もう少し前から書きたかったが、気づかないうちに安保法成立1年になったり、南スーダンの治安が話題になったりした。
「駆け付け警護」検討の南スーダン 性暴力や略奪横行
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2016020502000204.html
2016年8月30日 夕刊
国連平和維持活動(PKO)で陸上自衛隊部隊が展開中の南スーダンの首都ジュバでは、七月に大規模戦闘が再燃した際、兵士らによる性暴力や略奪が横行した。日本政府が「駆け付け警護」などの新任務付与を検討する現地の治安は安定しているとは言い難い。
「結婚できないかもしれない」。PKO本部に隣接する避難民施設で暮らす少女(17)は七月上旬、知人女性らと共に近くの市場で食料を調達して帰る途中、政府軍兵士に集団レイプされたと証言した。
「抵抗しようとしたら殴られた。食料も奪われた」と少女。市場近くに住んでいた女性(32)も、同じころ「政府軍兵士四人にレイプされた」と語った。
二人とも、襲ってきた兵士は話す言葉から最大民族ディンカだったと証言。二人はディンカと敵対する民族ヌエルだ。国連によると、主にヌエルを標的とした兵士らによる性的暴行が七月に二百十七件報告された。
略奪も深刻で、ジュバの世界食糧計画(WFP)の倉庫からは、戦闘時に援助用の食料が大量に奪われた。PKO本部に近い市場も大半の店が略奪に遭い、八月下旬になっても多くが閉店していた。
(略)
どの地域であってもそもそも(元)紛争地に行くのだから、危険は当然ながら高い。
特に、南スーダンから撤退してしまえ、という”感情”が生まれるのは、まず
・南スーダンは資源豊かとはいえ、日本とそれほど密接な関係がない。申し訳ないが、あまり肌感覚の「親近感」がない
・停戦が何度も破られていることで、当事者=南スーダン自身のやる気が感じられない。そこでの民衆の苦難も、当事国為政者の責任が大きい
・・・・・・・・・・ということだ。
■ 少なくとも5回失敗した停戦
http://www.huffingtonpost.jp/2014/12/27/story_n_6383994.html
キール大統領とマチャル元副大統領は1月、5月、6月、8月、そして11月と停戦協定を結んだ。しかし、停戦は数時間のうちにことごとく破棄されている。明らかに機能しなかった。
「これだけ自分たちで武力衝突やってるんだから、(平和構築、国づくりの)やる気がみられないとみなす」
と啖呵をきって、我が国堂々退場す・・・・・・・とやりたい、ということだ。
言い換えれば、これだ。
ただし・・・・・・
「不作為」も死者を呼ぶかもしれない。でも、いいや、という感情
そもそも、内戦を起こし、武力で権力を奪取しようと思っている連中のもくろんでいることこそ、そういう治安の悪化で嫌気がさした国際社会が撤退することであり、日本が真っ先にそれをやったら、たぶん「冷たい空気」が漂うだろう。
非難や白眼視もあるかもしれないし、たとえば、曖昧なものではあるけど「国際社会の名誉ある地位」とかにも影響するかもしれない。
単純な国益問題としても、たとえば遠い将来に安定(内戦の結果、勝者が確定し安定することだってあり得る!)したとき、たとえば中国がコミットメントし続けていたら、資源ビジネスや政治上で中国のほうが決定的に有利になることだってありえるだろう。
以下は、過去の記事の繰り返し。
なんかいまだに時々リツイートされるのだが
【悲報】北岡伸一氏がTBS金平茂紀氏のインタビューに答えたら容赦なさすぎて、ひいた。無編集だとこうなるのか…。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150406/p3
で紹介した、こういう議論があった。
金平キャスター
いや例えば、自衛隊員に死者が出るとか、血を流すみたいなことがあり得ますよね。少なくとも日本の戦後の歴史の中で、これまでの歴史の中で自衛隊が海外へ出かけていって血を流したり、相手を殺傷したりということはないですよね。そういう意味では質的に物凄く変わるんじゃないですか?
北岡氏
これはですね、勿論そういうことはあって欲しくないし、ないようにできるだけの努力はすべきですよ、だけども今の法制度でもありえないことはないですよ。今のPKOでもあり得る話ですね。
金平キャスター
しかし今までなかったことが、これによってなお可能性が増すという、もっと大きくなるということはありませんか?
北岡氏
それはどうでしょうか。それはそうかもしれないし、そうでないかもしれません。というのはですね、"何々の恐れ"ということを皆さんよくいうんだけれど、"恐れ"の中には、"不作為の恐れ"というものもあるんですよね。
今の例えばPKOに限って言えば、南スーダンで絶対、死者を出さないようにしようと思えば、これは引き上げるのが一番でしょう。するとそこで、結果的に、かつてのルワンダの虐殺のようなことがあっていいのかということを、日本が"不作為"によって引き起こされる。日本人の自衛隊はセーフだったけども、そこでより多くの現地の人が傷ついたり怪我したり死んだりしたということが起こっていのかと。両方考えなくちゃいけないということでしょうね。
北岡氏のいう懸念は仰る通りで、南スーダンの東部ボルで、難民5000人をかくまう基地が襲撃され、韓国・インド軍という「アジアの虎」二頭によって、その難民が保護されたのは2014年。
【ナイロビ共同】南スーダン東部ジョングレイ州の州都ボルで17日、国連平和維持活動(PKO)基地が武装集団に襲撃され、ロイター通信などによると、基地に保護されていた避難民ら48人が死亡、多数が負傷した。PKO隊員2人もけがを負った。
基地では当時、約5千人の避難民が保護されていた。国連によると、武装集団はデモ隊を装って基地に近づき、無理やり敷地内に入ろうとして発砲、駐留するPKO部隊と戦闘になった。
基地には韓国とインドの部隊が駐留…
その少し前、自衛隊は物資の付属した韓国軍に「友情の銃弾」を送り、そはり同じ地域で危険が迫っていた国連は、その危機から脱することができた。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2013/12/23b.html
国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への物資協力について
平成25年12月23日UNMISS司令部より、ジョングレイ州ボルに駐屯する韓国隊及び共に宿営地内に所在する避難民等の防護のための武器の使用に備え、不足している弾薬の譲渡が要請された。不足している弾薬の型は我が国部隊が保有しているものと同型であり、現在UNMISSに展開している部隊の中で同型の在庫を有しているのは我が国部隊のみであるため、我が国からの無償譲渡を行わない場合、韓国隊の隊員及び避難民の生命・身体の防護に支障が生じることになる。そのため、国連からの要請に基づき、必要な弾薬10,000発を無償で国連に譲渡することとした。
本件は、我が国も参加するUNMISSが行う活動の一環として、施設業務を任務とする韓国隊の隊員及び避難民の生命・身体を保護するために一刻を争う緊急事態であり、緊急の必要性・人道性が極めて高いことに鑑み、当該弾薬が韓国隊の隊員及び避難民等の生命・身体の保護という自己保存のためにのみ使用されること、及びUNMISSの管理の下、UNMISS以外への移転が厳しく制限されていることを前提として、官房長官談話を発出することにより、武器輸出三原則等によることなく、国際平和協力法第25条に基づく「物資協力」の枠組みで譲渡を行う
ただ、そういうことがあっても、あるいはあるからこそ…「南スーダンで撤退後、何があったって知るものか。もっとやばくなるうちに一抜けたしよーぜ」という、おそらくは国家エゴまるだしの感情も、抜きがたくあるのであります…