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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

WWEのリングに『原爆の復讐に来たヒロヒト』が登場寸前だった…という話(なんかタイムリーなネタになっちゃった)

この前、この本を紹介したら
m-dojo.hatenadiary.com

望外の…本当に予想以上の反響をいただきまして、驚いた。


その時に、「書きたいエピソードが多いので、いくつかは時間あれば、独立した話にしたい」と書いたのですが、そのうちのひとつを。

ただ、これも本当に偶然ながら、なんか超タイムリーなネタになっちゃった。エンタメのコンテンツと、史実を想起させるという問題と……

以下、同書から。
※なぜ猪木対アリにマクマホンが絡むのかといえば、この映像が当時のWWFでは会場に生中継され、現地での二元中継興行(サンマルチノvsハンセンとアンドレvsチャック・ウェプナー)になっていたから。マクマホンの自己申告では、ホテルの部屋でアリをあっさりテイクダウンして、プロレスラーとの異種格闘技でボクサーが不利なことを教えてあげた、というが…

p194より

…時代の精神に盾突くことでうまくいく、という意味で、プロレスというのはじつに不思議なジャンルだ。ときには、人の興味を引くためならどんなことにも飛びつく意地汚さを見せることもある。アングルやストーリーがマンネリ化すれば前に進めない。大きく方向転換することになっても、群衆の心をつかむ新しい方法を探さなければならない。

WWEでマディガン(※WWEのプロレスのストーリーやキャラを考える担当)と仕事をしたレスラーに、新日本プロレス出身の鈴木健三がいた[2004―05年]。いい素材と見込んだマディガンは、彼に古臭い役柄を押しつけたくなかった。日本人レスラーといえば、かつてはサムライが演じられた。忍者もいた。陳腐な役柄だ。

「そこでマディガンはマクマホンに、昭和天皇の曾孫ヒロヒト、が一族の名誉と文化遺産の復讐を果たすために乗りこんできたという筋書きを提案した。「理由は神のみぞ知る、さ」と、マディガンは笑って言った。「私はこう言ったんだ。『想像してみてくれ。あなたはスクリーンを見ている。とつぜん原子爆弾が爆発するところが見える。そして、きのこ雲の中からアジア人のふたつの目がこっちを見つめている』。ビンスは狂喜した。このアイデアを気に入ってくれた。それも大いに。『それはすばらしい』と言ってくれたんだ」

マクマホンは米軍が落とした核兵器で壊滅的な打撃を受けた広島の記録映像を購入し、プレゼン期間中のアリーナにきのこ雲の中からこっちを見つめているふたつの瞳を展示した。誰かがバケツ一杯の血をスクリーンに投げ、それが目の上に流れ落ちるというアングルまで展開した。


ヒロヒトが来る」と、スクリーンに文字が浮かぶ。
スマックダウン・ライブ」で、この映像は一度だけテレビに流れた。WWEの主力番組「スマックダウン・ライブ」で、レスラーたちはいったいなんのことかと首をひねっていた。マクマホンはひとり悦に入っていた。
「私も有頂天で浮かれまくっていた」とマディガンは言った。二日後、本社オフィスに戻ると、ビンスが入ってきた。ヒロヒトの話はなしだ』と彼が言う。『二度とヒロヒトという名前は口にするな。なかったことにしろ』


「マディガンによれば、「このプロモーションとそれが暗示するところに激怒した皇室関係筋が激怒し、日本からWWEを追放すると脅してきた」というのが理由だった
鈴木健三の妻浩子がWWE首脳にこのギミックについて抗議したとの報道も。それを契機に浩子は日本人初のディーヴァとしてWWEと契約を交わす)

マディガンはナチスのギミックを提案したこともあった。まっすぐ伸ばした脚を高く上げて行進するナチス党員のバロン・フォン・ボビンが、スイス・アルプスで凍りついたまま発見されたという別れ込みだ。マクマホンは立ち上がり、無言で退席した。これは採用されなかったが、採用されたものもあったし、それによって苦情が舞いこむこともあった。ユージンという知的障害をかかえたキャラクターや、英国教会から追放されたモルデカイというキャラを作ったときだ。

「英国教会や日本の皇室と面倒を起こしちゃいけないなら、仕事を放棄するしかないな」と、マディガンは皮肉めかした。

アリ対猪木――アメリカから見た世界格闘史の特異点

アリ対猪木――アメリカから見た世界格闘史の特異点

マディガンさん、反省とかまったくしてません(笑)
マクマホンはマクマホンですっとぼけてやがる(笑)

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プロレススターウォーズより すっとぼけるビンス・マクマホン・ジュニア
しかし、お天道様、ライジングサンはお見通しでいっ。
1回だけしか流れなかったプロモビデオ、プロレスマニアはちゃんと録画して、動画をぶっこんでるんだよyoutubeに(いつ消えるかはわからんが)
自分もこれを初めて視聴する。
www.youtube.com


これは・・・・・・・・


だが、自分はやってみりゃ良かったと思っている。プロレスという文化の厚みが、ポリコレをどこまで越えられるかの試みとなったであろう。それに、マディガン氏の言うことが正しいなら「皇室関係筋(WWEの動向を抑えてるなんて、どのスジだよ!!?)」による「政治的圧力」になりかねないではないか。WWEトリエンナーレだ。


この話、昔から自分が知ってたんだから、たぶん一度、リアルタイムで斎藤文彦氏が書いていたと思う…と、俺SUGEEEE、あったよ!!2004年の記事だ

m-dojo.hatenadiary.com
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いま、日刊SPA!で古いコラムを再掲載しているから、ひょっとしたらネットでも読めるかもしれない…が、載せないかなこれは(笑)?


