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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「他者が自分の文化を褒める心地よさ」はエンタメの1ジャンルとして既に確立してる、という話(再論)

このブログではおなじみの、話題のまとめから話を広げる記事。
togetter.com

ここにつけた当方のブクマ

テルマエ・ロマエ」や「くーねるまるた」も、つまりはこの系譜にあるし、外国人じゃなくて「違う世代が、若者の趣味を激賞する」に窯変したのが「メタモルフォーゼの縁側」でありましょう
https://b.hatena.ne.jp/entry/4754008051908172928/comment/gryphon

これはタイトルにうたったように「再論」である。同作が「手塚治虫文化賞」と「マンガ大賞2010」を受賞した2010年に書いていた。以下再掲載

実はこの作品が人気を呼んだのには、ゆるやかで罪のないナショナリズムも関係していると思う。
ローマの浴場技師である主人公は、お湯に浸かるとランダムに現代日本のさまざまな浴場に移動するという特殊能力?があるのだが、そのたびに「平たい顔族」(日本人)の風呂文化を見て「画期的だ!」「何たる工夫だ!」「知恵が凝らされている!」「うまいっ!」と驚愕し、「ローマ人のプライドがゆらぐ・・・」としょんぼりし、帰ってはローマにその工夫を持ち帰り大人気となるのだ。


前述のように風呂にそんなに興味がないし、温泉玉子とかもあんまり好きじゃない自分でも、日本の(ってシャワーとか、そういう海外のものもあるが)文物を異文明の人が絶賛、それを学びました・・・というストーリーは、物語そのもの以外に、確かに緩やかなナショナリズムを鼓舞されてここちよい、という部分はある、と思う。褒めているのがすでに滅んだローマだから、文句も出ないだろうしさ(笑)。
<似たテイストの作品>
■外国人が「日本の文化と伝統はすばらしい!」と、その価値をしらない日本人に説くという先行作品があります。これは、作品本体としても素晴らしい出来ですよ。全5巻で読むにも手ごろ。


ただ、これは金脈!だと思う。このパターンをあちこちに持ち込んで「韓国にタイムスリップしたバビロニア人が、キムチやチジミのうまさに驚愕!!!」とかいうマンガを作ったら、韓国の人いい気持ちになってそのマンガ売れると思うよマジで。「中国にタイムスリップしたルネサンス人が、麻雀という複雑微妙なゲームを絶賛!!」とかもしかり。
うーむメモメモ。
m-dojo.hatenadiary.com


テルマエ・ロマエにそういう感想を持つのは自分だけではないようだ





上の記事のたとえば韓国でも同じような構図が受けるんじゃないか、って話。実際にあるらしい。今はツイート主のアカウントが無くなってる状態だが、
そこでこう紹介されてた。

彭城邑@8u_f1

韓国スゴ〜イデスネ視察団、宿のTVでリアルタイムで見れて割とガチめに感激してる。今日はデンマーク人を昌德宮に連れてきて韓服着せる回らしい twitter.com/8u_f1/status/1… pic.twitter.com/OwaA4VLpMU



Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo
@gryphonjapan

テルマエ・ロマエとかが流行った時「この、外国人がXXXの文化はスゴイ!」と驚く、そしてXXXの読者や視聴者がいい気持ちになる、ってコンセプトを、海外にもってけるんじゃないか!、と思ったのだけど、やっぱり目端の利く人にやられてしまったなァ(笑)


3月16日
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo)@gryphonjapan

@8u_f1 @SEKIJO_Natsue けっきょく日本、韓国、台湾あたりは、人気番組や人気漫画、人気ドラマのコンセプトはそれをグルグル回してもたいてい同様にウケる、のではないでしょうかね(笑)
twitter.com/8u_f1/status/1…

posted at 14:00:36

3月16日
彭城邑@8u_f1

@SEKIJO_Natsue ちなみに韓国にも外国人を韓国に連れてきて韓国文化に驚いてもらう趣旨の似たような番組があります(YOUは何しに……とかと同じでこの番組もほぼ白人しか出てこない)


www.youtube.com
www.youtube.com



ということで、仮説はあっさり証明されました(笑)


