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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

猪木没のこの年、もう一人の「異種格闘技の父」ジン・ラベールも逝去

追悼の記事を書こうと思ったが資料がどこかに行方不明になってて、その後、アントニオ猪木逝去という、重なる大ニュースがあったので取り紛れていた話題だが…

…8月9日元プロレスラーのジンラーベルさんが89歳で死去したとプロレスラーOB団体カリフラワーアレイクラブが発表しましたね。
国出身のラーベルさんはレスリング・ボクシングを学び柔道では全米大会優勝……俳優として数多くの作品に出演しグラップリングを普及させた総合格闘技の先駆者……のアントニオ猪木さんと米国のボクシング世界ヘビー級王者モハメドアリさんとの異種格闘技戦ではレフェリーを務めジャッジの1人として引き分けの採点を…

ameblo.jp

ただ、一度紹介したね。残念ながら勝利で追悼する、というかたちにはならなかったが、UFCの試合直前にジョシュ・バーネットを通じて猪木の孫弟子ともいえるビクター・ヘンリーが…


「(略)…イノキさんがジョシュのキャリアをサポートして、今のジョシュがある。そうジョシュが言っているんだ。今の僕があるのはジョシュのおかげだ。恩人の恩人は僕にとっても恩人だ。だから、ジョシュと12月ぐらいに日本を訪れようと思っているんだ。そういえば、今年の8月にジーン・ラベールも亡くなったよ

──ハイ。

「彼もイノキ・サンのようにオールドスクールのレスラーだった。ジーンもイノキ・サンと同様にジョシュに大きな影響を与えた人物だからね。ジーンからはロンダ・ラウジーもインスパイアされていた。まあ、この世代の人々が亡くなる……しょうがないけど、悲しいことだよ。でも僕だっていずれそういう世代になる。だから、僕らもジーンやイノキ・サンのように次の世代に火を灯す存在でありたいね」
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ジン・ラベールを、異種格闘技総合格闘技の歴史の中に大きく位置付けるのは正しい。
ただのアリ・猪木戦のレフェリー、ジャッジじゃなくて、というかそういう場でそういう大役を得るにふさわしい実績、パイオニアだったのだ。


というわけで、ボクシングとの異種格闘技戦テレビマッチを猪木に先駆けて行い、しかも快勝!!!映像記録が残っているのだ。

自分が紹介したかったエピソードは、テレビでこの試合を煽る「前夜祭」についての話。この本…「アリ対猪木」に載っている。

ソルトレイクシティでの対決前夜、当時三一歳のラベールは地元のテレビに出演した。サベージびいきらしい番組司会者は、絞め技なんて効かないのではとほのめかし、そのあと「見せてほしい」と口走る痛恨のミスを犯した。ラベールは彼をすばやくつかんで失神させ、頭から投げ捨てた。男はワッペンを受け取ることさえできなかった(※引用者註。ラベールは映画やテレビの現場で「締め落としをやってみせて」とせがまれることが多く、締め落とした相手に記念ワッペンを贈っていた)。“ジュードー"ジーンはマイクを拾い、ロサンゼルスのレスリング仲間が聞いたら誇りに思っただろう大言を吐いた。「コメンテーターは眠った」彼は言った。「職場放棄らしい。さあ、いまからジーン・ラベール・ショーの始まりだ」ラベールはカメラを凝視し、トリッキーなパンチをくり出してリング上でおどけまわる狡猾なべテランに堕していた三九歳のサベージも同じ目に遭うと断言した。「明日の夜、アリーナに来て、お前たちの地元の英雄を俺が破壊し、手足をバラバラにして葬り去るところを見るがいい。ひとりの武術家は一〇人のボクサーを叩きのめすことができるんだ」変わった試合形式とラベールの傲慢な態度が格闘スポーツファンの期待を高め、一九六三年一二月二日、月曜日の夜は底冷えのする天候だったにもかかわらず、フェアグラウンズ・コロシアムには立ち見のみで一五〇〇人近くのプロボクシングファンが詰めかけた。

ジン・ラーベル、TV番組で司会者を締め落とし…(アリ対猪木)


いや、いけませんけどね。絞め落とし技を、いくら依頼されてもこんなふうにつかっちゃいけませんけどね。でもこれだけで歴史に残ります。
あのハルク・ホーガンヒロ・マツダ譲りの技で、テレビ司会者をアレしたことはあったらしい。

この挿話には、こういう意味もある。

誠に慧眼で、そういえばこの話は、エンタメ・物語上における「だれかを意図的に、確実に気絶・失神させる技術があると、この話の都合上都合がいいんだが…何かないか!」という壮大な需要と捜索の物語に連なるのであります。

