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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

南スーダンPKO撤収決定を喜ぶ。「不作為」の犠牲リスクは承知、あとは南スーダン国民諸君自ら平和を求めよ。NGOにも、幸運を祈る

南スーダンPKOに派遣の陸自部隊、撤退へ 政権が決定:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASK3B5WR8K3BUTFK00X.html

以前から撤退してほしいと思っていたので喜ばしい。
ちょうど1カ月ほど前、安倍政権に批判的な論者が、こう予想していた。

このかたが「相当な判断力と胆力が必要」と喝破した『撤退』がともあれ、決まった。この際、決定者にそれがあったのかどうかはとわぬ。5月まで、無事であるように、犠牲者が”特に自衛隊の中に”、いないことを強く願う。

過去に書いた記事から

安保法制成立1年だが『「駆け付け警護」が議論の南スーダンなど見捨てちまえ。今後、本格内戦になろうと難民が苦しもうと日本人の命が優先だ」…という思いも、正直少しある。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160921/p1
 
南スーダンPKO「駆け付け警護」は余り賛成しない。NGOや国連職員は…まあ自力で。目の前で虐殺あっても不干渉で(やや極論) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20161115/p2

もう一度「エリア88」の画像を張ろう


そんな中、この自衛隊撤退を正面から「残念だ」と批判する論者がいた。
「平和構築」を専門にする国際政治学
篠田英朗(東京外国語大学教授)氏。

http://shinodahideaki.blog.jp/archives/14804753.html
……しかしUNMISS(国連南スーダン共和国ミッション)は、1万5千人以上の要員が、困難な任務のために派遣されて献身的に勤務し続けている巨大ミッションだ。1万2千人以上の軍事・警察要員だけを見ても、60か国以上から集まっている。彼らは今後も困難な状況の中で任務を遂行し続ける。350人の自衛隊員が、「道路を造り終えた」という理由でいち早く撤収してくるのを、手放しで喜ぶという気持ちにはなれない。少なくともとても外国人に見せられるような姿ではない
しかし、私も日本人の端くれである。これが日本社会のぎりぎりの落としどころだ、ということが、わからないわけではない。残念だが、仕方がない。これが日本だ。
これまで自衛隊の撤退を要求する人々は、常に抽象的かつ非現実的な言い方で、「自衛隊ではない平和への貢献の仕方があるはずだ」、と言い続けてきた。明日も多くの人がそういうことを言うだろう。気楽である。誰も具体的な方策に関心がないのだから。抽象的かつ非現実的な言い方で、「日本政府は、自衛隊派遣以外の方法で、早く南スーダンを平和にするべきだ」、と言い続けておけばいい。それで日本社会ではOKである。

おなじみ銀英伝の「ジェシカ・エドワーズ論法」(説明は省略)なら、「じゃあお前が行ってこいよ!」といえるのだが、氏の経歴は…
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/shinoda/shino/keireki.htm
これじゃ足りない、といえる人がいるならジェシカ論法を使って非難すればいいが、そうともいえまい。



で、自分はかなり冷たく、「この撤退後も南スーダンで大きな内戦が起きなければ、大きな犠牲派が出なければ最高だが、もし出たとしてもそれは南スーダンの政治・軍事指導者に責任の大半がある」
「民間人や海外からのNGOらから犠牲者がでても気の毒だが、仮に自衛隊がいればその犠牲者を減らせる、防げるとしても、そこまでする気にはなれない
という立場から、今回の5月撤退を指示するのです。


過去の記事の繰り返し。

なんかいまだに時々リツイートされるのだが

【悲報】北岡伸一氏がTBS金平茂紀氏のインタビューに答えたら容赦なさすぎて、ひいた。無編集だとこうなるのか…。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150406/p3

で紹介した、こういう議論があった。

金平キャスター
いや例えば、自衛隊員に死者が出るとか、血を流すみたいなことがあり得ますよね。少なくとも日本の戦後の歴史の中で、これまでの歴史の中で自衛隊が海外へ出かけていって血を流したり、相手を殺傷したりということはないですよね。そういう意味では質的に物凄く変わるんじゃないですか?
北岡氏
これはですね、勿論そういうことはあって欲しくないし、ないようにできるだけの努力はすべきですよ、だけども今の法制度でもありえないことはないですよ。今のPKOでもあり得る話ですね。
金平キャスター
しかし今までなかったことが、これによってなお可能性が増すという、もっと大きくなるということはありませんか?
北岡氏
それはどうでしょうか。それはそうかもしれないし、そうでないかもしれません。というのはですね、"何々の恐れ"ということを皆さんよくいうんだけれど、"恐れ"の中には、"不作為の恐れ"というものもあるんですよね。
今の例えばPKOに限って言えば、南スーダンで絶対、死者を出さないようにしようと思えば、これは引き上げるのが一番でしょう。するとそこで、結果的に、かつてのルワンダの虐殺のようなことがあっていいのかということを、日本が"不作為"によって引き起こされる。日本人の自衛隊はセーフだったけども、そこでより多くの現地の人が傷ついたり怪我したり死んだりしたということが起こっていのかと。両方考えなくちゃいけないということでしょうね。

