とにかく、2021年はカーフキック、カーフキックで幕を開けた!!(ごく一部の界隈で)
もちろん、うちでもしょっぱなから話題にしたし
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はてなのタグでもこうなるし
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カーフキック自体が前から使ってる人は使ってたのだけど、要は「概念」として一般化するかどうかとは、また別の話なわけでね。
自分も1年前の専門誌の特集でその概念を知ったのだった。
そこで、思い出してほしいことがある。カーフキックとは、ローキックの中で特に相手の脛、ふくらはぎを狙う技のことなのだけれども…それがにわかに注目されたのだけれども…もっと時代をさかのぼると、そもそも「ローキック」、つまり「足で足を蹴る」という技術、概念自体が極めて奇妙奇天烈、常識はずれ、いったいこりゃなんだ??という、未知の技だったのですよね。
そして、それももちろん、知る人ぞ知る、で一部のひと、一部の流派、一部の競技ではその有効性は十分に知られ、技術も寝られていたのだが、それが知られるようになったのは、巨大メディアに乗った「ある試合」だ。カーフキックが「堀口恭司vs朝倉海」で、はじめて知られたように…
ということで、以前紹介したこの本から、その個所を紹介しましょう。
だが、本のタイトルでネタバレになるなぁ(笑)
アメリカ人が知らなかったローキック
…アスリートの努力から生まれる最大のエネルギーは、地面から足、足から脚部、脚部から臀部へ伝わるもので、力は蓄積されたのちに解放される。この伝達が効率的であるほど大きな力が生み出される。このプロセスが格闘・武術を文字どおり人間工学の精華へと高めていった。人体は一定の動きを一定の方法で行うよう設計されている。才能豊かなアスリートと同じく、だから特別な格闘家のなめらかでリズミカルな動きは、とてつもない加速と打撃を生む。
史上最もなめらかでリズミカルに立ち回る男がアントニオ猪木と戦ったとき、しかし、その動きはなめらかにもリズミカルにも見えなかった。あの戦い――あそこで起こったことにはこの言葉を充てるのが正しい―は見苦しかったし、それゆえファンとメディアから嘲笑された。猪木がキャンバスに体を投げ出してレスリングブーツを振り回したのは最高の見物ではなかったが、例の”ペリカンあご”をアリのパンチから遠ざけるのに効果的だったのは間違いない。
見栄えの問題は別にして、猪木はあの蹴りをくり出したとき地面との接点を欠き、それゆえ威力が役がれる結果となった。蹴りがもたらすダメージの蓄積にも同じことがいえる。しかるべき技術で首尾一貫して蹴っていたら―あの試合でそれはルール違反だったし、猪木も反則を承知で試みていたのだが――アリが15ラウンドまで生き延びられた可能性はきわめて低かった。一九七六年に主流だった格闘スポーツでは、しかるべきタイミングで正しく狙いをつけた蹴りの破壊力がほとんど理解されていなかった。
(略)
正しく行えば脚への蹴りで相手を弱らせることができると、(薄々でも)このとき気がついた者は皆無に近かった。当時のアメリカでキックボクシングはほとんど知られておらず、太股にすねを打ちこむことの意味を理解していたのは、選ばれた少数の、筋金入りの格闘家だけだった。「その点、猪木は賢明だった」一四歳のころ、プルース・リーを育てた街ワシントン州シアトルで空手とテコンドーを習っていたモーリス・スミスが語っている。「彼はアリが慣れていないことをした。例のローキックのことだ。俺たちもローキックを防御する練習はしていなくて、蹴られるといやな気がしたものさ。だから効果があるってことは、今ほどではないが当時からある程度はわかっていた。アリのスキルセット(技術と技能の組み合わせ)や、彼の能力を殺ぐにあたって、猪木のあの攻撃には大きな意味があった」
キックボクサーから昇華したモーリス・スミス
猪木もアリの脚に蹴りを浴びせたが、このモーリス・スミスこそ総合格闘技(MMA)におけるローキックの元祖と考えられている。アリが脚に連打を浴びて入院した二〇年後、UFCヘビー級王者に君臨したたくましいグラップラー、マーク・コールマンの戦力をスミスが殺ぐことに成功した理由のひとつは、相手が前に出した脚を打ちのめすことができたからだ。
その結果に格闘界の目が開かれたのは、UFCの開始から四年間は組み技系が支配的な戦闘スタイルだったためだ。力が強い大型のオリンピック級レスラーたちが押し寄せたことで、スタンドでしか戦えないファイターにはまず勝ち目がないという認識に近かった。レスラーの多くはステロイドをがんがん使って肉体的優位を高め、総合格闘技スタイルの戦いを支配していた。「スミスはキックボクシングで成功しただけでなく(生涯成績は五三勝一三敗五分)、打撃の技術をMMAに適応させる先見の明があった。一〇年間に戦った総合ルールの試合は二八回。現在、ローキックはMMAに不可欠のツールになっているが、これはおもにスミスのおかげといっていい。蹴りで攻撃し、蹴りを防ぐ方法を知らなければ、最上級レベルで勝つチャンスは得られない。
