INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?」に登場した科学部長が何かに似てる

「桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?」という漫画があります。
ひとことで言えば「グルメ、料理漫画の中で『ゲテモノ食』に特化した作品」。解説はこれで完璧に終了(笑)

実はうかつにも(笑)2年前、2017年のマンガ10傑にも選定してしまったのだが…
m-dojo.hatenadiary.com


再掲載しておこう

グルメ漫画、食べ物漫画がとにかく多すぎる昨今ですが、だからこそ一作品ぐらいはこのジャンルから選ぶべきだとも思います。と言いつつ選んだのがこういう変化球なのは申し訳ない(笑)。ただこれはグルメ漫画というよりは、「山賊ダイアリー」や森恒二の作品のような、サバイバル的な漫画にむしろ寄っているのですね。実際にやるやらないはともかく、どうも男には、いや 女にも「いざという時、その辺の生き物や植物をあつめて食べ物にする」というようなシチュエーションに、何かしらの興味を惹かれるんだと思います。


もちろん同時に、若い男性教師とその教え子の女子生徒(さらに歳の離れた幼馴染でもある)と言うことで、それこそほのかな「関係性」もあって個人的に はそういうの「 けっ」という感じなんですが(笑)、何しろテーマがテーマなのでそこはあまり掘り下げようがない(笑)。 安心して捕まえたコイやカエル、ヘビ、 虫、ダチョウの卵などの珍食材、貴重な食材を追求する物語を楽しめるでしょう。

で、だ。
最近漫画アクションが読める、ネット雑誌公式まとめ読みサイトに加入したこともあり、パラパラと(ネットだからパラパラでもないね)作品を読んでいたら、最新回はその「ゲテモノ料理」として、いろいろマッドな科学的な処理をした「科学料理」を食べる回だった。
そこでは科学部が登場し、その料理を作るという設定で…それ自体は文句が無いのだが…ちょっこの科学部長の造形、何かを思い出しませんか(爆笑)

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「桐谷さんちょっそれ食うんすか」に登場し科学部長、何か…じゃねえよ、究極超人あ~るに似てるわ!


…いやあ、往年の人気漫画や人気番組のキャラクターを、怒られるか訴えられるかのギリギリのところでパロディ化して公開するのは、長年漫画業界で行われてきたことで何の不思議もないのだが、そういうことをさんざんやってきた側の作品が、今や「される側」になったんだなあ、と、そういう感慨を持たざるを得ません。

ちなみに、お話に出てきた科学料理って、「肉に電流を流すと熟成する」その他、「決してマネしないでください」にも登場するので、そちらも推奨します。

桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?(3) (アクションコミックス)

桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?(3) (アクションコミックス)

桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?(5) (アクションコミックス)

桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?(5) (アクションコミックス)


ちばてつや先生80歳(11日)/梶原一騎ドキュメンタリーがBS朝日で(12日、放送済)


おめでとうございます。
せっかくだから、このマンガを再紹介
r.gnavi.co.jp


ところで、傘寿を迎えられたちばてつや先生のブログを遡ると…

ameblo.jp

今日は、その梶原さんを忍ぶ
2時間の特集番組の取材を受けました。

テレビ局の皆さん、ご覧のように
もう、真剣な顔をして、目がぎらぎら。

あちこちで、たくさんの関係者の
声を集めているのでしょうが、
ワシには
梶原さんと組むことになった
きっかけのエピソードや、

なぜ、人気があった「力石」を
殺したのか?

真っ白なラストシーンは、どうして
決まったのか・・
その時梶原さんの反応は?

などなど、聞かれるままに、
ワシも真剣にお話しました。

放映は 1月12日(土)19時
BS朝日「ザ・ドキュメンタリー」






www.bs-asahi.co.jp
#85 2019年1月12日(土)
昭和の劇画王 梶原一騎
巨人の星あしたのジョータイガーマスクを生んだ男~

(C)A・Tproducts
今から50年ほど前。日本を席巻した「スポ根ブーム」。この新たなジャンルを確立したのが、劇画原作者・梶原一騎。当時の青少年を虜にした梶原の代表作「巨人の星」「あしたのジョー」「タイガーマスク」「愛と誠」などなど。次々と魅力的なキャラクターを生み出す一方で、暴力沙汰を起こしたこともあった。果たして、梶原一騎の実像とは?
今回、梶原とともに作品を作った漫画家・ちばてつや初代タイガーマスク佐山サトル、そばで梶原を見てきた家族や友人など多くの証言を集め、主人公が悲劇的な最期を迎えることが多い梶原作品を深く読み解きながら、梶原の真の人物像に迫っていく。

と、書いてる自分がねぇ、見逃した…というか放送のことなんてしらんかったよ!!


