【トンガ噴火お見舞】INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

立花隆氏逝去。有名な「反プロレス論」含め、功罪を振り返る。

立花隆氏が亡くなった。謹んでお悔やみ申し上げます。
そしてこれ音声入力してるんだけど、たちばなたかし と発音すると、なんとかから国民を守るなんとかの党首になっちゃうところが令和の悲しさである(笑)


立花隆さんの、どちらかといえば後年の仕事となる科学ノンフィクションというのは、なんとなく…いわゆる色気というのか雰囲気というか味というのか、そういうのが自分とやや合わず、読むけど毎回のように読み直すというものではないんだよね。それでも重要と言うか、特にそのステータスと相まって、この人が「脳」とか「サル学」とか「臨死」とか、そういうテーマを設定すると、メディアや文化界の知的状況が、その話題で持ちきりになるという「アジェンダ・セッティング」を起こす人物という、そういう重要性があったと感じています。


こういうところは訃報欄の正式なプロフィールには載らない部分だろうけどね。

そういうテーマ設定によって、本格的にメディアが興味を持ち始めた、話題を加速させたということでは、インターネット初期に、一般向けにとても素直な「インターネットはすごいぞ!」というガイドを書き、普及に一役買ったことも特筆されていい。そこで書かれた「すごいぞ」論は早くも歴史上の意味しか持たなくなったが、歴史上の意味しかないからこそ、なんとなく今再読したい欲望にかられている。



田中角栄の金脈追及は、自分がリアルタイムで認識しているわけではないけどロッキード裁判をめぐる法律的な論争などはその片鱗が多少記憶にある。
その後の判決とかでちょっと問題は積み残された部分もあると思うのだが、それ以上になぜか、田中角栄のイメージも含めて受け継いだ小沢一郎の政治的立ち位置の変遷、自民党の主流が清和会になり、田中の流れをくむ人間(の一部)が傍流的スタンスになったこともあって、結果「ロッキード田中角栄の失脚を狙ったアメリカの巨大な陰謀」みたいな話が、それこそ石原慎太郎も合流して語られるようになっているいま、あの仕事もこれから重要になるかもしれない。

ちなみに、ロッキードではなく金脈を研究し直接の首相失脚の引き金を引いた「田中角栄研究」はノンフィクションの画期だが、手法としても「膨大なスタッフで組織を作り、地道に登記簿などを分析していくと 、トップ屋の突撃取材や名物記者の人脈で獲る以上の大スクープをモノに出来る」という手法革命が、むしろその後の影響は大きい。
この辺は「2016年の週刊文春」でも描写されている。同じ手法で直後に日本共産党を研究したのも語り草。共産党のうろたえと、反論というより誹謗中傷にちかい乱暴な反撃(まだ昭和の共産党は、いまのように老いていなかったんですよ…)もすごいもので、というか立花氏の取材スタッフの中にスパイを潜入させるほどの”実力”があった武闘派集団でした。

そもそも立花氏はせっかく「あの」文藝春秋に入社したのに「会社員をしていると本を読む時間がない」という理由で退職し、 一時期はバーを経営して、それで読む時間を確保したという、それほどの本の虫だった。(バーのマスターだった時の腕前を発揮し、取材を終えたスタッフには文芸春秋社内で手軽な料理を作ってはふるまっていたそうな)
膨大な文献を徹底的に読み込んで、それを整理しアンカーとしてまとめる、そういうことにこそ才能があり、自分も好きだった分野だったのです ね。
「その応用問題として、首相の首をひとり取ってみましたー」、となるわけです。


あ、あとね。
立花氏は「ノンフィクションを書くための経済的自立」というのも重視していて、と言うか読書大好きマンとして、本を買って、それを置くために稼がなければならなかった。で「シェ・タチバナ」というレーベルで、自分のこだわりの原稿用紙なんてのを販売したり、出版社横断の自作の著作案内を本に挟んだりして、なんかそのことが印象に残ってるなぁ。そういう、ノンフィクション作家としてきちんとビジネスを立ち上げた結果、膨大な蔵書を入れるビルを作れたんだからあっぱれであります。
あの蔵書、立花氏の死後はどうなるのかな…。



さて。
だが。

晩年の氏の論説には、多くの暴走と迷走があったことも描き残しておかねばならない。

その代表に当たるのが「井田真木子氏のプロレスノンフィクションに『そもそもプロレスがくだらないから』というわけで大宅壮一ノンフィクション賞受賞に反対、それを選評で書いた」という話だ。うちのブログ的にはやっぱりそれをあげなきゃいけないんだけど、あらかじめこちらに出来上がったものがございます(笑)

評論家・浅羽通明氏の文章の引用だけど、まあ、このリンク先の文章で足ると思うんだ。

m-dojo.hatenadiary.com
 …女子プロレスも、サルの生態も、それを職業とする人以外、まずパンの役には立たない点は共通する。
 立花は両者を、知的レベルが高ければ熱中するわけがない女子プロレス、知的な人ならば興味を持つに決まっているサル学というように峻別する。
 いったい区別する根拠はどこにあるのだろうか。(後略)

この文章は、立花批判のアンソロジー本に収録されているのだが、立花隆晩年の暴走・迷走を俯瞰するのにもこの本は役に立つと思う。
今売ってるとも思えないので古書でも探してもらうべきかね。電書版とかあればいいんだけど。

追記 古本を著者が直接販売中

↑このアンソロジームックに上記の論文を書いた評論家・浅羽通明氏は、現在アルバイト的に新宿での古本屋経営にかかわっており、自ら店番にも立っているそうな(コロナ禍でもあり、行ったことはない)。そこで今、上記論文の入った本だけでなく原稿そのものや、立花隆氏の貴重な古本を追悼販売している。(※6月25日情報)

奥新宿天空 浅羽通明主宰の古書肆です
書籍あひる社ahilsha_japan の古物商鑑札&オフィスを間借中
新宿区四谷4-28-7吉岡ビル(イエロラーメン隣の文具店EMOTO隣に入口。同名のビルにご注意!7F。エレベーターでGO!!

新宿御苑前徒歩7分 四谷四丁目交差点に面した7階


自分の知ってる限りでも
環境ホルモン」の脅威を今から見れば過大に評価していた、
あの「ゲーム脳」を肯定的に評価
オウム事件の時に、変な怪文書を「公安が世論を誘導するためにひそかに作成しメディアに送ったもの」と推理し反論される
きっこのブログ」を高く評価(致命的では……)
・・・・・・・・・・・などね、特に脳科学陰謀論的なもので見立てが外れる事が多かった 。
サルのマウンティングや身づくろいなどの、社会的地位を確認する行動はオスが主に行うから、地位や権力を目指すのが、男性が主になるのも当然なのだ(要約)という論もあったな。これはこれでファクトとしてそういう説が成り立つなら、反発を恐れず言っていいかもしれないが、どうもそこまでとは…
m-dojo.hatenadiary.com



この後立花隆の全集や選集などが企画されると思うけど、その時そういう類の文章はどういう風に扱われるのかなあ・・・・・・・


ただこういう風にプラスマイナスをいろいろ計算しても、なお「知の巨人」としての足跡は巨大だったと思う。メディアは氏の功績をたたえて「知の巨人」の称号は”永久欠番”にしてみてはいかがか。いや、この称号が商売になることはわかるんだが、それにしても受け継いだ人間が「内田樹」氏というのは、ちょっと悲しいお話ではありませんか。


追記 補足資料

twitter上でのやり取りとリンクが興味深かったので収録


anond.hatelabo.jp