これが外交技術や、文化人類学のテクニックのひとつであることはまとめやブクマでもいろいろ書かれている。

相手の文化を褒める外交 ナポレオン覇道進撃

ただ、実際に一皿ずつ出てくるロシア式フルコースはフランスに導入、定着したのだから「他国文化の優れた部分を『本気』で称賛し学ぶ」それ自体が「外交」だったりする(文化人類学もまったく同じでしょう)わけで、単純には言えない。


それにそもそも2010年のテルマエ評でも書いたが、この程度の感覚は「ゆるやかで罪の無いナショナリズム」であると考えます。
そもそもテルマエの作者も、これ以上ないぐらいにコスモポリタンな生き方と人脈を持ち、大文字の日本ナショナリズムとは距離を置いている。その人の、肌感覚…風呂の話だから文字通り肌感覚だ(笑)、そこから出てきた本音100%のナショナリズムだから、つよかった。
ただ、2024年に掲載誌を移して連載中の「テルマエ・ロマエ2」はネタ切れな面もあるのか、この「現代日本の温泉、風呂文化はスゴイ!」のテイストがやや強くなった感はありませんかね。
shonenjumpplus.com


逆にくーねるまるたは、「ぬーぼー」になって、周囲を取り巻くキャラが多彩になってそっちの人間ドラマで回せるようになったことから、そういうテイストは薄れている感もあるから面白い。
いまや野生のザリガニを食らって飢えをしのぎ生き延びた、初期のまるたとは違うのだ。定職もできたし(笑)
そもそもあの作品、ややショート形式の箸休め的なマンガなのにやたらと長期連載だが、そうなるだけの人気があるようなのだ。2013年のツイートから。


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くーねるまるたとザリガニ


ただ数年前は「ニッポンのリア先生」とか「となりの外国人」とか、もっといろんな作品があった…観測範囲のことがあるので読み逃しかもしれないが、ブームとしてはやや落ち着いてきている感。


ついでだから、日本政治研究の人がどうやって調査対象に食い込むかを紹介しよう(ホント我がブログながら、いろんな分野の記事があるな…)
食べ物の話もあるけど

ジェラルドカーチスの日本食体験

宴会のほうが日本政治は本番。

そこで…各地区の「世話人」が集まった食事会があり、カーティス氏は紹介される。大喜びの人もいれば、不信と不機嫌の目を向ける人も。
ここで佐藤氏は、著者に「俺の後をついて同じようにやってくれ」と頼む。

それが「お流れ頂戴します」だった。「初めて耳にするフレーズだった」
外国人のそれに大よろこびした先方が2、3杯と代議士より多めに飲ませ、最後はふらふらとなり、それを見て世話人たちは「やつは根性がある」と認める、というところまで、つくづく昭和!!アルハラという概念が存在しない昭和!!

(略)
しかしカーティス氏も、そんな後援会で、スピーチをしてくれと頼まれることもあった。なく子も黙る婦人部、の前である(笑)
はい、カーティスさんは冒頭、
「喋るのがめんどうしい(恥かしい)けんど」
と大分訛りを披露し、大好評。昭和!!!
そしてほっとして、宴会場の杉乃井ホテルの温泉に入ってほっとしていたら、はい婦人部の皆さんが入ってきましたー。ラノベと違うのが、みなご年配なことですね(笑)。
はい、あわてて逃げようとした「青い目の日本研究者」は……(略)


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そして。この話は外国人だけじゃなくて、たとえば「違う世代に、わたしたちの〇〇が大人気!」という話の類型、ジャンルにもなるよね、ということ。

もともとは、(統計的な傾向で見れば)やや中高年向けとも言っていい、男性オタクに人気の趣味が…女子高校生とかにも興味を持たれる、みたいなものだった。それが商業的にも成功した。