BSの番組なら再放送があるっしょ、と思ったが、「ザ・ドキュメンタリー」、たしかに反響あった場合は再放送があるが、そのタイミングが数か月後レベル、それも「不定期」らしく、かなりそれをキャッチするのはむつかしそう。

まあ、残念ながら、ここに記録だけしておこうと。

twitter上で展開された「サラ・イネス作品」についての話題(~覚書:「サークル的企業」)

偶然、3連続で「モーニング」連載作品の話題となったが。

これは、東浩紀氏の「ゲンロン」の話とかが念頭にあったのかな?
あるいはこれかな?



それはともかく、ここから始まる。











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サラ・イネス誰も寝てはならぬ」11巻より



誰も寝てはならぬ(1) (ワイドKC モーニング)

誰も寝てはならぬ(1) (ワイドKC モーニング)

「カバチ!」の「新自治会設置編」を紙屋高雪氏はどう読んだだろうか

「ハコヅメ」の流れでモーニングをいくつか紹介するね。
「カバチ!」でここ5、6回ほどかな「新自治会設置編」とでもいうべきストーリーが展開されました。

田舎暮らしに夢を抱いて都会から移住してきた新住民だが、古くからの住民がいろいろと共同体内の仕事をやらせようとしてきて、仕事もある新住民が難色を示すとそれだけで目を付ける。さらには「神社の氏子になるのだから、神社にお金を収めないと」てな(特別な)金銭負担まで要求し、それを断るとごみ収集などの住民サービスを受けさせなくなる。
それを行政書士の主人公に相談した新住民は、行政書士から「別の自治会を、あらたに発足させると言う手段がありますよ」と提案されーーー

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カバチ! 新しい自治会は設置できるか

という話で、紆余曲折がいろいろあって、行政との交渉も一筋縄ではいかなかったが、なんとか発足。
その時の交渉次第もおもしろく、最初から法律論で「設置できますよね?当然ですよね?」というスタンスだと難航しますが、「実は前例や他市町の例を調べてみたんですわ。問題ないってところが大部分です」

「それに…このままだと住民が議員を通じて『陳情』するかもしれまへんで。そっちのほうが厄介でしょ?」というと、話がちゃんと動き出す(笑)

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カバチ! 行政には前例と、議員の存在が有効?
ありそうな、ありそうな。
さらにここから「学校でも第二PTAが作れないかしら!」なんて話にもなっていくのですが、それは本編で。

さて、タイトルの話ですけど、こういった本がある

これは漫画評論家、書評家として有名で、はてなブロガーのひとりでもある紙屋高雪氏の、別ジャンルの著書だ。
関連した内容はブログでも読める

kamiyakenkyujo.hatenablog.com
kamiyakenkyujo.hatenablog.com
kamiyakenkyujo.hatenablog.com
kamiyakenkyujo.hatenablog.com

あるいは、ブログ内を「町内会」で検索するとよかろう。
kamiyakenkyujo.hatenablog.com


カバチ!が逆に氏らの著作を参考にした面もあるんじゃないか?とも思わないではないのだが、まぁとにかく、漫画評論家兼町内会評論家(?…というか実際に町内会長を務めた実践家なのだが)という人がいて、人気メジャー雑誌にまさにそういうテーマで漫画のミニシリーズが展開されたのだから、何か感想あるのかなー、と思ってみていたが、このシリーズは、ちょうど氏がまた別のジャンルで多忙だった時期でもあった(笑)

www.nishinippon.co.jp

余談だが、こんな横顔紹介記事もある

www.nishinippon.co.jp
 漫画評論家、作家、オタク、イクメン…。今は市長を目指す候補者。「福岡市は経済成長したが、果実は一部にしか届いていない。99%のための政治をしないと間に合わない」。口調は穏やか。だが弁舌は鋭い。

 反骨心の原点は愛知県での高校時代。「学ランのボタンを開けてはいけない」と定めた校則への反対運動の先頭に立ち、規則の撤廃に成功した。「やれば社会は変わるんだ」と知った。18歳で共産党に入り、京都大法学部卒業後は党職員に。市議団事務局では政策立案に深く関わってきた。

