の話。自分としては詳しいジャンルじゃないので、自分が語れる範囲(すなわち寅さん映画)に引き付けて
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ここで論じた以上には基本語れないが、もうひとつだけ、その時以前からかすかに感じていた話だけ補足で。
まずもって、物語として
そして最近の売れ筋として
・「部外者」(それも何か、個性的な「売り」のある人。自分にない魅力や優位性のある人)が
・なぜか自分、自部たちの属性、あるいは自分たちが好きなものに興味を持ち
・彼らもそれを愛好して「すごいな!」「おいしい!!」「面白い」「かっけー!」と褒めてくれる
という話が、心地良くて受ける……んじゃないか、と思うのです。
それが一番典型的に表れているのが
「メタモルフォーゼの縁側」だと思うのです。
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おばあちゃんがBLにハマって、女子高生と友達に? 心温まる異色マンガ発売
女子高校生の佐山うららは、書店でバイトをしている際に、自分も大好きな作家のBLマンガを購入する老婦人、市野井雪(いちのい・ゆき)に出会う。おばあちゃんがBLマンガを買ったことに、最初は驚いたうららだったが、二人はいつの間にか「BLマンガについて語り合うお友達」に。
(略)
老婦人の雪は、2年前に夫が亡くなり、今は習字教室の先生をしながら一人暮らし。毎月決まって行く場所は病院だけ。お金に困っているわけでもなく、社会から完全に疎外された存在でもない。けれどふと、「ひとり」の寂しさを感じることがある。
(略)
ある時、雪はBLだと知らず、「絵がキレイ」というだけでマンガを買ってしまう。読んでから男の子同士の恋愛だと気づき、75歳にして忘れかけていた「ときめき」を覚えるのだ。そんなうららと雪が出会い、BLを通して距離を縮めていく。
女子高校生とおばあちゃんの友人関係は、はたから見れば不自然かもしれないが、うららと雪にとっては、二人がお互いに感じていた「小さな孤独感」「深刻ではないけれど、どうしようもないさみしさ」を埋め合える仲間だった。その架け橋としてBLがあっただけなのだ。
ただ、こういう「部外者賞賛もの」(イヤー雑な定義と命名だ)に自分が気づいたのは、その前にこれがある。
テルマエ・ロマエ コミック 全6巻完結セット (ビームコミックス)
- 作者:ヤマザキマリ
- 発売日: 2013/06/25
- メディア: コミック
実はこの作品が人気を呼んだのには、ゆるやかで罪のないナショナリズムも関係していると思う。
ローマの浴場技師である主人公は、お湯に浸かるとランダムに現代日本のさまざまな浴場に移動するという特殊能力?があるのだが、そのたびに「平たい顔族」(日本人)の風呂文化を見て「画期的だ!」「何たる工夫だ!」「知恵が凝らされている!」「うまいっ!」と驚愕し、「ローマ人のプライドがゆらぐ・・・」としょんぼりし、帰ってはローマにその工夫を持ち帰り大人気となるのだ。
前述のように風呂にそんなに興味がないし、温泉玉子とかもあんまり好きじゃない自分でも、日本の(ってシャワーとか、そういう海外のものもあるが)文物を異文明の人が絶賛、それを学びました・・・というストーリーは、物語そのもの以外に、確かに緩やかなナショナリズムを鼓舞されてここちよい、という部分はある、と思う。褒めているのがすでに滅んだローマだから、文句も出ないだろうしさ(笑)。
<似たテイストの作品>
■外国人が「日本の文化と伝統はすばらしい!」と、その価値をしらない日本人に説くという先行作品があります。これは、作品本体としても素晴らしい出来ですよ。全5巻で読むにも手ごろ。水古風~ニッポン人のススメ: 石化けの滝 (1) (ビッグコミックス)
- 作者:グレゴリー
- 発売日: 1996/08/30
- メディア: コミック
ただ、これは金脈!だと思う。このパターンをあちこちに持ち込んで「韓国にタイムスリップしたバビロニア人が、キムチやチジミのうまさに驚愕!!!」とかいうマンガを作ったら、韓国の人いい気持ちになってそのマンガ売れると思うよマジで。「中国にタイムスリップしたルネサンス人が、麻雀という複雑微妙なゲームを絶賛!!」とかもしかり。
うーむメモメモ。
この作品がなかなかの長期連載、シーズン2に突入しているのも、これじゃないかと思う。
イケメンや美女が「とりえのない」、読者が共感できる主人公を好きになる、というのが王道のパターンとしてあったわけだけど、それが蘊蓄漫画の隆盛と相まって、主人公の「趣味」の方まで興味を持つことで、そのジャンルの蘊蓄漫画とラブコメなどがまとめて提供できる、とかもあるのかねえ。
ひさびさに覗いてみたら、今年も更新されていてお元気そうだが、葦原骸吉氏の過去の記事に…ちゃんと飛べるかな、ここに。2012年の文章だ。
