俺の考えでは、大人には子どもを性的対象と見ない、仮に見てしまうことがあるとしてもそれを表に出さない道徳的義務があるので、高校生を大人にとっての性的対象として描く作品は道徳的に問題がある。そして道徳的に挑戦的な作品も出版はされてよいけど、大新聞に全面広告が載ることは望ましくはない。
— ystk (@lawkus) April 6, 2022
同感です。 https://t.co/jfELO6M0rw
— 治部れんげ/ Renge Jibu (@rengejibu) April 6, 2022
togetter.com
てな話だが…いくつか、「若干の問題」を挙げる
■この基準だと、ほんの数年遡るだけで、やたらと各種作品が問題化する、という点。
…「新しい厳格な基準」には、未成年の性について描いた多くの作品が該当してしまうかもしれません。
フィクション作品の広告に対して、作品の内容にまで踏み込んだ厳しい基準を適用した場合には、例えば『新世紀エヴァンゲリオン』の旧劇場版のいくつかのシーンや、高校生と教師の恋愛をテーマにした過去の無数の作品が該当してしまい、新聞広告が打てないということが起きかねません。
あるいは、法律的には完全に逸脱した不良少年たちをヒロイックに描いた古今東西の作品たちの広告が掲載不可になるかもしれません。
昔からフィクションにしばしば登場する日本人好みの「優しく人情があり、頼りになるヤクザ」もまた、「暴力団への厳しい対応が必要だ」という理由で『アップデートされた、新しく厳しい基準』に該当するかもしれません。
www.jprime.jp
というか2年前に作ったこの一覧って、この種の問題化を予想して作った面もありませり(ドヤッ)
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その時に、こういうふうに問題を整理した。このあとのために、該当文章を引用し、番号を振っておこう。
しかし、法哲学的な部分で議論するなら、かなり平々凡々な結論になってしまうからなぁ。
(1)「その被保護者的な人物が、自由意志を尊重できる年齢―――18歳だか20歳になったら、性的な関係を含めた恋愛・婚姻関係になったっていい。そりゃ自由である」
(2)「むしろそれでも反対嫌悪するならエイジズムという差別偏見である」
(3)「そのいい・悪いを区分するのは、単純かつ唯一の基準がカレンダー、生物学的年齢である。上のような区分の年齢に一日でも足りなければ不可、一日でも超えれば可」
(4)「性的な関係抜きの、精神的な恋愛ならどうか? まあそりゃ、それを妨げるべきものはあるまい」
みたいな感じであろう。
ところが、今回(4)もヨクナイ、という話になってきたみたいだ。
それでいいのかいな?
「大人には子どもを性的対象と見ない、仮に見てしまうことがあるとしてもそれを表に出さない道徳的義務がある」
「表に出さない」というのも、漫画には内面を吹き出しで表示するとか、ドラマでは誰もいない所での独白を映像として流せる、という物語上の特性もあるので、たとえば「物語中の成人登場人物が内心の中で、未成年高校生の相手を性的に見ている!/だけど劇中では、それを表には出してない」とかだと、どうなるんでしょうかね。
また「内心では相手への性的関心を強く持ってる!だけど必死に自制してる!あの子が成人になったらあらためて…」みたいなのをギャグにしてるパターンもある


これ、記事内では「この問題に対して一種模範的な態度(100点中150点)」と書いたけど、実は基準的には違うのん????
