ぱち
ぱち
ぱち。
今ごろは、メディア芸術庁とか「このマンガがすごい!」とかは賞を内定して、いろんな準備を進めているんでしょうな。
わたくしも、こういうのをやっていました。
はじめはベスト10、その後、順位は付けずに10本。
発表時期はバラバラですが、時々「年度」で決めたりとか、単にサボったとかいろいろあるのですが、大きな賞と同時期に発表しても注目されないので、フン族に追われるゲルマン民族のように、安住の地を求めてあっちへいったりこっちへ行ったりしてたんですわ。
そして今回は「大手が発表するちょっと前を狙う」という形式にしました。
一種の「予想」「推薦」を兼ねるという意味があります。
そして…2014年の選定を、「まあ、忙しいからあとで」と伸ばしてるうちに年が変わって11月になってしまったりとか(笑)
ですから今回は「2014/2015年マンガ10傑」となります!!
それでは。
■ ヤマシタトモコ「花井沢町公民館便り」
http://www.moae.jp/comic/hanaizawachou/1
【紹介】
幸運にも、ネットで読める第1話は設定を説明する回なので、このSF設定にムムッ!と来た人はどうぞ。SFは設定のご縁、相性という面があると思う。
描き方に2011年のあの出来事を連想する人も多いでしょうし、ほかのメタファーを感じる人も多いかもしれない。
完全に孤立し出入りできない場所、でも生活上の不安はない(ここが「首都消失」などとの違い)、周囲は同情もするがやはり「うちらと違うもの」と見ている場所…そこで生きる人々は何を思い、何を求めるのか。作者はヤマシタトモコ。
■おかざき真里「阿・吽」
【紹介】
http://sample.shogakukan.co.jp/bv?isbn=9784091867124
これは過去に記事を。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/2015045/p3野球、料理、政治がテーマなら「ライバル物語」をマンガで描きやすいだろう。しかし、ここで描くのは空海と最澄、日本史上最大の「思想のライバル物語」なのだよ!
無理ゲーだよ!編集者止めろよ!
しかし…やっちゃたのである。
こういう無謀な旅をするだけあって、作者は伝説の剣をそうびしている。つまり、悪魔的とさえ言える画力。
描く2人の人物は基本「聖人にして狂人」。それを二つながら描く。
そして、仏教が仏教である限りに持つ弱点と、僕が思うものがある。
それは
「仏教は、すばらしい教えかもだが、フツーの人はついてけないんとちゃう?」と。
思想史的には、空海も最澄もまさにこの問題と挌闘し、そして異なるアプローチをしていった。
ここには「弱い」帝王たる桓武天皇も絡むかもしれない。
そのテーマに至る伏線らしきものも感じている。
■藤田和日郎「ゴーストアンドレディ」
【紹介】
http://morning.moae.jp/lineup/444
サンデー黄金期を作った「ナインティーズ・マフィア」の一人、ますます盛ん。
史実と絡めるようなワザもやるんですなあ。
王道少年?漫画と女性の自立とかって問題は、決して相反する物ではない。
あのひと「月光条例」でもこう描いてるもんな。
で、「自分で決めた山を登る」女性を今回描いたわけだ。
統計の母であり、果断な政治的闘将だったナイチンゲールのこういう顔を、初めて知った人も多いかも。そこに「幽霊」を絡めてアクションやロマンスを挿入したところはさすがの手際でした。
完結したのだが、この次の作品はどういうのを描くのかな。
■吉田覚「働かないふたり」
【紹介】
http://www.kurage-bunch.com/manga/hatarakanai_futari/
日本漫画史上、もっとも危険な思想を喧伝するプロパガンダ漫画だと思う。
漫画規制や表現規制も、これを踏まえねばいけないのでは。
つまり…「働かない生活って、やっぱりいいよな」と皆に思わせてしまう(笑)
ゲームをして、一本100円のレンタル映画を観れれば満足。
おかしでもそこにあればめっちゃ嬉しい。きょうだいでふざけあい、たまには友達も来る。
それが想像上のものであり、また「生活」「経済」を見ないからこそ成立することは承知のうえで、たしかにこれはユートピアだといわざるを得ない。
■たかぎ七彦「アンゴルモア」
【紹介】
http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_KS00000007010000_68/
たぶん今年の、オモテの漫画ランキングでも台風の目でしょうな。元寇だけに台風(うまい)
それはおいとけ。
「世界史」の扉を開けたモンゴル帝国の頂点に君臨する「大元ウルス」。
たしかに「恐怖の大王」と言える彼らの軍団は、ほんの前触れとして対馬を蹂躙しようとする。
しかし、その島には、マア凶暴性では似たり寄ったりの鎌倉武士というクリーチャーがいました…つうあらすじです(笑)
ところで
・圧倒的不利の島における、限定的攻防戦。
・そこで不利な状況から、実に冷徹に指揮し奇蹟をおこす、
・そして行動原理が”正義漢”とはまたちょっと違う「戦争屋」
といえば…
………
なーーーんか、キャラや置かれた状態だけじゃなくて、このふたり顔も似てね?