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閑話休題
そしてジン・ラベール、その後は映画のスタントマン、アクション俳優になり、そこで締め技や関節技などの技術を、アクションシーンとして世に知らしめたのだった!!映画やドラマの影響力は、実際の試合以上に訴求力がある。何しろ現場ではセガールブルース・リーとも知り合っている。
いや知り合ってるというか……

…ラベールはリーと懇意にしていた。ふたりが出会ったのは、テレビドラマの古典的名作「グリーン・ホーネット」のセットだった。リーは“カトー”役で全二六話に出演し、ラベールは一九六六年から六七年までスタント・コーディネーターとして数多くの作品に携わったベニー・ドビンズの下でスタントマンを務めていた。
リーの動きはおそろしく速く、どう反応したらいいのか誰もがまどっていたが、カメラは彼を愛した。ふたりの道が初めて交わったころ、リーより二〇キロ以上重かったラベールは、カール・ゴッチと取り組んでいたケトルベル・トレーニングの成果をひけらかそうと、小柄な男を頭上へ持ち上げた。力をつけ、体を鍛え、柔軟性を高める運動のひとつとして、ベルギーの殺し屋は日頃から取っ手をつけた重さ四○キロくらいの砲丸を投げていた。ラベールもその半分の重さはこなした。リーを宙に掲げてセットを走りまわり、そのあとリバース・ネルソンに極めたんだ、ラベールは語る。
世界的に有名な中国系アメリカ人はラベールを脅した。
「下ろさないと、殺す」
ラベールはいかにも彼らしく、大口を叩いた。「誰が下ろすか。さあ、殺してみな」「敬意を示せと言っているんだ」とリーは怒鳴り、そこでラベールは彼を解放した「わかったよ、あんたがボスだ」
それからふたりは談笑する仲になり、あるときリーはラベールをトレーニングに誘った。「カンフーを教えてやろう」と彼は言った。「俺の性に合うかどうかわからないが、やってみよう」とスタントマンは答えた。
ラベールには敬意が感じられず、リーにとってそれは受け入れがたいことだったが、意思の疎通が進むにつれ、ハリウッドの男が“怖いもの知らずのバカであることにリーは気がついた、と当のラベールが言う。やがてリーは、どこで倒れたら見栄えがいいかを知り尽くしているラベールに電話をよこしては、さまざまな番組で仕事をさせた。
ブルース・リーは実践したことで評価された男だ」とラベールは言う。「私がブルースを愛したのは、実用的ではあっても伝統的カンフーにはない動きを見せたせいで、彼が多くのカンフー関係者から疎まれていたからだ。私は体重八二キロ、彼は六一キロ。同じ体重だったら私にカンフーの技をかけてきたかもしれない。彼は当時、レスリングに強い興味を持っていた」
これは、一九七三年に封切られ格闘映画史上にその名を刻んだ『燃えよドラゴン』―格闘映画史上最も有名と言ってもいいかもしれないが世に出る以前の……

いかにもタフガイらしい、相互の実力の誇示と意地の張り合い、そしてそこから生まれる相互の敬意。
こういう形ではハリウッドのスターから一目置かれ、その現場で「へー!!パンチやキックだけじゃなく、そうやって腕を極めるのもかっこいいな!」「ウーム、後ろに回ってそう締められたら…たしかにどんなボクサーもデカブツもグッドナイト!だな」と、メディア界のリーダーに印象付けていったんだ。
映画業界がそもそも深くかかわっていたUFCの第一回大会に、それはまちがいなくつながっていた。

なお、ラベールはそんな撮影現場で、エキストラの一人…やせっぽちでちびのブラジル人と「どんなグラップリングが銃を相手にしたときは有効か?」で口論となったそうな。その結果、第一回UFCで「アリ対猪木をさばいた伝説の男、ラベールにこの大会もレフェリーをしてもらおうか?」という企画案を、その男、ホリオン・グレイシーが却下した、とかしないとか(笑)※294ページ




ともあれ、そんな数々の逸話を残し、総合格闘技の礎となった男は、自分が裁くマットを15Rの間這いずり回り……、されど眼光鋭く「ザ・グレイテスト」の足を蹴り続けて、深刻な血栓を生じさせた「ペリカン」の2か月先に旅立った。その経歴に敬意を。猪木と共に追悼を・・・・


ウィキペディアに追記した

「アリ対猪木」で書かれたエピソードを、かなり多く同氏のウィキペディアに収録した。

ja.wikipedia.org


ぶっちゃけプロレスや格闘技の分野は比較的ウィキペディア活動に熱心な方がいて、相対的には充実しているが、それでも新知識を加えられる人、間違いを修正できる人は多い筈。
足りないのは、ウィキペディア編集を「臆面もなく」やれる度胸というか、でしゃばり性(笑)
俺程度の知識や資料でも、追加できること修正できることが数多いのだから、皆さんもやってくれ。