「純愛」の場合は「性的関心」は無い、と考えられるならアレだが、それも不自然で・・・・・・・
で、とにかく「高校生(未成年、18歳以下)と成人の恋愛(含む性的関心)を描く作品はアウト」とするなら、まずはそれでどんどんとさばいていきたい、過去作品を。一覧をコツコツ作ってみますよ(笑)
ちなみに
たとえばの話なんだけど、これは主役級じゃなくて脇のキャラクター同士の恋愛なんだけどね……

あれー??これ自分「恋愛関係だけど18歳まで性的関係を自制してたのでセーフ」な描写だとあやまって記憶してたが、さすがよしながふみ!!毒を、爆弾を仕込んでいた!! 性的な関係が始まったのは、相手が17歳の時・・・・・・・・・・。
しかし、この、未成年に性的・恋愛的関心を持ち(それは17歳よりさらにさかのぼることを示唆している)、まだ相手が未成年のうちに性的関係を持った、と認めたこの登場人物、この話でもほとんど「てへぺろ」ぐらいの軽ーい告白で本人も周囲も処理してて、その後もとても良識的で好ましい登場人物として位置付けられている。
さて、どうなんですかね、この描写!!???? そういえば同じ講談社だな版元!!!
ジャッジは読んだ皆さんに委ねよう!!犬笛は別に鳴ってませんヨ?
銃は私が構えよう照準も私が定めよう 弾丸も弾装に入れ遊底を引き安全装置も私が外そう だが
— ヘルシング名言bot (@HELLSING_bot) October 16, 2015
殺すのは お前の殺意だ -アーカード
そもそもよしなが氏は「高校生の飲酒」という問題場面に関しても「建前上はやっちゃいかんのだが、実質みんな悪びれずにやってる。まあそんなもんだよね」
という感じで、子供たちをただしいほうこうにみちびき、よきこころをはぐくむような道徳的な描写から大いに外れていた。いーのか。


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ときに、この関係で知った情報で一番笑ったのが、とある作品では
「好意を持った相手が、18歳以下だと解った!(最初は年齢詐称されてたようだ) このまま交際しては法律的・道徳的悪だ……どうしようか…いきなり結婚すればいいんだ!!」
で解決した、らしい(当時の民法上ね)
友達の姉が企画した合コンに人数合わせで駆り出され、年齢と身分を偽って参加した、高校1年生の歌子。そこで出会った功太といい雰囲気になるが、歌子が高校生だと分かると、途端に態度を急変させ去っていった。後日、歌子は警察官の制服姿の功太と再会するが、功太は歌子を冷たくあしらう。親友に傷心を慰めてもらい、帰りが遅くなった歌子は、変質者に襲われかけ、仕事中の功太に助けられる。完全に功太に恋に落ちてしまった歌子は、積極的にアタックし、やがてその思いが通じるが、仕事柄、未成年との交際に問題が生じるため、2人は結婚することになる。
PとJK - Wikipedia
第1話無料だった
comic-days.com
…あれ?
「同じ人物を、大人だと思ってた時は恋愛アプローチしたが、高校生と知ったので態度を変える」と、なんか非難されることも?

有料の第二話以降は読んでいないので、このへんの民法規定との兼ね合いとかをどう処理してるのかわからないけど(機会あれば詳しく見てみたい)、まあこの展開を聞いて「なるほど盲点だ…」と感心したのは事実であります。
あと、そうだ二次創作の分野ね。
少年マンガの二次創作はたくさんある。そして、原作に登場する人物同士の恋愛(性的な関係含む)もたくさんある…と側聞します。その中では、少年マンガの性質上、主人公サイドは少年=未成年に属するものが多い一方で、サブキャラには成人も多い。
そういう人物どうしが、上の基準のようなかたちでひっかかることはないのでしょうか。
第二の問題。これ、何度か書いているが…
■「大人には子どもを性的対象と見ない」義務、というが、「見る側が同年代の異性(または同性)ならば、その義務が解除されるってことでいいの?」という議論です。
「未成年の性の扱い方」で言えば、実は「未成年同士の、性的な面を含んだ恋愛」も『それなら問題ない』とする根拠が難しい(というか理屈としては『それも問題だ』となる方が自然)で、どうしたもんですかね
https://b.hatena.ne.jp/entry/4717908682529731042/comment/gryphon
過去記事から再引用しよう。
承前。未成年と成人の性的関係も問題だが、「未成年同士」も結局は問題となる(ならざるを得ない)
「いやいや同年代にもまともな子がいるでしょ、そういう子と付き合っては?」と思いますが
この「付き合う」が、性的な関係を含めてかどうかはわからないけど、含んだとしたら…アウト。
なんでだ、って? アタマが溶岩石のように固い、古い道学者的発想だって?
