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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

銀英伝5巻のユリアンとシェーンコップの議論を、「不作為」の問題を混ぜて拡大してみる。

安保法制成立1年だが『「駆け付け警護」が議論の南スーダンなど見捨てちまえ。今後、本格内戦になろうと難民が苦しもうと日本人の命が優先だ」…という思いも、正直少しある。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160921/p1

の話から独立させて。
名場面だから、手でうつ必要は無いな…ほら出てきた

銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説5 風雲篇

銀河英雄伝説5 風雲篇

手元にあるのが、徳間文庫版


「お気持ちはよくわかります。でも、もしそんなことをしたら、悪い前例が歴史に残ります。軍司令官が自分自身の判断をよりどころにして、政府の命令を無視することが許されるなら、民主政治は最も重要なこと、国民の代表が軍事力をコントロールするという機能を果たせなくなります。ヤン提督に、そんな前例がつくれると思いますか」
シェーンコップの口もとが皮肉にゆがんだ。
「それでは聞くがな、もし政府が無抵抗の民衆を虐殺するように命令したら、軍人はそれに従わねばならんのかね」
ユリアンは、はげしく亜麻色の頭を振った。
「そんなことは、むろん許されません。そんな非人道的な、軍人という以前に人間としての尊厳さを問われるようなときには、まず人間であらねばならないと思います。その時は、政府の命令であっても、そむかなくてはならないでしょう」
「………」
「でも、だからこそそれ以外の場合には、民主国家の軍人として行動しなくてはならないときには、政府の命令には従うべきだと思います。でなければ、たとえ人道のために立ったとしても、恣意によるものだとそしられるでしょう」
シェーンコップは、ポケットウイスキーの瓶を意味もなくもてあそんだ。
「坊や、いや、ユリアン・ミンツ中尉、お前さんの言うことは全く正しい。だが、そのていどの理屈は、おれにもわかっているんだ。わかっていてなお、言わずにはいられないのさ」
「ええ、よくわかります」
それはユリアンの本心だった。
(徳間文庫版5巻 340-341P)

ここから枝分かれして、二次創作に入る。
二次創作用のオリジナル捨てキャラ、セイ・ローン少佐が登場します。
初登場はこちら。
https://twitter.com/gryphonjapan/status/751601664356868096
このツイートは、超絶おもしろまとめ

指揮命令系統、民主主義…人気まとめから更にスピンオフした「銀河英雄伝説」よもやま話 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/997673

にも収録しています。このおもしろさ、よほどの名人がまとめたに違いないっ。


ま、それはそれとして、この創作捨てキャラであるセイ・ローン少佐が登場する二次創作の場面に入ろう。

(続き)
「おもしろい議論をなされていますな」
セイ・ローン少佐が、ゆらりと展望室に入ってきた。

「しょ、少佐…!!ぼくが確かに、貴方をくまのぬいぐるみと入れ替えたはずなのに(※初登場の回参照)」
「あれぐらいでは私は抑えられません。話のつごうでどこにでも出てきて、正論を申し述べる。それがわたし、セイ・ローンです」
シェーンコップは、セイ・ローンを一瞥すると、再度ぐびりとポケットウイスキーを飲んだ。

彼の闖入を、シェーンコップは歓迎したのか、不愉快に思ったかはわからない。
だが、どちらにせよ、セイ・ローンはそんな空気を読まずに語り始める。そういう男だった。

「お話を整理しますと、こういうことになりますな。
1:軍司令官が自分自身の判断をよりどころにして、政府の命令を無視することは許されない。
2:しかし「非人道的」「軍人という以前に人間としての尊厳さを問われるようなとき」は、政府の命令であっても、そむかなくてはならない


なるほど…では「2」のバリエーションとして、こういう事例を想定してみましょう。
「政府が無抵抗の民衆を虐殺するように命令した」というのは積極的な行為、作為の罪、とも定義できますね。
ですが、消極的行為、不作為の罪…の場合はどうでしょうか。
 
わが軍が、武力不行使、中立維持、武器不使用…などを政府から厳命されている。
しかし、その目と鼻の先で、たとえば民間人や難民が、武装集団や海賊盗賊に襲撃され、虐殺、略奪、凌辱をほしいままにされている。わが軍の武力をもって排除に当たれば(多少の犠牲はあるが)、間違いなくその武装集団らは撃滅、排除可能だ。
これを「人道」や「軍人以前の、人間としての尊厳」の面から見たとき、政府の命令にそむいてでも、武力で襲撃者の排除にあたるべきでしょうか?