偶然なんかなー。(べつにパクリとか言ってる訳にあらず。)
あ「先祖だった」で解決するかも(笑)
それは置いといて、いい漫画です。最新研究も反映してるっぽい。※追記
「皇国の守護者」と「アンゴルモア」の対比、やっぱり過去にやってる人がいました。こちら。
http://blog.livedoor.jp/screenager/archives/23080787.html
■佐々大河「ふしぎの国のバード」
■佐々大河「ふしぎの国のバード」
ここから1話を少し、試し読みが可能
少し前、幕末明治の訪日外国人の研究がブームになり、多くの資料が一般向けに公開された。
イサベラ・バードはそのうちの有名どころ。
やや遅れて漫画でも
「外国人が日本の伝統や慣習を見る、そして(おおよそ)褒める」がブームに。となりの外国人ニッポンのリア先生銀のニーナ
[asin:B00D5OATMM:detail]
くーねるまるた
…やはり、これらのブームがあったからこそイザベラバードの日本紀行の漫画化なんて企画が実現したのだろう。
これはいわゆる「日本SUGEEE」とも関係してくるが、自分は「テルマエ」ブームの際も少々書いたけど、
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100423/p3
漫画のそれは多少は鼻白むものの、総じて罪がなくゆるやかなものと思っている。
最終的にバードの興味深い紀行が絵になれば、万歳つうものだ。作中でもかかれているが、江戸の伝統はこの時点でも「消え往く」ものとして認識されていた。異文化の目からそれを描くのは、実は我々の、当時の日本を見る目も「異文化探訪」だからだろう。日本語が、基本的にバードの主観から見て「分からない言葉」として描写されることもあり、異星人とのコンタクトのようにも時には見える。
そんな滅びつつある(滅びた)文化や慣習、思考の価値と、逆に「不可解な」点を描いているのが興味深かった。
朝日新聞の書評があったっけ。(これでこの作品を知った)
◇秘境ニッポンの旅が始まる
日本人は「外国から見たニッポン」ネタが大好きだ。かつては「ここがヘンだよ日本人」なんて番組もあったが、今は「日本のここがすごい」と称賛する声を集めて喜ぶものが目立つ。
本作もまさに外国人の目で見た日本の姿を描いたもの。ただし時代は明治初期、主人公は実在の英国人女性冒ログイン前の続き険家イザベラ・バードとくれば、その目に映るニッポンは“秘境”である。
横浜に上陸した彼女は、褌(ふんどし)一丁で働く男たちを見て〈まるで他の惑星に来たかのよう〉との感想を抱く。汽車の中では母親が堂々と赤子に授乳し、人力車の車夫は全身に刺青、荒物屋の女将(おかみ)はお歯黒をしている。そうした異文化に戸惑いながらも目を輝かせるバードの好奇心と探求心あふれる表情がいい。
さらに注目すべきは…(後略)
南信長(マンガ解説者)
■曽根富美子「レジより愛をこめて」 〜レジノ星子〜
日本の漫画の強みは、層の厚さ、予備軍の多さだと思ってきた。ムエタイ最強は、なにより層の厚さゆえなのと同じだ(分からん比喩使うな)。
http://morning.moae.jp/lineup/413
そしておそるべきは、この予備軍が…あらゆる分野に社会人・学生として潜入し、バックステージを「エッセイ漫画」として発表してしまうことだ。シーボルトの日本研究は、医学を学ぶために入門してきた各地の弟子たちに、どんどんオランダ語で論文を書かせたことで圧倒的なものとなった。それとほんまにおんなじ。
そんな「予備軍」の一人が生活のためにスーパーでレジ打ちを始め…そして優れた画力と観察力でその裏側を語るとまあ面白い。いつも客として見ている「職場」なのに、知らないことばかりだ。皆が興味を持ち、皆が知らないというバランスがいい。
そして、やっぱりおばちゃんたち、働くわ!パートとは言い条、彼らのプロフェッショナリズムと技術や創意工夫、何より責任感はすさまじい。
日本SUGEEをやるつもりもないが、諸外国のレジでもこれぐらい皆一生懸命なのでしょうか…そもそも待遇を考えれば、これだけのレジ仕事をさせるのがどうよ、てな視点からの話も聞いたことがある。