さにあらず。
なぜ、成年と未成年が性的な関係になるのは、法律で禁止されるか。それは、未成年(その年齢設定は諸国諸制度で違います)は、自由に選択してるように自分では思っていても、判断力も知識も不十分で、自分の性的な自己決定をするだけの能力や責任を供えていないからである。そしてその行為の結果として、性感染症や、望まぬ妊娠、中絶などのリスクが発生するからである。
では、未成年と未成年の性的な関係はどうか。
「双方ともに判断力も知識も欠けているなら、片方がそうであるのと同様かそれ以上に悪い」のではないでしょうか(爆笑)いや、「ロミオとジュリエット法」があるのは知ってるねんで。だけど、それはただの緊急避難、現実追認の便法としては認めるが、理屈の整合性はぜんぜん立ってない…と考えるのですが、いかがでしょうか。
m-dojo.hatenadiary.comこっちの理屈のほうがわかりやすい
いや同意年齢引き上げるなら(引き上げなくても、だけど)
— F.T.T.H(敬意・感謝・絆) (@FTTH) June 15, 2021
「同意年齢未満動詞」の性交は双方が双方に対する加害者である、という整理も普通にアリだしその方がシンプルでいいのでは、という気もするがそうなると…結果的にいにしえの道学者先生、キリスト教保守派(一部新興カルト)の大勝利である。ついでに壺買うと悪縁が断ち切れるっ。
こどもたちを「守るべき」という観点、それも「彼らは性的な自己決定権ができるほど判断力が成熟していない」「その結果、望まない妊娠など身体的な面も含め傷つくから」という観点で考えると、キリスト原理主義とか別の意味の「原理」とか(笑)、あるいはお堅い戦前道学者ふうでもいいけど「未成年同士が性的な関心を持ったり性的な接触を持つ」ことからも「守るべき」となる…んじゃないですかね?
同意年齢がいつに設定されるかによって範囲は高校生か中学生か、色々違ってくるけど、
>「同意年齢未満同士」の性交は双方が双方に対する加害者である
この整理、覚えておいて損はない。
いや、だが…逆に。「未成年同士なら、問題は無くなる。未成年が、未成年に性的関心を持つと公にする、未成年が未成年と性的な関係を結ぶ……これならいたってノーマルであり、問題ないのだ」と、いうふうになりますか?とすると、登場人物、恋愛や性的関係を持つ「相手」を、作品中で未成年に設定すれば、いーんですかね?…その場合「読者」が成年だと、これまたどうなるのでしょうか。
というか、そもそも問題になった作品……この「無料公開の一話を呼んだ限りでは」toomicsのウェブトゥーンなみに、あるいは上の「PとJK」並みに・・・・くだら…いやいやNot for Me なクオリティであると個人認定するが、
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※ウェブトゥーンの一部のひどさについてはこちら
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それでも上の話から考えれば二か所「おじさん」「おとな」という自認が出ているけど、この男性側の主人公は、実は中学から働いているちょっと大人びた勤労少年で、高校生のこの女性よりほんの少し年上なだけの18歳、まだ未成年でした!!(おじさんとかいう自称はただのオーバーな自虐)という裏設定にすれば、滑り込みセーフになるんじゃないでしょうか。なりませんか。
ま、そういうことで
「高校生を大人にとっての性的対象として描く」作品はアウトだとして、「高校生を同年代の異性・同性にとっての性的対象として描く」ならセーフかアウトか。その場合「読者」は高校生限定か、大人も可能か(あるいはその逆か)