シン・ウルトラマン公開はじまりましたね。評判はうちのtwitterのタイムラインではたいへんよろしいのですが、そこに一般性はかけらもない(笑)
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さて、その話と最後に繋がるこんな話題を…
ゴング格闘技の少し前、317号に「極真の龍」山崎照朝のインタビューが掲載されていたのだけど、そこでこんな興味深い話をしていた。
山崎 (略)俺が入門したのはその後だから、遠征のときは知らないわけ。
――ちょうど極真が過渡期に差し掛かろうという時期ですね。
山崎 それも俺は入門したばかりの高校生だから、そういう背景とか当然気付きようが ないんだけど....。ただ、あのバンコク ね。 大会の8ミリ映像は道場で見た記憶があってさ。
道場試写会をやったと。山崎 それで、あの遠征がきっかけで蹴り の練習が変わったんだから。本当だよ。そ れまでは、つま先を返して足の裏で蹴って たらしいけど、俺が入門したときは脛で蹴
っていた。俺が印象に残っているのは藤平先輩が「タイ人はこうやって脛で蹴るんだ。 脛だぞ、脛」って言ってサンドバッグをバンバン蹴っていた姿でさ。――脛で蹴る発想について、当時の門下生の方の誰に聞いても「今までになかった」 と聞いてきましたが、やっぱりそうなんですね。
極真でもK-1でも、MMAでも今では普通過ぎるぐらい普通な、脛で相手を蹴るムーブ。というか、これこそがキックの基本中の基本だと思ってる人も多いだろう。
しかし、これが日本文化には1960年なかばまで全く存在せず、微笑みの國・タイ王国からこの技術が輸入され、そして広まったのである。
不思議なもので、人間というのは数万年、足が2本、手が日本で関節の可動域もおんなじなのだが、こんな簡単な動きも、世界中で同時発展したりはしないのだ。
人間の個々人の知恵は限界があり、民族集団単位で…その発見や知見を互いに学ぶ方がよっぽど効率的なのだ。
文明が起こるのは異民族の混交する地域である、というのはこんなことでもよくわかる。
そして「脛で」蹴る技術だけじゃなく、それで蹴る場所が「相手の足」というのもタイから学んだ技術で。それで東洋のペリカンが、ホラ吹き王者を攻撃…。そして世界が、その技の威力を目撃し,世界に広まった。
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同じこと書いてるよ、この前の記事も(笑)
ほんと不思議っちゃ不思議なんだけど、人間が腕二本、足二本であることは数十万年単位で同じだし、関節の可動域も、骨の堅さもそうそうは違わない。
ならば、徒手格闘技術というものに限りなら、5000年前に確立して、すべての技術が白日の下にあってもおかしくないのに、技や技術にははっきりはやりすたりがあり、新しい「発見」や「再評価」がある。
それは不思議であり、そして美しく楽しいことでもあろう。
で、話は表題のウルトラマンに繋がる訳だが……
1964年に、灼熱の太陽照り付けるタイ王国で血みどろの死闘の末に新しい技術を学んだ極真空手!池袋の道場で、それは瞬く間に門弟に吸収されていく!!(梶原一騎調)
・・・・・・・とはいっても、そんなケンカ道場の研究が一般に広まるわけがない。
それが広まっていくのは、電波に「キックの鬼」沢村忠の試合が乗り、お茶の間を席巻してから!!!!