23 years ago today, Maurice Smith defeated Mark Coleman to become the 2nd man to capture the UFC Heavyweight title. This was a cornerstone fight for the sport as it pitted a world class striker against a world class grappler.https://t.co/5pmhhVbi0s
— Cerebral Vigilante (@Delisketo) 2020年7月27日(中略…ここでは「MMA最高のローキックの使い手はブラジル人、ジョゼ・アルドだろう」みたいな面白い議論があるのだが、泣く泣く省略)
…格闘を通じてスミスは世界各地を巡り、一九八四年、アムステルダムでローキックの利点を知った。さもなければ、強烈な打撃力を誇るオランダのキックボクサーたちの餌食になっていただろう。オランダ人はキックボクサーの育成に階級制度を用い、ランクの階段を上れるシステムを構築した。彼らがどのよう進歩していくかにスミスは細心の注意を払った。「ローキックを出す必要があった」と彼は言う。「あのころ、自分が使い手のひとりだったのは幸運だった。俺はアメリカ人で、アメリカ人はローキックを使わない。すばらしい技術だと思っだよ。オランダ人と戦うことで、ローキックがカギになることを理解した」
相手が何をしているかを理解し、それを自分の戦い方に取り入れて応用することで最も危険な格闘家になるという、もうひとつの例だ。「ローキックで使うのは足じゃない」と彼は言う。「すねなんだ。それなりの回数を蹴られると具合が悪くなってくる。試合の流れが変わる」。それほど痛くなくても相手は警戒し、その攻撃も変化してくる。ローキックを使いこなせるようになり、どうすればいいかわかると自分の戦略も変わってくる。
ローキックを受けたことのないファイターは、どう対処すればいいかがわからない…(後略)
いかがでしたか?(へんなまとめサイト風)
というか、プロレススーパースター列伝・ハルクホーガン篇の、『ビアガーデンでホーガンと一緒に飲んでるロックバンド仲間』はとんでもない武芸の達人なのか(笑)
※余談を言うと、これはただのギャグってわけじゃなくて、梶原一騎は自分の知識や蘊蓄を物語の中で過剰に語りたいがために、登場人物に対して「え、この人物が、この知識や分析力、そして表現力(つまり教養)を持ってるって設定、すごく不自然じゃない?」みたいなことになるパターンが結構あるんだよね(笑)。そこを気にしないことが、ある種の「梶原節」を生み出していることも…また一面の事実!!!
要はこの問題だ。
【ジョジョとかに出てくる「教養がないはずなのに作者が教養あるせいで見事な比喩や語彙力を発揮するチンピラ」が大好きだ、という話 】- Togetter
togetter.com
まあそういうことで……ほんと不思議っちゃ不思議なんだけど、人間が腕二本、足二本であることは数十万年単位で同じだし、関節の可動域も、骨の堅さもそうそうは違わない。
ならば、徒手格闘技術というものに限りなら、5000年前に確立して、すべての技術が白日の下にあってもおかしくないのに、技や技術にははっきりはやりすたりがあり、新しい「発見」や「再評価」がある。
それは不思議であり、そして美しく楽しいことでもあろう。
このジャンルだと大いに異論が出てくると思うし歓迎したいが、世界の人々に「足で足を蹴ると、けっこう痛くてダメージ大きいよ!!」ということを知らしめたのは、1976年の「ペリカン対ほらふき」であり、それがまわりまわって2020年最後の日の堀口vs朝倉弟でのカーフキックにつながる…という壮大なロマン。
そのひとりは、アラーの御許へ旅立ち、もうひとりは、今、病院で…闘いを続けている。
(これが昨日、1月15日のツイートだ)
腰の治療の為にしばらく入院致します。
— アントニオ猪木 (@Inoki_Kanji) January 15, 2021
必ず元気になって戻って来ますので、応援よろしくお願い致します。
アントニオ猪木 pic.twitter.com/fjzp24i7bV
しかし、極真カラテの「下段蹴り」についても述べなければ
これ書いておかないとね。
しかし自分は極真を知ってるようで知らない。
・極真の世界大会で、ある時期にローキック=下段蹴りが大流行りした
・それでぐんぐんと勝ち上がり、優勝だったか上位に入ったXがいる!!(Xが伏字なのは、自分が忘れたからだ)
・その人は独自の工夫でこのローキックを独自に編み出した……??
