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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

米国のシリア・アサド政権攻撃

例によってtogetterまとめつくった


「米国、シリアのアサド政権をミサイル攻撃」に関する、専門家らの分析・感想 - Togetterまとめ https://togetter.com/li/1098591

各紙の社説抜粋集。タイトルの比較だけでも興味深い

2017年4月8日の各氏社説見出し
http://www.geocities.jp/ktaro38/

朝日新聞
米シリア攻撃 無責任な単独行動だ (2017年04月08日)
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#20170408
 あまりに乱暴で無責任な武力の行使である。シリア問題の解決ではなく、事態のいっそうの悪化を招きかねない。
 米国がシリアのアサド政権軍の基地をミサイルで攻撃した。内戦開始以来、米軍が政権を直接攻撃したのは初めてだ。
 トランプ米大統領は、アサド政権軍が化学兵器を使ったと断定し、シリアの虐殺を止めるための措置だとした。
 しかし、化学兵器をめぐる事実関係ははっきりしていない。国際的な調査を尽くさず、証拠も示さないまま軍事行動に走るのは危険な独断行為だ。
(略)
 安倍首相は、東アジアでも大量破壊兵器の脅威が増していることを指摘し、秩序の維持と同盟国や世界の安全に対する「大統領の強いコミットメントを高く評価する」と述べた。
 だが、トランプ氏と緊密な関係にあると自負する首相がすべきは、平板な支持表明ではあるまい。米国が国際社会と協調して問題解決にあたる大切さを、新大統領に説くことである。

 

読売新聞
米のシリア攻撃 介入の決意示したトランプ氏 (2017年04月08日)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170407-OYT1T50156.html
 国際規範に背き、多くの市民を殺傷する非人道的行為は容認できない。再発阻止に向けたトランプ米政権の決意の表れと言えよう。
 米軍がシリアの空軍基地を攻撃した。化学兵器を使用したとみられるアサド政権への対抗措置としている。地中海の艦艇2隻から、巡航ミサイル59発が発射された。米国のシリア政権軍に対する軍事行動は初めてである。
(略)
 トランプ氏には、「弱腰」と非難してきたオバマ前政権からの転換を鮮明にし、米国の威信回復を図る思惑もあったに違いない。
 シリアは、化学兵器禁止条約の加盟国である。国連安全保障理事会の決議でも、化学兵器の廃棄が規定されている。
 米国の攻撃は、安保理決議に違反し、大量破壊兵器の開発を続ける北朝鮮への警告にもなろう。
 安倍首相が「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米政府の決意を日本政府は支持する」と述べたのは、理解できる。

 

毎日新聞
米国のシリア政権軍攻撃 政治解決へ本腰入れよ (2017年04月08日)
http://mainichi.jp/articles/20170408/ddm/005/070/039000c
米国が一過性の攻撃で矛を収めるのか、それともアサド政権を崩壊に追い込むまで続けるのか、現段階では見通せない。だが、米国が本気で対処しなければシリアの混乱収拾は期待できず、しかも軍事行動だけで解決できないことは明らかだ。
 米国が今回の攻撃に満足して関与を怠れば、アサド政権に足元を見られて情勢は悪化しかねない。
 望ましいのは内戦収拾に向けて米露が緊密に協力し、政治解決への道筋をつけることだ。
(略)
 安倍晋三首相は、化学兵器の拡散と使用は許さないという「米政府の決意を支持する」と述べ、中国外務省は「情勢悪化を防ぎ、政治的解決のプロセスを維持すること」に力点を置いた。ともに北朝鮮問題を念頭に置いたコメントだろう。

 

日本経済新聞
シリア攻撃が示す米政権の方向転換 (2017年04月08日)
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO15073890Y7A400C1EA1000/

世界をどういう方向に導こうとしているのか。米トランプ政権のシリア攻撃からは包括的な戦略が見えてこない。ロシアと連携して中東を安定させる、という従来の方針とは正反対の動きである。超大国の急旋回は世界の混乱に拍車をかけかねない。
 シリアのアサド政権が罪もない市民を化学兵器で殺りくしたのをみて、方針を変えた。トランプ大統領はそう強調した。シリアは化学兵器禁止条約の加盟国であり、本当に使用したのならば非難されてしかるべきだ。
 とはいえ、国連安全保障理事会などに明確な証拠を提示することもなしに武力行使をしたのは、はやり過ぎである。

 

産経新聞
【主張】米国のシリア攻撃 蛮行許さぬ妥当な措置だ (2017年04月08日)
http://www.sankei.com/column/news/170408/clm1704080001-n1.html
 非人道的な化学兵器の使用は、明確な戦争犯罪であり、許されない。国際社会から強い批判の声が上がった。だが、国連安全保障理事会はロシアの抵抗で、非難決議さえ採択できない状況だ。
 蛮行を止めるため、米国は限定的な武力行使に踏み切った。そのことによって、化学兵器は使わせないとの意思を明確にしたトランプ大統領の判断を支持する。
 安倍晋三首相は、国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合を経て、米国の攻撃について「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意」と位置付け、支持を表明した。当然の判断である。
(略)
 同時に考えておくべきは、シリア攻撃が核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応にも、影響を与えるということである。
 「シリアだけの問題ではない。同様の問題は北朝鮮など東アジアでも起こり得る」との菅義偉官房長官の認識は極めて正しい。

