隠れた名作というと月並みな表現になりますが、さっさと死ぬために生きようとする少女を主人公に、武田家の滅びを描いた『レイリ』は、重厚さ・独自性・完成度が異常な戦国マンガだと思います。今から72時間、全6巻全話無料。歴史モノが好きな人、読んで損なしは保証します。
— チャンピオンクロス (@championcross) September 8, 2025
この72時間無料って三国志やクッキングパパやこち亀みたいな漫画、つまり72時間じゃとても読めない分量の作品を公開して、読み切れなかった人に買わせる商法だと思うんだが、「レイリ」は、ぶっちゃけ、ちゃんと最初から最後まで72時間あれば無理なく読めるぞ。
まあ、再読のために買いたくなる、という自信なんだろうな。その自信には確かに根拠あり。
2017年のまんが10傑に選んだ時の選評を再掲載。(※ちょっとネタバレなので自己責任で)
レイリ /室井大資,岩明均
長篠の戦いから4年、黄昏ゆく武田帝国と勃興する織田軍団の血戦のはざまで、数奇な運命を生きる少女の名はレイリ。巨匠渾身の原作を新感覚の鬼才が作品化! 衝撃の本格戦国時代劇、開幕!!難攻不落と呼ばれ、天下の堅塁と呼ばれた遠州・高天神城。武田の最前線拠点であるこの城は今、織田徳川連合軍に完全包囲され、武田中枢が下した決断は城の放棄だった! 城の主将をつとめるのはレイリの命を救い育てた恩人・岡部丹波守。ここにおいて少女は立ち上がる……心のおもむくままに! “盾”となって死ぬために!! 高天神城血戦編、開幕!!
なんどか紹介…というか、この前の「おんな城主直虎」エピソードに関係した「高天神城」の話として、紹介しましたね。
※とある戦国史が専門の学者に、私がこの作品を紹介したツイートから。@HIRAYAMAYUUKAIN そうだ、以前「漫画は最近読まなくなった」と伺っているので、情報だけ(でもご存知かな?)。「寄生獣」「ヒストリエ」などの世界的人気漫画家・岩明均氏が「原作」の形で連載中の「レイリ」という作品、舞台が私も「武田氏滅亡」で初めて重要性を知った「長篠後」「高天神城の攻防」なのです。
「滅亡」でも印象的に描かれた武田信勝(その影武者が表題のレイリ)が非常に重要な役で、周囲が(勝頼を差し置き)「救国の英雄」を期待する中、賢すぎる彼はそれを虚勢を交えて演じつつ、本音は…との複雑な造形です。岩明氏は歴史に詳しく、後書きでちょっと謎を提示したり。
以上報告です。
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ここでは書ききれなかったが、武田信玄が「後継者」に指名した孫の武田信勝の造形がなんとも面白い。
この後継者指名ってのは史実でいうと『勝頼は、いちどは信州の諏訪家を継がせ、母も諏訪の御料人…つまり占領した旧敵国との縁が強いから、武田嫡流を継ぐのは難しい、という判断だった』ということらしいんだけど、そこを「武田信勝は信玄が潜在的な将器を認めた若き天才である(と言われてる)」と見立てたのはさすがの岩明的ストーリーテリングです。
そして、画像にあるように、確かに才能ある少年だからこそ、周囲の期待を”忖度”して「我は天才なり!」と傲慢に自称しつつ「もう織田に勝てるわけがない」とも見通してしまう…という悲劇。
これが、史実上も痛ましい、最期に繋がっていくのでしょうか。
史実(としての伝説)上の武田信勝の最期を、ネタバレでもいいから知りたい人は http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20170713/p1 をどうぞ。
主人公レイリは、少女だけども武田信勝の影武者が務まるほど瓜二つ、という設定も面白いけど、普通の男がかなわないほどの武芸の達人かつ、「いつ死んでもいい」という虚無感と捨て身の心を持つ。それが強さでもあり弱さでもある…というと、短編「剣の舞」の女性主人公を発展させた、という面もあるかもしれませんね。









