INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

テルマエ・ロマエが2冠達成。&あらためて「賞」を考える

【「賞」を考えるシリーズ】
手塚治虫文化賞
http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/
マンガ大賞2010」
http://www.mangataisho.com/

受賞した「テルマエ・ロマエ」はおめでとうございます。

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

内容説明
マンガ大賞2010 大賞受賞!
世界で最も風呂を愛しているのは、日本人とローマ人だ!!風呂を媒介にして日本と古代ローマを行き来する男・ルシウス!!彼の活躍が熱い!!……風呂だけに。

なんだこのアマゾンの作品紹介(笑)
この作品論をぶとうと思ったのだが、下の「賞を考える」を優先するので一言だけ(※と思ったら全部書いちゃった)。
おもしろくって
ためになる(新知識を得る)。


それは間違いないんだが、いや基本的に「それだけ」に限定したマンガですよ。僕はこういうパターンはすごく好きだが、大賞とかベストワンにこれが入るのは正直違和感がないでもない。6番打者、いい脇役として存在するべき作品じゃないか、と思うのだが・・・、

ただ、それもカテエ発想かな。「ユーモアと雑学。このシンプルさで勝負!!」というマンガだって確かにあっていいのですよね。それがナンバーワンになったって、それはそれで別にいい。
あと、こういうタイムスリップものを含め、SFは確かにこんな感じの「現代から見ると当たり前なものを、知らない(過去の人・未来の人・宇宙人・ロボット)がイチから見たという設定で、『ふーん、これはこういうものなのか』と分析。それを読者が『なるほど、そういえばそういう意味を持つんだよな、これって』と再認識する」・・・というのもひとつのパターンとして存在する。
そういう点では本当に、うまくできているし楽しめる作品だ。


<メモ>・・・そういうパターンの類似作品
類似作品「明日泥棒」「ゴエモンのニッポン日記」(以上小松左京)「もたらされた文明」(星新一の短編)「征地球論」(藤子・F・不二雄の作品)

そのパターンを踏まえて読んでいくと「ニッポンの風呂文化と、古代ローマの風呂文化の比較」をタイムスリップという設定を利用してやっていくという、ホントにワンアイデアストーリーっちゃそう言えるかもしれない。
コミックスにはさまれたエッセイによると、現在作者が住んでいるポルトガルには湯船にゆったりつかる入浴文化がなく、作者は自宅に浴槽をつけようとしたところ「床が抜ける、やめとけ」といわれ、仕方なくプラスチックの幼児用浴槽に無理やり入っているとか。

私は海外の長期滞在体験もなく、またさすがに風呂無しの住居には住んだことがないので「風呂があってありがたいなあ」的な感覚はないし、自分から温泉目当てに旅行しようとも思わない。
でも、作者のような環境におかれたらやっぱり「風呂はありがたいなあ」と思うんだろうな。



実はこの作品が人気を呼んだのには、ゆるやかで罪のないナショナリズムも関係していると思う。
ローマの浴場技師である主人公は、お湯に浸かるとランダムに現代日本のさまざまな浴場に移動するという特殊能力?があるのだが、そのたびに「平たい顔族」(日本人)の風呂文化を見て「画期的だ!」「何たる工夫だ!」「知恵が凝らされている!」「うまいっ!」と驚愕し、「ローマ人のプライドがゆらぐ・・・」としょんぼりし、帰ってはローマにその工夫を持ち帰り大人気となるのだ。


前述のように風呂にそんなに興味がないし、温泉玉子とかもあんまり好きじゃない自分でも、日本の(ってシャワーとか、そういう海外のものもあるが)文物を異文明の人が絶賛、それを学びました・・・というストーリーは、物語そのもの以外に、確かに緩やかなナショナリズムを鼓舞されてここちよい、という部分はある、と思う。褒めているのがすでに滅んだローマだから、文句も出ないだろうしさ(笑)。
<似たテイストの作品>
■外国人が「日本の文化と伝統はすばらしい!」と、その価値をしらない日本人に説くという先行作品があります。これは、作品本体としても素晴らしい出来ですよ。全5巻で読むにも手ごろ。


