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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

トランプは軍事行動に極めて消極的。日本の対北朝鮮外交はそれを隠し「いざとなったら彼はやる」と思わせるのに苦労した(安倍晋三回顧録)

復活のトランプ。蛇王ザッハークじゃあるまいし、「やったか?」と思ったら再び登場した、というのが映画以外でマジにあるとは(…ネタニヤフも結構驚きの復活をしてるけど)

ことし11月のアメリカ大統領選挙に向けた候補者選びの幕開けとなる、野党・共和党アイオワ州の党員集会は、記録的な寒波による厳しい寒さの中、現地時間の15日夜、行われました。


集計率99%の時点で、
▼トランプ前大統領が51.0%、
▼デサンティス・フロリダ州知事が21.2%、
▼ヘイリー元国連大使が19.1%となっていて
トランプ氏がほかの候補者に大差をつけて勝利しました。

トランプ氏は支持者らを前に演説し「今夜は最初の特別な夜だ。本当の特別な夜は11月、この国を取り戻し、この国を再び偉大な国にするときだ」と述べ、共和党の候補者指名を獲得して、11月の大統領選挙で勝利することに強い意欲を示しました。
www3.nhk.or.jp

魔王トランプの復活?

https://twitter.com/kisei64/status/1747104189225009346


いや自分もさぁ、起訴された時、それからなんか古ーい法典を引っ張り出して「内乱に加わったものは大統領選立候補資格がない」としてどこかの州で立候補不可能になった…とかの話を聞いて、「ああ、世界の『トランプ問題』は基本これで終了だな」と、意識の『ゴミ箱ファイル』には入れていたのだから迂闊だった。さすがに「ファイルを完全に削除」はしてなかったけど。



しかし、万が一復活した場合の「トランプのリスク」は100も200も並べられる…。特にウクライナ&ロシア、そしてイスラエルと、トランプとの因縁が深いところが既に”劫火絢爛”なのだけど、
それ以上に日本にとっては大きな問題があり…その話が、先ほど出版された「安倍晋三回顧録」に記述されている。執筆者(口述者)は本来出版のタイミングを保留していたが、突然の逝去で、このタイミングで情報が公開されることになった、という偶然もある。

2022年7月8日、選挙演説中に凶弾に撃たれ、非業の死を遂げた安倍晋三元首相の肉声。なぜ、憲政史上最長の政権は実現したのか。一次政権のあっけない崩壊の後に確信したこと、米中露との駆け引き、政権を倒しに来る霞が関、党内外の反対勢力との暗闘……。乱高下する支持率と対峙し、孤独な戦いの中で、逆風を恐れず、解散して勝負に出る。この繰り返しで形勢を逆転し、回し続けた舞台裏のすべてを自ら総括した歴史的資料。
オバマ、トランプ、プーチン習近平メルケルら各国要人との秘話も載録。
あまりに機微に触れる――として一度は安倍元首相が刊行を見送った36時間にわたる未公開インタビューの全記録。

安倍晋三回顧録 トランプと北朝鮮

トランプは、国際社会で、いきなり軍事行使をするタイプだ、と警戒されていると思いますが、実は全く逆なんです。彼は、根がビジネスマンですから、お金がかかることには慎重でした。お金の勘定で外交・安全保障を考えるわけです。例えば、「米韓合同軍事演習には莫大なお金がかかっている。もったいない。やめてしまえ」と言うわけです。
米軍が2017年、日本海周辺に空母打撃群を派遣した時も、トランプは当初、私に「空母1隻を移動させるのに、いくらかかっているか知っているか?私は気にくわない。空母は軍港にとどめておいた方がいい」と言っていたのです。確かに、空母打撃群は、空母1隻に加えて、イージス艦や補給艦など数隻の艦艇と、潜水艦や約70機の航空団などで編成されているので、それらの移動には相当の経費がかかるでしょう。でも、私は「いや、空母をパールハーバーやサンディエゴ、横須賀の港に置いておくだけでは、空母の意味がないでしょう。空母打撃群は、海洋で活動するためにあるのです。大西洋、太平洋、インド洋、アラビア海アメリカの戦略的な利益に合致する場所にいるべきです。たまたま今はその場所が、日本海だということです」と反論したのです。そうしたら、トランプは、国家安全保障担当大統領補佐官のハーバート・マクマスターに向かって、「マクマスター、どうなんだよ」と。マクマスターは「安倍さんの言う通りです」と答えていました。それでもトランプは「俺は納得がいかない」とぶつぶつ言っていました。何とかその場は収めてもらいましたが、苦労しました。
しかしもし、「トランプが実は軍事行動に消極的な人物だ」と金正恩が知ってしまったら、圧力が利かなくなってしまいます。だから、絶対に外部には気づかせないようにしなければならなかったのです。「トランプはいざとなったらやるぞ」と北朝鮮に思わせておく必要がありました。私だけでなく、米国の安全保障チームも、トランプの本性を隠しておこうと必死でした。

