アメリカン・プロレスのはなし。Dropkickから。
Dropkick(ドロップキック) Vol.7 (晋遊舎ムック)
- 出版社/メーカー: 晋遊舎
- 発売日: 2012/08/27
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という記事が載ってます。一部がネットにも掲載。
http://www.ningenfusha.com/?eid=306
速水氏は「ラーメンと愛国」が最近話題になったかた。
- 作者: 速水健朗
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/18
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■プロレスとナショナリズム
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20120826
■民族レスラーあれこれ
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20120827
■イラクから来たインディアン
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20120828
に近い問題意識だと思います。自分もこの関連の話が好きで・・・とくにナショナリズムを商売に結びつけるために、まったく別民族がけったいなほどに異なる民族役を演じたり、またプロレスののいい加減さが、一回転してのナショナリズム無効化になってたりする話題を語ってきました。
この前書いて、ふつうのひとを戸惑わせた(笑)「ジャミラは『元地球人』のギミックを演じた」という設定のインタビュー
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120812/p3
とか、
「靖国神社でプロレスをするとはゆるせん!と乗り込んできた中国の酔拳使い」が大人気となり、2年目の大会のときは早くも善玉扱いで同神社の会場で拍手喝采、3年めにはなぜか香港のジークンドーと対戦していた・・・なんて話を書いてきました。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20060407/p2
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070331/p4
まあ、ただ自分は最近のWWEをほとんど映像として見ていないのですね。サムライTV以外で放送されるプロレス・格闘技団体は自然と疎くなっちゃってね・・・プラス、週刊プロレスを読む機会ががくんと減っちゃって。(たまに読むときはフミ・サイトーコラムが一番楽しみだから、そこでたまに知識を補給する)
だから以下に書くジム・ロウリネイティス(元ジョニー・エース)も動いている映像をみたことないし、そもそも「ロウリネイティス」て資料をみないとかけない(笑)。「もっとも成功している元DEEPファイター」といま一部で言われている(笑)元ドスカラスJrの映像もまだ見てないなあ。
で、そんな浦島太郎的な知識の空白期間があることを前提に驚いた点を。
http://www.ningenfusha.com/?eid=306
速水 (略)・・・とくに、僕がはまったのって、ジョン・ロウリネイティス、日本ではジョニー・エースでおなじみですけど、そのGM体制っていうアングルなんですね。これ、とても政治的なリサーチのたまものなのかなあと思ったん・・・・・・・僕は、GMの脇でVネックのセーターを着てタンブラーでコーヒーを飲んでるオタンガっていう選手が大好きなんですけど、彼はいつも着るものに気を遣う、インテリの顧問弁護士・・・
ターヤン 完全に都市部のリベラルキャラですね(笑)。
速水 そうなんです! ジョニー・ロウリネイティスも、民主党の大統領候補のギミックですよね。いつもニュース番組のオープニングテーマみたいな曲で入場して、「ピープルズ・パワー」ってロゴを掲げて出てくる(笑)。もちろん、あのニコニコ笑っている偽善っぽい感じも、とてもうそくさいリベラル候補っぽい感じが出てます。その、いかにも「自分はリベラルですよ」というキャラの人たちが、ジョン・シナに「このニセモノ野郎!」ってやられていく・・・
ターヤン まあ、必ずしもプロレスファンが保守側だとは限らないですけど、やっぱりプロレスを観る人って、レッドネック(貧困白人層)まではいかなくとも、ある程度の労働者階級・・・(略)
速水 オタンガのタンブラーも、あれはスターバックスですよね。スターバックスは、リベラル都市層、それも高学歴のホワイトカラー(略)・・・それに対して、ストーン・コールドは常にリング上で缶ビール・・・て労働者階級の飲み物で、ストーン・コールドみたいな、労働階級を背負ったキャラが、正統的なスター・・・(略)
