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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「俺がプロレス未開の地(ミャンマー)で興行やって異世界チートだぜ!と思ったら、とっくにみんなWWEを見てた件」。(KAMINOGE)

予想外だったミャンマーのプロレスファン http://hidehide7755.blog27.fc2.com/blog-entry-3918.html

という記事があります。もとは「KAMINOGE」より。山口日昇氏の発言など

(略)戦後に日本で、力道山がやられてやられて空手チョップで逆襲してなぎ倒すみたいな、そういうシンプルな逆転劇だったりのほうが、90年代のプロレス未開拓の地ではウケていた。だからカントク(ミャンマープロレスを手がけた中村祥之)も、ミャンマーではそういうプロレスのほうがいいんじゃないか……(略)…いざ行ってみたらミャンマーでは1年前からWWEが放送されていて、お客さんは完璧にWWEのノリだったという(笑)」

ガンツヤンゴンの街中では映画の違法コピーDVDと一緒に、WWEのDVDもバンバン売ってましたから。試合終わってあとに気づいたんですけどね」

山口「現地のプロモーターに『スマックダウンが来るのか?』っていう問い合わせが殺到してたらしい(笑)」
(略)
ガンツ「現地テレビ局の女子アナが田村さんのコメントを取っているとき、『世界的なレスラーとお聞きしましたが、WWEに出たことはありますか?』とか聞いてて(笑)。・・・(略)それで田村さんが『いや・・・・ありません』


http://b.hatena.ne.jp/entry/284430591/comment/gryphon
でこうコメントした。

「プロレス未開の地」向けの、田舎で受けそうなプロレスを準備してたら、ミャンマーでは皆WWEを知っててその基準で評価された…というのは、現代社会を象徴し過ぎている。

これがtwitterから、なぜか400以上の経由記事閲覧があった。
ふだんのプロレス記事への興味とはあきらかにちがう。


まあ、だいたい理由はわかる。
・いまアドリブでタイトルを付けたんだが、まさにラノベの「異世界チート」的な時代の、リアル世界での終わり。
・ほぼ意味は重なるが「タイムマシン経営」のむずかしさ(まだ余地はあるだろうけど)
・当方が以前書いていた「サブカルの世界連帯」


そういう興味で、記事を読もうとした人が多かったんじゃないかと思います。



プロレスはかつて、たしかに「おらが街にプロレスという、へんな見世物がやってきただ」「プロレスってなんだべ、ばあさんや?」というような、何も知らないシロートのハートを、一瞬にしてわしづかみにするツワモノがいた。30秒で、俺は悪いやつだぜ!おれは正義の味方だぜ!!とプレゼンし、観客を大ヒートさせ、手のひらの上に乗せた。

それができる人間がレジェンドだった。

たとえば、同じ独裁政権でも、情報の統制では比べ物にならない…また20年近い時代の差もあるが……北朝鮮では、まさにヘタに高度なプロレスではウンともスンとも言わない。
名人中の名人、アントニオ猪木とリック・フレアーは、まさにプロレスのプの字も知らない北朝鮮の民衆を熱狂させた!!!!


プロレス界には、そのノウハウが蓄積されていた。
流智美が言ってたかな。「もしプロレスを知らない人々に受ける興行をしたいなら…2mを超える大巨人!!悪党!!謎の覆面レスラー!」云々と。


それを想定してミャンマーに行き、そこで市場を開拓しようという中村カントクの山っ気は、まだまだゼロワン…猪木〜橋本真也の系譜は健在なり!!と少々うれしくなってくる。


しかし・・・・・・・・・・・。
いまや時代は動いているのだ。テン年代も折り返してしまったのだ。

情報統制と鎖国の代名詞だったミャンマーも、いまや「囚われの孔雀」と称された人が実質上の女帝となる。それより重要なのは、闇市場の「ゆるさ」(著作権上も)によって、案外こういう途上国には、先進の娯楽が入ってきている…ことだ。
いや、むしろ地元には、満足のいく娯楽を作れるあらゆる意味での社会的余裕やインフラがないがゆえに、そのままサブカルは100%輸入もの、的なところもあろう。


武器商人を描いた「ロード・オブ・ウォー」や、アフリカのルポでも、あちらで密貿易や出稼ぎ、その他もろもろの形で欧米の娯楽文化に触れ、その魅力に取りつかれた人は大勢いて…ゲリラ将軍(ほぼ盗賊の親分)のドラ息子が、「スタローンのしていたのと同型のサングラスを!」とご所望される、なんて場面もあったかな?(あいまいです。「ブラッド・ダイヤモンド」のほうだったかな?)