 自他共に認める「オタク」。漫画と本に月額3万円使う。本棚からあふれ、しぶしぶ一部を電子書籍に切り替えた。本の読みすぎで眼を痛め、眼帯姿で出勤し同僚を驚かせた。

 自称「ロジック大好き人間」でもある。憧れは第2次世界大戦中の軍隊生活を描いた大西巨人さんの小説・漫画「神聖喜劇」の主人公東堂太郎。法令を根拠に不条理に立ち向かう架空の人物だ。「そういう生き方ができたらなあ。毎日朗読しています。声を上げて」

 紙屋高雪ペンネームで漫画論評のブログを書く。作家としての著書は5冊。2015年までの5年間、自治会長を務めた体験を記した「“町内会”は義務ですか?」は、「会費なし、義務なし、手当なし」の新自治会を立ち上げた教訓が関係者の共感を…(後略)

ついでに、この市長選で同氏に対して「福岡市という巨大行政の長の立場に立候補した立場からの、青少年健全育成のための表現規制、出版物販売規制への考え」が質疑され、争点になったりしたらまた面白かったかもだが、あったかもしれないが、さすがに枝葉の話なので少なくとも報道で把握はできてない。



本題に戻って…
まあ、自分も経験があるが、自分の関心や経験に100%ダイレクトにつながるようなフィクションとかの紹介や感想って、実は書きにくい部分もある。むしろ5割~7割ほど重なった中で、自分の興味の分野を「…という面からも面白い!」「実は〇〇というテーマを論じた作品としても読める!」と紹介したり、書いたりするほうが書きやすかったりするんだよね。

ただ、最新号でシリーズ完結したばかりで、単行本は今後出る。
そんな機会もあることだし、「町内会問題に詳しい紙屋高雪氏なら、カバチ!!!の「新自治会結成編」をどう読むだろうか」という関心や期待を勝手に表明しておく。また、どちらかが面白かった人は、もう一方をどうぞ読んでみてもらいたい。

「笑ってはいけない警察捜査」…警察漫画「ハコヅメ」がAVの題まで正確に記録する可笑しさを描き傑作 

昨年末にですね、恒例の「2018マンガ10傑」を選定したじゃないですか。
m-dojo.hatenadiary.com


そん時に選んだもののひとつが「ハコヅメ〜交番女子の逆襲/秦三子」だったんですけど、この時に、こんなふうに紹介しました。

警察が持つひとつの特徴は、日常的な運営にはいわゆる体育会的、あるいはもっと悪い言い方をするならブラック企業的な体質(超過勤務なども)を持つ一方で、官僚の中の官僚、といっていいほど形式や順法にこだわる官僚的体質も持っていることだ。(旧日本軍にも似ている部分はある)
刑事ドラマでは、そのへんは逆に無視しないと話が作りづらいが、逆にこの「ハコヅメ」は、ふつうの警察ドラマでは切り捨てられるそのへんの体質や、細かい運営上の規則に焦点を当てて、そこから笑いをとろうという「反転させた」部分が面白いっす。

最新回(モーニング2019年6号)が、まさにその魅力を典型的に描いていましてね。
実にスケールの小さい、日常的な犯罪…DVDの万引き騒動なのですが、これの実況見分や被害届の作成となると、とたんに杓子定規で、お堅くまじめなやり取りになるのだけど、それが被害DVDの内容とあまりにミスマッチで(笑)、そのやり取りだけで「笑っていけないんだけど笑える」ものになっている。

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「ハコヅメ」 万引の被害届、DVDの題を真面目に読み上げる


たどたどしく、一文字ずつ確認されるのもアレだが、何の資料もなく固有名詞までスラスラ書けるのもアレ。

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「ハコヅメ」 万引の被害届、DVDの題を真面目に読み上げる

単純に固有名詞を正確に記載するのも必要だが、それを書類上、どのように表現するかも問題となる。

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「ハコヅメ」 万引の実況見分、DVDの分類を真面目に考える

うむ、関係者すまん!見開き1Pぐらいで紹介したかったんだけど、この畳みかける面白さはこれぐらい紹介しないと伝わらない!!!だが、これである意味、余すところなく「ハコヅメ」の面白さは紹介できたと思うんです。

警察捜査の結果と過程がきちんと記録され、それが保存されるのは、いいことか悪いことかといえばいいことに決まっている(財務省の土地取引や官邸の入出者もだ(笑))。
だけれども、やはり『「性春」は性別の「性」に季節の「春」です』『お願い!コーチ性春猛烈特訓』とクソ真面目に読み上げられたら、被害者も加害者もたまったもんじゃない(笑)。「ハコヅメ」は普通の警察もの、刑事ものではなかなか登場しない、こういう実際の警察活動に付随するトホホさ、しょうもなさをほんとにうまく描いている。この前の記事でも書いたけど
作者が本当に元婦人警官であることがうまく生きているなぁ…とつくづく感心しました。

