺伝的にタブーとされている。近親婚を認める遺伝子集団は滅びやすい
うんぬん。
過去に、小説仕立てでこのテーマを書いたが、そこで登場人物は3点を挙げて反論した。
「ひとつ、それは確率の問題に過ぎません。
ふたつ、子供を持つ持たないは私たちの選択です。
みっつ、障害のある子が必ず不幸だと決め付けてはいけません」
合わせて申し上げるなら、「生まれてくる子の遺伝的な障害のリスクが高まる」ことで結婚できなくなるシステムが許容される・あるべき姿だとしたら、XXXXXXXXXXXXXを超えたXXXは結婚できなくなるし、+++++の%%%%が***な場合も同様だろう。◇◇◇が■■■の場合も……いや、書かないよ!さすがにIFの話とはいえ!!
逆に、それなら、一般的な現象として考えれば、「子供が生まれない」同性カップルはどうなるのか、という話も出てくる。
◇グルーミング・権力勾配の危険編
・認めると、兄弟間の性的虐待の言い訳になってしまいそうで怖い
・ 家族という法が及ばない場所を隠れ蓑に強制的な妊娠出産が行われる可能性が危険視される
・禁止の最大のメリットは、密室における権力勾配の排除
・親から子への性虐待にお墨付きまで与えちゃう
・身内の暴力や支配、洗脳が排除できないとヤバい
うんぬん。
ここに、類似した参考例として、紹介しておこう。
www.yokohama-roadlaw.com
監護者性交等罪とは、18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者監護者性交等罪.jpg
であることによる影響力があることに乗じて性交等をする犯罪です。
監護者性交等罪については、刑法179条2項に規定されています。
(略)
監護者性交等罪は、①現に監護する者が、②18歳未満の者に対し、③監護者であることによる影響力があることに乗じて、④性交等をしたことによって犯罪となります。
elaws.e-gov.go.jp
第一条 この法律は、教育職員等による児童生徒性暴力等が児童生徒等の権利を著しく侵害し、児童生徒等に対し生涯にわたって回復し難い心理的外傷その他の心身に対する重大な影響を与えるものであることに鑑み、児童生徒等の尊厳を保持するため、…(略)……教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を推進し、もって児童生徒等の権利利益の擁護に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校並びに就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園をいう。
2 この法律において「児童生徒等」とは、次に掲げる者をいう。
一 学校に在籍する幼児、児童又は生徒
二 十八歳未満の者(前号に該当する者を除く。)
この二つの法律でわかるのは…まず、監護者の方がより典型的だけど、
「①現に監護する者が、②18歳未満の者に対し、③監護者であることによる影響力があることに乗じ…」であります。要は、その行動、特に【相手の自由意志を阻害する行為】を対象にしている。そしてそもそも、相手の自由意志が確立していないであろう18歳未満が対象だ。(どこで年齢基準をひくべきかはまた議論がありましょう)
かりに権力勾配とかいうので「当事者の自由意志が奪われかねない」という懸念が家庭【にも】あったとしても、そういう「行為」を裁けばいい。
さらにいえば、当事者が18歳以上になった、もともと18歳以上だったら?
小さいころから自由意志を奪い、当事者が成人したあともそれが続いているかも…というのでは、監護者と被監護者の関係も同じことで、何年たっても、恋愛できない状況が解消されないことになる。それでいいなら別にいいが。
ぶっちゃけ、この議論でいえば「権力勾配やグルーミングの懸念があるので、教師と生徒や上司と部下の関係に一度でもなった2人は、その後永久に結婚できない制度を作った」みたいなものかしらん。
また、例の未成年者が関わる性的関係の取り締まりの議論の時、いわゆる「ロミオとジュリエット法」、当事者間の「年齢差」が小さい場合は処罰対象から外す、という論がある。(※これもよく考えれば法律のスジ、整合性的には「うーん?」となるような部分がある。当事者間の「年齢差」で法律の扱いが違うとかって、ほかにある?)
だが、その整合性は別にして、現実にそうなるとしたら……これは、近親間にも適用されないの?つまり「冬の海」のような、同年齢……双子の時や数歳の年齢差でも「権力勾配」を認定するのか?となる。
というか、もし密室だとか権力勾配とかいうなら、むしろそれは「血縁」という属性でなく「ごく近い環境で、密接に生活を共にしていた」という属性で判断すべきじゃないすか?
・一緒の家で、密接に関連して育っていたわけではない近親
・養子縁組の結果、あとから法律上の近親になった人たち、あるいはそれが後日解消された人たちの間
などは、構わないんですか?やっぱりだめですか?
