この画像は読切漫画「冬の海」。アフタヌーン 2015年12月号に掲載。
きのう、同性婚に関するブログ記事の総まとめ的な記事を出しましたが
m-dojo.hatenadiary.com
以下の話題を新しく仕入れていたのに、かき忘れていたので補足しておきます
まず、ここを再録して…
D:同時に、法哲学者の中でもよく議論されている「同性結婚を認めるべきだという議論の中身は、そのまま「近親結婚を認めるべきだ」「複数婚を認めるべきだ」という議論として成立する」という点が、個人的には一番興味あるし今後もこのブログ記事で追っていきたい(笑)。これもまた、同性婚推進派の方々が「現実の政局、政治動向としては誰も関心を持たない…あるいは反発を招くイッシューだから語らない」という戦略を取るの自体は「さもあろう」と理解するのです。しかし政局論と別の<論のスジ>の問題として、この件をどうか考えるのか、ひとりひとりに聞いてみたいのです。特に法哲学者と憲法学者と弁護士には、答える義務があると勝手に決めたい(笑)
この画像は「法哲学と法哲学の対話」より
- 作者: 安藤馨,大屋雄裕
- 出版社/メーカー: 有斐閣
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そして、実際に語ってる法哲学者がいまして…
togetter.com
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で、ふたつのまとめのはざま、2015年に大屋雄裕氏が投稿したツイートに、2019年のことし、リプが来た。そこに、最高裁がすでに近親結婚を禁止していることについての見解を表明した判決がある、との情報が。
なお「禁止はされていない」から、そういうものは幅広く認めていくべきと展開する議論はやや弱く、というのはじゃあ多夫多妻や近親婚も(真摯な合意があれば)認めるべきなのか、という話に広がってしまうから(肯定する手はある)。「性別を問わず一対一」にする理由は何か、を考える必要がある。
— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2015年2月18日
大屋先生、失礼します。
— ポトス (@manybooksdan) 2019年1月23日
ご存知かもしれませんが、最判平成19年3月8日民集61巻2号518頁は近親婚規制の民法734条1項につき、社会倫理的配慮及び優生学的配慮という公益的要請とか言っています。
しかしこれが理由だと、私は規制の合憲性すら疑うべきと考えます。
近親婚規制ってのがちょっと最高裁筆が滑ってる気がするんですが。
— 名無し法務士官 (@maniac_lawer) 2019年1月28日
婚姻の自由は憲法上の権利で、届出制で、許可制でも特許でも無いので届出不受理は規制なんですが…
そもそも近親や多夫多妻で事実婚して子をなす事は禁じておらず、法律婚として特殊の保護(特権)を与えてないだけなのでは?
生まれもって変えられない地位(近親)に「特権」を与えないことが差別にあたらないか問題になりそうですよね。
— ポトス (@manybooksdan) 2019年1月28日
ご指摘の通り、婚姻は義務賦課ではなく権利附与なので法命令説では適切に説明できないというのがまさにハートの議論でしたが、権利附与でも完全に恣意的にはできず、裁量は制約されているのではないですかね。「白人しか結婚しちゃいけない法」は、まあアウトですよね。 https://t.co/iJUgMsnMve
— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2019年1月28日
@manybooksdan
— 名無し法務士官 (@maniac_lawer) 2019年1月29日
どうもです。人種での区別は14条違反、合理性皆無で立法裁量を逸脱し違憲と考えます。
しかし、近親でない成人男女ペアの関係が他ペアより社会に有用であるとして、社会が特別の保護を与えることは、一応合理性あり立法裁量の範囲と考えます。(近親婚反対、同性婚容認の立場ですが)
しかしながら、LGBTへの差別や偏見をこの婚姻規定が後押ししており弊害大きく、事実としてLGBTの方の幸福感を大きく損なっているのであれば、弊害はたぶん重大でなかろうから、政策論・サービスとして容認するのもありかと。
— 名無し法務士官 (@maniac_lawer) 2019年1月29日
大してお金かけずに国民の幸福の総量増える訳ですし。
その関係を検索したら
[PDF]近親婚的内縁配偶者と遺族年金 という、興味深い資料があるのだけど、PDFダウンロード形式でした。
これでみな、行けるだろうか?