ただ、それで鈴木健想の妻、鈴木浩子が誰もが恐れるボス、ビンス・マクマホンにクレームをつけ、そのはっきりした態度が逆に気に入られ日本人初のディーバたるゲイシャのヒロコに…が事実なら、一種の武勇伝なのだから、今は千葉県会議員をやっている彼女に「詳しく語ってくれ」と言ったら、勇んで話してくれるかもしれないな。
この本にも書いてあるかも。

ゲイシャ・ガール、リングに上がる

ゲイシャ・ガール、リングに上がる

ウィキペディアにも少し

…当初は健想のみの契約の予定であり、健想はリングネーム「ヒロヒト」での登場が予定され、予告ビデオも作成された。この一連の扱いは日本や昭和天皇に対してあまりにも失礼である、とWWE上層部に浩子が抗議したところ、一転彼女がビンス・マクマホンWWE上層部に注目されるようになり、健想のギミック修正だけではなく、本人も予想もしていなかった「鈴木浩子自身のディーヴァ契約」に至った。

当初はWWEから働かないかと持ちかけられ、「イエス」と答えていたがそれは裏方としての仕事として認識していた。また会場で他のスタッフから芸者についてやたらと訊かれ、それについて調べ作成したファイルを重役に渡したところ、そのファイルを一瞥されただけで「あなたは出来るのか?」と質問され、そこで初めてディーヴァとしての契約だったことに気付いた。そこで健想が「イエス」と答えてしまった、という裏話がある。


WWEでは白塗りの「ゲイシャガール」のギミックで登場し、主に健想をサポートするマネージャー役を演じていた。実際問題として、英語が堪能な彼女が通訳としてついた方が楽だったと言うこともあった。また健想自身も英語が殆どしゃべれない、という日本人レスラーの伝統的なギミックを演じていた。この役の勧誘をWWE側から受け、あまりの馬鹿馬鹿しさに怒り当然断ることを夫の健想に告げると、「何?おまえはWWEに認められたんだぞ!おまえはなんてラッキーなんだ!」と大喜びされ、断りきれずなし崩し的にゲイシャガールデビューしてしまったと語っている。
ja.wikipedia.org


あと、マディソン氏はまだこのアイデアが自慢のようなので、これもインタビューすれば語ってくれそう。どこかのメディアが、このヒロヒト騒動を再度聞いてみないか?
ヒーローアカデミアやあいちトリエンナーレとも引っ掛けてさ。



ちなみに、カルガリーで武者修行の若手たちの面倒をみたり、ブリティッシュ・ブルドックス移籍劇の立役者になったミスター・ヒトの「ヒト」だが。

 カルガリースタンピード・レスリングの本拠地パビリオンのリングで安達さんにレスリングを教わっていたころのブレットは、まだ学生っぽさが抜けない21歳で、いちばん下の弟――やがて“カルガリーの天才”と呼ばれることになる――オーエンはまだ中学生。安達さんは、昭和天皇ヒロヒトの“ヒト”を拝借したミスター・ヒト様だった。
nikkan-spa.jp

ミスター・ヒト。この不思議な名前は、人でなしのヒトではなく、アメリカのプロモーターに昭和天皇裕仁だからミスター・ヒロヒトを名乗れと言われ、恐れ多いし殺される・・・とミスター・ヒトにしたそうです。

ミスター・ヒトsadgeniu.wordpress.com

アントニオ猪木ジャイアント馬場上田馬之助キラー・カーン、A・ザ・ジャイアント……プロレス史に燦然と輝くスターたちの素顔とは? 昭和プロレス界の歴史を歩み、馳浩橋本真也らを育てた伝説のレスラー、ミスター・ヒトが中島らもと出会い、大槻ケンヂ夢枕獏も参戦し、プロレス界の裏側をしゃべり倒す!
プロレス黄金時代を築き上げたレスラーたちの輝かしい伝説からスリリングなゴシップネタまで。作家の中島らもが聞き手となって、数多くの名レスラーを育て上げた名コーチであり、元レスラーのミスター・ヒトが、プロレス界の内幕を徹底的に暴露する! 単行本刊行当時、プロレスファンに大きな衝撃を与えた暴露本の名著が、ついに文庫化。文庫版特別企画としてミスター・ヒトのロングインタビューを収録。文庫版の解説は吉田豪杉江松恋

内容(「BOOK」データベースより)
アントニオ猪木ジャイアント馬場上田馬之助キラー・カーン、A・ザ・ジャイアント…プロレス史に燦然と輝くスターたちの素顔とは?昭和プロレス界の歴史を歩み、馳浩橋本真也らを育てた伝説のプロレスラー、ミスター・ヒトが中島らもと出会い、プロレス界の裏側をしゃべり倒す。大槻ケンヂ夢枕獏も参戦!文庫版特別インタビューを巻末に収録。