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(2) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(2) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(3) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(3) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(4) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(4) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(5) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(5) (モーニング KC)

内容紹介
「人が楽しんでいるときはいつも仕事・・・」警察官だって遊びたい。でも仕事は容赦なく降りかかる。夏祭り警備、痴漢捜査、職務質問に、拳銃騒ぎ、さまざまな公務に奮闘したり、うまくやり過ごしたり。激務、激務のその末にポリスマンズ・ハイはやってくるのか……!?

著者について
泰 三子
某県警に10年勤務。2017年、担当編集者の制止も聞かず、公務員の安定を捨て専業漫画家に転身する。短編『交番女子』が掲載され話題になっていた「モーニング」誌上で、2017年11月より『ハコヅメ ~交番女子の逆襲~』の週刊連載がスタート!

NHK「歴史秘話ヒストリア」16日は手塚治虫/架空のライバルを設置した異色の評伝「チェイサー」も完結。

歴史秘話ヒストリア」1月16日水曜 NHK総合1 午後10時25分~ 午後11時10分

教えてもらいました。
実は今年は、1989年に亡くなった手塚治虫の没30年…なんともまあ、時の流れは速すぎる。

手塚治虫といえば「マンガの神様」…でも、神様がホントに恋い焦がれたのは「アニメ」だった!?アニメへの目覚め。「秘密の実験」で夢に胸ふくらませた少年時代。日本初の連続長編TVアニメ『鉄腕アトム』誕生の舞台ウラ。そして人生の終わりに取り組んだ未完の大作アニメのエピソードまで――日本アニメ文化の扉を開いた、マンガとはことなるアプローチでの手塚治虫の創作と挑戦の秘話を、手塚アニメの映像満載でお届けする。


NHKはなんといっても、手塚治虫の映像を実際のとこ、たっぷりと保有している。鳥獣戯画の解説から、トキワ荘の後輩たちとの交流、最晩年に病を押して「クイズ面白ゼミナール」でミニ講演したりね(子供心に「えっ、なんでこんなに痩せてるの?病気?」と思って、訃報が朝に入ってきたときは「ああやっぱり」だった。あの時、ワイドショーが特集を組もうとしていたので、学校に登校したくなかったなぁ…まだ平成が始まって、2カ月と経ってなかったよな…)そんな映像を再構成してくれるのだろうか。
ただ、予告だと「手塚のアニメ愛」に特に焦点を当てるようだな。

異色の手塚治虫評伝漫画「チェイサー」が完結。(作者は「グラゼニ」原作者でもあるあの人)



チェイサー 4 (ビッグコミックス)

チェイサー 4 (ビッグコミックス)

まず言うまでもない大前提だが、「コージィ城倉」って原作者としては、「グラゼニ」などを書いている森高夕次氏ね。絵がちょっとアレなので、原作のほうがヒットするというのはガモウひろしと似てて、またアレで…でもグラゼニも画力があったからヒットしたかといえば、ちょっとなぁ(笑)


「チェイサー」については、過去にこんな記事もかいたっけ。
10年前、雑誌が特集した「特攻体験を騙った男たち」に、大山倍達も出ていた……/漫画「チェイサー」も合わせて - INVISIBLE DOJO


それはともかく、「チェイサー」は、「ブラックジャック創作秘話」や「ボクの手塚治虫せんせい」などの作品が人気を博してから、客観的には、何匹目かのドジョウを狙って世に出た作品だった。
 その、後発「手塚伝」漫画の特殊ギミックとして手塚治虫を異様にライバル視ししつつ尊敬して、まるでその真似をするかのような、同世代の漫画家がいた。」という架空の設定を構築、その人と周辺の手塚を見る目線、聞いた噂話から、時代を構築するという趣向だった(作中では「実在の人物だ」と言い張ってたが、これは原作者本人曰く「梶原一騎リスペクト」だというからご愛敬)。

この形式で成功した部分も、やや不自然さや楽屋落ちっぽさなどが目立って逆効果だった面もあると思うが、ただし、この切り口が無かったら、先行作との違いを出すのが難しかっただろうから、やはり良かったのだろう。