https://waseda.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=9163&item_no=1&attribute_id=162&file_no=1
そして判決文もあった
事件番号 平成17(行ヒ)354
事件名 遺族厚生年金不支給処分取消請求事件
裁判年月日 平成19年3月8日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 判決
結果 破棄自判
判例集等巻・号・頁 民集 第61巻2号518頁
原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成16(行コ)241
原審裁判年月日 平成17年5月31日
判示事項 厚生年金保険の被保険者であった叔父と内縁関係にあった姪が厚生年金保険法に基づき遺族厚生年金の支給を受けることのできる配偶者に当たるとされた事例
裁判要旨 厚生年金保険の被保険者であった叔父と姪との内縁関係が,叔父と先妻との子の養育を主たる動機として形成され,当初から反倫理的,反社会的な側面を有していたものとはいい難く,親戚間では抵抗感なく承認され,地域社会等においても公然と受け容れられ,叔父の死亡まで約42年間にわたり円満かつ安定的に継続したなど判示の事情の下では,近親者間における婚姻を禁止すべき公益的要請よりも遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという厚生年金保険法の目的を優先させるべき特段の事情が認められ,上記姪は同法に基づき遺族厚生年金の支給を受けることのできる配偶者に当たる。
(反対意見がある。)
判決文
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/239/034239_hanrei.pdf
この判決の、たとえばこの部分とかが、果たして妥当か、という話で…
(2) ところで,民法734条1項によって婚姻が禁止される近親者間の内縁関係は,時の経過ないし事情の変化によって婚姻障害事由が消滅ないし減退することがあり得ない性質のものである。しかも,上記近親者間で婚姻が禁止されるのは,社会倫理的配慮及び優生学的配慮という公益的要請を理由とするものであるから,上記近親者間における内縁関係は,一般的に反倫理性,反公益性の大きい関係というべきである。殊に,直系血族間,二親等の傍系血族間の内縁関係は,我が国の現在の婚姻法秩序又は社会通念を前提とする限り,反倫理性,反公益性が極めて大きいと考えられるのであって,いかにその当事者が社会通念上夫婦としての共同生活を営んでいたとしても,法3条2項によって保護される配偶者には当たらないものと解される。そして,三親等の傍系血族間の内縁関係も,このような反倫理性,反公益性という観点からみれば,基本的にはこれと変わりがないものというべきである。
有名な、こういうスピーチがある。これ、上の最高裁判決文を論評した言葉としても読めるのではあるまいまいか、まいか??
繰り返しになりますが、言わせてください。
今、私たちがやろうとしていることは「愛し合う二人の結婚を認めよう」。ただそれだけです。
外国に核戦争をしかけるわけでも、農作物を一掃するウイルスをバラ撒こうとしているわけでもない。
お金のためでもない。単に、「愛し合う二人が結婚できるようにする」。だから、本当に理解できないんです。なんで……反対するのかが。自分と違う人を好きになれないのはわかります。それはかまいません。みんなそんなようなものです。
(略)……私は約束しましょう。水も漏らさぬ約束です。
明日も太陽は昇るでしょうし、あなたのティーンエイジャーの娘はすべてを知ったような顔で反抗してくるでしょう。明日、住宅ローンが増えることはありませんし、皮膚病になったり、湿疹ができたりもしません。布団の中からカエルが現れたりもしません。明日も世界はいつものように回り続けます。だから、大騒ぎするのはやめましょう。この法案は関係がある人には素晴らしいものですが、関係ない人にはただ、今までどおりの人生が続くだけです。