ただ、これは金脈!だと思う。このパターンをあちこちに持ち込んで「韓国にタイムスリップしたバビロニア人が、キムチやチジミのうまさに驚愕!!!」とかいうマンガを作ったら、韓国の人いい気持ちになってそのマンガ売れると思うよマジで。「中国にタイムスリップしたルネサンス人が、麻雀という複雑微妙なゲームを絶賛!!」とかもしかり。
うーむメモメモ。



同時に、日本とかの枠を超えて「近代文明ってありがたいなあ」と個人的には思った。湯上りのフルーツ牛乳という日本文化(なのか?)を主人公はローマに持ち帰り大評判を取るが、「あのときのように冷やすことができない…。ビンも歪んでいるし」と悩む。
夏に涼しく、冬暖かく。蛇口をひねればお湯が出る。
こんなささやかな文明も、古代ローマからみれば王侯貴族、皇帝陛下も味わえない贅沢、享楽なんだよね。
「昔の人の苦労に比べれば云々」というのはカテエ親父の使い古された説教で不毛なことが多いけど、こういう形で提示されるとちょっと、今の生活の「贅沢さ」にも思いがいたる。

この本が大評判を取るなら、これにももう一度光が当たっていい。「まんがはじめて物語

CSを持つ人は、今でも見られるんですよ。TBSチャンネル
http://www.tbs.co.jp/tbs-ch/lineup/a0023.html

好奇心旺盛な子供たちに、モノの「はじめ」についてや歴史を楽しいアニメと貴重な実写フイルムで分かりやすく紹介していく子供向け教育番組。毎回登場するお姉さんとピンク色のモグラ系?生物“モグタン”の他愛もない会話から、素朴な疑問が湧き上がり過去の世界へ「はじめて物語」を体験するためにタイムスリップ。

「タイムスリップ」の設定を利用し、歴史上の「面白くてためになる知識」を得る。
テルマエ・ロマエ」を読んで、ああ面白かった!と大満足の人なら、この番組を楽しめない理由は絶対ないと思う。
いや、ほんとに馬鹿にしたもんじゃないっすよ。自分もこのCSを見ているわけじゃないけど、子供のころのリアルタイム放送を、かなり覚えている。基礎をこれで学んだ知識ってたくさんあるし。
最後のほうはネタ不足で「法律のはじめて」「鬼のはじめて」とか、法哲学民俗学にまで踏み込んでいた(笑)。
まさに明日放送する。
50万人のテルマエ・ロマエ読者はお試しで見てみては。

4/24(土) 午前8:30〜午前9:00
#24 「飛べ!音よりも速く」「ピッカリ目玉の用心棒」

えーい、じゃあさらにその前に、お試ししてもらおうじゃないか。
「これは、サンドイッチのはじめてのおはなしだよ。」
D
いま、ついつい見ちゃったけど、「ヘタリア」を先取りした国家・民族デフォルメ、ホットドッグの名称の真実などが面白い。
ついでにサンドイッチの開発者に対し「お前ダメ人間だな」という突っ込み字幕が入りまくりなのが爆笑(なぜダメ人間なのかは見ての通りだ)。

第二部・この機会に「賞」について再び論ず

さて。これは私自身の個人的評価であり、別に根拠はどうだ、という類のものではないが・・・「手塚治虫文化賞は、既に漫画界を動かすパワーを消失した。覇権は『マンガ大賞』と、年末の『このマンガがすごい!』(その他類似シリーズ)に移った」と思う。


運営にかかる費用ってどう考えても手塚文化賞のほうだと思うが、なんかね、どうもね。「このマンガがすごい!」に至っては費用どころかそのブックレット売って儲けているわけだし(笑)
自分は「「賞」を考える」というエントリーを何度もここで書いていて、そのたびに結論は同じなんだが

・「賞」の権威というものは、けっこう不確定で根拠のないもので、野心があれば新興勢力が旧勢力に取って代わることができるものである。
・うまくやれば、おいしいビジネスにつなげることができる
・新しい「賞」が何か出来ないか、発想をみんなで考えよう!!