それでも、やっぱり彼女らの奮闘ぶりと「名人芸」は、感動させられてしまう、というのが率直なところだ。
漫画家としての意識もある作者がそこにいたからこそ、観察できたという点では「いちえふ」にも負けぬ価値がある。
原発の現場にもレジの現場にもかくのごとき漫画家がいた、というすごさ。
……つづく。
■小坂俊史「まどいのよそじ」
http://big-3.jp/bigoriginal/tameshiyomi/saisin/20140320/madoi/index.html
(単行本はまだ)この人の名前は、4コマ雑誌を読まない当方でも、なぜか偶然知る機会があった「せんせいになれません」を読んでいた。その後
[asin:B00QQKCXYO:detail]
「中央モノローグ線」や
重野なおきとの共著「ふたりごと自由帳」など(続く)
ギャグではなくシリアスな物語をショートコミックの形式で描けることも知って、そりゃあ驚愕したもんでした。
だから一般漫画雑誌がオファーして、特に後者の系列を描くのは、まあある意味当然の展開だし、成功も約束されてるな、とは思った。
雑誌の色にもそまり「40代の悩み」を描くというのだから、共感もさまざまに呼ぶはずだ。
しかし、この形式を利用し
女装趣味
アイドルオタク
音楽で食べていく夢
リストラ寸前野球選手
…など、非常に幅が広いものをかいていてムムムッ、と思いましたよ。ジェンダー論などの議論にも活用できるし。
とくに、ある一編…アイドルオタクの学校教諭がこの趣味を隠すべきか、生徒に広くカミングアウトするかで悩む、という話は、ちょうど小池一夫氏が「大人の趣味を持て」的なツイートをして議論(ぎろン)を呼んだ時期と重なり興味深かった。これは後日、詳細に…。
■えびはら武司「藤子スタジオアシスタント日記〜まいっちんぐマンガ道〜」
えーと、これは後日、どおんと画像紹介、長文で紹介します。
だからパス、保留で…
■アサイ「木根さんの1人でキネマ」
http://www.younganimal-densi.com/ttop?id=41
(単行本は12月25日発売)これはリンク先で「全話読める」からなあ(笑)批評の要はあんまり無いかも。
公式サイト紹介文より
「30ン歳独身OL・木根さんの趣味は1人で映画…(略)映画愛がこもりすぎててこじらせちゃってる木根さんの生き様(笑)を…」
ただ「映画が好き」といっても、計7つの話の中でその「好き」の意味合いをうまく使い分けている、「七色の変化球(スープレックスでも可)」状態であることに注目されたい。
とくに「スターウォーズ新作のネタバレ」と「ジブリ映画のお勧め」話は、マニアと縁のない「一般人の生態」をこそ深く観察し、皮肉を込め、そして愛情も込めて描いていてあっぱれです。
ジブリ回は「2015年10傑」に選んだ決定打だった(笑)
作者はアカウント@asumithi もお持ちだが
そのジブリ紹介回ツイート↓遂に登場!日本人なら誰でも見た事があるあの映画達!そして明かされる衝撃の真実!深淵を覗き込んではいけない…「木根さんの1人でキネマ」7本目がヤングアニマルDensi(https://t.co/ub6jmguZtq)にて更新!! pic.twitter.com/Z9dYoAaeIy
— アサイ・1人でキネマよろしくね (@asumithi) 2015, 11月 5
■石塚真一「BLUE GIANT」
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=7352
ジャズ漫画。「今、大ブーム!」なジャンルを扱っているわけじゃないけど、それと出会い、必死で特訓し、才能を開花させ、高価な楽器のために苦労し、仲間と出会い…と、十二分な王道。
けっこう前からの連載だけど、今度とび抜けてきたなぁと感じるのは
主人公にくわえて、クールで計算高く偽悪的なピアノ、そしてぜんぜん技術が足りてないけど、やるたびにジャズの魅力に目覚め必死で食らい付いていくドラム、と3人の個性が見事に回転していってるところですね。特にピアノは一種の技術至上主義であり、成功を見据えるためには何でも戦略的に活用しようとする野心家。しかし、海千山千で奥深いジャズの業界人たちは、若い彼の見え透いた「戦略」はそこそこ奏功はするものの、ある程度の人物に会うとあっさり見抜かれる。