みたいな物語、極真とローキックにまつわるサーガがあったと記憶してる(四角いジャングルに載ってたっけ???)。
※当時「タイ式ボクシング」と呼ばれたムエタイとも絡んでくる。
まあ、こういうふうにテキトーにかいときゃ、だれか補足してくれるだろう。
(こんないい加減な書き方でいいのか)
ほら、さっそく情報来たよ。そして、話が無限に広がってキリがない訳なんだが…
ローキックをメジャーにしたのは盧山初雄でしょ。
— ふるきっつあんの不条理ツイート。 (@foolkitchen1) 2021年1月16日
第5回全日本大会は1973年だから猪木対アリより3年早い。https://t.co/AXck6ZokF0
https://twitter.com/mdojo1/status/1350311033429082113
https://twitter.com/mdojo1/status/1350305554002898948
第5回全日本決勝。https://t.co/fhSbhoeMvL
— ふるきっつあんの不条理ツイート。 (@foolkitchen1) 2021年1月16日
これ見ると盧山の相手になった二宮城光も結構ロー出している。極真の中では既に一般的になっていた?盧山が得意のロー出すのはむしろ終盤、ダメ押し的。
ちなみに空手バカ一代では芦原英幸が盧山か二宮のローをサバいて稽古つけるシーンあったかと(笑)。
https://twitter.com/mdojo1/status/1350309321838534656
「上段蹴り」は自然発生的に生まれたとしても「ローキック」は?センセイ・カジワラ作?それとも外国人の弟子たちから?……そう考えるとこれまた楽しいかも(笑)。
— ふるきっつあんの不条理ツイート。 (@foolkitchen1) 2021年1月16日
下段回し蹴り 技術論
私の下段蹴りは、今大会で使用されているスネで相手の太モモを狙う蹴りとは異なる。
まず、狙う部分は太モモではなく、左ヒザの横の神経の通っている部分だ。
この急所に当たると腰までしびれて相手は立つことができなくなる。
ただしこの部分を狙うには…
http://karateman.net/technic4-2.html
かも知れない……ただ、スライディングしてのローなんかは盧山氏が教えたのかどうか。スタンドのローを教わってからは、猪木さんの工夫なのかも……「ボクサー相手には寝る」が「姿三四郎」の中にあるのも含めて、謎がまた謎を呼ぶ(^^;)。
— ふるきっつあんの不条理ツイート。 (@foolkitchen1) 2021年1月16日
https://twitter.com/mdojo1/status/1350348613491179523
m-dojo.hatenadiary.com
https://twitter.com/mdojo1/status/1350348952697143299
「姿三四郎」でも勝ち方はほぼ同じです、業を煮やした相手が飛び込んできたとこを巴投げ(まあ三四郎はとどめに山嵐で叩きつけますが)。
— ふるきっつあんの不条理ツイート。 (@foolkitchen1) 2021年1月16日
寝た状態からの蹴り、もしくはスライディングしての蹴りは、猪木オリジナルなのか、または既にブレーンだったろう梶原一騎の策だったのかどうか…………。
イワンゴメス参謀説もありますね
— pasin (@pasinpasin) 2021年1月16日
https://twitter.com/mdojo1/status/1350351394864185345
極真のローキックは、1964年のタイ遠征を通じてムエタイからもたらされた、という風に理解していたのだけれど、思い直したら「誰がどこでそれを語っていたか」の記憶がすっぽり抜けているので、たいへん心もとない。 https://t.co/3g5Udv9mFI
— THAC0八郎 (@THAC0_CEO) 2021年1月16日
そもそも「ダメージを与えることを目的とした足への蹴り」だけでなく「中足や足の甲ではなく、臑を用いた蹴り」自体が当時の空手(極真)にはなかったという話だったと思うけど、「この本のここに書いてある」と示せないので、まあ、話半分ということで。
— THAC0八郎 (@THAC0_CEO) 2021年1月16日
https://twitter.com/mdojo1/status/1350365920175116291
さらにいうと、ローキックとかハイキックとかじゃなく、そもそも「脛で蹴る」文化を、日本はタイから丸ごと輸入した?という説もあり!!!!
このように、ナゾが二重三重に…底が深く…
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