なんといっても、平均…といっていいのだろうか、それ相応のヒット作もアニメ化作品も出した(という設定の)それなりの漫画家を設定すると、その比較で手塚の「常識外れ」「規格外」なところを非常に目立たせる効果があるのであった。
それは彼の、連載の質と量であり、「ヒストリア」でも描かれるだろうアニメとの両立であり、また中期のスランプ、落ち目と言われる時期の苦闘や変化への暗中模索(その時の作品も後から見れば、やや異色作ながら高い水準なのだ)、ブラックジャックなどでの大復活…などなど。


実はこの前、その最終回を読んだのだが、実にしみじみとさせられた。
というのはまさに30年前、今まさに終わらんとするこの「平成」の元年の手塚治虫死去、その時期が最終回で描かれているのだが、同時代の証言者の一人として「そうそう、そうなんだよ。まさにそうだったな」と思わせてくれたのは、その死の直前…数年前か、「アドルフに告ぐ」は、一種の社会現象的な「大ヒット」を記録して、まさに現役の人気作家として活躍していた、ということの描写だった。

手塚は晩年の前から、否応なく「漫画界の頂点」「大御所」「雲の上の人」に祭り上げられざるを得なかったわけだけど(笑)、それでもなお、この時…最後の最後まで「現役の大ヒットメーカー」だったんすよ! 長嶋、王、張本…的な立ち位置でありながら、大谷やマー君と肩を並べてペナントレースや賞争いに絡んでいたというか…

まあ、「アドルフに告ぐ」のヒットというのは、実は版元の文藝春秋が知恵者で、大判ハードカバー、表紙は手塚ではなくリアルタッチのイラストをあしらった一般書籍扱いで世に出して、その部数が「一般書」としては常識外れのヒットになり、それが社会現象として扱われてハウリング、拡大したって面もあるんだけどね。ただ、一般書の作りだったからお値段も相応であって、それを購入させたのはやはり手塚治虫ブランドでもあるし「アドルフに告ぐ」がふつーにハラハラドキドキの波乱万丈の大河ドラマだったからです。(同時代証言)
これは一般書扱いだったから、学校図書館などにもたくさん入り、「図書館のマンガは限られているからこぞってみんなが読む」の法則で学校で大人気となりました(同時代証言)。


結構ストーリーは複雑だし、歴史知識も必要なはずなのだけど、なんのなんの、そんなハードルを越えて偏差値が高い子も低い子も喜んで読んでた(同時代証言)。
そして、これがバカ売れしたことが業界に衝撃を与え、同じようなハードカバー、表紙がリアル寄りイラストの「ブラックジャック」選集を出したらこれまた大ヒット。大人を対象にした愛蔵版のカムイ伝とか、逆に名作漫画の文庫化なんかも進みんだ(同時代証言)。


そしてまたその後、石森章太郎あらため石ノ森章太郎が、ハードカバーの「マンガ日本経済入門」なんてのを出し、…これは内容的には、今でも読むに耐えるというものではない。何しろ続編では、太陽黒点と景気に関連がある、という疑似科学まで肯定的に扱ってたしね。
だけれども「漫画は子供が読むもの。いい大人が読むべきものではない」という、まだまだガッチガチに硬かった「世間の風潮」に、80年代後半の

・「アドルフに告ぐ」大ヒット
・その流れを受けて、往年の大御所名作が漫画風でない表紙のハードカバー本、或いは文庫になり、再度かつてのファンだった大人の手に取らせた
・「マンガ日本経済入門」大ヒット

ジェットストリームアタックみたいに連続で攻撃をかけ、岩盤を打ち砕くための亀裂を入れた、ということは間違いないと思う(同時代証言)


しかし、下記ながらちゃぶ台ひっくり返すけど(笑)ウオー(ノ-o-)ノ〃┻━┻
手塚治虫は最晩年まで活躍した!!すごい!!と言ったって、その最晩年が「60歳」なのだから、ある意味当然だよな…と考えて、その生涯の短さに再度粛然とする。

だって、今現在アラウンド還暦、略してアラカンな漫画家って

鳥山明 1955年
ゆうきまさみ 1957年
小林まこと 1958年
とり・みき 1958年
細野和彦 1959年 (彼がことし還暦)
島本和彦 1961年
原哲夫 1961年
桂正和 1962年

ですぜ…医学、健康面もずいぶん平成で進化したが、彼らの創作意欲がまだまだ衰えないのだから、手塚治虫がまだ50代後半で大ヒットを飛ばしても、それは当然だともいえる。