これは…2012年の記事か

八つぁん「よお、最近『中二病でも恋がしたい!』ってぇアニメやってるよなあ」
熊さん「おうよ」
八「少し前の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』といい、『僕は友達が少ない』といい、"ヒロインがオタクとか中二病"ってのは、いったい何なんだい?」
熊「おいおい、オタ向けの漫画やアニメじゃ、ヒロインが宇宙人とか女神様とか吸血鬼とかロボットに乗って戦う少女兵士とか、そういう"非日常的なキャラ"なのはめずらしくねえ。オタクや中二病もそういう属性のひとつになった、って話じゃねえのか」
ご隠居「それだが、2010年に浅羽通明が個人誌『流行神』に書いてた所によるとだな、要約すっと、アニメとかに出てくる、いわゆる"戦闘美少女"って類型、つまり、なぜか10代の女の子がロボットに乗ったり魔法や超能力を使って戦ったり、サイボーグやアンドロイドみたいな人外の者でなんか暗ぁーい宿命を背負ってたり、銃や戦車や戦闘機やらに詳しかったり、ってぇのは、詰まるところ『自分の趣味が通じる女の子』を求める願望の反映じゃないかと。これ、真理じゃねえか? と思ったけど、意外に知られとらんな」
熊「へえ」
ご隠居「だから逆に・・・・(後略)」

https://gaikichi.hatenablog.com/entries/2012/10/28#p1

これを受け継ぐような感じで…

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「オタクに優しいギャル」話、広く言えば「”部外者”が自分達(の好きな物)に興味を持ち称賛」話は心地良いのでは

(略)
…以前からかすかに感じていた話だけ補足で。

まずもって、物語として
そして最近の売れ筋として

・「部外者」(それも何か、個性的な「売り」のある人。自分にない魅力や優位性のある人)が

・なぜか自分、自部たちの属性、あるいは自分たちが好きなものに興味を持ち

・彼らもそれを愛好して「すごいな!」「おいしい!!」「面白い」「かっけー!」と褒めてくれる

という話が、心地良くて受ける……んじゃないか、と思うのです。

それが一番典型的に表れているのが
「メタモルフォーゼの縁側」だと思うのです。

ddnavi.com
おばあちゃんがBLにハマって、女子高生と友達に? 心温まる異色マンガ発売


女子高校生の佐山うららは、書店でバイトをしている際に、自分も大好きな作家のBLマンガを購入する老婦人、市野井雪(いちのい・ゆき)に出会う。おばあちゃんがBLマンガを買ったことに、最初は驚いたうららだったが、二人はいつの間にか「BLマンガについて語り合うお友達」に。
(略)
老婦人の雪は、2年前に夫が亡くなり、今は習字教室の先生をしながら一人暮らし。毎月決まって行く場所は病院だけ。お金に困っているわけでもなく、社会から完全に疎外された存在でもない。けれどふと、「ひとり」の寂しさを感じることがある。
(略)
 ある時、雪はBLだと知らず、「絵がキレイ」というだけでマンガを買ってしまう。読んでから男の子同士の恋愛だと気づき、75歳にして忘れかけていた「ときめき」を覚えるのだ。

 そんなうららと雪が出会い、BLを通して距離を縮めていく。

 女子高校生とおばあちゃんの友人関係は、はたから見れば不自然かもしれないが、うららと雪にとっては、二人がお互いに感じていた「小さな孤独感」「深刻ではないけれど、どうしようもないさみしさ」を埋め合える仲間だった。その架け橋としてBLがあっただけなのだ。

余談 この反対の話

小泉純一郎は「キムチが嫌いだ」と公言していた。正確には日本の「たくあん」も含めて、漬物全体が嫌いで全然食べない、という話。ただの一個人の食の好き嫌い、それ以上でも以下でもない…はずなのだが…

