きょうはちょっと書く時間ないので。社説は転載できるので、興味深いこれを残しておこう
シリアの問題は、テン年代の世界の中で一番「作為の悪、不作為の悪」が問われる問題だ。
(社説)シリア緊迫 武力では解決しない 2018年4月13日05時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S13448386.html内戦の続くシリアに必要なのは、流血を止め、和平を導く国際社会の真剣で息の長い関与である。短絡的な軍事力の行使に走ってはならない。
米トランプ政権が、シリアのアサド政権に対し武力攻撃する構えを見せている。化学兵器により多数の市民を殺した、というのが理由である。
非人道的な化学兵器は国際条約で禁じられている。もし使われたとすれば断じて容認できない。だが、事実関係ははっきりしない。アサド政権と後ろ盾のロシアは否定している。
米政府は英仏などと共に行動したい意向だが、まだ国際機関による調査と国連安保理の論議が尽くされたわけではない。
このまま攻撃に踏み切れば、国際法上の正当性が疑われるだけでなく、事態をいっそう混迷させるおそれが強い。米ロ両国の対立激化は、シリア問題の解決を遠のかせるだけだ。
この問題を話しあった安保理で米政府は「正義を求める」と強調した。ならば、国連事務総長が「この世の地獄」と訴えてきたシリアの惨状を直視し、内戦の終結をめざすための一貫性ある方針を示すべきである。
化学兵器疑惑が浮上する前の先月、トランプ大統領はシリアからの米軍撤退を突然表明し、世界を驚かせた。米国の利益に直結しない問題からは手を引く構えを鮮明にさせたのだ。
それから時を置かず、また唐突に急転回する不安定な姿勢からは、米国内向けに力の誇示を狙う思惑が透けて見える。中東の和平と秩序に無頓着なご都合主義は、米国の威信をますます低下させるだろう。
一方、ロシアには化学兵器の疑惑について説明責任がある。
2013年にアサド政権に化学兵器の放棄を約束させたのはロシアだ。しかし、その後も政権軍が化学兵器を使ったことを国連チームが確認した。国際社会の不信は当然である。
今回の新たな疑惑をめぐり、ロシアは安保理で拒否権を使い、真相解明と責任追及に取り組む調査団をつくる決議案を葬った。潔白であるならば、なぜ国連の調査を拒むのか。
米ロの非難合戦による安保理の停滞は、7年に及ぶ戦闘で30万を超すシリアの人命が奪われても、なお有効な手立てを打てない国際社会を象徴する光景でもある。
いま求められるのは、挑発のエスカレートではない。米ロが率先する包括的な外交努力こそ肝要である。欧州や中東各国と共に、シリアの各勢力に和平を説かねばならない。