手塚治虫、まだこの世にあれば、今年卒寿だったか。
昨年おれが描いた、ド失礼なイラスト(笑)


「チェイサー」では、この架空の漫画家は、子供や孫に恵まれ、そして中には親以上のヒットをとばす漫画家になる子もいたりして、今なお長命で幸せに生きている。

それが手塚治虫も「あり得たかもしれない未来」を漫画の世界で見せてくれた気もして…そこでほのぼのと、物語が締めくくられたのは幸いでした。


手塚では こんなまとめも 作ったか
togetter.com


最後に、彼らがご長寿でハッピーな日々を送った世界線を見せてくれる象徴として、藤子不二雄A先生には、なお一層のご活躍とご多幸をお祈り申し上げます(笑)
corocoro.jp

ブクマから情報

id:hobbling 今度チャンピオンの50周年企画で「TVアニメ創作秘話」の連載が始まります。手塚主役のアトム制作ドキュメントで、原作はBJ創作秘話と同じ宮崎克、作画はガルパンスタッフの野上武志


野上武志。 って、たしか「戦車学校」「まりんこゆみ」のひとじゃなかったかな?
あ、そうだった。

まりんこゆみ(7) (星海社COMICS)

まりんこゆみ(7) (星海社COMICS)

「トランスジェンダー更衣室、トイレ、運動競技問題」はアメリカで事例や議論先行(苺畑ブログの紹介)

トランスジェンダーの方が、実際の男女区分のある場所でどのように扱われるべきか、という議論が最近さかんに行われていますね。
www.buzzfeed.com

はてなでもブクマが多数ついた。(だから読めたんだけど)
b.hatena.ne.jp

ちなみに、自分もこんなふうにコメントした。

松浦大悟さんの「女湯に男性器のある人を入れないのは差別」論への疑問

「その案の論理を詰めてくとXXという例が出るのでは」て議論、共謀罪でも秘密保護法でも出てきたでしょ。「そんな話は出てない」って反論にならないんですよ。てか逆に「同法案ではその場合〇〇だ」と説明したら。

2019/01/09 22:55
b.hatena.ne.jp


先月末も、twitterで議論が活発化。そのまとめ
togetter.com
それへのはてブ
b.hatena.ne.jp




閑話休題、この件に関しては、議論もトラブルの実例も、アメリカなどでぶっちぎりに先行例がありました。そこで紹介したいのが、
In the Strawberry Field:Main(苺畑より) という、アメリカに住んで働いておられるかたのブログです。※これは旧リンク。詳細は下に

twitterのアカウントは
twitter.com
苺畑カカシ @ichigobatakekak

であったな。(フォロー推奨)

重要補足
連絡を頂いた。今現在のブログは引っ越しているとのこと。
ここです
biglizards.net


※ではあるが、以下の紹介リンクでも記事自体は読めます。


その「苺畑」ブログではかなり以前から、アメリカの保守派メディア、言論人らの声が、本人も共感的な立場からさまざまに紹介されてきた。つくづく思うのは、外国・異言語で報じられる事件や論評、思想などは、自動翻訳やネットメディアがここまで進歩した今でも、やはり物理的に氷山の一角にすぎず、報じられる「ルート」によって、その性質も、やっぱり限定されるということ。そして、そういう状況であっても、やはり現地に住んでいる、働いている、現地メディアに触れている、というのは大きなアドバンテージであって、現地からの報告は、非常に大きな意味があること。町山智浩氏のアメリカレポートが重宝されるのは、本人の知識や筆力もさることながら、やはり「ベイエリア在住」という現地の強みでありましょう。苺畑カカシ氏の以下の報告も、町山氏と同種の現地報告の強みがあり、紹介される事例や言論は、このブログが報じなかったら日本語メディアで一件も例が無かった…というものも多くある。

そんで、なんと2014年から、苺畑氏はこの「トランスジェンダーのトイレ、更衣室、運動競技」問題を紹介していたのですよ!その事例を、今から振り返るべきでありましょう。
それでは、以下紹介。

biglizards.net
カリフォルニア州男女共同トイレ法(通称バスルームビルAB1266)