シアトル生まれのスターバックスの「リベラル性」についていうと、この前経営陣が公に「同性婚支持」を表明したなんて一件もありました。「スシとスターバックス(あるいはワイン)のアメリカ」vs「クアーズビールとバーベキューのアメリカ」なんて表現がされたこともあったり。でも寿司とスターバックスじゃ実際のところ食い合わせ悪いよなー(笑)。2004年、ブッシュvsケリーの大統領選でこの対立が最高潮に達したときは、もう隣国も巻き込んで、リベラルの「カナダ合衆国」と保守の「ジーザスランド」に国を分割しよう!というジョークまで言われた(笑)これね。
さて、自分が上の話を興味深く読んだのは、まさに自分のこのタイムラグのせいかもしれない。つまり自分はストーンコールドが登場し、ビンス・マクマホン社長がまさに「陣頭指揮」をして(陣頭すぎだ)経営者vs労働者!!というアングルをリングに持ち込んでWCWの息の根を止めようとしていたときのことはよく覚えているから。
これも隔靴掻痒な受け止め方かもしれないけど、当時のビンスは・・・今でも・・・「強欲社長」であって、NYが本拠地の会社のくせに、リベラル臭は薬にしたくてもなかったと記憶している(笑)。実際、妻のリンダ・マクマホンは共和党から議員に立候補し、最後は落選したが有力候補の一人だったのだからね。
■米中間選挙、上院選に共和党から出場のリンダ・マクマホンに対し民主党が「ヤツは胡散臭いプロレスの人ですよー」攻撃
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101101/p2
富豪、大企業・・・このへんだと共和党支持・・・とまではあからさまに言えなくても、とにかくストレートに「この貧乏人がああ!」と言う様な「強欲社長」が、10年ほど前の「労働者の敵」だった。
で、もし「WWE副社長ロウリネイティス」と「顧問弁護士レスラー」が、一見リベラル、だけどお高くとまった偽善者・・・というキャラクターなら、昔とはちがって一ひねりした「経営者vs労働者2.0」なのかなあ・・・と。それが今の風景なのかなあ、と面白く感じたのでした。
ちなみに橋本真也はゼロワン当時、
「いまのプロレスで東京ドームを満員にさせるとしたら統一教会vs幸福の科学のアングルだ」と語っていたそうです(笑)。
「奇をてらっていたら結果的にPCや反PCになったでござる」
これはインタビューとはちょっと別の方向なのだが、ついでに。
小見出しにあげたPC(ポリティカルコレクトネス)とプロレス、またエンターテインメント全般にはそんな関係の部分があるんじゃないかな。
「王拳聖と靖国神社とプロレス」を語る中で、自分は
プロレスがナショナリズムに関して−−少なくとも21世紀の日本において−−何がしかの意義があるとしたら、それはそのフェイク性そのものが、ナショナリズムを高揚させる一方で無効化、相対化、そしてパロディ化しているという一点にある。そしてそれは、同時に行われているのだ。
と書いたんですよ、最初の段階で。そのあと、観客の受けを見つつ「王拳聖ベビー化」が進行、そして2回目の大会ではほぼ善玉扱いになっていった。それはオフィスの慧眼だったが、別に橋本真也が日中友好を願っているわけではあるまい。これはWWEのベビーターン、ヒールターンもそうだろうけど、「最近マンネリだよなー。いっちょ悪玉・善玉変えてみっけ?」というパターン打破の試みによって、もともとの意味から離れてしまうということがあるでしょう。
この話を強く感じたのが
- 作者: 斎藤美奈子
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だけどそれがどんどんバラけていく中では、竹熊健太郎・相原コージのコンビのように「とにかくキャラ立てだ!!いままでに無い個性的なキャラを作るのだーっ」という中で、「美人だが剣の腕はチームの中で一番強く、おまけに酒豪で乱暴もの!というのはどうだ!!」「中間管理職の中年男性だが料理の腕は一番!毎日の夕食は彼の担当、ってのはどうだっ!」と・・・次々にエンターテインメントの中でステレオタイプは裏返っていくこともあり、そこからヒットが生まれると定番化し、定着し・・・というのもありましょうね。
そこに後から理屈付けをして、たとえば「女性の社会参画が進んで、漫画の中でも剣を担当する強い女性や、料理がうまい男性が増え・・・」としちゃっていいのかどうか。
まあ、パターンを破ろうというのは、パターンが広く受けいられていることの裏返しだし、また作品が生まれる時は単に「奇をてらった」「ひっくりかえした」だけかもしれないけど、それが人々の「財布による投票」=市場の評価によって広い人気があると証明されたら、それは社会の変化をやっぱり意味しているのかもしれない。
ひとごとながら、社会学の人たちは、こういうところを切り分けなきゃいけないから大変だなあ。