実に意外なことだが、そのTBSキックボクシングと、ウルトラマンは「同期の桜」!ともに1966年に放送が始まった、TBSの二枚看板!!お互いがお互いの、よきライバルだった!!!(まだ梶原一騎調だよなぜか)
しかし、だからこそ、ウルトラマンがまだ海のものとも山のものともつかないキックボクシングのムーブを、殺陣に取り入れることはなかったろう。
むしろ力道山以来のプロレスにならったような技が主流ともいえる。
ウルトラマンは当然「ウルトラキック」も持っていたが、これも当然足の裏、あるいは「足刀」での蹴りであったろう。いや1970年代の仮面ライダーですら、ライダーキックで脛で相手を蹴ったりはしていないはず…
流星キック!!#ゼロクロ#ウルトラファイトオーブ#帰ってきたウルトラマン pic.twitter.com/yBHNstdLGb
— クロス (@shoot_drive) May 6, 2017
いま検索して見ると、ほんとうに歴代ウルトラマンのキックを研究してる人もいるから、特撮界は何が待っとるかわからん、まだ見ぬ強豪がひしめく神秘ゾーン!
blog.livedoor.jp
逆に言えば1966年あるいは64年以前に、たとえば石原裕次郎アクション映画や、武道を描くような映画、漫画、ドラマなどに「相手を脛で蹴る」光景が出てくれば、それはちょっとしたオーパーツ、タイムパラドックスなのである。
……一方で、上にかいたように人間なんて足の数も腕の数も変わらないんだから、脛で蹴る技だろうと三角絞めだろうと「こいつは天才だから、どこかからその技術が伝わる前に独自にその答えにたどり着いてたんだよ!」ってのも、それなりにつじつまが合う”根も葉もあるウソ”になる。格闘技界のキャベンディッシュだね(笑)
実際、19世紀イギリスの貧民街で育った少年が、その治安の悪い場所で生き抜くためにボクシングのウィービングも独自に編み出していたという。
あ、こいつは脛でのハイキックじゃないけど、むしろテンカオも使いこなしてた!!
そういえばフランスのサバットは、脛での蹴りをどうあつかってたのかな?中国拳法もしかり。
ここからが民俗学的調査になるんだが、おそらく日本ではキックボクシング中継をきっかけに広まった「相手を自分の脛で蹴る」ムーブ、これがエンタメのアクション、殺陣にどうやって広まっていったのか。
これを、それぞれのジャンルに詳しい人がきちんと調査していったら面白いものになると思うんだ。
特にウルトラシリーズは、全ての映像を頭の中で再生できるような「どマニア」が万人の単位でいる筈だ。「怪獣を脛で蹴るアクションは、〇〇シリーズの第何話にあったよ」とか言える人も多いと思う。
どのウルトラマンが、最初にこのムエタイ式の蹴りを使ったのか?どこから学んだのか?
仮説。ウルトラ兄弟に脛で蹴るムエタイ流の技を教えたやつといえば…こいつしか、いねえだろッッツ
ーーどうにも剣呑な方向に話が行ってるようなので(笑)、本題へ。ついに若手のウルトラマンZと対戦したわけですがズバリ Z 評価は。
「Zの評価はZだ、とでも言わせたいのかね(笑)。そんなジョークはともかく、うん、素質に優れたヤング・ウルトラマンだよ。特に間合いの捕り方がいいね。私のパワーを恐れるのではなく、どこからの距離が一番効果的かを見極めようとしていた」
ーーほほう、高評価ですねえ。
「ただし…まったく UWFの影響は逃れられんのかね、以前も若いウルトラ世代は必要以上に蹴りを出そうとして『君たちはサッカーボーイか』と小言を言ったものだが…Z Zはサッカー+『ムエタイボーイ』という感があったな」
ーーたしかに蹴りは多用していました。
「他の格闘技からインスピレーションを得るのはとてもいいことさ。自分も柔術をやっていたのは承知の通りだ。ながウルトラである限りはやはりムエタイキックを多用するよりレスリングにベースを置いた方が結局は伸びしろがあると思うよ。とはいえ、いくつかは結構効いたので自分もエキサイトしてサッカーキックをお返ししちゃったがね、ハハハ」
じゃあ、このムエタイ流の本格的な蹴りって、どうやってウルトラ一族は学んだのか?超一流のコーチがいるはず…
あ、いた。
次回の怪獣インタビューは、この方に詳しくお話を聞く予定です。
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