いや、岡田斗志夫出世作オタク学入門」で、まだまだ戦火さめやらぬカンボジアで、なぜかハードなSF世界を描いた「ボトムズ」が大人気で、カンボジアのちびっこはまざあちこちに残る地雷をかいくぎりながら電気屋の前にあつまり、ボトムズの放送を楽しみに見ていた…という、ちょっと涙が出てくるような話を90年代初頭に聞いたのだっけ。



そして、技術に関しては例の「電話が普及しなかった国ほど、携帯の普及はスムーズである。形態が普及しなかった国ほど、スマホの普及はスムーズである」という話もある。
またなんだかんだとスマホは手軽で、安くて、頑丈で、メンテの必要も少なく…途上国や奥地に普及しやすい条件が高まりまくっている。
そしてスマホが普及したら、あとは「カルチャーの最先端」へのアクセスなんて一歩、半歩の作業ですよ。


「田舎芝居」というのは、昔、ほんとうの名人の芝居は江戸、京都に行かなければいけない時代、間違いなく高い存在価値があり、文化の担い手だった。
しかし、本物の歌舞伎役者がテレビやスクリーンで見られるようになったら…アマチュア的なライブや「会いに行けるアイドル」の価値については別途論じる必要があるだろうけど。


ともかく、超一流、本場のカルチャーが、youtubeでも海賊版DVDでも見られる時代。鎖国の場所なんてどんどん小さくなっていく。
異世界に行って、日食の知識や脚気の治療法を使って王様になるぜ!!なんて時代はもう終わったのだった。



しかしまあ、こういう形で「未開の地」がなくなり、そこでチート(タイムマシン経営)をするというのが厳しくなるというのはちょっと残念であるが、いいことでもある。

やっぱり、異世界チートやタイムスリップチートというのはちょっとズルいわけで(チートだからずるいのは当然だよな(笑))、知識もアイデアも経営も、途上国や異世界の人々と五分の状態で競争するのがフェアっちゃフェアだろう。
まあ、私も含めて日本国の凡人は、日本全体が先進地域で、以前はこういう「タイムラグの優位性」が大きかったことで、全体的に生活、豊かさが底上げされたからこそ安楽に暮らせた。タイムラグや障壁が技術の進歩で解消された中で、世界中のひととヨーイドンすると、途上国の優秀な人材がその才に見合った豊かさを、日本国から減らす形で得ることになるだろう。
これはしんどいだろうなあと。
さっきの話でいえば、もしミャンマーがかつての情報鎖国によってプロレスに知識がなく、ゼロワン残党や老いたうどん職人・田村潔司のプロレスに目を丸くしてお金を払ったら、それは廻りまわって日本国の富になり、その富が回って我々の豊かさになるわけじゃん?
WWEに比べるとしょぼいねー」というグローバルな視点は、それを妨げるハードな世界だと。
だけどいいことだよ、と言わざるを得ない。


もっとも「タイムマシン経営」はいまだに有効性を残すところもある。
A国では成功しているビジネス、こっちのB国ではまだだからここでやれば大儲けじゃね?と思う人はたくさんいても、
えいやっと、リアルにお金を「投資」して実行に移すのは、やはり決断と才能が必要だろうから、これはまだタイムマシン経営者の活躍する余地はあるだろうねえ。
孫正義のように成功した人もいる。中村カントクだって今回のミャンマープロレスが大失敗したわけじゃない。
やってみなはれ、だ。



そして、ミャンマーではすでにWWEのファンがたくさんいる、というのは、以前からテーマにしていた「サブカルの世界連帯」の一光景だと思う。
先進国・日本が先進国のアドバンテージを失っていくのは寂しくもヤバくもあるけど、それと同時にこういうワクワクする新世界も見られるかも…

サブカル世界連帯」関連記事

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アジア・サブカル(漫画、ゲーム)の最先端は、ひとつの共通性の元に収斂しつつあるのか?台湾の漫画より http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160204/p4


(ちょっとかきかけだが、一応了)