逆に、その時は主人公の愚直さが、意味を持つ…(続くそういう感じで、3人のそれぞれの強さがそのまま弱みになり、その時は、また別の個性がそれを補う、という連関が非常にうまくて、ほかのジャンルでも作劇の参考になるんじゃないかな。こういうのを「ブロマンス」とか「フレネミー」っていうのかな?
うまくいけば、ジャズ業界全体も巻き込むかも。
なに?十一ある??
メモを見落として、追加したんだよ!!よくあることだよ!!!四天王でも五人いたところとかあったろ!(クロ高)
これらも。(決して”次点”ではないが)
田亀源五郎「弟の夫」
http://www.futabasha.co.jp/tachiyomi/978-4-575-84625-6LR/index.html
川田「火ノ丸相撲」
http://www.shonenjump.com/j/sp_hinomaru/
速水螺旋人『ドクトルとドラゴン』
http://evening.moae.jp/news/2567
環縁『冬の海』
柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」
木村紺 「マイボーイ」
九井諒子「ダンジョン飯」
麻生周一『斉木楠雄のΨ難』
http://www.shonenjump.com/j/rensai/saiki.html
テリー山本「ナツカツ」
http://big-3.jp/bigoriginal/tameshiyomi/saisin/20151005/natsu/index.html
恒例だが、自分もどっかの選考委員になりてー。
こんなふうに、選んだりしてます。
どっかの、漫画ランキング的ななにかの選考にくわえさせてくださーい。
(どこに売り込めばいいか分からないのでここに書いてみた)
過去の賞。ここに選ばれた作品は、それを考慮してあまり選ばないようにしています。
うちの賞の基準として、一度選んだものは、ことし2015年、自分が実際に面白いな、すごいな、と思っても優先しないようにしています(多少の例外はある)。
「なんであれ入ってないの?」と思うものは、これが理由なことも多いと思います。
■「見えない道場本舗」選定・2013年度漫画10傑 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140702/p2
■「見えない道場本舗」選定・2012年度漫画10傑 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130331/p2
■「見えない道場本舗・2011年度漫画10傑」(※ここから順位なしの10選に) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120402/p1
■2010年度漫画ベスト http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110327/p1
■2009年漫画ベスト http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20091210/p2
■2008年漫画ベスト http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081231#p4
(2007年は「06年とほぼ同じなので休み」となっていた)
■2006年漫画ベスト http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20061230#p2
しかし、時代は動いているなあ…ことし挙げた10傑のうち、9本がネット上に「1話ためしよみ」があったり、そもそもネット連載だったりしてるよ!! まずは読んで御覧なさい
まず、名前を挙げて、ここから少しずつ紹介文を追加するね。
20日午後2時現在、半分まで紹介。
21日朝8時現在、2本を追加。