そして2001年10月、大使生活の山場がやってくる。小泉純一郎首相が訪韓することになったのだ。小泉首相は、靖国神社参拝を行い、韓国や中国で厳しく批判されていた。

 金大中大統領との会談も、お互いが準備した紙を読み上げるような堅苦しい雰囲気で始まった。食事に移ったが「小泉首相が、不思議なことを言いだしたのです」(寺田氏)。

 「私は漬け物が嫌いで、タクアンもキムチも全然食べないんですよ、大統領」。すると金大統領は「私は、タクアンもキムチも好きなんです」と返した。

 そこから会話が弾み、冗談まで飛び出した。「訪韓は、実に見事な成果を挙げました」(寺田氏)と評価した。

 いままた日韓関係が難しくなってきている。そんな中だけに寺田氏の経験に、大切な教訓を感じる。指導者同士に面識があり、気心が通じれば、たとえ問題が起きても深刻化させなくてもすむということだ。
 
www.jnpc.or.jp

おやあ?

こんな本もあるとか

韓国でのあいさつは、「アショハセヨ」ではなく「メシ食ったか?」

(章立て)
一章 板門店ディナーの政治学
二章 たかが冷麺、されど冷麺
三章 トランプに反日エビを食わせる
四章 朴槿恵は”独り飯”で追放された
五章 済州島の水とミカンに託した文在寅の陰謀?
六章 ”独り飯”に罪はないものを
七章 大統領の”招待飯”ではずされた
八章 韓国政治1番地、光化門の政治学
九章 食い物にこめられた亡国の恨
十章 韓国人がイヌを食わなくなった
十一章 ”肉のスープ”に込められた北の政治学
十二章 屈辱の”ブデチゲ”は美味い?
十三章 反日愛国に揺さぶられる食文化
十四章 キムチとビビンバの政治学

シラクは相撲好き、というかその域を超えた超マニアであり、大使館から毎場所、毎日の相撲の勝敗と決まり手をファクスさせていたのだそうだ(ホント)。



それを意識してだろう、後継者ではあるが政敵・ライバルでもあったサルコジは…

…フランスのシラク前大統領はこのほど出版した「回想録」第2巻で、サルコジ大統領を「神経質」などと描写、特に自分が愛好する日本の相撲をサルコジ氏が以前こき下ろしたとされることについて「日本を中傷した」と強い不快感を示した。シラク氏は知日派として知られる。

「回想録」第2巻は、1995年の大統領就任から2007年の退任までを600ページ以上にわたりつづった大著。

この中でシラク氏は、内相時代のサルコジ氏が04年に中国を訪問した際に「日本より中国が好き。相撲は知的なスポーツではない」と発言したとされることを取り上げた。シラク氏は当時、沈黙を貫いたが、著書では「相撲を皮肉り、日本を中傷した。私が情熱を傾ける二つを彼が知らないわけはない」と憤りを示した。
www.nikkei.com

ただ、そのシラクシラクで、イギリスの料理を手厳しく批評?して問題になり…またそのネタを小泉純一郎が拾って、エリザベス女王の前で……なにこの悪夢

……2005年のグレンイーグルズでの主要国首脳会議(G8サミット)。女王主催の首脳晩餐会での事だ。

その数日前にシラク仏大統領が英国料理に付いて不用意な発言をしたと報道され、話題になっていた。
彼が、プーチン・ロシア大統領とシュレーダー独首相に「料理がとても不味い国の人間は信用出来ない」と言う趣旨の発言をしたと言うのである。
シラク自身はそんな発言をした覚えは無いと否定していた。

晩餐会が始まり、コース料理の最初の一品を腹に入れた小泉は、つかえつかえの英語で大声でシラクに言った。
「ヘイ、ジャック。素晴らしい英国料理だ。そう思わないかい?」。
笑いのどよめきが起こった。
シラクは少し意地の悪い視線を小泉に向けたが、その悪ふざけに加わらざるを得なかった。

そしてエリザベス女王に向かって、自分は報道されている様な事は言っていないと釈明した…
m-dojo.hatenadiary.com




以上、過去記事などから拾って、まとめてみた。

それがエンタメとして成立するなら、まことに結構なことかと思う。過剰摂取は毒だが、それ自体が極めて有毒、ともいえない…、という結論。
(了)