米朝首脳会談前に繰り返し対話したのは、CVIDを堅持しようとしたためです。でもなかなかうまくいかない。4月27日に南北首脳会談があり、金正恩は初めて板門店軍事境界線を越えて韓国に入りました。文在寅韓国大統領は「もう戦争は起きない。朝鮮戦争終戦を目指す」と言い、米朝首脳会談に向けた環境を整えようとしたわけです。私はトランプに「文在寅は楽観的過ぎる」と言ったのですが、分かってもらえなかった。
そこで私は、米朝会談の直前、論点を絞ったのです…(略)「拉致問題を解決できなければ、北朝鮮支援の金を出せといわれても、日本は出せない。日朝国交正常化は、普通の国同士の正常化とは事情が全く違う。日本は税金を使って、過去の清算をしなければならない。国民の納得感が得られなければ、支援は無理だ」と(略)……トランプは、日本が北朝鮮を支援するという話に興味を示したんです。


トランプが一面では、一種の「平和主義者」…そう呼称するのはなかなか業腹だが、あの過剰なる「ディール」への傲慢な自信と楽観主義、そしてカネ勘定ファースト路線がくねくねと迂回していきつくと、まあその敷地内に入ってる、と言える場面は確かにあるっちゃある。

後から答え合わせをすれば、あの半島の独裁者三代目、があそこで本気の核兵器放棄や緊張緩和に踏み切った可能性もあったか、とのIFには苦笑するしかない状況だ。引用文中にあるように文在寅大統領は「もう戦争は起きない」、引用外のところでは徐薫国家情報院長が「北朝鮮は、核やミサイルを放棄します」と断言してた、ということであったよ。


そこで、仮に北朝鮮アメリカをはじめとする西側が交渉するにしても、素人のトランプが初手から「私は軍事行動に消極的」とバレてしまうと上手く行かない、「彼ならいざという時はやりかねない」と思わせると話は進む…(いわゆる”狂人戦略”)に誘導した、というのは結果的に良かった、ホームランだった。安倍だけだと「タカ派の安倍が緊張緩和の機会を失わせた!、そのままやっていればよかったし、朝鮮半島に平和が来たのに」という向きもあったかもしれんが、米国の行政現場の側と一致してこういう歩調を取っていたのだからな。



だいたい、当時は日本のワイドショーレベルでもアメリカと北朝鮮、韓国と北朝鮮の間に平和とビジネスチャンスがやってくる!タカ派のアベがいる日本は、そのバスに、乗り遅れる!」という話をふつーにやってたからな。ワイドショーっていうか玉川徹氏とその周辺だ、というとややスケールダウンか(笑)

「日本だけが北朝鮮との友好のバスに乗り遅れる!」という、当時の風刺画。現実には…

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この本は、森友学園桜を見る会、検事定年延長の関連など、いろいろ呆れるような弁明も多々あって面白いのだが、まぁこの場所は普通に高い合格点をつけられる場所であり、同時に「復活するかもしれない蛇王トランプ」の「特にアジア、日本におけるリスク」を示した重要な警告になっているのでまず最初に紹介した(ほかにもネタになるような話が多い)