逆に「夫婦は海外勤務をすることになったが、学業や部活などの理由で子供だけはどうしても日本に残りたい。そこで夫婦の親友が引き受けてそのお宅に下宿し始めたが、そこには同年代の異性が……」ネタは「結婚なんてあり得ない」となる…かならぬか。通称「アオのハコ禁止法」「なぎさMe公認禁止法」と呼ばれる(爆笑)
という問いが発せられますね。
◇現状、そんな動きはないじゃん編
・世論調査で同性婚賛成が過半数。
・近親婚も賛成派が多数になってきたら認めたらいいんじゃないかな
・ 希望表明者の有無とか大きい差
・権利の各中解釈は当事者たちが声をあげて初めて実現することであり、「近親婚を認めて欲しい」と訴える当事者団体が皆無なのに机上の極論合戦しても意味ない
現実としては正にその通りで…過去文章引用
近親婚の問題が、構造上・論理上はいかに同性婚とそのまんま同じであっても、現実の話題になりにくいのは、まさにこの問題に直面する人間の絶対数としての少なさ
……近親うんぬんは構造的に、数に伴う政治勢力を構築することが難しい。だから「実際の政治課題として、これを運動で解決してみろ」というのはたぶん無理筋。ただ、現実の政策で成立し難いことは、法哲学の理論としての正しさとはまったく別種の話
同性婚推進派の方々が「現実の政局、政治動向としては誰も関心を持たない…あるいは反発を招くイッシューだから語らない」という戦略を取るの自体は「さもあろう」と理解するのです。しかし政局論と別の<論のスジ>の問題として、この件をどう考えるのか
自分がその切実性を抱えているかというと、残念ながらゼロであります。(略)『それを主張する切実さや当事者性を比べて、それで正しさを決めようぜ!』というルールなら、一次予選で負けますと宣言はしておきます。
【追記】いま、増田へのブコメのなかにこういうのがあったので好例として保存しておこう。
同性婚を求める当事者はこんなくだらないネットのレスポンチバトルで勝利を気取りたいんじゃなくて、法的権利を求めてやってるんだよ。近親婚の権利を求めたい当事者がいるならそれはそれでどうぞと言うだけのこと。
segawashin 2023/02/04 10:05
https://b.hatena.ne.jp/entry/4731807012095503684/comment/segawashin
このへんの「それはそれでどうぞと言うだけのこと」とあるが、
つまり、おおよそこのような感じの意見って、「間違っている!」とか「やってはいけない!」とする理由は無い、考えても構築できない、と認めてるということだろうね。
そういう側面があったら反対するはずです、これまでのブクマ的にも(笑)。だから『近親婚の権利を求めたい当事者がいるならそれはそれでどうぞ』と、こういう主張の方がおっしゃるのは、まあ、そういうことなんだよ。
ほぼほぼ「論理としては間違いではない/だから反対もしない(できない、反対論が思い浮かばない)/、ただ(感情や政局的判断から)応援しないというだけだ」という話の、言い換えなのでありましょう。
◇最初の増田につけたブクマの後半を、この記事の紹介に差し替えたので、その部分を保存しておこう
もし(敢えて反対側に立って)反論を構築するなら「伝統が許さぬから」に頼るのみ。
結果的にここと内容被る議論多いが、はてな匿名ダイアリーには、冒頭の議論に続いて話題となる記事が載った。
anond.hatelabo.jp
ブクマコメントも多数ついた
b.hatena.ne.jp
◇「結婚制度そのもの」が何か?/各種の、個別の権利に分解できるのでは? 等の議論
上のFAQではあまり論じてなかったけど
「行きつく先は婚姻という制度そのものの形骸化」という議論、当方的にはたしかに主要論点の一つで「結婚とは一種の”パッケージ契約”」というワードで表現してる。
追記 春日匠氏が、増田に反応したブログ記事を書いていた。
のちに、上の増田が話題になった時に、文化人類学者の春日匠がブログ記事を書いていた、と知る。
blog.talktank.net
ただ、当方の過去の「チュートリアル」、ここの「FAQ」ですでに論じた話・論点が、ほとんどをカバーしている(自賛)
ちなみにあちらの締めくくり的な文章では
…なお、言わずもがなだと思うが、一応強調していくと、本論考は近親婚、例えば同父母のキョウダイ婚を許容するべきだと主張しているわけではない。それらは、社会制度がどのように組み上げられるかという倫理的な問題だということを再確認した上で、当事者同士の福祉に最大限貢献するような形で制度設計されるべきだということである。
と書いておられるが、隠すよりあらわるで、この締め括りでその逆の「同父母のキョウダイ婚を許容すべきではないと主張しているわけではない」という記述が無いのは、これを自然に読むと、許容寄りの事実関係と論理展開しかほぼ出てきてないからである(笑)
わずかな懸念である
「キョウダイ同士で愛し合っている」と主張する両者が、誰かからの脅迫や圧力を受けているわけでもなく、経済的独立と社会的な尊厳を持って人生を設計できる環境にあることを確認する必要がある
云々は、つまり上記の「アオのハコ禁止法」の話だし(笑)