平氏はこの時フルボッコにされたが、今回の決定で、ある意味日本全体がそのフルボッコの痛みを分かち合うことになるのだ、端的にいえば(苦笑)。


「駆けつけ警護」の是非も…是非も何も、自衛隊がその場にいなければ駆け付けることもない。
あちらにどれぐらいのNGOが活動しているのか、国連の文民が活動しているのか把握していないが、どちらにしても、日本は武力で彼らを守ることからも”撤退”する。あとは本当に「何とか頑張ってくださいね」というしかない。


5月までうまく状況を回避できれば、中国軍が見たこの悪夢から、解放されるのだ。

南スーダン】:政府軍が宿泊施設襲撃 PKO部隊は救助出動せず

http://blog.goo.ne.jp/adragonisflying12345/e/4da362b3b6f8e8ed5a7d2dad7e51861f

 【ヨハネスブルク=共同】南スーダンの首都ジュバの民間宿泊施設が七月に襲撃された際、出動命令が下されたにもかかわらず、国連平和維持活動(PKO)の南スーダン派遣団(UNMISS)が出動しなかったことが分かった。部隊の一部が危険な現場の状況を懸念したとみられる。
(略)
 襲撃されたのはUNMISS司令部から約一キロの宿泊施設。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチによると、国際機関の職員ら約五十人が滞在していた。

 政府軍兵士らが地元記者を殺害し、外国人の女性らを暴行。数時間にわたり略奪を続けた。現場から電話で国連に救助要請があったが、UNMISSは部隊を派遣しなかった。

 米国の非政府組織(NGO)「紛争市民センター」は報告書で「UNMISS内部で出動命令が下されたが、中国とエチオピアの部隊が出動を拒んだ」と指摘。中国部隊は準備が整っていないことを理由に挙げたが、施設に向かう途中にも戦車や数百人の政府軍兵士がいたため、出動は危険と判断したもようだ。

本当に殺害・暴行・略奪された民間人は気の毒だが、UNMISSで「出動せず」を決断した中国軍にも大きな同情を持つしかない。

実際に、こういう事件があったら(5月までに、起きるかもしれない)、日本国自衛隊も、最小リスクだと判断しないかぎり、同じように「出動せず」との判断をしてもやむをえないと思っている。そして撤収すれば、このジレンマに直面することもない、のです。


もう一から十まで自国民優先、ジャパンファーストな主張になってしまったが、そういう観点で南スーダンからの撤退を歓迎したい。5月まで、大過なく、犠牲なく務めてほしい。
自衛隊の命が危険と、現地にいる民間人やNGOの危険を、上記の中国軍のようにぎりぎりの天秤にかける場合も5月までにあるのかもしれない。
その際も「自衛隊が撃たない、撃たれない」ことは最上級の優先課題としてほしい。


以上、エゴ丸出しの主張でした。


しかしそれがエゴというなら、スーダン軍閥の頭領どもこそが最悪のエゴイストの屑なのであって、どうぞ(一番の)批判はそいつらに、である。



最後にもう一回、「銀英伝」のとある場面をもとに議論を提示したい

英伝5巻のユリアンとシェーンコップの議論を、「不作為」の問題を混ぜて拡大してみる。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160921/p2

少し要約します。


「もし政府が無抵抗の民衆を虐殺するように命令したら、軍人はそれに従わねばならんのかね」
「そんなことは、むろん許されません。そんな非人道的な、軍人という以前に人間としての尊厳さを問われるようなときには、まず人間であらねばならないと思います。その時は、政府の命令であっても、そむかなくてはならないでしょう」

という議論が、銀英伝の5巻で論じられている。


1:軍司令官が自分自身の判断をよりどころにして、政府の命令を無視することは許されない。
2:しかし「非人道的」「軍人という以前に人間としての尊厳さを問われるようなとき」は、政府の命令であっても、そむかなくてはならない
 
ふむ。
だが、この場合、上で北岡伸一氏が語った「不作為」は入るのか?と問うてみる。
 

・わが軍が、武力不行使、中立維持、武器不使用…などを政府から厳命されている。
・しかし、その目と鼻の先で、たとえば民間人や難民が、武装集団や海賊盗賊に襲撃され、虐殺、略奪、凌辱をほしいままにされている。
・わが軍の武力をもって排除に当たれば(多少の犠牲はあるが)、間違いなくその武装集団らは撃滅、排除可能だ。
・そんなとき、政府の命令にそむいてでも、武力で襲撃者の排除にあたるべきでしょうか?」