セイ・ローンは、少し間をおいて、こう付け加えた。
「これは人類がまだ地球にしか住んでいなかった時代、ある島国で『キタオカの問い』として語られたものです…」


ユリアンは、
シェーンコップは、

口を開いて、少佐の問いに彼らなりの答えを述べようとした…。

(未完)

というわけで、原稿料ももらってないことだし無責任に作品を中断するのである。いや、結末を読者に問うリドル・ストーリーかもしれない。じゃあそういうことにしよう(笑)

※文中の「キタオカの問い」とは北岡伸一氏のこの対談での発言のことである

m-dojo.hatenadiary.com
北岡氏
(略)…というのはですね、"何々の恐れ"ということを皆さんよくいうんだけれど、"恐れ"の中には、"不作為の恐れ"というものもあるんですよね。

今の例えばPKOに限って言えば、南スーダンで絶対、死者を出さないようにしようと思えば、これは引き上げるのが一番でしょう。するとそこで、結果的に、かつてのルワンダの虐殺のようなことがあっていいのかということを、日本が"不作為"によって引き起こされる。日本人の自衛隊はセーフだったけども、そこでより多くの現地の人が傷ついたり怪我したり死んだりしたということが起こっていのかと。両方考えなくちゃいけないということでしょうね。(中略)

実のところ、日本のPKO活動史には、これに近いようなことが実際にあったとも聞く。
トロールだと強弁して、危険地域に敢えていくようなね……
満州事変以来の伝統か? いやいやいや。

兵士に聞け (小学館文庫 (す7-1))

兵士に聞け (小学館文庫 (す7-1))

兵士を見よ (小学館文庫)

兵士を見よ (小学館文庫)

の「兵士に聞け」に例があったと思うが、こちらでは別の本と記事が紹介されている。

自衛隊カンボジア派遣】ジャングルに現れた「幻の邦人救出部隊」 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/873123

今こそ知りたい!自衛隊の実力 (宝島社文庫)

今こそ知りたい!自衛隊の実力 (宝島社文庫)

うみ @umi_tweet 2015-07-20 18:40:58
@nekoguruma @fussoo_moe 駆けつけ警護が認められてなかったカンボジアPKOでは、『情報収集』名目で邦人選挙監視員を護衛し、銃撃を受けた場合には自衛隊員は射線に身をさらして自分が撃たれてから、正当防衛射撃するという滅茶苦茶な手筈だったので、リスクは減ると思う。
sakimori9941@PLAマン @sakimori8821 2015-07-20 18:48:48
たしか「特別救護班」みたいな名前で編成されてて、事態が発生したらトラックで敵前に突っ込んで要件を満たす予定だったんだっけ…>RT
sakimori9941@PLAマン @sakimori8821 2015-08-30 09:49:53
あ、しまった。
カンボジアPKOの「特別救護チーム」についてまとめようと思ってたのに資料を置いてきてしまった
8_S01 @8_S01 2015-08-30 09:54:03
なにそれ超見たい >fav
sakimori9941@PLAマン @sakimori8821 2015-08-30 10:02:07
もしかして、カンボジアPKOの特別救護チームの話って割りかし知名度低いのかしら…?
sakimori9941@PLAマン @sakimori8821 2015-08-30 10:05:43
@thefrog1192 建前としては「負傷者が発生した際にその救護にあたる部隊」であったんですが、その実は邦人がゲリラに襲撃された際にその救出にあたる『邦人救護チーム』だったとか…
sakimori9941@PLAマン @sakimori8821 2015-08-30 10:08:21
自分もかなり前に古本屋で買ったJ隊関連話が載ってる文庫本で読んだだけなので…
sakimori9941@PLAマン @sakimori8821 2015-08-30 10:10:28
投票所などのパトロールが「邦人へのカップラーメン等の差し入れ」という建前だったのは割と有名かしら
sakimori9941@PLAマン @sakimori8821 2015-08-30 22:26:25
ひと段落付いたので昼間にツイートしたカンボジアPKOにおける「特別編成チーム」についてツイートしていこう
sakimori9941@PLAマン @sakimori8821 2015-08-30 22:30:31
出典については、2003年発行の宝島社文庫「新版・今こそ知りたい!自衛隊の実力」
228p「そのとき、自衛隊員は撃たれる覚悟だった!!カンボジアPKO、幻の『邦人救出作戦』」より pic.twitter.com/WozsYw49cX
(後略)


こんな運用をずっとやられても
そりゃ大問題なのだが、武装し、訓練と積んだ実力部隊である自衛隊が、民間人やNPOが危険であっても行かないという「不作為」を敢えてするなら、その不作為の有む結果についても「やむを得ない」というコンセンサスが早急に必要になるのではないか。


安保法制1年と重なったのはちょっと偶然だが(偶然というか、報道が増えたので、考えを文字にする引き金になったのか)、まあ、そんな感じで。
こういうまとめを作ったばかりなこととは、本当に偶然(いや、これもきっかけかな?)

英伝の英語版について〜(6巻までの出版が決定) - Togetterまとめ http://togetter.com/li/1026471