 

東京新聞
米のシリア攻撃 武力に頼りすぎるな (2017年04月08日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017040802000170.html
この性急ぶりには危うさを覚える。化学兵器を使用したとみられるシリアのアサド政権へ米国がミサイル攻撃に踏み切った。力に頼りすぎぬよう、トランプ大統領には自制と協議を求めたい。
 化学兵器使用を知ったトランプ氏が「一線を越えた」とシリアを非難していただけに、武力行使は想定内ではあった。
 (略)
 トランプ氏はミサイル攻撃に関する声明で「化学兵器の拡散と使用を阻止することは、米国の安全保障上の死活的利益だ」と強調した。米国の安全を脅かす者には容赦しない、という北朝鮮にも向けたメッセージでもあろう。
 だが、武力行使は平和的努力を尽くした末の最後の手段であるべきだ。トランプ氏は強圧的な姿勢が目立つ。国際問題への対処では安易に武力に走らないようくぎを刺しておきたい。(略)
 内戦終息の道筋をつけるには、アサド政権の後ろ盾のロシアの協力が欠かせない。米ロは建設的な話し合いを進めてほしい。

冨永格氏(元「天声人語」筆者)と話した。

計4つのツイートのリレーで、ひとつ前のも反映されるから2つ埋め込むとすっきりするか。


( https://twitter.com/tanutinn/status/850248023451906048 のツリー)
冨永氏は一貫してトランプや安倍政権に批判的なツイート者であった。だが、その氏であっても「無条件支持も絶対反対もない」というのが今回の問題だった。


繰り返すがシリア問題では2013年「ハト派安倍晋三首相が、オバマ大統領のタカ派政策にブレーキをかけた」→その結果、空爆はなくなった。→で、アサドが勝った…

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160329/p1
の文章を再掲載。

そして、ごく最近の例でいえば、「ハト派」(?)安倍晋三首相が、「タカ派の戦争狂」(?)オバマ大統領のシリア(政府軍)空爆にブレーキをかけた2013年は、安倍政府か、日本政府か、あるいは選挙を通じてそれを選んだ日本人が………「不作為の死者を出した」一例であったろう。

日米関係を大きく狂わせた「シリア空爆」問題。あの時安倍が「空爆支持」だったら? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140226/p2

あの時、何度もいうけど「暴支膺懲」ならぬ「暴シ膺懲」、「アサド政府を相手にせず」、ダマスカスに爆弾の雨を降らせて石器時代に戻せ…とは言ってないか。

ただシリア(アサド政府)への武力行使大賛成!な人たちが日本にも、内藤正典氏をはじめとしてこんなにいた。

■「シリア討つべし!」論に立つ日本知識人続々。?

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130920/p2

そこからのリンク。

同志社大大学院・内藤正典教授が語るシリア情勢〜氏が武力行使を支持する理由

http://togetter.com/li/556645

■「シリア撃つべし!」主要な内戦介入賛成論のまとめ

http://togetter.com/li/561760

もちろん、あそこでシリアでアサド政権軍を、米軍中心の空爆隊が破壊していたら、その後の犠牲が今より少なかったか、多かったか…は当然わからない。

要は「トロッコ問題」が倫理学のお遊びの議論でなく、そのままあるようなもの。

wikipedia:トロッコ問題

(a) 線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。このままでは前方で作業中だった5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。
そしてA氏が以下の状況に置かれているものとする。
(1) この時たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。しかしその別路線でもB氏が1人で作業しており、5人の代わりにB氏がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?
なお、A氏は上述の手段以外では助けることができないものとする。また法的な責任は問われず、道徳的な見解だけが問題にされている。あなたは道徳的に見て「許される」か、「許されない」かで答えるものとする。
つまり単純に「5人を助ける為に他の1人を殺してもよいか」という問題である。功利主義に基づくなら一人を犠牲にして五人を助けるべきである。しかし義務論に従えば、誰かを他の目的のために利用すべきではなく、何もするべきではない。

応用すると

(a) 内乱状態になっていたシリアの制御が不能になった。このままではアサド政権に敵対的な地域が政権軍の化学兵器に避ける間もなく殺されてしまう。
そしてアメリカと西側諸国が以下の状況に置かれているものとする。
(1) この時たまたまアメリカはトマホークを持っていた。アメリカがアサド政権軍の空軍基地をミサイル攻撃すれば被害は確実に減る。しかしそのミサイル攻撃の周辺にもシリア国民は軍民含め存在しており、反アサド陣営のの代わりに政権軍周辺の軍民がミサイル攻撃によって確実に死ぬ。また、アサド政権軍が弱体化すれば内戦自体は勢力バランスが少し均衡した結果激化するともみられる。アメリカはトマホークを発射すべきか?