…以前にも話したように去年カリフォルニアの小中高学校においてトランスの生徒が自分の性別だと思う方のトイレや更衣室やシャワー室を利用し自分の思う性別に合った運動チームに参加できるという法律が州議会によって通された。何の抗議もなければ今年の始めからこの法律は有効になるはずだったが、生徒のプライバシーを迫害するものだとするプライバシーフォーオールスチューデントという市民団体がこの法律に反対し、11月の選挙で市民投票で法案の撤回を求めるべく抗議を始め…

biglizards.net
プラネットフィットネスの女子更衣室で、自称女性のトランス男が自分の隣で着替え始めたのを見た女性メンバーが、女子更衣室に男性がいるとフロントデスクに苦情を述べたところ、同ジムではトランスの人が自分が同一視する性の更衣室を使っていいことになっていると説明した。納得のいかなかったこの女性はジムの本社にも苦情を述べたが、答えは同様。それで女性はジムに出かけていって他の女性メンバーらに、「このジムでは男性に女性更衣室を使わせている。そのことを入会時に明らかにしなかった」と話たところ、トランスのメンバーに恐怖感を与える態度に出たとして会員権を奪われた。

このジムではメンバーが他のメンバーから恐怖感を与えられないよう保証する主義があるのだとか。だったら女子更衣室で男性に見られることで恐怖感を持つ女性たちの権利は…

biglizards.net
…トランス事件が起きるずっと前からPFでは、何故か普通のジムなら当たり前の行為をしているメンバーを他のメンバーを威圧しているとか圧倒しているという変な理由で追い出すことが多く、これまでにも地方では話題になっていたようで、行き過ぎた服装規制が問題で訴訟が起き…

biglizards.net
…男として生まれた人間はたとえ後に女になることを選んでも、男としての有利な立場は一生保持されるというもの。女になるという選択権があるということ事態、男に女の立場など理解できるはずがないというわけだ。であるからトランス女を女性として認めよと要求するのも男としての権限を振りかざしているに他ならないという…

biglizards.net
…カナダではいち早くこの悪法が施行されていたようだが、昨日トロントの大学で男女共同シャワー室で男子生徒が携帯電話のカメラを使って入浴中の女子生徒を隠し撮りするという事件が起きた。大学側はこの事件を真剣に取り扱い、男女共同シャワー室制度は一時的に停止すると発表し…

biglizards.net
…先日ヒューストン市で行なわれた選挙において、性適合障害男性の女子用施設の使用を許可する法案が、市民投票によって惨敗した。この法律はヒューストン市議会が二年前に強引に通し施行して三ヵ月めに市内の牧師や神父らの訴えで一時差し止めになっていたもの。法律反対派が十分な署名を集めたことから今回の選挙で市民投票にかけられ決着をつけることとなったのである。

ヒューストンの法律は、正式にはヒューストン平等人権法(HERO)提案1という名前で、その名目上の目的は性同一性障害や性嗜好によって就職や公共施設の使用や住宅選択などで差別されないためというもの。企業、個人営業、住宅など、違反者は最高5千ドルの罰金を課されるというもの。ただし宗教団体は対象にならない。

トランスやゲイやレズビアンを差別しないことの何がいけないのか、という疑問が生まれるのは当然だが、「差別しない」とは具体的にどういうことを指すのか。ここに問題がある…

biglizards.net
…同性愛及びフェミニストたちの間でトランスジェンダーをLGBT運動から削除しようという運動が始まっている。非常に零細な運動だから何処まで行くのかは解らないが、それでも同性愛者の中からトランスジェンダーの強硬なやり方に少なからぬ反感を持っている人が居ることは外部から見ていても面白い。

トランスを批判するのは、今のアメリカでは政治的に正しくない行為なのだが、そんなことは全く気にしないフェミニストやゲイ・レズビアンは何人かいる。…

biglizards.net
…今年の2月、ワシントン州のシアトル市営プールの女子更衣室に男性が居るという苦情が出て、プールの職員が男性に立ち退くよう命令した際に、自分にはそこに居る権利があると男性が居直るという事件がおきた。問題なのはこれが単なる痴漢さわぎではなく、男性は何故か女子更衣室に入る権利があると言い張ったことだ。

シアトル市はトランスジェンダーが自分らが同一視する性別の公共施設使用を許可している市で、今年の2月にその規則を覆そうとする州法が負けたばかり。

プールの職員は警察を呼ばなかった。それというのも、こうした公衆施設において、トランスジェンダーによる更衣室使用をどう扱うかと…

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…私は女性用の施設に覗きや写真撮影を目的に入り込む女装男の事件について、犯人の男たちが女装をしているのは単に女性施設への入室を可能にするための変装だと思っていた。だが実は、女性に扮するということに快感を覚える変態も多くおり、自分が女だという妄想を持って女性に乱暴を働くことに喜びを見出す人間も多いようである。