というものです。


【自分が考えた新しい賞】
■インターネット放送大賞
最近、ストライクフォースの放送とか公武堂TVとかで自分が興味を持ち出したから、それだけ。
いまスティカッム、ニコニコ生放送、Ustなどいろいろあり、オリジナルの「番組」もたくさんあるんでしょ?内容を審査し、いいものを検証すればいい。
いや、内容だけでなく世間へのインパクトや技術、視聴者数のブレイクスルーなどを評してもいい。
今年だったらやはり手前味噌だが「4.17ストライクフォース生中継」とか。
ダダ漏れ放送」も候補かな。

■というか「インターネット文化大賞」の一部門にすべきか?
これだとほかにどんな部門を作るかね。例えばラジオ番組のネット放送開始なんていうのも、それ自体を受賞にさせてもいいだろうし・・・ま、企画だけ放り出すのでみんなで考えてください。
ついでにバーチャルでいから2009だか2010の受賞者も。


■「最悪XX賞」
実はどんな賞でも、ひっくり返して攻撃・揶揄のために「最悪賞」を設けるというテがある。一番成功したのはご存知、映画の「ラズベリー賞」で、翻案した日本の「文春きいちご賞」も続いている。
ただ、日本で一番この種のもので成功したのは、実は「抱かれたくない男」だよね。あれ、どこで主催してるんだっけ?

そういえば数日前「理想の上司はイチロー」とかいうのがニュースになったでしょ。
よく考えればしょーもない調査だよ(笑)。だが、あんなもんが毎年恒例のニュースになっている。それが「賞」ビジネスのフシギなところなのだ!!

実は医学ブログ、医者ブログってあるじゃない。
あれはよく、新聞やテレビの医療問題報道を批判するエントリが載っている。
一度、そのコメント欄に「そんなに問題記事が多いなら、医療問題を扱う有名なブロガーが年末や年度末に集まるなりメールをやり取りして『最悪医療報道賞』を選定してみてはいかがですか」と書いたことがある(どこだっけかな…?)。たしか「それも悪くないですね」と大人のコメントを頂き、そのまんまスルーとなった(笑)
ま、実際にやるとなると手間隙もかかるし、選ばれた側からの反論だってある。

イデオロギーがらみで「2010年最悪ブサヨク賞」とか「2010年最低クソウヨ賞」とか連発しあうかもしれないし(笑)。ただ、「賞」というのは乱立してもしょうがなく、ある程度集中・結集してこそ意味があるということもある。

今後も賞ビジネスについては注目していきたい。
とりあえず、個人的なお勧めは
・インターネットがらみの事象に関して勝手に「賞」をつくる
・攻撃、批判の材料としての「最悪XX賞」。

どうぞアイデア活用自由。
あ、こういうときには「既にあります」というパターンもあるので、そういうのがあったら教えてください。
それなりに権威の出てきた?「アルファブロガーアワード」の昨年はこういう結果だった。
http://alphabloggers.com/2009/

【補遺】コメント欄から

id:exhalatio

はじめまして、いつも楽しくブログを拝読させていただいています
>あ、こういうときには「既にあります」というパターンもあるので、そういうのがあったら教えてください。
とのことですが、自分が知っている範囲で言えば有志がノリで運営している「クソゲーオブザイヤー」は結構盛り上がっていると言えるのではないかな、と思いますが、いかがでしょうか。
http://koty.sakura.ne.jp/
あとは「アニメ最萌トーナメント」というのも。
どちらも盛り上がっている割には、「権威」には程遠そうな状況ですが……^^;