"ヒロインがオタク"は現代の『饅頭こわい』か
八「いや、話の駆動させ方として、男の子が、自分の知らない外の世界・非日常の象徴としての女子キャラに惹かれ、それまで自分が属してた狭い世間から一歩踏み出してく、ってな図式自体はいいんだよ。ただ、その非日常性の付け方がね、あまりにベタにオタ男の趣味と同じジャンルそのまますぎると、ただの都合いい自分の趣味の擁護みたいで萎える」
熊「そういや最近は『ガールズ&パンツァー』てぇアニメもやってるな。なぜか"部活"で戦車に乗る少女の話」
八「もうね、戦車と少女、銃器と少女、戦闘機と少女、ロボットと少女、株式投機と少女とか……いい加減、男の趣味と少女をくっつけるのも飽和状態かと。今や『ふつうのJ-POPやスイーツやジャニーズ系イケメンタレントやドラマの話に詳しい女子』が出てくるアニメこそ、真に斬新で画期的じゃねえの?(略)
こいつは何かい、落語の『まんじゅうこわい』かい? 口では『饅頭こわいよ〜』とか言いながら、本当はたくさん饅頭が飛んできて喜んでる、っていう。もう正直に『俺の妹が俺と同じオタクで仲良くしてくれたらいいな』ってタイトルにしろよ!!」
熊「いやいや、主人公がオタク男でヒロインもオタク女で仲良く幸せになりました、じゃ男女の間に"落差"がないから、劇的なドラマが作れないんだろw それか、あえてヒロインの方に自己像を投影するメタ的な自虐芸とかナントカってやつだ」
最後に謎の一説を丸投げ。「オタク男子に優しいギャル」を、女性版に翻訳すると「優しいヤンキー」?いや「勉強は優秀だけど浮いてるエリート」なんだって…
おれも書いててよくわかんないだけど、とにかくそう語られたことがあるんだよ
軽く「オタクに優しいギャル、みたいなパターンがある」というのを振ったうえで「それの女性版となると優しいヤンキー、なんでしょう」と。
それが、違うのだという。
「すごく勉強ができて、成績上位なんだけど、真面目で堅物な感じで、少し浮いてる孤高の感じの眼鏡かけたエリート風男子が、偶然女性のオタク趣味(腐女子風?)やアイドル大好きっぷりを知るんだけど、バカにしたりひいたりせず『それだけ一生懸命になれることは素晴らしいことだ』とか『アイドルというが、聞かせてもらった歌の歌詞は非常に考えさせられる…』とか、そういうふうに評価してくれる。それが男子が夢見る「優しいギャル」のちょうど対称」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・という説。こうやって文章とすると体系だってるけど、実際の説明(描写)はもうちょっと過剰かつ分かりづらかった(笑) それよりなにより「なぜ、それが対称となるのか。ギャル←→ヤンキーではなく???」との疑問はまったくぬぐえなかったのだが、それ以上は訊きかねた。
ただの、「個人的な好み」だよね?こういう理論があるのか、そういう実作品があるのか・・・・・・・も全くわからない。
(似た話)アフリカ系アメリカ人のために『ヤスケ』というアニメ作品はある(こなたま氏)
NetFlix「ヤスケ」が配信開始したので観てるんだけど、ロボや陰陽術が跋扈するオルタナティブ日本が舞台で、どっちかというと「衛府の七忍」に近い作りだった。 https://t.co/mTfqRQVtFX
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2021年4月29日
「ヤスケ」はアフリカ系アメリカ人のための「テルマエ・ロマエ」であり、「ゲート・自衛隊彼の地にて斯く戦えり」なのだ。我々が黒人でないからといって、彼らが「ヤスケ」を欲して身のうちに湧き上がる感情を否定してはいけないと思う
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2021年4月30日
しかし、純粋に日本人から見てアニメとして凡だったからといって否定していると、「中世ヨーロッパ的ファンタジー世界で 自 衛 隊 が無双する」等という物語に日本人の視聴者が引き付けられる理由は何なのだという話にもなる
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2021年4月30日
「古代ローマ人が日本のお風呂に感動する」とか。
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2021年4月30日
「ヤスケ」はアフリカ系アメリカ人のための「テルマエ・ロマエ」であり、「ゲート・自衛隊彼の地にて斯く戦えり」なのだ。我々が黒人でないからといって、彼らが「ヤスケ」を欲して身のうちに湧き上がる感情を否定してはいけないと思う
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2021年4月30日