自分が女だと思っている以上、性犯罪者でもトランスジェンダーであることに変わりはない。となれば、こういう人間が女性施設に入ることは共用法が通れば可能と…

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…先日トランプは戸籍上男子の女子施設使用禁止法律を通したノースカロライナ州について意見を聞かれたとき、NC州の法律は極端で、法律など通さずににそのままにしておくべきだったと語り、ケイトリン・ジェナーのようなトランスジェンダーが女子トイレを使用することにも全く抵抗はないと語った…

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…先日、アメリカの大型スーパー、ターゲットがこれより『自分が同一視できる性別の施設を自由に使ってもよい』という規則を施行すると宣言した。そのことで消費者から苦情が殺到。保守派グループがボイコットを呼びかけ24日の段階ですでに340,000人の署名がオンラインで集まったと…

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…先日トランスジェンダーに関する記事を集めている4thWaveNowというブログに載った女から男(FTM)へのトランスジェンダーとして二年間生きて、一年前から生まれた性の女性に戻る努力を始めたマックスという女性の体験談を読んで、トランス社会における女性迫害及び弾圧の事実を…

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…信じられないことだが、世界最強の自由国(であるはず)のアメリカ大統領が、なんと全国の小中高学校区において男女の区別なく生徒の好むトイレ及び更衣室そしてシャワー室に至るまでその使用を許可するよう命令した。そのことで全国各州から猛烈な反対の声が上がっている。断っておくが、大統領命令といっても、大統領には立法権限がないため、連邦政府に施行権限はない。ただ、オバマ王はオバマ王の命令に従わない学校区への連邦政府からの補助金を差し止めると脅迫している。しかし多くの学校区がたとえ補助金を失っても大統領の命令に背くものと思われる。なぜならこれは女子生徒を必然的に危険に…

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アラスカ州の高校で 男子生徒が女子陸上競技に参加を許され 全アラスカ州大会で三位に入賞。四位以下になった女子選手やその父母から苦情が殺到するという事件が起きた。

特に四位になった女子生徒の母親は三位の選手が男子だったことを競技の後になって知り、学校側にも抗議し、ツイッターで胸のうちを打ち明けたが、それに対して当の男子生徒が『あなたの娘がもっと真剣に練習すれば勝てたのに』というようなことをツイートしたため、この母親の怒り爆発。五位になった選手の母親なども加わってツイッター上で大騒ぎに…

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…訴訟を起したのは生徒とその父母の11家族で、原告らはバージニア市の公立学校において生徒らが好き勝手に異性の施設を使用できる規則を撤回するよう求めている。
「学校の方針は生徒らの安全と人権を守るためにあるべきであるにも関わらず、バージニア市公立学校はそれをしていない。教育委員会や司法局がそれをしていないのは明らかである。」と原告側の弁護士ゲリー・マカレブ氏は言う。「どのような子供も更衣室のような親密な場所を異性と共有することを強制されるべきではない。」と…

結局紆余曲折を経て…はてブ的にも、この問題では「オバマでなくトランプ支持」が多数?

上の苺畑ブログでは、選挙戦中に性自認に基づくトランスのトイレ利用に抵抗がない、と語り「トランプは、実はやっぱり隠れリベラルの偽装保守だ!」と言われたりした経緯が紹介されていますが(実際に大統領選挙直後から、そういう見立て(心情的や直感的には保守性はなくNY風リベラル、だが政治的野心から保守政策を取っている)はあったし、今もそう見てる人はいる。米国保守本流から嫌われ続けた過去も想起されたい)…最終的には、こうなったのは周知のとおり。


www.newsweekjapan.jp

www.huffingtonpost.jp

japan-indepth.jp

news.yahoo.co.jp

アメリカでも、急進的なフェミニストの中から、結果的に保守派と一致する「トランスの人のトイレや更衣室は、肉体的な性に準拠すべし」という声があったのだから驚くにはあたらないが、今回「トランス問題に限って言えば、はてなブックマークではオバマの政策よりトランプの政策を支持する声が高い」といっても、まあ間違いじゃないよね?


似たテーマいくつか。

げんしけん」で、女装だけど性自認は男性である大学生が、着替えに女性トイレを使ったときは大いに先輩らから怒られました。


ところで「トランスジェンダー」の問題とは基本的に別物だけど、LGBTのほかのLGBの時でも、そういう方の更衣室や浴場利用には、以下のような議論は必要ではないか?と書いた当方の過去記事がありました。
この機会にそちらと、関連リンクも紹介します



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